年間100本以上のお笑いライブに足を運び、週20本以上の芸人ラジオを聴く、21歳・タレントの奥森皐月。今回は、3月21日(土)に放送された『R-1グランプリ2026』決勝戦を振り返る。
目次
なぜか毎年エントリー数が増えている『R-1グランプリ』
ピン芸日本一を決める大会『R-1グランプリ2026』が3月21日に放送された。
今年の『R-1グランプリ』の予選は昨年11月に始まり、過去最多の6,171名がエントリー。お米を食べられるまでの工程に代かきや田植えがあるように、テレビで放送されるお笑い賞レースの決勝の前にはたくさんの予選がある。そのことを忘れてはいけない。

毎年、『R-1グランプリ』のエントリー数が少しずつ増えていることには驚きを隠せない。
たとえば『M-1グランプリ』では、異なる相手とコンビやトリオなどの組を作って複数エントリーすることが可能だ。それによってエントリー数が毎年増えているのはまだ想像ができる。
一方で、『R-1グランプリ』は「ひとり」の戦いだ。つまり、「自分もピン芸をやってみようかな」と思う“個”が年々増えているということ。この事態が何を指し示しているのかは、よくわからない。
安心・安定の山里さんと、フラットで素直な生見さん
今大会からはMCが一新された。2021年から昨年までの5年間を務めた霜降り明星のおふたりと広瀬アリスさんに代わり、新たに南海キャンディーズ・山里亮太さんと生見愛瑠さんがMCに就任。
山里さんといえば2020年から『ABCお笑いグランプリ』のMCをされているほか、2023年の『THE W』ではフットボールアワー後藤輝基さんの体調不良により急きょMCの代役を務め、その完璧な振る舞いが話題となった。
山里さんの安心・安定のイメージの一方で、生見さんがお笑い賞レースのMCというのは意外性がある。しかし実際に本編を見てみると、 フラットな目線で素直なコメントをしていた姿が印象的で、山里さんとの対比もあって、とてもいいMCのふたりだと感じた。
審査員にも注目「佐久間さんらしい、優しさが根底にある」
審査員は昨年に引き続き、陣内智則さん、バカリズムさん、友近さん、小籔千豊さん、マヂカルラブリー・野田クリスタルさん、佐久間一行さん、ハリウッドザコシショウさんの7名。
それ以前は5名だったが、7名体制のほうがより多角的な目線やコメントがあって見応えがあり、公正さも増しているように感じる。
個人的には、佐久間一行さんの審査から目が離せない。
昨年も今年も最低点が89点、最高点が98点としっかり点差をつけた上で、端的かつ丁寧な言葉で出場者にコメントをしている。今大会では、さすらいラビー中田さんのネタ終わりにしていた「より多くの人を笑わせるには」という観点のお話が印象的だ。
それに対してMCの山里さんが「佐久間さんらしい、優しさが根底にある」と言っているのを見て、これからも審査員席にいてほしい存在だと改めて思った。
「8度目の正直」ルシファー吉岡さんのすごさ
実力があって注目されていた芸人さんが、次々と予選敗退となった今年の『R-1グランプリ』。決勝進出経験のある芸人さんが数組出場しなかったことも相まってか、ファイナリストの9名のうち6名は初の決勝進出であった。メンバーの入れ替わりを感じる。

その新たな顔ぶれの中で最も古参なのが、ルシファー吉岡さんだ。昨年まではルシファー吉岡さんとマツモトクラブさんの“7回”が『R-1』の決勝進出最多記録だった。しかし、今年決勝に進出したことによって、ルシファー吉岡さんが“8回”で単独1位に。
初の決勝進出が10年前の2016年で、そこから芸歴制限で出場できなかった回を除いたすべての回で決勝に進出されている。
ここまで来ると、一度優勝するよりもすごい記録なのではないかとすら思ってしまう。お笑いの流行も世の中も変わり続けるなかで、10年経っても賞レースの決勝に残れるのは特殊能力ともいえるかもしれない。

昨年のキャッチコピーは「7度目の正直」で、今年は「8度目の正直」だった。この先「n度目の正直」と言われ続ける未来を想像すると、必ず優勝してほしいと心の底から願ってしまう。
今年は惜しくもファイナルステージに進めない4位という結果だったが、来年も挑戦する旨の発言をすぐにしていてカッコよかった。ルシファー吉岡さんのすごさはもっと多くの人が認めるべきだ。
初瀬さんの『言い切る男』に心を奪われる
個人的に楽しみにしていたのは、ななまがり初瀬(悠太)さんによる『言い切る男』のネタ。2年以上前にYouTubeショートで『言い切る男』の縦型動画を観て以来、ずっと心を奪われている。

決勝の舞台では、言い切るキャラクターはハマっていたものの、ネタとしての点数は伸び切らなかったので残念だ。ただ、バカリズムさんが「展開をつけたことで潔さが損なわれていた。2択だけで進んだほうがよかった」というコメントをされていたのには共感できた。
さて、そのような「『言い切る男』をただ浴びたい」という気持ちに応えるコンテンツがすでにある。
YouTube『ななまがりのなんでもやりますチャンネル』には「【Shortsまとめ】言い切る男の言い切り百連発」という26分の動画が公開されている。今回の『R-1グランプリ』で『言い切る男』にハマった人にも、バカリズムさんにも観てもらいたい。
お抹茶さんに時代が追いついてきた!?
決勝メンバーが発表された時点で「楽しみだ」と前回の連載記事に書いた、トンツカタン・お抹茶さん、ドンデコルテ渡辺銀次さん、今井らいぱちさんの3名が最終決戦に残ったのには驚いた。

2024年以来、2年ぶり2度目の決勝となったお抹茶さん。『かりんとうの車』のネタのインパクトも凄まじかったが、今回も『ピアノ刀侍』、『プラネタリウム』と強烈なキャラクターを披露していて痛快だった。
どちらのネタも『かりんとうの車』よりも前に作られたお抹茶さんの傑作・名作ネタであり、決勝の舞台でこの2本を持ってきたのには、並々ならぬ思いがあったことが想像できる。
特に『ピアノ刀侍』のネタは『R-1グランプリ』の歴史に残るレベルの素晴らしいネタだ。聴いていて気持ちがよくて、何度観てもおもしろい、究極のお笑いだと思う。

『プラネタリウム』のネタを初めて観た2022年の『R-1グランプリ』2回戦の日のことはいまだに鮮明に覚えている。当時はトリオの中でもネタを書いていない方だという認識だったので、ピンで出てきてあれほどおもしろかったのは衝撃的だった。
その翌年には敗者復活戦でも披露され、さらに月日が流れて今回、“決勝の決勝”で輝いた星々。「お抹茶ベストアルバム」のようで最高だった。着々とお抹茶さんに時代が追いついてきている。
独自の路線をさらに開拓している渡辺さん
『M-1グランプリ2025』では2位、『本当にメロい芸人ランキング』では3位と、飛ぶ鳥を落とす勢いのドンデコルテ渡辺銀次さん。

ただ、今回の決勝進出はけっして勢いだけではない。ドンデコルテ結成前から『R-1グランプリ』には毎年出場されており、準々決勝・準決勝と何度か惜しいところまで進んでいた。
『M-1』を経て知名度がグンと向上した今、ピンネタを観るのを楽しみにしていた人も多かったのではないだろうか。
ファイナルステージに進んだことで、2本の漫談につながりが生まれ、独自の路線をさらに開拓しているように見受けられた。

友近さんが1本目のネタ終わりに「題材が“ブラ漫談”で、今までそんなジャンルあったのか」とコメントしていたが、友近さんこそ“ヒール講談”という存在しないジャンルのネタをされているので、なんだかおもしろかった。
“ブラ漫談”と“ヒール講談”のふたり会が開かれてほしいものだ。
「逆境は最高の御馳走だ」今井らいぱちさんの大勝利!
さて、ファーストラウンド1位通過のまま見事優勝を果たした今井らいぱちさん。今回の決勝メンバーの中では最もダークホース的な立ち位置だったのではなかろうか。

前コンビであるヒガシ逢ウサカが解散した直後の『オールザッツ漫才2020』でまさかの優勝。『R-1グランプリ』では過去に3度も準決勝まで進出していた。いつ決勝に進出してもおかしくない芸人さんだとは思っていたが、今回初の決勝でそのまま優勝するとは。
事前の記者会見では、奥様と3人のお子様を大阪に残して単身赴任していること、今年の『R-1グランプリ』がダメだったら大阪に帰る予定だったことを話していた。
2本目のネタのオマージュ元のMOROHAの曲の歌詞にも「逆境は最高の御馳走だ」というフレーズがある。土俵際からの大勝利は本当に見事である。

『R-1グランプリ』といえばフリップネタが多く、近年はモニターを使ったネタも増えていた。
しかしながら今回の決勝メンバーでは、しんやさんが一瞬スケッチブックを使っていた場面以外に、フリップネタやモニターネタをしていたのは今井らいぱちさんのみ。モニターを使っているのがむしろ目立っていたような気がする。
そのなかで1本目に披露された『講演会』のネタは、画期的な展開が連続する構成で、客席の大きな笑い声もテレビ越しに伝わってきた。2番手だったにもかかわらず、最後まで抜かれることのない高得点を叩き出したのは、このネタの完成度の高さを示していると感じる。

2本目のラップをするネタは、2024年の準決勝でも披露されていたもの。今井らいぱちさんもMOROHAもどちらも好きな私は、このネタが大好きだ。
ありとあらゆるMOROHAの楽曲のキメラのようなメロディとリリックで、聴けば聴くほどおもしろい。すでにTVerで10回くらい観てしまっている。MOROHAが活動休止している今、YAMATOのライブに行きたくなる。
どう審査されるのだろうかと思っていたが、審査員7名のうち5名が票を入れ、見事優勝に輝いた。

今井らいぱちさんが優勝したのはもちろん、優勝の要因のうちの何%かに“MOROHAっぽさ”が含まれているのがうれしい。今井らいぱちさんとアフロさんが共演する番組がどこかで放送されないか、楽しみだ。
ピン芸は、奥深くおもしろみのある演芸
『R-1グランプリ』という大会は、優勝しても売れないだとか、夢がないだとか言われてきたが、近年は大会としても番組としてもレベルアップしているように思う。
ネタ時間が4分になってからは、以前のような「展開が欲しかった」という審査コメントを聞くこともなくなり、決勝で披露されるネタもさらにおもしろくなっている。

今回の放送後も「ほかの賞レースに比べてテンポがいい」「観やすい」という感想がSNS上で投稿されていて、『R-1』に一切関係ない人間なのになんだかうれしい気持ちになってしまった。
漫才やコントと比べてピン芸を観る機会は少ないかもしれないが、非常に奥深くおもしろみのある演芸だと感じている。この1年の今井らいぱちさんの活躍と『R-1グランプリ』の成長が、楽しみだ。
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