アルピー平子×マヂラブ野田が『セクシーラジオ』後に語ったセクシー道。「国の政策自体が揺るぎかねない」

2025.12.30
『セクシーラジオ』

文=浜瀬将樹 撮影=梅山織愛


12月26日(金)にマヂカルラブリー・野田クリスタルとアルコ&ピース平子祐希によるラジオ番組『セクシーラジオ』が放送された。12月31日(水)に『野田クリスタル初セクシーカウントダウン in TOYOTA ARENA TOKYO』を開催する野田と、2026年2月14日(土)に写真集『艶夢(えんむ)』を発売する平子。“セクシー”を背負うふたりが、“セクシー”を世界に届けた。

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ふたりの本質を感じられたラジオ

12月26日、1日遅れてクリスマスプレゼントが届いた。平子×野田クリスタルがパーソナリティを務める『セクシーラジオ』が、各種媒体で生配信されたのだ。期待がふくらむなか幕を開けたが、放送中は終始、静かなる狂気に満ちていた。冒頭で「梅の開花」のニュースに触れたかと思えば、平子が「ラジオDJ然」とした佇まいでブース外のスタッフと会話をしたり、野田が「皮」について長時間熱弁したりと混沌とした状況に。リスナー(?)からの悩み相談コーナーでも、独自の視点で金言を授けていた。

味方のはずの『アルコ&ピースD.C.GARAGE』(TBSラジオ)や『マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)リスナーすらもふるいにかけ、「これぞアルピー平子、これがマヂラブ野田」を存分に浴びれた本番組。ツッコミ不在のなか、セクシーを貫き通した平子と野田に話を聞くと、その余韻を感じることができた。

生配信直後にはふたりから番組について、そしてセクシーについて話を聞くことができた。

野田が気づいた事実「デカい=セクシー」

平子祐希(以下、平子) 野田が高校生のときから、中野の地下の劇場で一緒に活動していたので、付き合いは20年以上。だけど、ふたりだけで膝を突き合わせてしゃべるのは、もしかすると初めてかもしれないですね。

野田クリスタル(以下、野田) そうですね。ふたりきりでしゃべることはほとんどなかったです。

平子 必ずモダンタイムスかゴー☆ジャスがいたからね。とはいえ、お互いにアンテナを立てて活動しているのは感じていたので、ようやく実現した夜になったな、と思いますよ。

野田 平子さんには、僕がまわりから「生意気小坊主」と呼ばれていた時代から面倒を見てもらっていました。そんな僕も来年で40歳になります。これまで腰を落として付き合ってくださっていましたが、徐々に同じ目線になれている気はしています。

平子 野田はそうやって謙遜しますが、当時から僕は野田の男々しい部分や、ある種の色気を感じ取っていました。地下の劇場のころは、半裸の状態で体にテープを無数に貼って……あれはなんてネタだっけ?

野田 ガムテープ男。

平子 そう。僕は当時から『ガムテープ男の物語』や『アレクサンドリアの森』など、野田のネタを観るときは、文学のページを1枚ずつめくるような気持ちでいました。やはりそこには、日本語が紡ぐ美しさと色気があった。逆に学ばせてもらっていた立場だったので、ようやく「ラジオ」という媒体を通して、お互いの想いを言語化し、ぶつけ合うことができたと思っています。

野田 インディーズ界隈で「最もセクシーな男」と言われていたのが平子さんなんです。それが果たして全国区でどのくらい通用するのか疑問だったのですが、テレビで観ていても「全然通用してるな」と感じています。あのころの中野の地下は、相当レベルの高い場所だったんだなって思いますよね。

平子 僕としては、野田をはじめとした後輩たちが歩める「轍(わだち)」を作ってきたつもりなんですが、ふと振り返ったら、その場に野田はいませんでした。野田は、ジャングルのような深い森を自分で切り開き、駆け上がっている。もちろん僕には見えない細かい傷も負っているとは思うのですが、今はお互いの轍ができたことで、並走できている印象です。

野田 見た目のところでいうと、セクシーって「デカい」んですよ。半裸の細い男のイメージもあると思うんですけど、年齢を重ねると「デカい=セクシー」という事実に気づき始めるんです。きっとそれは、みなさんも感じているところだと思うんですよね。

平子 「セクシー」の定義は多岐にわたりますが、野田の場合はまた特殊なんです。人間って誰しもが自分の“間(ま)”を持っているじゃないですか。ただ、「野田の間」というのは、ほかの誰にも似ておらず、野田の時間があって、野田の呼吸があって、実は穏やかで、ゆっくり流れている。そこに存在する人、時間、空間、すべて巻き込める間を持つ男だな、と昔から感じていました。その“間”の守備範囲が年齢とともに、どんどん広がっている。昨今の賞レースや各ジャンルでの活躍を見ればわかるとおり、野田がさまざまな世界を「自分の間」で覆い尽くしているように思うんです。でも、その“間”はけっして圧がなく、触れると柔らかくて、温かい。だからこそ心地よくて、いろいろな人が集まってくる……。

野田 (ここでたまらず吹き出してしまう)

平子 それが大きな空間となって、みんなの拠りどころになってる。それこそが野田の強み、セクシーたるゆえんかなって思いますね。

平子史上一番の作品が世の中を変える

『セクシーラジオ』
ラジオ中のふたり

平子 最初に目にしたのはSNSだったんですが、不思議でもなんでもなかったです。僕の頭に浮かんだのは「あ、ついにか」という言葉だけ。初めからわかっていたかのように、自然に受け止めることができました。ただひとつ苦言を呈するとすれば、「遅すぎたんじゃないか」ということです。

平子 そうですね。ただ、野田の中で「機が熟す」のを待っていたでしょうから、それがいよいよこの年末に花開こうとしているんだな、と実感しています。そこには期待はもちろん、ある種の恐怖感や緊張感もありますね。

平子 というよりも、生みの苦しみから放たれる「ひとつの新しいかたち」、「見たことのない色のエネルギー」が放たれるときのワクワク感とそれに伴う緊張感で、少し体がピリついている状況です。「何が巻き起こるんだろう」と。

野田 僕自身、セクシーを名乗って何かをやるときには、この男を通さないわけにはいかないと思っています。吉本としても、芸人界・芸能界の「セクシー」の覇権を握っている男を差し置いて「セクシーカウントダウン」なるものをやるのはいかがなものか。さすがに許可を通さずにはいられない……という意向がありました。平子さんに話を通したとき、どんな反応が来るのか怖かったんですが、いつものはにかんだ笑顔で「やってこい」と言ってくれました。

平子 まるで示し合わせたかのように、野田の『カウントダウンライブ』と僕の写真集『艶夢』発売の時期が重なりましたよね。さきほど「脅威なのか」とおっしゃっていましたが、僕らは互いに脅威とは思っていません。ただ、今一番震えているのはイタリアなのではないでしょうか。こんな偶然が重なると、国の政策自体が揺るぎかねないでしょうから。

野田 吉本から「2026年2月14日に平子さんが写真集を出しますが、どうしますか?」と言われたとき、僕は「構いません」と伝えました。それがいいことなのか悪いことなのかいまだにわかりません。余韻も何もかもこの男の写真集に取られてしまうかもしれない。『カウントダウンライブ』が前座で終わってしまう可能性もある。それでも僕は「やらせてくれ」と懇願しました。

野田 「平子史上一番の作品になる」という予感はしています。ただ、大丈夫かなと。これまではある種、手加減をしてセクシーさを出してきたのに、今回は本気を出しているので、恐怖というか心配ですよね。『艶夢』が出る以前・以後でこの世の中が変わってしまうかもしれない。そんな気がします。

平子 僕もミラノにうしろ足で砂をかけている自覚はあるんですよ。ミラノはもともと好きな地域なんで……どう丸く収めていくか。ひとつの課題ではありますけどね。

平子&野田 ……。

野田 あの……僕ら大学に行ってないんで……。

平子 急に、急に言ってきたじゃないですか。

野田 「早いな」って。大学のスピード感だなって。

平子 六大学の早さというか。無理難題というか。ずっとQ&A方式でやってきて、早い話がいろいろなかわし方をしてきたのに、正面切る問いかけは……卑怯。

平子 卑怯な媒体。

野田 アンケートをよこしてほしい。さすがにクイックすぎる。早すぎてわからない。

平子 そう。答えはそこに置いてあるから。

野田 要するに、僕らの答えは「わからない」です。

平子祐希写真集 『艶夢』(えんむ)
発売日:2026年2月14日(土)
定価:3,850円(税込)
写真集の詳細はこちら

『野田クリスタル初セクシーカウントダウン in TOYOTA ARENA TOKYO』
日時:2025年12月31日(水)23:15開場(配信開始)/23:30開演/24:30終演(予定)※オンライン配信
会場:TOYOTA ARENA TOKYO
出演:野田クリスタル(マヂカルラブリー)
配信チケット料金:2,800円(税込)
チケット発売日時:2025年11月23日(日)10:00
見逃し配信期間:2026年1月14日(水)まで
配信チケット情報はこちら

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浜瀬将樹

(はませ・まさき)1984年生まれのライター、インタビュアー。お笑い、ドラマ好き。移動中に深夜ラジオ聴くのが癒やし。

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