出産時に何度も消えた旦那。初めての親子水入らずは、分娩台の上での怒涛の説教タイムに

本日は晴天なり

ピン芸人・本日は晴天なりによる連載「バツイチアラフォーの幸せだけじゃない日常」

約1年半の不妊治療の末、2024年9月1日に出産したことを発表した、本日は晴天なり。これまでの連載では、韓国人の旦那の優しさを綴ってきたが、出産時には頼りない姿に悩まされたという。

妊娠中の妻をよそに飲み歩く旦那へのストレス

妊娠期間中、旦那には父になるという自覚が圧倒的に足りなかった。

私は妊娠初期から食べづわりになり、食べている間以外ずっと吐きそうだったので、何かしらを食べ続けていた。当たり前だが激太り。3カ月にもならないうちにすでに7キロ増えていた。

その間、旦那はフィルムカメラの現像にハマり、ヤフオクで道具をそろえ、夜な夜な趣味に没頭していた。早く現像したいがために、「ちょっと写真撮ってくる」と出かけてしまったり、つわりでぐったりしいてる私をパシャリ。「こんな姿、撮らないでよ」と言うと、「これも思い出だよ!」などと言い出す。

さらに「その現像液の匂いが無理なんだけど……」と伝えるも、「ゴメン、今はこれが生きがいなんだ」とやめることはなく、そんな旦那に絶望して号泣していると「妊婦さん大変だね……」と、妊娠のメンタルのせいにされた。

本日は晴天なり
旦那が撮影したつわりでぐったりする私

さらに、酒が好きすぎる旦那は韓国から妹が遊びに来たことを免罪符に朝まで飲み歩いたり、韓国から来た友達とポールダンスを観に行って終電を逃してタクシーで帰宅したり、バーで飲みすぎて妊婦の妻に介抱させたり。妊娠中の妻がいる人間とは思えない行動ばかりだった。

「私と赤ちゃんがどうなってもいいなら行けば?」と言っても飲みに行ったときには、ブチギレて離婚届けをもらいに行った。一度離婚してる女は2枚目にもすぐ手が出るぞ。

旦那はこんな感じだったので、SNSで「妻が妊娠したら夫は断酒するのが当たり前」という意見を見てひっくり返った。

ストレスで頭がおかしくなりそうだったが、ストレスは赤ちゃんによくないと聞き、ヘッドスパのASMR動画を観ながら就寝するようになった。動画を観ているだけで、頭に鳥肌が立つほど気持ちがよかったので、ストレス問題はそうやって解決していた。

お産時の旦那の存在は病室の壁にかかってる絵?

予定日まで10日。家でいつものようにマンガを読んでいたら“ジャー”と股から水が出てきた。

初産は予定日超過すると信じて疑っていなかったため、漏らした?と思いトイレへ行き、念のため病院にも電話。「破水かもしれないのですが、おしっこ漏らしただけかもです!」と伝えると、「さすがにわかりますよ、匂いとかで」と言われ、旦那とふたりでクンクン……。「おしっこ……?」結局、わからなかった。

漏らしただけの気がしたので病院には電車で行くことにしたが、家を出る直前にまた、けっこうな量の水が出てきたので、事前に登録してあった陣痛タクシーを呼ぶことに。「完全に破水です」と言われ、即入院となった。

昨日に限って風呂キャンセルしちゃった……。もう産まれるまでシャワー浴びれない……。それを想定して毎日入らなきゃと思っていたのに!

陣痛よりも先に破水したので痛みはなかったが、深夜にはうろたえるほどではないが、眠れないほどの痛みが押し寄せてきた。楽な姿勢を探して四つん這いに。

助産師さんに「旦那さんは?」と聞かれ、「出かけました」と答えると「一番いてほしいときにいない……!」と言われた。このとき、旦那は自分にできることはないと思っており、付き添っていても暇だからと、ラーメンを食べに行っていた。

「お産のとき、旦那はマジで役に立たない」という書き込みをネットで見ていたので、私も最初から期待はしていなかった。お産時の旦那の存在は病室の壁にかかってる絵くらいの役割かと思っていたので、「ラーメン食べに行ってくるね」と言われても、「いってらー」と送り出してしまったのだ。

だから、助産師さんに「旦那さん呼んでください」と言われ、「来させてどーするんですか?」と聞いてしまった。「腰とかさすってもらったり、産まれるのを見守ってもらうんです!」と言われ、ようやく納得。痛みの合間を縫ってなんとか、「来てー」の3文字だけ送った。

1時間後に旦那から「今見た! 行くー」の返信。遅い! せめてこまめにスマホのチェックはしろよ! もちろんあとで説教した。

夫婦での戦い

ほどなくして旦那が到着。このころにはすでに本陣痛が来ており、病院が貸してくれたひょうたん型のバランスボールに四つん這いでつかまりながら唸っていた。

旦那に腰を押してもらう。助産師さんのうまさには到底敵わないが、ないよりマシだった。

「内診するため、旦那さんいったん外で待っていてください」と、外に出されると、旦那はまた消えた。あとで確認したらデイルームに行っていたらしい。看護師さんが「旦那さん呼んできますね」と言ったものの、なかなか戻ってこないので、また痛みの間に「来てー」とLINE。それでも全然戻ってこないので、歯を食いしばりながら電話するも、出ず。これものちに説教した。

陣痛室での時間はまさに生き地獄だった。テニスボールを借りて、旦那にお尻をグーーーっと押してもらった。陣痛は超ミラクルスーパー痛い下腹部痛と、岩石ばりに硬いうんこがマックス下痢のときのように今にも出てこようとするのを我慢する感覚だった。下痢は軟便が相場と決まっているので、岩石ばりのうんこが下痢の勢いで出てくるなんてことはあり得ないし、もしそんなことが起きたらなんとしてでも爆破を防がねば肛門が弾けて破けること間違いなし。だから、必死で我慢する。そんな感覚だった。

出産の必需品として挙げられるテニスボールは今まで何に使うのか知らなかったが、そのうんこをしたい気持ちを和らげてくれるのものだった。

バランスボールに四つん這いで突っ伏しながら唸り、陣痛の波が来ると旦那に合図して、テニスボールを肛門に入れる勢いで押してもらう。軍隊経験のある旦那の全力でも足りず、「もっと押して! もっと強く!」とお願いしたが、すでに旦那は汗ダクでヘトヘトになっていた。

このときの私は朦朧(もうろう)としながらも振り向き、「疲れるよね、ありがとう、ゴメンね」などと言っていたが、もちろんあとで、その力の弱さをダメ出しした。

陣痛が来ている最中、呼吸に失敗すると「ボゲボゲボゲェェエエエエ!!!!!!!!!!」みたいな声が出る。自分でも初めて聞いた声だったし、退院してから家で再現しようと思ってもできなかった。

「奥さんの吐く呼吸に合わせてテニスボールを押してあげて」と言われた旦那は、私が呼吸に失敗して唸るだけだと見当違いなタイミングでテニスボールを押してくる。しかも弱い。

ついには、私がベッドの頭の部分を両手で押し、自らお尻をテニスボールに押しつけることで両方から押す力が加わり、なんとかパワーを補っていた。言葉にする余裕はなかったが、マジで旦那には今後筋トレをさせると誓った。

「なんで無痛分娩にしなかったんだ!!!!」とふたりで後悔した。「ここまで地獄なら無痛分娩にしてたがががががががあああああ!!」と叫ぶ。覚悟していたつもりだったが、足りなかった。足りなすぎた。正直、夜中の前駆陣痛くらいの感じが本陣痛だと想像していた。

出産後の怒涛の説教タイム

助産師さんが「旦那さん変わろうか?」とテニスボール係を交代。旦那は休憩へ。

「その前に内診してみようか……あら! もう全開してます! 分娩室に移動しましょ!」と言われ、いよいよ分娩台へ。「夜中までがんばってもらうことになりそうです」と言われていたので、19時前に分娩室に移動できて、やる気がみなぎった!

しかし、ここでまた旦那が消えてしまった。「『休憩』って言ってもどこかに行って休むとかじゃないのよ!! この状況だったら普通は隣に座って休憩するんだよ!!」と怒る余裕はもちろんなく、これもあとで説教した。なんならもう、あとで絶対に説教してやる!という気持ちで踏ん張った。

助産師さんに「旦那さんに連絡できますか?!」と聞かれるも、私のスマホは旦那が持っていた。病院の電話からかけてもらったが出ない。妻の出産時に電話出ないならスマホ捨てちまえ!!

分娩中、「髪フサフサですよ! 触れますよ! 触りますか?」と聞かれたが、断ってしまった。それどころじゃないという気持ちと、どうせまもなく出てくるんだからそのときに触ればいいやという気持ちだった。でも今思うと、股から出始めてる我が子を触る機会なんて一生に一度あるかないか、むしろないんだから触っておけばよかった、と後悔した。

産まれた瞬間は「終わったぁぁぁーーーー」が頭の中での第一声。

感動で泣いちゃうかもなんて想像してたけど、「よっしゃーー!! 終わったーーー!!!」が圧倒的に強かった。行方不明の旦那が分娩室に戻ってから20分くらいで産まれた。

本日は晴天なり
生まればかりの子供と私

ハンディファンの電池が切れ、助産師さんが持ってきてくれたうちわで旦那が煽ぐ。全然風も来ないし、手首についてるロッカーの鍵もカチャカチャうるせーし、ポケット入れとけよ! これも説教。

処置が終わると、そのまま分娩台の上で赤ちゃんと私と旦那の3人の時間があった。

旦那自身も出産時は見守ることしかできないと思っていたらしく、こんなにやれることがあるとは思わなかったそうだ。ちょっと頼りなかったが、結果的には壁の絵よりは役に立った……? しかし、めでたしめでたし……とはならず、ここで怒涛の説教タイムスタート。

産まれて1時間余りの我が子の手を握りながら、
「来てってLINE送ってから気づくの遅かったよね?」
「内診のときもデイルームで休んでたでしょ? そういうときは扉の前で待つんだよ!!」
「そんで、力ほんと弱い! テニスボールもっと力強く押してほしかった! 明日から筋トレして!」「うちわで扇ぐのすら弱い! あと、カチャカチャうるさかった!」

旦那は言い訳するのもやめていた。途中2回くらい「ゴメンね〜、初めての親子水入らずがパパへの説教で……」と謝罪。

旦那はこの日の帰り、“ひとり打ち上げ”と称し、飲んでいたらしい。翌日聞いたら、富士そばとカラオケダーツバーに行って飲んで、翌日の育休前ラストの出勤に遅刻したとのこと。

父になった自覚は、産まれてもまだなかったようだ。

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本日は晴天なり

太田プロダクション所属のピン芸人。キャバクラバイト歴10年、身長173センチの長身女子。推し事が中心の日常も、YouTube『本日は晴天ちゃんねる』にて垂れ流し中。

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