『コテコテ』【Aマッソむらきゃみのグルメ連載「今月のスープ」#10】


「ちょっとよかったあの日」の記憶を唯一無二の筆致で描くAマッソ村上によるファンタスチックな回顧エッセイ。第10回目を迎えたメモリアルな今回はむらきゃみの地元・大阪の話を。

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今月のスープは「肉吸い」

【材料】
・水…500ml
・牛肉こま切れ…150g
・青ネギ…場面で2〜3本
・白だし…大さじ2
・酒…大さじ1
・みりん…大さじ1
・醤油…小さじ1
・塩…ぱーらぱら   
【作り方】
①臭みとアクを取るために牛肉を下茹でします。色が変わればザルにあげる。
②鍋に水と酒と牛肉を入れて一煮立ち。
③白だし、みりん、醤油、塩を加えまた一煮立ち。
④斜めにシュンシュンに切った青ネギを加え、弱火で1分煮たら完成!

大阪名物肉吸いやで〜!
肉吸いとは肉うどんからうどんを抜いたものらしい。
肉のお吸い物の略で肉吸いと呼ばれるよになったねん!
1980年代後半に吉本新喜劇の俳優である花紀京さんが出番の空き時間に店を訪れ、二日酔いで軽く食事をしたかったために「肉うどん、うどん抜きで」と注文し、当時の店主がそれに応えたことから誕生したんやって〜!
大阪名物や言われてるけどここ最近までうちは肉吸いのことを食べたことがなかった。知ってはいたが、うちはうどんが大好きやから肉吸いに目もくれず肉うどんを頼んでいたんだろうなぁ〜。大阪で育ったがまだまだ知らないことがたくさんあるんやろうなぁ〜!

大阪

大阪に帰って友達と飲みに行くってなると最近は大阪駅前ビルの地下街で飲むことが多い。
うちは大阪市内の南の方に住んでいたから大概、遊びに行くのは天王寺か難波が多かった。
大阪梅田はオフィス街で上品な街やとばかり思ってたけど、ごった返してる飲み屋があって嬉しかった。

大阪駅前ビルは第1ビル〜第4ビルまであって安価で美味しいお店がギョウサンある!飲兵衛にとっては天国みたいなところ。帰る頃には天使の羽が生えてふわふわしちゃうんだから。

うちは初めて行った時「うわ!新橋みたいやん!」と友達に言うと「あ、そうなん」と東京に染まりやがってコイツと言いたげ風の渇いた返事をもろたことがある。うちは大阪駅前ビルで飲むよりも先に新橋駅前ビルの立ち飲み屋で飲んでたことがあった。日テレのオーディション帰りにたまたま紺野ぶるまとヒコロヒーが一緒で誰かが「ちょっとだけひっかけていく?」と提案すると、「勿論!なんやったら今言おうとしてたしぃ〜」とワイワイしたもんだ。飲み始めはオーディション結果どーなるやろうなんて話してたが1杯目が終わる頃にはオーディションの結果なんてどーでもよくなって、スケベな話やしょうもなゴシップをあーだこーだほざいていたもんだ。地下街の埃っぽくて蛍光灯なのにじんわり薄暗くて野暮ったい雰囲気がうちは好きだ。

大阪出身なのに今や大阪に帰ると観光客気分になってしまうし、荷物が多いせいなのか飲み屋で隣に座ってるおっちゃん、おばちゃんにどっから来たん?と声をかけられることが多々ある。「東京」と答えると「あっちは何でも高いやろ!」と東京ディスが始まる。「埼玉」と答えた時は「ここの刺身うまいぞ!」と海なし県であることを哀れんで、カンパチのお刺身を奢ってもらったことがある。「横浜」と答えた時は「いや、オシャレなとこから〜」と厭味たらしく言われた。

後輩のモチダ・ポ・ソフィと大阪に遊びに行った時も話しかけられた。通天閣の麓で串カツを食ベるという王道コースを楽しんでいたら、隣のご家族に声をかけられた。「ネェちゃんらどこの子や?」モチダがピュア元気に「広島ですッ!!」と答えると「大阪初めてか?」「はいッ!!」モチダの元気が気に入られて「どて焼き知ってるか?」「知らないでしゅッ!!」「ほな、奢ったるから食べてみぃ〜」「いいんですかッ!?」とトントン拍子にどて焼き(牛すじ肉を味噌やみりんで煮たやつ)、レモンサワー、紅生姜の串カツを奢ってもらった。

まいどおおきに招き猫(=^x^=)n

ご家族が先にお店を出るとなったので、モチダは目をキラキラさせながら「今日大阪来て良かったですッ!!!」とミントが咲き誇るような感じで言うと「こちらもあんたらみたいな元気な子らと飲めて元気でたわ」と言ってくれた。帰り際に気がついたのだが、みんな喪服姿だった。

不幸があった後で、少しでもうちらが励みになってたならば良かったな〜と思った。

にしても、大阪の人ってよう声かけるよね〜。で、埼玉とか広島とかヤンチャなイメージがあるところとおのぼりさんには優しく接してくれるっぽい(個人的見解)。つい最近も大阪に帰った時も声をかけられた。

ラジオでなんやかんやでうちの兄弟4人が学力テストをするYouTubeを撮ることになった。

※詳しくはラジオ参照

そうと決まればYouTubeチームは動くのが早い。

うち以外の兄弟は大阪に住んでいるので大阪に向かう。

妹から「スタッフさん何人いてはる?」と連絡が入った。「ふたり!何で?」と返事する。「お母さんが軽食とか飲み物買いに行った」と返ってきた。

{おかんのセンス大丈夫かな?半額シールが付いてる商品とか買ってこうへんかな?}

と一気に心配になる。大阪には激安スーパー玉出とか見たことない商品を取り扱うディスカウントストアがたくさんある。

{お願い変なもんは買ってきませんよーに。お願いしますー。}

と東京〜新大阪に着くまでの2時間半ずっと願い続けた。天王寺駅から四天王寺さんの方に歩いて7分くらいのレンタルスペースでの撮影。集合時間5分前に兄弟4人とおかんがレンタルスペースにやってきた。来て早々、おかんがおかんをやり出す。

おかん 「よろしくお願いします〜これ良かったら食べてくださいね〜」

スタッフ 「ありがとうございます。お気遣いなく〜」

おかん 「加納さんいちごあるで〜」

加納さん 「後でいただきます〜」

おかん 「あんたらもはよ食べぇ!」

兄弟達 「は〜い」

(み〜んな素直でいい子に育ちましたね(´∀`)はなまる!)

うちは買ってきたもんを見てホッとする。スタバのペットボトルのコーヒーや午後の紅茶、パン屋さんで買ったクロワッサンとサンドイッチ、メロンパン、加納さんにいちごを買ってきていた。見事なよそいきの買い物。

YouTubeの撮影は終始皆やかましく兄弟一人ひとりが自由奔放な感じでどうなることやらって感じだったが無事終わった。

撮影が終わってYouTubeスタッフと加納さんと4人でたこ焼きを食べて大阪を味わう。もちろんうちはハイボールをいただく。昼から飲む酒最高〜!たこ焼き屋を出て「もう一軒行く人〜?」とご陽気に聞くと、加納さんは「眠い帰る」男スタッフ「編集で寝てなくてすいません」デカい男スタッフ「…行きます!」

そうとなれば赤提灯が灯ってるところにレッツゴー!!!

赤提灯を発見し、暖簾をくぐって「ふたりです〜」とピースをしながらお店に入ると「はいこっちや〜」と大声で叫ぶおばちゃん、そちら側に向かうと空いてる2名席のところで「はい、ここ座りぃ」とやや命令口調で案内された。15時半でほぼ満席。さすが下町。

急に店内にいたおじさん達がざわめき出す。テレビで競馬中継をしていてうちの後ろにテレビがあったのでやたらとおっさん達の視線を感じてなんだかむず痒くなる。レースの後半には「差せー!!」や「そのまま、そのままやどー!」など、思い思いに言葉を吐き捨てていた。レースが終わり大半はどよめき、忍びながら「ヨシっ!」とガッツポーズをとるおっさんが数人いた。おっさんの視線が少なくなり痒みが引く。

ちょっと遠くに座っていたおばさんが近づいてきて配慮ある声量で「Aマッソ?」と声をかけてくれた。うちも同じくらいの声量で「はい!」と答えるとツレのおっさんに「やっぱりそうやったわー!」と叫んだ。おっさんが「ほらだから言うたやんけ」と叫び返して注目を浴びていた。最初のおばはんの配慮は何やってんと大阪無デリカシーを浴びたが、笑顔で写真を撮った。ピースもした。

デカ男スタッフとワイワイ楽しく飲んでいると、急に店員のおばちゃんがきて「ねぇちゃん芸人なんやろ?」「あ、はい、Aマッソっていいます」「知らんわ、なんかあっちのおっさんが言うててん、頑張りや」と颯爽と言い放ってどっかに行った。コテコテを喰らった。デカ男スタッフが「『ケンミンシSHOW』で出てくる大阪のおばちゃんはやりにいってると思ってたんですけど、素でコテコテなおばちゃんって本当にいるんですね!」と驚いていた。

その後、ふたりで3軒目、4軒目とはしごしたとさ。

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目を覚ますと知らない天井、あ、弟の家に泊まったんやったと思い出す。実家から徒歩5分のところにある弟の家は売りに出すらしく家具もほとんどなく殺風景だった。床で寝てしまっていたので、密やかに腰を痛めていた。「あ〜しんど」と言いながら起き上がる。ローテーブルの上にグレープフルーツサワーの缶、つまみで食べていたイカリ豆が転がっていた。グレープフルーツサワーなんか飲んだっけ?と思いながら缶を持ち上げて見ると半分以上残ってる。嗚呼、昨夜もわたくしめはご機嫌にお調子に乗られていたんだなと十分に認識する。「ごめんなさい」と嘆きながらグレープフルーツサワーをながしに流し、転がってるイカリ豆を食べて「大阪の味や」と謎にほざいていた。

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本当によく食べていた大阪の味を求めて粉浜商店街に行った。

まずはキムチ屋さんに行く、惣菜も豊富に置いていてチヂミやチャプチェなどが売られていて、うちは大好きなキンパを購入。次に焼きそばを買って、1個50円の安くて美味しいコロッケ屋さんに行った。

うち 「コロッケ10個ください!」

お店のおばちゃん 「はい、500万円ねぇ〜」

うちは目を見開いて固まってしまう。

お店のおばちゃん 「揚げたてやで〜ねぇちゃんラッキーやな!温める時レンジやなくてオーブントースターあったらそれであっためてや〜冷蔵庫で冷やさんでええで、冷やしたら固なるからな」

うちは固まってたことに気づきは慌てて財布を取り出して1000円を出して「…これで足りるかな?」と言うとおばちゃんが5秒くらい1000円札を見つめて「足りるで〜(ニヤリ)」と1000円を受け取ってザルから500円玉をとり「はい500万円のお返し〜また来てや!」に対し「…は〜い」と言いながらほっぺをつねると痛かった。現実だった!古のノリコテコテを喰らってしまった。コテコテを食らうと夢か現実か分からなくなる。

さっさと実家に帰ろうと自転車にまたがる。乗りながらふと考える。

{うちは周りから見たら大阪のおばちゃんなんかな?コテコテを喰らわしてしまってるのか?そうやったらちょっとキツイな〜。でも今は東京に住んでるし500円のことも500万円とか言うたことないし大丈夫か?いや、きっと大丈夫!うちは大阪のおばちゃんやない}

と断定したところで実家に到着する。「ただいま〜コロッケとか買ってきたよ〜食べる人〜!?」とリビングに入っていくと、おかんが焼きそばをちゅるちゅるしていた。おかんも粉浜商店街に行ってうちとまったく同じものを買ってきていた。

咄嗟にうちとおかんは「い〜や〜」と言い合った。

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むらきゃみ(Aマッソ)

1988年生まれ。大阪府出身。Aマッソのボケ、ツッコミおよびグルメ担当。2024年2月21日に「村上」から「むらきゃみ」に改名。

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