カネコアヤノが考える。“めんどくさい”を“大好き”にする三箇条

2020.1.31
カネコアヤノ_bn_136

これがスケートリンク地獄を見る前日の笑顔である(詳細は本文参照)
文=カネコアヤノ 写真提供=木村和平


2020年1月10日の東京・草⽉ホールのライブから「カネコアヤノ TOUR 2020 “燦々”」をスタートさせ、北海道から沖縄までをめぐる全国ツアー中のシンガーソングライター、カネコアヤノ。
そんな彼女が1年前の昨日(つまり2019年1月30日)の誕生日に綴った、“めんどくさい”についてのエッセイをお届けします。

※本記事は、2018年2月24日に発売された『クイック・ジャパン』vol.136掲載のコラムを転載したものです。

めんどくさいについて

あのさぁ、突然なんですけど世の中めんどくさいこと多すぎませんか?

一番イヤなのは、お風呂に入るためのはじめの一歩、これは最悪。なんか知らんがめんどくさい、嫌だ嫌だ、と頭で唱えていると家を出る時間になっている。朝、結局すごい速さでシャワーを浴びて電光石火のごとく着る服を選び家を出る。ってことが2、3年前までできていたのだけど、最近シャワーを浴び始めるとのんび〜りゆっく〜りしてしまう。髪の毛も気持ちがハマると阿呆みたくケアしまくる。急がず焦らずですぜ。そんなことしてると寝坊する。遅刻する。本物の阿呆なんですわ。目先にあるギターに手が伸ばせない、料理、洗濯、1カ月先の約束。

この間の大雪の日には雪かきをサボりアパートの階段がスケートリンクのように凍った。お気に入りの服を着てはりきって出かけようとしたのに家の門から先へ行けないという地獄をみた。渋々ケトルと鍋でお湯を沸かして何往復もし門から先へ、シャバの空気を吸うことに成功。そりゃあ前日の大雪の日には初めて雪を見た犬のように遊んだね。

結局のところ、私の場合“めんどくさい”の裏には大好きがあるのだ。で、このコラムのお話をいただいたときどうやって“めんどくさい”思考を経由せずに大好きにたどり着けるのだろうか、と親指と人差し指を使った「うむむ」というポーズで考えたよ。いくつか思いついたものをあげてみよう。

一、今日あった良いことをメモする
二、帰ってきたら一度座らず流れに身を任せて風呂に入るなり料理するなり
三、……。

もうないですね。全然思いつかなかった。でも! ひとつ目の「今日あった良いことをメモする」というのはとても良い! 明日に希望が持てるようになりました! 暗いことは書いちゃいけないというルール。1日の最後に「雪がキラキラしていて綺麗だった」だとか「お気に入りのセーターを褒めてもらえた」だとか、なんでもいいんだけど自分の中にある日々のトキメキを見直す。明日もめんどくさがらずに好きなものに猪突猛進するしかないと思うようになったのだ。ふたつ目は、なんかどうでもいいというかおいておいて……トキメキに猪突猛進だよ。私のテーマ、決まった。

しかし極度のめんどくさがりなので三日坊主になるという危険性が浮上してくる。ここで私またひとつ思いついたのだよ。良いことをメモするというルールに普段やっている自分ルールを掛けるのだ! ややこしいことになってきた。でもみんなありませんか? 自分ルール。私のルールはたとえば、「3分以内にシンクに溜まっている洗い物を終わらす。終わらなかったら燃えて死ぬ」とか、遅刻しそうなときに全力で走りながら「予定通りの電車に乗れなかったら良いライブができない」とか。自分と勝負をしているのだが、この勝負を良いことメモにも書けるのだ。「毎日メモできなかったら今後暗い毎日を送ることになる。30代くらいからガクッとくるかしら。結婚もできないし孤独死する」的な? ウワーッ超嫌だ!! 絶対に日々きらめき案件を見つけて楽しく生きるよ私!

ちなみに今日あったいいことは、誕生日! 私これを必死に喫茶店で打ちこんでいる今、誕生日なんですよ。お気に入りのワンピースを着て素敵なお靴を履いて、夜ご飯は何を食べようかしら。LINEを開けば思っていたよりもたくさんの祝いメッセージが来ているし、人生最高モードに入っている。

ここ3日間は自炊をしているし、昨日はお風呂に20時前に入った。朝は9時半に起きた。偉い。偉いがすぎる。ああ、でもまた家に帰ったら溜まった洗濯物をしなければ。部屋も散らかったままだ。めんどくせ〜。

ねぇ、みんなこういうときってどうしてるの? 私に教えてよ。

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