初の決勝進出ながら圧倒的な笑いを取って『M-1グランプリ2025』で優勝した、たくろう。決勝時、全国区ではほぼ無名だったが、所属していた大阪・よしもと漫才劇場では「お客さんの心をつかみ、劇場で一番ウケていた」と、きむらバンドの同期で親友だという丸亀じゃんごは語る。
そんなふた組は、漫才劇場で互いを刺激し合い、仲のよさだけでは語れない“切磋琢磨の関係”を築いてきた。寄席やバトルライブに真剣に向き合い続けた日々が、たくろうを『M-1』優勝へと押し上げたのだと丸亀じゃんごは感じているという。そして今、丸亀じゃんごはその背中を追う。そんなふた組に劇場で育まれた勝利への熱と、スターを生み続けるよしもと漫才劇場の強さの理由を語る。
目次
仲いいだけじゃない。切磋琢磨できる仲間
今年5月に放送された『ONE CHANCE 2026〜王者推薦 漫才No.1決定戦〜』(TBS)で、たくろうさんが丸亀じゃんごさんを推薦されてましたね。
改めてありがとうございます。(深々とたくろうに頭を下げる)
赤木が推薦人でね。
いや、僕後輩なんで。ふたりで選びました。
なぜ丸亀じゃんごさんを選んだんですか?
寄席や営業、どこ行っても強いんですよ。(香川県)丸亀市住みます芸人をやってたときも、お笑いがめちゃくちゃ根づいているわけではない場所で、自分らで整備して発信するところから始めて、受け入れてもらっていた。そのお笑い力、漫才力が高いところをずっと尊敬してるんで、選ばせてもらいましたね。
出演してどうでした?
全国区のテレビ番組でネタをさせてもらえるチャンスってなかなかないんで、がっつり4分自信のあるネタをやれたことに、まず感謝ですね。やってみて東京でもこれだけ笑ってもらえるんだという自信にもなりました。
ふたりともいつもどおりのメンタルでやれてる感覚があったし、ということは『M-1』の決勝行けたとなったときにもそうやってできるんや、という自信をあの日得られた気がしました。いろんな意味でよかったです。
そもそもふた組の関係性は。
(丸亀)じゃんごは僕がNSCで最初にしゃべった同期で、クラスも年齢も一緒なんです。そっからの付き合いで、お客さんも入ってないなか、一緒にチケットを手売りしたり。泥臭い時期を乗り越えて、本当に親友という感じでめちゃくちゃ頼りにしてます。
本当に苦楽をともにしたという言葉がぴったりで。たくろうが『M-1』で先にパッと行ってくれたので、僕らは今それを追いかけるという感じです。
この中ではひとりだけ後輩の赤木さんから見て、36期は結束が固い印象ですか。
たしかに漫才師が多いですし、みんなで高め合ってる切磋琢磨感がありますね。僕らの37期があんまり切磋琢磨しないでいこうって決まってるんで。
決まってたんや? どうりでしてないなと思った。
でも、36期もライブ後みんなで必ず打ち上げ行くとかでもない。意外とドライなんですけど、お互いのことは意識し合ってる。
「サボったらヤバい」と思わせてくれるやつが多いんですよ。真輝志は常に劇場に残ってなんかやっているし、カベポスターの永見(大吾)は営業の合間でもパソコン開いてネタ作ってるし、ダブルヒガシは舞台出たらバコンとハネるし。
刺激が多いんですよね。
負い目があるとその場にいたくなくなっちゃうんで。楽しく仲よくいるために、自分らもがんばっておく必要があるという。
名前の挙がったダブルヒガシさん、カベポスターさん、それにたくろうさんらが一気に東京に行ったのはどんな気持ちですか。
寂しい思いはもちろんあります。でも、僕らからしたらチャンスなんで。ずっと大阪でやりたいなと思ってるコンビなんで、みんなが行ったあとの漫才劇場は任しといてくれという気持ちです。

赤木裕(あかぎ・ゆう)1991年10月24日生まれ、滋賀県出身。大阪NSC37期出身。写真左
きむらバンド 1990年1月28日生まれ、愛媛県出身。大阪NSC36期出身。写真右

北村敏輝(きたむら・としき)1989年10月31日生まれ、大阪府出身。大阪NSC36期出身。写真左
安場泰介(やすば・たいすけ)1990年1月2日生まれ、京都府出身。大阪NSC36期出身。写真右
『M-1』王者でも苦戦した『グランドバトル』
劇場には2カ月に1回バトルライブ『グランドバトル』があります。このライブはどんな存在ですか?
やっぱり1位を取らないとあかんライブやと思ってます。僕ら、寄席出たいんで。
いい順位だと出番が増えますし。
ルールで決まってるわけじゃないですけど、結果を出すとチャンスがもらえる印象ですね。名前の通った芸人が寄席に出やすいのに対して、そうじゃないメンバーは『グランドバトル』で勝ち取っていくのがひとつの手段になると思います。『グランドバトル』でウケたらいいネタやなという秤(はかり)にもなりますし。
あのライブって、4分という短い尺の中でバーンって派手にウケるネタに票が入りやすいから、そこにアジャストせなあかんのですよ。でも自分らのやりたいネタをやってみて受け入れられたときはめっちゃうれしい。あかんときはめっちゃムカつきますね。
漫才劇場は層が厚くて、総合順位にランクインするのは相当難しい気がするんですけど。
はい。なんせ強すぎる人らがいるんですよ。常に上位のマイスイートメモリーズさんには勝てなかった。何をしても。
ほかにも僕らが戦ってたときは、ダブルヒガシ、20世紀、ドーナツ・ピーナツ、パーティーパーティー。後半は豪快キャプテンとかも相当強かったんで。『M-1』で決勝に行ってるカベポスターとかは意外と上位にはそこまで入ってなかったりするんですよ。
この数年の総合順位ベスト10を見返したら、丸亀じゃんごさんの名前がなくて意外でした。
マジで僕ら入ってないですからね。
毎回出てはいるんですけどねえ。
順位のわりに劇場の出番はいただけたり、ライブのトリやらせてもらったり、期待していただいているんだなとは思うんですよね。「結果出してなくてすみません!」という気持ちはあって、「なんとしてでも次入らな」「いや無理やった」を繰り返してる感じではありますよね。
相性があるんですかね。
あるかもしれないです。僕らが昨年の『M-1』決勝前に総合優勝したときも、僕らの前に出たツートライブさんのほうがウケていたように聞こえたんです。僕らは決勝に進んだという目立ち方があるから票入ったのかなという気もしたんで。だから、印象点もあるというか、普段の活動も加味されているもんだと思っていて。
もちろんちゃんとウケればランクインするんで。「あそこどうやったかな~?」と思っていたらランクインしないですね。
たくろうさんは、漫才劇場を卒業されましたが、振り返って『グランドバトル』はどうでしたか。
僕らもめちゃくちゃ活躍してたわけではないんですよ。さっき赤木が言っていたように、去年の『M-1』前、『ビバリーヒルズ』のネタで初めて総合優勝できて。
それこそ最後の1年、順位が取れるようになった感じでした。
追い風が吹いてる感はありましたね。
たくろうが『M-1』獲った2025年って、1年間通してマンゲキで一番ウケたのはたくろうやったと思うんですよ。常に「そんなウケんねや?」ってぐらいウケてましたからね。ただただふたりの見せ方とネタのおもしろさだけで、お客さんをつかんでいくのをまざまざと見せられた。あの受け入れられ方が、『M-1』にもつながっていったんでしょうし。
(きむらに)褒められて気持ちよくなってるやん。
『グランドバトル』は順位がつく賞レースみたいなもんやから、そこで勝ち癖をつけるのは大事なんかもなと思ったりしますね。寄席でウケるとバトルで勝つというのは、またちょっと違うんで。じゃんごがそこ逃げずに、「俺らは入賞したいねん」という気持ちがあるのはむちゃくちゃいいことやと思います。

バトル後のコーナーこそ見どころ
劇場で『グランドバトル』を見たい人に、ここに注目するとめちゃくちゃおもしろくなるというポイントを教えてください。
オーディションから上がってきた昇格組が、基本見どころになるんじゃないですか。圧倒的に人生がかかってるんで熱量が違う。苦労している人も多いので、そこのドラマもあるから応援したくなると思います。
普段の寄席やNGKに出ている芸人が、賞レースチックな空気の中、4分という限られた時間に照準を合わせてネタをやる。「こんな雰囲気のネタもするんや」というのが見られるのはおもしろいポイントかもしれません。
テレビに出てる芸人さん目当てで見に行ったら、「え、めっちゃおもろいやん」っていう人が何組も見つかると思いますよ。配信なくなったんで、ぜひ現場に見に来てほしいですね。
注目は戦い抜いてきたあとの芸人をまとめるMCじゃないですか。span!さん、タナからイケダさん、Dr.ハインリッヒさん、スマイルさん……。売れてない時間も長くて、わがままでアクの溜まったおじさんたちがいっぱい出ているわけじゃないですか。それをまとめる腕がすごい。
それを汗かきながらやってくれてはる兄さん見たら大好きになります。日によっては、出演者がエンディングでは全員疲れてるときがありますから。
そんなときもMCがガッと起こしよるんで。
あと年に何回か、コーナーに迷う時期が出てきます。突然クイズコーナーがあったりして。
こないだは「上半期の穢れを落とそう!」みたいなコーナーで、神社みたいな音が鳴るなか、最後みんなで縄の輪をくぐって終わりました。
ほんまの儀式。
どうなってんねん大阪!? 俺らまだ上京して半年やのに、そんなことになってる? 年始にやるならまだわかるけど。
『Kakeru翔グランプリ』にはない企画ですね。
やらないでしょう。若い子は汚れも溜まってないですから。フレッシュなんで。
仮に『Kakeru翔グランプリ』やったらもうちょっと機敏に動くところを、おじさんやからゆっくりダラダラくぐっていました。でもそういう「なんやこれ?」という時間や「えっ?」と驚いている芸人の顔も楽しんでほしいです。

強者ぞろいの36期の最終兵器
漫才劇場で注目の後輩芸人を教えてください。
華山はおもしろいですねえ。
知ってる! 先輩や。
漫才うまいしな。
やすいさんが先輩だっけ?
にこらすさんも先輩やから。
漫才劇場の下の子ら、全員おもしろいんですよ。その中で好みとなったら、渋いところになってきますかね……。最近でいったら、九ノ段ですか。初めて見てからまだ1年ぐらいで、こないだ単独見たら「こんなうまなる?」というぐらいうまくなってました。めちゃめちゃ学ぶ姿勢がある気がします。あとライムギ。漫才コントを主にやっていて、めっちゃええなっていうボケが必ず入ってるんですよ。それってシンプルな設定の漫才コント作る上で、かなり難しいことなんで。からし蓮根さんに匹敵できるぐらいの漫才コント師になれるんじゃないかという気がします。

漫才コントでいったら、あと天ロクの丘ね。おもしろいことをずっと言っていて、めっちゃいいです。確実に段階踏んで『M-1』を上がっていく未来が見えます。あとは幸のとりですかね。ボタンのかけ合わせが一個うまくいったら、ドカンといく気しかしない。

僕は満丸。あの歴で寄席、それもトップ出番でちゃんとウケてるのがすごいなと思います。

去年、『M-1』の2回戦、僕らの出番前でめっちゃウケてて、落ちてたんですよ。絶対3回戦に行くと思った。
おかげで客席が温まって、やりやすかったな。
僕はあんよの日です。『M-1』の決勝進出発表の瞬間の様子がSNSで上がっていて、呼ばれる前に朱海が「たくろうさん……!」と強く祈ってくれていて、(うれしそうに)「朱海~!」と思いました。

それでいうと、キョンビの斎藤はどう?
僕らが優勝した瞬間の動画見たら、みんなでうわーって盛り上がっているなか、ひとりカメラ目線でダブルピースしてました。
何してんねん。いらんことしてるな。
同期だとどうでしょう。
これはあえて言わせてください。最終兵器、カンフーカンフーのチェンがいると。僕はチェンとイチオクのないすケン、センリーズ・テコンドー近藤がやってるYouTubeチャンネル『ごっつタレント』が大好きで、ないすケンはほっといても注目されるだろうなと思ってます。チェンはほっといたらどうなるかわからないですけど、いいですねえ。

何がいいんですか。
まず楽屋来てください。
舞台を観に行くのではなく?
舞台はごめんなさい。スポットライトを浴びると、縮こまるときがあるんですよ。でも楽屋のチェンは自由で本領を発揮しますから。
ほんま同期で一番頭の回転早いと思います。漫才もうまいですし。だから、居酒屋でチェンが飲んでる隣のテーブルで話を聞くのがいい。
むちゃくちゃ難しい。絶対おもろいけどな。
『M-1』チャンピオンから同志へ
最後に漫才劇場を卒業されたたくろうさんから、丸亀じゃんごさんに託す言葉をお願いします。
託す言葉……。僕からしたらおふたりとも先輩なんですけど……。
これは「『グランドバトル』で勝て」ですね。その気持ちでやってるのはずっと見てきたし、話もしたことあるから知ってましたけど、今日改めてその気持ちを聞けてよかったです。じゃんごはどこ行ってもウケるというよさがありつつ、同じネタをしてウケるからよしとするわけじゃなくて、その中でさらにブラッシュアップすることや成長することから逃げてない。だからこそ尊敬できる部分があるんで。ここで『グランドバトル』の話をしたんやったら、あとは結果も伴わしてください、勝ってくださいね、ということをお願いしたい。
がんばります。
泣きそうになったわ……。ほんまにありがたい。
オモロいことはよく知ってるから、それを世の人にもっと知ってもらいたいというのが同期の気持ちですね。
僕は、「37期をよろしくお願いします」と言いたいです。37期は今、劇場所属が3組しかいなくて、変な状態やと思うんですよ。スイチー(翠星チークダンス)、チェリー(大作戦)はどうにかなってるんで、次は千日前ゴールデンポップスにがんばってほしいし、なんとかしてほしいです。
下川24時は?
それは大丈夫。こっちでなんとかします。

公演概要
『グランドバトルWEST第一部/第二部』
2026年8月2日(日)
【第一部】開場12:15/開演12:30/終演16:00
【第二部】開場16:30/開演16:45/終演20:15
チケット価格(各部):前売2,000円(税込)、当日2,300円(税込)
たくろう×丸亀じゃんごが『Quick Japan』vol.185バックカバー&特集に登場
『M-1グランプリ2025』王者のたくろうと丸亀じゃんごは、8月25日(火)発売の『Quick Japan』vol.185のバックカバー&特集にも登場。本インタビューでは、未公開の写真も掲載する。

『Quick Japan』vol.185は、8月25日発売。現在、全国の書店やネット書店、太田出版のECサイト「QJストア」などで予約受付中。表紙・巻頭特集には料理家・長谷川あかりが登場する。
『Quick Japan』vol.185(表紙:長谷川あかり)
2026年8月25日(火)発売予定
サイズ:A5/並製/144ページ
価格:1,650円(税込)
※内容は予告なく変更する場合があります
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