“脳汁が止まらない”スリラーから、3時間の長尺を感じさせない超爽快作まで!2025年、最も心を揺さぶったベスト映画5作品を大発表(石野理子)
2023年よりソロ活動を開始し、同年8月にバンド・Aooo(アウー)を結成した石野理子。連載「石野理子のシネマ基地」では、かねてより大の映画好きを明かしている彼女が、新旧問わずあらゆる作品について綴る。
第13回は年末特別編として、石野がセレクトした2025年ベスト映画を部門別で一挙大発表! 話題をかっさらった人気タイトルから、「もっと多くの人に観られてほしい!」あの作品まで、選びに選び抜かれた5作品をお届けします。
※本稿には、作品の内容および結末・物語の核心が含まれています。未鑑賞の方はご注意ください
目次
2025年ベスト映画は?
いよいよ街が年末へと加速していく時期になりましたね。あっという間に駆け抜けた一年でしたが、今年もまた、記憶に刻まれる映画たちとの出会いがありました。
今回は2025年に出会い、私の心を揺さぶり、思考を巡らせた作品たちを部門別・順不同で紹介します!
いつか行ってみたいロケ地!部門『リアル・ペイン〜心の旅〜』

心の奥底に巣食う繊細さ、めんどくささ、そして痛みを、従兄弟であるデヴィッドとベンジーを通して、あまりにもリアルに描き出した作品です。示唆に富む魅力的な会話劇の背後で、物語の舞台であるポーランドが重要な役割を果たします。歴史という重層的な背景が影響を与えながら進むストーリーにおいて、ポーランドの史跡ツアーは、疑似体験以上の、ある種の「追体験」を促してくれます。
現地に足を運んでこそ、事実を目の当たりにし、想像を広げられる何かがあるのではないか。そう思わされたほど、このロケ地は世界観を構成する、欠かせない要素になっていました。
劇中に流れるポーランド出身ショパンの音楽は、心地よさとセンチメンタルな感傷を抱かせ、鑑賞後には、美術館を出たあとのような、しっとりとした余韻を残してくれました。
石野理子『リアル・ペイン〜心の旅〜』のレビューをもっと読むにはこちら
脳汁が止まらなかった!スリラー部門『異端者の家』

思い返せば、これはまさしく“the 頭脳派”にして心理戦の極致を描いた映画です。ワンシチュエーションで構成された密室劇を観終わったあとに訪れるカタルシスは、今も忘れられません!
監督が練りに練り上げた脚本は、単なる宗教的論争に留まらず、哲学的な思想をもって私たち観客を試してきます。
「さあ、お前はどうなんだ?」「何を信じる?」と、執拗に問い続けられているような感覚。気づかぬうちに、いや、意識していても、リードの術中にはまっていくでしょう。知的好奇心が高めな方には、ぜひともこの思索の迷宮への挑戦をおすすめします。
ちなみに、シスター・バーンズを演じたソフィー・サッチャーさんの存在感が強く印象に残り、今後を追いかけたい!と思っています。
まるで感情がジェットコースター!なホラー部門『サブスタンス』

主人公エリザベスとスーの、喜び、怒り、哀しみ、楽しみといった喜怒哀楽のすべてが伝播してくる、ドライブ感に満ちたホラーです。
女性差別(エイジズムやルッキズム)というテーマを描ききろうとする監督の強い意思が、大胆な映像表現で鮮烈に体現されています。エンタテインメントとしての見応えもじゅうぶんすぎるほどで、笑いあり、時々切ない涙ありな作品です。
この「行くところまで行く!」という徹底された覚悟は、監督の前作『REVENGE リベンジ』(2017年)でも強く感じられるのですが、『サブスタンス』はその原型から進化し、ダークユーモアがより濃密に、そしてクレイジーに昇華されています。
ホラーに抵抗がある方でも、造形やスプラッター描写が、どこかB級映画的な荒さと愛嬌を持っているため、比較的観やすい入口を提供しているかと思います!
劇中曲も最高!ハートフル部門『バード ここから羽ばたく』

(バリー・コーガンびいきは認めざるを得ませんが、)個人的にはこの映画で最大のインパクトをかっさらった、上半身虫タトゥーのバリー・コーガンの人間臭い演技と、フランツ・ロゴフスキ演じるバードの持つフェアリー感、彼らが作り出した神秘性が、日常に唯一無二の魔法を授けていました。
劇中にかかる音楽は、「日常を彩る」とはまさにこのことだと気づかされる完璧な選曲で、私はこの映画の余韻を少しでも長く楽しむべく、プレイリストを作って、幸せな余韻を引き延ばそうと、秋は、というか現在もプレイリストで劇中曲を聴いています。
心に余裕がないとき、あるいはホッとひと息つきたいときにこそ、そっと寄り添ってくれるような作品だと思います。
石野理子『バード ここから羽ばたく』のレビューをもっと読むにはこちら
ド直球な冒険譚!クライム・アクション部門『ワン・バトル・アフター・アナザー』

正直なところ、ポール・トーマス・アンダーソン監督のこれまでの作品には、描かれるトキシック・マスキュリニティ(有害な男らしさ)に対して一部抵抗感を抱くのもあり、今作を楽しめるか懸念を抱いていました。
しかし、その懸念は開始から半分を過ぎたころには吹き飛び、シンプルな内容でありながら、3時間という長尺をまったく感じさせない、スリリングな冒険譚に没入しました。手放しで笑っちゃうほどに!!!
最後までダメダメな父親を演じたレオナルド・ディカプリオと、空手のセンセイを演じたベニチオ・デル・トロの、愛嬌あるやりとりには思わずクスリ。地形の勾配を活かしたカーレースに手に汗握りながらも、私が苦手意識を抱いていた部分は、巧みに風刺として描かれており、あとには爽快感だけが残りました!
“好きな映画”と日常は地続き

ジャンルは多岐にわたりましたが、年間ベストに挙げた作品には、共通して「クスッと笑えるユーモア」と「魅力的な会話劇」がありました。このふたつへのこだわりは、映画とは別のリアルな日常生活において私が意識していることでもあります。
振り返れば、私は実生活において「居心地のいい空気感」を大切にしているところがありました。
理想は、お互いが肩肘張らずに自然体でいられる対話です。空気を柔らかくほぐし、対話を拒絶しないこと。そんな私なりのコミュニケーションの指針は、もしかしたら、これまでの映画体験の積み重ねによって形作られたのかもしれません。
映画の趣味嗜好は、知らず知らずのうちに日常の価値観と結びついている。そう思うと、一本の映画との出会いがより大切に感じられるかもしれませんね。
年末年始の特別な時間に、ぜひ以上の中から鑑賞する映画を選んでみてはいかがでしょうか? どれも自信を持っておすすめできる珠玉のラインナップです!
関連記事
-
-
ケビンス×そいつどいつが考える「チョキピース」の最適ツッコミ? 東京はお笑いの全部の要素が混ざる
よしもと漫才劇場:PR -
「VTuberのママになりたい」現代美術家兼イラストレーターの廣瀬祥子が目指すアートの外に開かれた表現
廣瀬祥子(現代美術家)/ひろせ(イラストレーター):PR -
パンプキンポテトフライが初の冠ロケ番組で警察からの逃避行!?谷「AVみたいな設定やん」【『容疑者☆パンプキンポテトフライ』収録密着レポート】
『容疑者☆パンプキンポテトフライ』:PR -
『FNS歌謡祭』で示した“ライブアイドル”としての証明。実力の限界へ挑み続けた先にある、Devil ANTHEM.の現在地
Devil ANTHEM.:PR





