ツートライブ×アイロンヘッド「全力でぶつかりたいと思われる先輩に」変わらないファイトスタイルと先輩としての覚悟【よしもと漫才劇場10周年企画】

NSC大阪校30期の同期で、過去にはユニットライブなども開催していたアイロンヘッドとツートライブ。仲間であり、ライバルでもあるふた組はお互い、「コントは無理」「漫才は無理」と思わせた存在だという。
そんなふた組は、芸歴を重ねた今、8月13日(木)にIMM THEATERで開催される『オールマンゲキTOKYO』でMCを務める。今だからこそ語れるお互いへの印象、そしてツートライブの『THE SECOND~漫才トーナメント~2025』優勝に対する本音、さらに変わりゆく劇場と後輩たちへの思い。まさに“オールマンゲキ”な対談を行った。
お互いがコント、漫才は無理だと思わせた存在
おふた組は8月13日にIMM THEATERで行われる、『オールマンゲキTOKYO』でMCを務めます。このふた組でのMCが決まったときの心境は?
フェスのMCをする芸歴でもないので、“ここにきてアイロンヘッドとやれるんや!”と思いました。これまで、このふた組でMCをすることってなかったよな?
初めてちゃうかな? 若い子もいるのに僕らを選んでいただいて光栄です。
うれしいですね。そもそもツートライブは、よしもと漫才劇場のフェスでMCをすること自体初めてですから。
僕ら「プラチナ5」というユニット(アイロンヘッド、ダブルアート、ツートライブ、バンビーノ、ミキによるユニット)も10年ぐらいやってる仲なんでね。とにかくうれしいですよ。
そんな同期ふた組の関係性を教えてください。
大阪NSCの最初のクラスは違ったけど、選抜クラスでは一緒やったよな。
入学から同じクラスだったダブルアートのタグが、辻井と地元が一緒で、同級生なんですよ。最初、クラスでは「アイロンヘッドっていうオモロいヤツらがおる」という噂が流れてました。
ツートライブもそうでしたね。「ヤバいヤツおるぞ」みたいな噂をよく聞いてました。
NSCでは中間発表会があるんですけど、みんなネタ時間2分の中、ツートライブは6分やったんですよ。時間オーバーしたらめちゃくちゃ怒られるのに、6分やるって度胸あるな、と。伝説の芸人さんの逸話ってよく聞きますけど、ああいったジャンルに入るすごいコンビなんやなと思いました。
当時、3年目までが出る『NSC道場』というライブがあったんですよ。そこで、アイロンヘッドが、大阪城公園でとってきたセミを、カゴの中に入れて振り回すネタをやってて、めちゃくちゃおもしろかったです。
めっちゃ怒られたけどな。
セミが鳴く音を聴かせるみたいなネタやったな(笑)。当時、アイロンヘッドを筆頭に、同期におもしろいコント師がそろってたんで「俺らはコント無理や」って思ったのを覚えていますね。
それでいうたら、僕らもツートライブのネタを見て「漫才無理やな」と思いましたもん。同じこと思ったヤツ、めっちゃおったんじゃないですかね。
NSCのとき「この年はツートライブ」といわれるくらい、ふたりはトップを走ってましたから。
同期でも珍しく、アイロンヘッドは“畑違い感”があって、単独ライブを観に行ってもめっちゃ笑ってました。漫才師やったら「うっ」ってなるんですけど、アイロンヘッドは、ずっとバカ笑いできたな〜。
ツートライブの単独は一番観に行ったかもしれん。やっぱり、こいつらが漫才をやるときは観たくなるんですよね。
アイロンヘッドは、“どうやって思いついたんやろ”という理解し難い笑いの取り方をするんですよ(笑)。『拳の舞』というネタがあるんですけど、あれで笑いを取ろうとするって……どのジャンルのお笑いなのか。ふたりがビューンって遠くに行ってるのに、でも目の前におる感覚で笑けてくるというか。
なんやねんそれ。
とにかく、異常な笑いの取り方をしていました。“何してんねんこいつら”の笑いですね。ビューンってふたりが遠くに行く感じ。そのときの温度もオモロなってくるんですよ。
だから、それなんやねん(笑)。

辻井亮平(つじい・りょうへい/1985年2月1日生まれ、兵庫県出身/写真左)とナポリ(1985年1月10日生まれ、大阪府出身/写真右)によるコンビ。NSC大阪校30期出身で、2016年4月より活動拠点を大阪から東京に移した
2025年ツートライブさんが『THE SECOND』で優勝されました。アイロンヘッドさんは、この結果をどのように受け止めましたか?
予選のノックアウトステージからずっと観ていましたけど、間違いなく一番応援していましたね。東京の楽屋でも「ツートライブがおもしろいぞ!」となったのが、めっちゃうれしかったです。ただ、優勝するまでは、“がんばらなアカンな”とか“悔しいな”とか、自分がどう感じるかわからなくて、変な感情になっていました。“俺、どうなってしまうねん!”って、めっちゃしんどかったですけど(笑)、優勝は100%うれしかったし、そう思える自分でよかったなと思います。
喜んでくれたんやな。
若いときって、同期が有名になると悔しかったんですけど、『THE SECOND』は予選から“がんばってくれ!”という気持ちしかなく、シンプルにうれしかったです。でも、よく考えたらそりゃそうなんですよ。ツートライブは、ずっとがんばってたし、ずっとオモロかったし、そらここで結果出るよな、って。ほかの芸人の優勝のうれしさって次の日までに収まるんですけど、ツートライブの優勝は、4、5日うれしかったです。
だいぶ喜んでくれてんな(笑)。
僕はツートライブは(結果が出るのは)時間の問題だと思っていました。だって、いつ見てもオモロかったんですから。
「ツートライブは大丈夫やろ。余裕やろ」って、ずっと言うてくれてた記憶あるわ。

たかのり(1984年4月11日生まれ、兵庫県出身/写真左)と周平魂 (しゅうへいだましい、1983年9月11日生まれ、京都府出身/写真右)によるコンビ。NSC大阪校30期出身で『THE SECOND〜漫才トーナメント〜2025』王者
芸歴を重ねても変わらないファイトスタイル
漫才劇場の中では、おふた組とも頼られることが多い立場になってきたと思います。先輩として劇場を盛り上げていこうという意識もあるのでしょうか?
自分らが平場で盛り上げなアカンなと思うんですけど、なにより僕は後輩がこれだけやってんねんから感が強いですね。フースーヤ、ダブルヒガシ、黒帯とかが前にバーンと出て、とにかく盛り上げようとするんですよ。自分が後輩のときは、ビビってできなかったのに、なんでこいつら、この芸歴でこんなに責任感を持ってやれるんやろと思うというか。その姿を見ると、自分もスベろうが何しようが、前に出ようと思います。
後輩に対して、引っ張っていきたい意識もあるんですけど、やっぱり学ばせてもらうことが多いですね。ダメ出しライブで、みんなでダメ出しをし合うときも、後輩のほうが遥かに分析力が高いし、感じたことを忌憚(きたん)なく話せる子が多い。やっぱり、どこで何を見て感じるかって、生きている長さではないのかなと思います。後輩だけど、こちら側が教えてもらうこともあるので、それを吸収していますね。
若手時代、どうやって前に出たらええかわからんとき「今やったら行けるぞ」と背中を押してくれたし、ムチャしてもツッコんでくれたし、先輩には何回も助けられたんですよ。そうやって自分がやってもらったように、今は後輩に100%でツッコんで、助けてあげられるようにしたいな、とは思っています。僕もわかってないですけど、自分のタイミングで出てきたヤツは100%オモロいと思うんで、それに全力でぶつかりたい。自分がおるときに「前に出たくなる先輩」でありたいと思いますね。
僕は、そんなに考えてはなかったですね。結局、コーナーが始まったら「わあー!」って前へ行きたいのは変わらないんで、その延長でしかないというか。
周平はファイトスタイル変わらへんよな。
後輩に「僕どうしたらよかったんですかね」と聞かれるんですが、それを一緒に考えることはできるけど……答えなんかないっすもんね。
「先輩だから」ではなく、一緒の立場になって考えると。
一緒ですね。みんなで「あそこどうしようか」って考えるのも楽しいですから。

渋谷よしもと漫才劇場は今、見ておいたほうがいい劇場
「よしもと漫才劇場」が10周年を迎えました。長く所属しているからこそ感じる“演者目線”でのマンゲキの魅力を教えてください。
楽屋には、でかいスペースが4つくらいあって、そこでよく舞台の話をしているんですよ。若手からベテランまで、みんなで集まって話せる場所があるのは、マンゲキの魅力やと思います。
とにかく、ずっとむっちゃオモロいと思います。たとえば「あいつら東京に行ってもうたか。マンゲキ手薄になるな」にはならないんですよ。絶対にオモロい芸人が出てくる。マンゲキには劇場を背負いたい、舞台数を増やしたい、ネタも平場もオモロいと思ってもらいたいヤツが100組以上おるわけですよ。そりゃオモロなりますよね。まさに「オールマンゲキ」です。
ここでつながってくるんや(笑)。
「渋谷よしもと漫才劇場」もオープンして数カ月が経ちました。先輩後輩の交流も盛んになったかと思いますが、アイロンヘッドさんから見て、「ヨシモト∞ホール」時代との違いなどを感じることがあれば教えてください。
平均年齢が若くなったんで、楽屋が活気づくようになりましたね。みんな元気やし、それぞれがやってきたノリもありつつ、新しいノリが生まれることもあります。「神保町よしもと漫才劇場」にいた後輩に久々に会うと「こんなにおもしろくなったんや!」って感じるほど、すごく成長していて、勉強になりますし、自分の出方を見直すいい機会にもなっています。
僕らが上京したとき(2016年)って、楽屋でふざけてるヤツがほとんどおらんかったんですよ。当時の∞ホールは、大阪の劇場ほどの家族感もなく、どんどんかぶせて、みんなで持っていくわけじゃない。テレビに向いているような「個々で解決できるヤツら」がめっちゃ多い印象でした。ただそれだと、ハコとしてバーンと盛り上がるのは難しいんですよね。個人的には、毎日遅くまで楽屋におろうと決めて、ダイタクと飲みに行ったり、いろんなヤツに楽屋でノリを仕掛けたりしました。そこから徐々にほぐれて、チーム感が生まれたときに、「渋谷よしもと漫才劇場」に生まれ変わりました。
そうやな。
神保町でやってた若手の子らも先輩にはノリを仕掛けづらいし、僕らも気を遣うなか、エルフの荒川が「若手との架け橋になるのを手伝ってもらえませんか?」と声をかけてくれて。それから僕も知らん後輩に話しかけるようになりましたね。ネタはみんなオモロいし、出てくる力はあるから、お互い刺激し合うと、今後の劇場の盛り上がりにもつながっていくのかな、と思います。
俗に言う「オールマンゲキ」やな。
そうなんかな(笑)。
生まれ変わっている瞬間なので、お客さんには、その目撃者になってほしいですよね。
そうですね。正直、お客さんも戸惑っていると思うんですよ。僕らは何回も経験していますけど、劇場が変わったときってぎこちなくなるのは仕方ない。絶対にでき上がってはくるので、今、見といたほうがいい劇場やと思います。

『オールマンゲキTOKYO』第一部でMCを務める例えば炎×金魚番長のインタビューは、こちら。第二部でMCを務めるカベポスター×エバースのインタビューは『お笑いナタリー』で公開中!
『オールマンゲキTOKYO~漫才劇場×渋谷×森ノ宮×神保町の4劇場から大集結!巻き起こせマンゲキ旋風~』
2025年8月13日(水)
第一部(MC:金魚番長&例えば炎):開場11:30/開演12:00/終演14:00
第二部(MC:カベポスター&エバース):開場14:30/開演15:00/終演17:00
第三部(MC:ツートライブ&アイロンヘッド):開場17:30/開演18:00/終演20:00
会場:IMM THEATER
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