TBSアナウンサー田村真子、社内で「アナウンサーっぽくないね」と思われる理由とは?【明日の朝はどんな朝?】

文・撮影=田村真子 編集=山本大樹


TBS『ラヴィット!』でおなじみの田村真子アナウンサーが日々の悩みや心の動きを徒然なるままに語るエッセイ連載。大好評だった「『ラヴィット!』日誌」からおよそ2年、田村アナが『Quick Japan』に帰ってきました。入社7年目、中堅会社員として大奮闘する田村アナの日常をお届けします!

今回は、昔から「アナウンサーっぽくないね」と言われてきた田村アナが、仕事をする上での「〇〇っぽさ」という価値観について考えます。お祭りやイベント事が特別好きなタイプでもないけれど、テレビ局にはそんな人だっているのです。

本連載はQJ&QJWebで毎月連載中! 次回は『Quick Japan vol.177』(4月9日発売)に掲載します。

少し特殊な職業の親を持つわりには……

地元松阪市のブランド大使になりました
地元・松阪市のブランド大使になりました

おかげさまでこの連載の原稿を書くのも8回目。毎回書きたいことがあれば自らテーマを決めて書くようにしているのですが、思いつかなかったときは担当編集の方に助けていただきます。そんな担当の方と先日やりとりをするなかで「変わっていると言われることはありますか?」とヒントをいただきました。

どうでしょう、みなさんは人生で「変わっているね」と言われたことはありますか?

人に対して「変わっている」と思うのって結局、個人の主観によるものだと思うので、そのとき所属している集団によっても「普通」は違うと思います。校風や社風というものが世に存在するように、この世界の常識が外の世界の非常識みたいなこともありますよね。

私は自分で自分をわりと普通だと思っているタイプです。何をもって普通なのかって、あまり定義づけしにくいと思うのですが……。中高時代は「少し特殊な職業の親を持つわりには普通だね」ということで、「普通」と言われることが多かったのです。

でもそれも地元で6年間、同じ環境で教育を受ける中高一貫校内での「普通」なので、世間の普通から乖離している可能性もあります。

でもまぁ「変わっている」とはあまり言われることなく大人になりました。

「田村さんはアナウンサーっぽくないね」

大分に行ってきました
大分に行ってきました

しかし就職してから、この業界にいると「変わっている」ではないのですが「珍しいね」と言われることがたまにあります。これは意味的にはほぼ同じだと私は思っているのですが、自分でも言われて初めて「あーそうなのか」と気づいたわけです。

というのも、会社での上長との面談でのこと。うちの会社では、特に話すことがなくとも定期的に上長とコミュニケーションを取る時間が設けられています。

今の仕事のことや今後のこと、会社のことについてなどほぼ雑談のような感じでいろいろな話が出るのですが、そのひと幕でこの「珍しいね」が出たのです。要は「アナウンサーの人にしては珍しいことを言うね」という意味でした。

思い出すと、数年前にも当時の別の上司との面談で、なんの話をしていたのか覚えていませんが「田村さんはアナウンサーぽくないね」と言われたことがありました。そこでも「え、私、みんなとちょっと違うんだ」と思ったわけです。たぶん日常で普通に接しているぶんには特に変わったことはないのだと思いますが、長年会社にいていろんな人を見てきた上司ならではの感想だったのでしょう。

アナウンサーっぽい気質の定義が何かは未だによくわからないのですが、テレビ業界はよく「毎日が文化祭のような職場です」と表現されます。でも私は文化祭で特別張り切るタイプではないしなぁ……。毎日、文化祭をこなせるような体力気力のある学生では到底ありませんでした。

たしかに特にお祭りやイベント事が好きなタイプでもないのにテレビ局に入った時点で、私は「THE・テレビ」なところからは外れているのかも。

だがしかし、今はどこの会社も多様な社員を求める時代ですからね、違ったタイプが数人いても組織にとってはいいことだろうとポジティブに捉えています(笑)。

きっとまわりとタイプが違うからこそ自分にしかできない仕事もあるし、気づけることもあるはず。

そういえば少し前に仲のいい友人から、会社の飲み会の企画で全員のMBTIを調べたら、自分のMBTIが部署内では少数派で、なんだか肩身が狭かったという話を聞きました。

たしかに職種や部署によって「こういうタイプの人が多い」というような傾向はあるだろうし、MBTI診断でも向いている職業がいくつか出てきます。ほかの仲間と明確にタイプが違うことがわかれば、自分がそこに紛れ込んでしまったようで不安も感じますよね。

友人の話を聞いたときは「へー、そうなのかー」ぐらいにしか聞いていなかったのですが、今思えば自分も同じようなことになっているではないか。

その友人にもう少しかけてあげられる言葉があったのではないかと今思っています。

ビリビリを受けても笑顔でいるのは難しい!

湯布院のレトロ館、楽しかった!
湯布院のレトロ館、楽しかった!

アナウンサーがニュースを読んでいる姿を見ていても、その人の「らしさ」ってあまりわからないと思いますが、『ラヴィット!』を見ているみなさんの目に私はどう映っているのでしょうか。

もちろんアナウンサーとして画面に出る上での清潔感や品というのは意識していますが、たしかにビリビリを受ければ、テレビなど関係ないリアクションを私はたまに取っています。世の中の「アナウンサーらしさ」がどういうものかは人によると思いますが、それを意識するならば、もしかしたらもっと笑顔の延長線上のような爽やかなリアクションのほうがいいのかもしれません。

でも私はほぼ素のリアクションです。中には「アナウンサーなのにムッとした表情をするな」などと言う方も一部いらっしゃると思いますが、バラエティでは自分の感情ぐらい出させておくれよと私は思います。この世間から求められる万人受けする「アナウンサーらしさ」というものに戸惑うことは、この仕事をしている誰しもが経験しているでしょう。

私も等身大の素の自分が出てくる今の仕事のやり方が正解なのかどうかはわかりません。

そしてこの仕事に向いている人間なのかもわかりません。というか『ラヴィット!』ではアナウンサーらしく振る舞う余裕がないだけですが……。

人が思う「◯◯らしさ」「◯◯っぽさ」というのはその仕事を始めたばかりのころは何かひとつの標準、ヒントとなる気もしますが、それって周囲や世間の持つふわっとしたイメージでしかなく、仕事をしていくなかで必ずしもぴったりそこにハマりにいく必要はないのでは?と思います。

でもなかなかありのままの自分で勝負するというのは難しいですよねー。

アナウンスセンターにいるときが一番おしゃべり

誕生日は『ラヴィット!』でお祝いしてもらいました
誕生日は『ラヴィット!』でお祝いしてもらいました

これを読んでくださっているみなさんはどうでしょう?「◯◯らしく」振る舞わざるを得なかったりしませんか。私もなんやかんやでカメラの前ではそのひとりです。

でも自分のホームであるアナウンスセンターではありのままの自分でいられるので「アナウンサーらしくない田村」がより出てくるんでしょう。そんな戻ってくる場所があるのは幸せなことです。ここに戻ってくるアナウンサーはみんな思い思いに過ごしているのですが、私はいつも庶務の人や上司とおしゃべりしています。今日の放送のこと、そのときテレビでやっているグルメの話や世間話、最近家の洗濯機の調子が悪いやらなんやら……

毎日カメラやマイクの前でしゃべることを仕事としていますが、たぶんアナウンスセンターにいるときが一番流暢にしゃべっています(笑)。

そして先日、昔「アナウンサーぽくないね」と言われた元上司に久々に会った際に「その普通さを大事にこれからもがんばっていってね」と言葉をかけてもらいました。

私は、やっぱり普通だったのか。

「らしくない」私ですが、「らしさ」に縛られずに、きちんと仕事ができる日を目指してこれからも毎日精進します。

みなさんからのお祝い、うれしかったです
みなさんからのお祝い、うれしかったです

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田村真子

(たむら・まこ)TBSアナウンサー。1996年生まれ、三重県出身。2021年より『ラヴィット!』MCを務める。趣味は博物館、美術館に行くこと。

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