ラブレターズ、第七世代ブームの裏で低迷し続けた6年。脱出のカギは「おじさんであると受け入れたこと」【1万字インタビュー後編】
『キングオブコント2024』で優勝したラブレターズ。2011年、当時最年少で『キングオブコント』ファイナリストになるも、優勝までの道のりはけっして順風満帆ではなかった。そんなふたりの半生を振り返る1万字インタビュー。
後編では、若手が憧れる仕事を次々と経験するなど順調だった20代から、下の世代の台頭により始まった低迷期、そして39歳で『キングオブコント』王者に輝くまでの苦悩を語る。
【前編】放送作家&俳優に憧れ出会ったふたりが、コント師・ラブレターズになるまで。「結成当初はテレビで放送できないアングラ演劇のようなネタばっかり」
ラブレターズ
溜口佑太朗(ためぐち・ゆうたろう/1985年1月19日生まれ、埼玉県出身)と塚本直毅(つかもと・なおき/1984年12月28日、静岡県出身)によるコンビ。2009年4月に正式にコンビを結成、『キングオブコント2011』で決勝初進出、『キングオブコント2024』で優勝
第七世代ブームの裏で地獄の6年間
──『キングオブコント2011』で決勝に初進出したあと、芸人としての活動は順調に?
塚本直毅(以下、塚本) とにかく歌やラップではないネタで、もう一回『キングオブコント』の決勝に行くことを目標にネタを作ってました。
溜口佑太朗(以下、溜口) お仕事としては、2013年にフジテレビで『バチバチエレキテる』というコント番組が始まったり、2014年は『ラブレターズのオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)をやらせてもらったり、20代の若手芸人としてはかなり順調だったと思います。
塚本 この期間に、若手が目指す芸人の仕事はもうほとんどできたくらいの感じでした。
溜口 正直、若手としてキラキラしてましたよ。
──そして『キングオブコント2014』で、2度目の決勝進出と。
塚本 せっかくのチャンスだったのに、ファーストステージで敗退でした。
溜口 でも2回決勝に行けたことで、それなりに自信もついて、この年はそこまでは落ち込まなかったんです。次の年の『キングオブコント』は準決勝で負けちゃいましたけど、その次ではまた決勝に行けましたし。
塚本 3度目の決勝進出、この2016年が勝負の年だったのに、結果が最下位で。
溜口 このときは落ち込みましたね。『バチバチエレキテる』も『オールナイトニッポン』も終わっていて、レギュラー番組もない、3度目の『キングオブコント』決勝は最下位。ここでいったんやりきった感というか、出し尽くした感がありました。
塚本 しかも、ずっとライブで一緒だった人たちが結果を出し始めて。かもめんたるさんは『キングオブコント2013』で優勝、さらば青春の光も『キングオブコント』決勝の常連で、準優勝もしている。置いていかれたような気分だったよね。
溜口 うん、そうね。僕らはテレビのバラエティで活躍できるタイプではないのに、『キングオブコント』でも勝てなかったら、もう打つ手がない感じ。
塚本 さらに、2017年からは決勝どころか、準決勝にすら行けなくなって。そこから6年間、地獄の始まりです。
溜口 中途半端に知名度があるのでフレッシュさもないし、年齢も30代になってるし、なにより2018年に霜降り明星が『M-1グランプリ』で優勝してからは、一気に第七世代ブームが来て、完全に僕らの需要がなくなった感じはしましたね。
塚本 やってることは変わらないのに、風が吹いてないのを肌で実感できました。
同世代の芸人たちが次々と辞めていくなかで生まれた『光』
──低迷期は何を支えにして、続けてこられたのでしょうか。
塚本 南海キャンディーズの山里(亮太)さんやオードリーの若林(正恭)さんがラジオで僕らのことを話してくれたり、佐久間(宣行)さんやテレビ東京の板川(侑右)さんが番組に呼んでくれたり、沈みそうになると「ここで辞めたらダメだ」と思えるようなことが起きるんですよね。
溜口 2015年と2016年には、かもめんたる・さらば青春の光・ラブレターズの3組で『円山スクランブルエッグス』というユニットコントをやったりね。
塚本 そういうことが息継ぎになって、どうにか沈まずに済みました。息継ぎが一回でも少なかったら沈んでたと思います。あの時期、つらかったのは僕らだけじゃなく、第七世代ブームの裏で、一緒にライブハウスでネタをやっていた同世代のコンビも不遇の時代で、みんな次々に芸人を辞めていったんですよ。残ったのはウエストランドとラブレターズくらいで。
溜口 僕らが辞めなかったのは、毎年のように手応えのあるネタができていた、というのも大きいですね。売れてはないし、そんなに人気もないけど、新しくできたネタだけは手応えがあったんです。
塚本 それこそ、どんぐりをぶちまける『光』というタイトルの『キングオブコント2024』で優勝したネタは、この時期、2017年の単独ライブで披露しているんです。なので、作風とか好きなものが変わったわけではないんですよ。
溜口 変わったといえば、その2017年の段階では、僕ら32歳とかなので、まだフレッシュな若手のつもりでネタやってるんですよね。
塚本 年齢的に若手でもなく、かといっておじさんの風格もない、中途半端な32〜35歳くらいが一番きつかったかもしれないです。
溜口 それが35歳を過ぎた2020年くらいから意識が変わってきたのかな。
塚本がパイプ椅子を投げつけ「槙尾になれよ!」
──つらかった時期に、おふたりの間で関係性の変化などはありませんでしたか。
塚本 バラエティでなかなか活躍できないときとかに、溜口さんのおもしろさをわかっているからこそ、溜口さんがもっと必死になってポテンシャルを発揮してくれれば、もっとちゃんとハネるのに、とかは思ったことはありましたね。でもそれは、本当にそう思っているのではなく、先の見えない真っ暗なトンネルの中にいたので、メンタルがおかしくなっていたからで。
溜口 一度だけ大げんかしたことがあって。単独ライブの1週間くらい前、もうネタの変更ができないタイミングで、僕が「ここはこうしたほうがいい」とかっていろいろ注文したら、塚本さんがパイプ椅子を投げつけて、「槙尾になれよ!」って。
塚本 かもめんたるの槇尾(ユウスケ)さんのことです。槇尾さんは(岩崎)う大さんに従順なので。
溜口 それで僕も反省して、ネタは塚本さんに任せようって決めて。
──7年ぶりに決勝進出した『キングオブコント2023』は、もうここで優勝するしかない、という心持ちで?
塚本 はい、めちゃめちゃ優勝する気でした。
溜口 ラストチャンスくらいの気持ちで行きましたから。
塚本 でも結果は6位でした。
溜口 ただ、2023年の『キングオブコント』は、優勝こそできなかったけど、風向きは変わったんですよ。大会ではないけど、『ラヴィット!』(TBS)の「耳心地いい-1グランプリ」という企画で準優勝したり、『ゴッドタン』(テレビ東京)の「ネタギリッシュNIGHT」で優勝したり、なぜか勝てるようになって。
塚本 今までそんなことなかったのに、2023年はやたら番組の企画で優勝とか準優勝できるようになったんです。
溜口 企画で優勝するってことは、番組で活躍できたってことだから、それでだいぶ勢いがついて、2024年の『キングオブコント』に向かえました。
塚本 『キングオブコント2024』のときには、もう自分たちがおじさんであることを完全に受け入れて、その上で夫婦の役を演じていたので、ネタ自体は同じでも、仕上がりの質感が2017年とはだいぶ違っていて、そこもプラスになってね。
溜口 あとは、塚本さんが持ち味であるキモさをだいぶ自分でコントロールできるようになってきたのも、ひとつ前進したポイントなのかなとも思います。まわりにもキモいキャラとして認知されて、自分でもだいぶ認められるようになって。
塚本 ほんとはそこまでキモいと思ってないけどな……。
コント師から“イジられシークレットシューズ芸人”へ
──2017年から続いている、溜口さんが主役と演出を務める『溜口スーパーショー』についても聞かせてください。
溜口 もともとトークライブの延長くらいの企画で始めたのが、だんだん規模が大きくなって、今では事務所総出で出演していただいて、会場も広くなって、自分でもなんでこんなことになっているのかわからないですよ。
塚本 ラブレターズの単独ライブは徐々に売れてやっと完売する感じなのに、『溜口スーパーショー』は即完します。
溜口 お客さんに求められていることは強く感じますけど、僕としてはそんなに期待しないでほしい。あくまで余興ですから。
塚本 そのくらい肩の力が抜けているのが、かえっておもしろいと僕は思っているので、これからも続けてほしいですけどね。
──ラブレターズとしては、これからは、どんなことをしていきたいですか?
溜口 コント師のイメージがあまりに強いので、トークとかリアクションとか、お笑い芸人としての仕事をたくさんやりたいです。塚本さんも体張りますし。
塚本 イジられるためにシークレットシューズも履いてますし。
溜口 生粋のコント師みたいに思われて、バラエティの芸人仕事はやりたくないんだろうなって勘違いされちゃうんですよね。でも実際、僕ら全然そういうタイプじゃないんですよ。
──最後に、それぞれ相方に望むことは?
塚本 リーダーは溜口さんなので、優柔不断な僕ができない決断をバンバンして、ラブレターズを引っ張っていってほしいです。
溜口 塚本さんはこう見えて、大きくいうと時代の流れとか、細かくは会場のお客さんの雰囲気とか、そういう空気を読むのがうまい。なので、これからラブレターズが次の段階に行くことになったら、その能力をさらに発揮してほしいですね。
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