タモンズ、忘れたい時代が映画化「人生捨てるとこない」和田正人×駒木根隆介×タモンズ対談
大宮ラクーンよしもと劇場を拠点に活動しながら、長年くすぶり続けてきた芸人たちによるユニット・大宮セブン。劇場の観客数も増えず、賞レースでも結果を残せない。そんななかでも芸人としての成功を目指し苦悩した彼らの姿を描いた映画『くすぶりの狂騒曲』が12月13日(金)に公開された。
作品の軸として描かれたのは、大波康平、安部浩章によるコンビ・タモンズの軌跡。モデルとなったタモンズのふたりと、大波を演じた和田正人、安部を演じた駒木根隆介に話を聞いた。
目次
体内リズムが似ている? タモンズ安部を演じた駒木根隆介
──和田さんと駒木根さんは今回タモンズのふたりを演じてみて、“芸人”という職業の見え方は変わりましたか?
和田正人(以下、和田) この映画って表以上に、裏側を描いているんです。だから、役者とはまた違った、芸人さんならではの苦悩がたくさんあるんだなと思いましたね。褒め言葉にならないかもしれませんが、大波さんはすごくまじめな方だなと思いました。苦しんで、努力もされているし。
大波康平(以下、大波) いや、うれしいですよ。
和田 どちらかというと、大波さんから見た安部さんのほうがヤバいという印象でしたね(笑)。
安部浩章(以下、安部) 実際は大波さんのほうが人間的には欠落してますけども。僕は至って常識人で。
和田 常識人が「熟成肉詐欺」(※かつて安部が引っかかった、肉牛を共同購入するという投資詐欺)に引っかかりますか!?
駒木根隆介(以下、駒木根) それはピュアだから!
和田 「これ本当の話ですか」と確認しましたもん。でも、撮影中にプロデューサー(元・大宮ラクーンよしもと劇場支配人)の知り合いが同じような詐欺に遭ったらしくて。
安部 うわ、その人にお会いしたいです。一緒の牛買うてたんかな。
駒木根 (笑)。僕たち俳優は物語や演じるキャラクターがないと成り立たない職業じゃないですか。でも芸人さんは自分たちの好きなもの、おもしろいものと、とことん向き合う。そこはすごく尊敬します。僕は安部さんを演じてみて、すごく共感する部分が多くて。
安部 ですよね! 畑が一緒という感じがします。
駒木根 ええ。僕は安部さんと体内リズムみたいなものが似ているんじゃないかと。
自宅のスタンドマイクで「ネタ合わせ」
──タモンズのおふたりは、映画の中のタモンズをご覧になってどう思われましたか?
安部 最初におふたりの漫才を観たときはびっくりしましたよ。
大波 いや本当に。
駒木根 ……実際のとこ、どうでしたか? 僕らの漫才。
安部 和田さんが先導して、駒木根さんが間にスポンスポンと入る。その“間”の取り方が、完全再現されてました。
和田 よかった。
──タモンズさんが直接指導されたわけではないんですか?
駒木根 撮影前に大宮セブンライブをキャストみんなで観に行って、ごあいさつはさせてもらったんですよ。それだけで。
──では、あの漫才はどうやって?
和田 ネタの脚本を文字起こししたものが4本分くらいあって、あとは映像を参考に。我が家にカラオケ用のスタンドマイクがあるんです。だからふたりでうちに集まって、それをサンパチマイク代わりに練習しました。
大波・安部 すご!
駒木根 僕らとしてはあまり完全再現は目指してなくて。
和田 練習するときも、自分たちでかけ合いをしてみて「今の間はもうちょっと詰めたほうがいいな」「ここもうちょっと駒ちゃん大きく動いてみようか、マイクからも少し外れて」と、自分たちで作っていきました。
楽屋で誰と誰がしゃべっているか
──実際に撮影していて、印象に残っているシーンはどこですか?
和田 ふたりで道路を挟んで走りながらネタを言い合うシーンがあるんですよ。40代でああいうシーンをやるのは本当にはずかしいんですよ(笑)。こういうのは20代から、いいとこ30代前半までなんです。
大波 いやいや、タモンズを演じるならあれやらないと。普段からああいうネタ合わせしてますから(笑)。
駒木根 いや、でも和田さんは陸上されてたから、長く走っても全然体幹もブレないし。俺なんてもう……(笑)。
──駒木根さんが印象に残ったのは?
駒木根 オープニングで、ライブが終わってみんなが楽屋に帰ってくるシーンがあるんです。ああいうところって地味ですけど、実はすごく大事で。誰と誰がしゃべっていて、どういうふうに座って、という部分でウソがないようにしたい。でも、僕らは大宮セブンさんの楽屋の様子は知らないから、みんなで想像して、「じゃあここで福井(俊太郎、GAG)さんと南條(庄助、すゑひろがりず)さんがしゃべって」とか作っていったんです。
和田 あの人数を監督が全部演出していったら時間がかかるじゃないですか。でも大宮セブンを演じたキャストのみなさんが「こことここが仲いいらしい」とかを自分で調べて来られて。
大波 うわ、そんなことしてくれてたんですか。
駒木根 調べた情報プラス、現場で動いてみて決めていって。和田さんと「モノマネにはしたくないから、映画の中でのみ存在する、オリジナルの大宮セブンとしていられればいいよね」とよく話してました。今回、大宮セブンを演じたキャストのみんなは、すごく積極的にそういうコミュニケーションを取って、高いモチベーションでそれぞれの役に取り組んでいた。おかげでいい関係性を作れたなと思います。
つらさを笑いに変える大宮のリアル
──タモンズのおふたりは、映画を観て特にどのシーンが印象に残っていますか?
大波 僕らが最後の『M-1グランプリ』に落ちたシーン。楽屋ではみんな話そらすのに舞台上でめちゃくちゃイジってくる、あの感じがめっちゃ大宮セブンやなと思いましたね。大宮セブンのみんなも何度も落ちてきた人たちだから、しんどさを知ってる。だから裏では触れない。でも、表では笑いのためだけに存在してるから、笑いを取りにいく。あれで救われるのが大宮セブンなんですよ。つらい部分って普通はフタしがちですけど、そこを出してこそというあのシーンには大宮セブンを感じましたね。
安部 僕は、駒木根さんが家でカレーを食べてるシーン。スプーンをくわえながら給与明細を見るところ、「すごい! 俺、これやってそう!」と思ったんですよ。
大波 ただ、あのシーンで給与明細、3枚あったでしょう。3枚あったら、こうやって(※目を細め、重なっている紙の右下を少しずつめくるようにして)明細を「絞る」んですよ。吉本の明細って右下に額が書いてあるから。
全員 (笑)。
安部 あと、3枚あるときはそこそこ稼いでるときなんですよ。
大波 そう、けっこういい。
安部 リアルは1枚なんで。
大波 カレー食いながら明細見るなんて余裕あるなこいつ、って思いましたね。
和田 そういう話、撮影前に聞きたかったですよ!
駒木根 本当に!
和田 大波さんがもみあげ触りながらしゃべるとか、そういうファンの方だけがわかってくれるような仕草も入れたかったんだよなあ。
囲碁将棋を「入れる」多摩川のネタ合わせ
──タモンズさんはもちろんのこと、大宮セブンの面々それぞれ本人かと思うような瞬間がありましたし、大宮セブンライブのシーンは実際のライブのような空気感でした。
和田 撮影前の顔合わせのときに、それぞれのコンビ、トリオでネタ見せをやったんです。そのあとに「大宮セブンライブの練習をしましょう」となって、脚本の中村(元樹)さんから与えられたお題に対してゲーム的なことをやっていきました。当然、芸人さん役のための練習なので、正解とか勝つこととかが目的じゃなくて、わざと間違えたり、ボケたりとか。まだ役に入る前ですから、連携というよりは各々でやるんですけど、それでも思いのほかおもしろくて。
大波・安部 へー!
和田 監督が「役者ってすごいな」と言ってくれて。もうそのまま、この俺たちがライブでやることを大事にしましょうと。この作品はタモンズさんが主役ではありますけど、「大宮セブンの映画」なので、大宮セブンライブのシーンは集大成なわけですよ。台本はもちろんあるんですけど、いかにライブっぽく見せるかを大事にしようと。だからあのシーン、一発撮りなんです。お客さんも実際入れて、噛んでも止めずにアドリブも放り込んでみんなで作り上げました。
駒木根 それぞれのコンビ、トリオは顔合わせまでにかなりしっかりネタをやっていて。囲碁将棋さんを演じたふたり(東虎之丞、柾賢志)なんて、多摩川の土手でずっとふたりで漫才の稽古を。しかも、絶対使われない『THE SECOND』でやったネタまで練習していたんですから。
大波 多摩川でやると、やっぱり囲碁将棋(※ともに神奈川出身)が身体に入るんですね。
和田 多摩川で大声で練習しすぎたせいか、ネタ見せのときに「芝居がでかい」と一番ダメ出し食らってました(笑)。
駒木根 みんなが自主的なモチベーションの高さで臨むのはすごく幸福な現場だなと思いました。大宮セブンは続いていきますけど、映画の中の大宮セブンはもう撮影が終わったら二度と集まらないので、撮影が終わるときはすごく切ない気持ちになりました。
和田 今年の『M-1グランプリ』の日は、みんなで集まって観戦会しようって話してます。
安部 めちゃくちゃ芸人やないですか!
演じたのが決勝に行く前のタモンズだからよかった
──映画の撮影は昨年だそうですが、ということはタモンズさんが『THE SECOND』決勝に行く前ですよね。
和田 そうなんです。だから『THE SECOND』決勝進出は「まさかそんなことある!?」と驚きました。公開に合わせてちょっと売れようとしてるじゃん、と(笑)。
安部 少しは売れさせてくださいよ(笑)。
和田 安部さんって、昔と今では動き方とか全部違って、『THE SECOND』を観た駒ちゃんが「ああいうのやりたかったな」「安部さんめちゃくちゃおもしろいじゃないですか!」って。
駒木根 めっちゃうれしかったけど、同時に悔しくて。もし撮影前にこれが観られていたら、もっと違うタモンズが演じられたかもしれないって。でも和田さんは「その前のタモンズだから映画ではよかったんだよ」と言ってくれたんですけど。
大波 だってこれ、我々からしたら一番思い出したくない時期、忘れたい時代が描かれてますからね。
安部 ネタも、「こんなもんウケるか」というやつをやっているときですから。
大波 でもそんな時期が映画になるって、人生捨てるとこないんやなと。ホルモンみたいですよね。
安部 それは思いますね。ほんまにお笑いがあんまり楽しくなかった時期が映画になるなんて、わからんもんですよ。
和田 あれだけくすぶっていた人が『THE SECOND』でこんなに活躍したというのは、若手芸人さんの背中をめちゃくちゃ押すんじゃないかな。
安部 まだそこまでドーンと売れたわけじゃないですし、まだまだこれからですけど、今年『THE SECOND』でベスト4になってほんまによかったなと思いますね。和田さんと駒木根さんにわけわからん芸人の役を演じさせたままじゃなくなって。
大波 そう、そこめっちゃ罪悪感あったんですよ。だって「あなた毎日毎日撮影に行ってるの、今何役なの?」って聞かれて、奥様に説明できないじゃないですか。
安部 「誰演じてんねん!」と言われるじゃないですか。
和田 いやいや(笑)。妻もタモンズさんの活躍をめっちゃ喜んでましたよ。
駒木根 こんなにもほぼ同世代でリアルにいらっしゃる方を演じて、しかも撮影から公開までの1年で状況が変わっていくって本当に珍しいことだったので、本当に楽しかったですね。
大波 実は今年、トットさんという大宮セブンではないけど、ほぼ大宮セブンにいるようなコンビが、『M-1グランプリ』ラストイヤーで準々決勝敗退しまして。だから次は、トットさんで映画撮ってもらっていいですか?
『くすぶりの狂騒曲』
2024年12月13日(金)より新宿バルト9、イオンシネマほか全国ロードショー
出演:和田正人、駒木根隆介、辻凪子、土屋佑壱、永瀬未留/徳井義実(チュートリアル)、岡田義徳ほか
監督:立川晋輔
脚本:中村元樹
主題歌:河口恭吾「悪い恋人」(よしもとミュージック/ミラクル・バス)
配給:イオンエンターテイメント、吉本興業
(C)2024「くすぶりの狂騒曲」製作委員会
『タモンズ単独ライブ「DEADSTOCK」』
日時:2025年1月22日(水)18:15開場/19:00開演
会場:座・高円寺2(杉並区高円寺北2-1-2)
出演:タモンズ
チケット料金:前売4,000円/当日4,500円 ※オンライン配信も実施予定
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