ENHYPENが並外れた“美”と“没入力”を見せつけた210分「ツアー初日、埼玉でいいスタートが切れました」
コロナ禍の2020年にデビューしたにもかかわらず、唯一無二の魅力と多様な活動を通して、K-POPボーイグループでも異例のスピードで世界中でファンを獲得し続けている7人組グローバルグループ「ENHYPEN(エンハイプン)」。
そんな彼らの全国5都市11公演に及ぶツアー『ENHYPEN WORLD TOUR ‘FATE PLUS’ IN JAPAN』が、6月11日にさいたまスーパーアリーナでスタートした。同日の公演を会場で観たライターは、「ENHYPENは美しい」「7人が並外れた没入力を持っている」と感じたという。
約3時間半という短くない時間にもかかわらず観客を惹きつけ続けたという、ENHYPENの日本ツアーの初日公演をレポートする。
目次
麗しく、穢れなく、純真──ENHYPENは美しい
来たる6月11日、ENHYPENの全国5都市11公演に及ぶ『ENHYPEN WORLD TOUR ‘FATE PLUS’ IN JAPAN』(以下『FATE PLUS』)が封切られた。本公演は全世界13都市21公演で計32万7000人以上を動員し、東京ドームでのライブも果たした『ENHYPEN WORLD TOUR ‘FATE’』(以下『FATE』)の反響を受けて開催が決定。韓国・ソウル、アメリカ5都市を巡り、いよいよ日本へやってきたのだ。
セットリストは、『FATE』の内容をベースに構成。そのため、MCでNI-KIが「この前のツアーとあまりセットリストが変わってないので、ちょっと飽きちゃったんじゃないかなと思うんですけど、それでも前回のツアーよりパワーアップしたENHYPENの姿をお見せできていたなら幸いです」と漏らすひと幕もあったが、その心配は杞憂だったように思う。なぜならステージに立つ彼らは、成長をまざまざと魅せつけただけに飽き足らず、作り込まれた芸術は揺るぎないことを証明していたからだ。
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スクリーンに映るMVに合わせて声が鳴り響き、ペンライトが煌めく場内は、すでに準備万端といった様子。次第に暗くなっていく照明は、オーディエンスのワクワク感を掻き立てる。「Sweet Venom」の映像が消え会場が暗闇に包まれると、ひと際大きな歓声がさいたまスーパーアリーナを満たした。さあ、ショータイムの幕開けだ。
貴族の晩餐会に血のイメージが重なっていくような麗しさと不穏をかけ合わせたVCRを経て、メンバーがひとりずつ登場。全員が出そろいステージへ歩みを進めると「Drunk-Dazed [Japanese Ver.]」を投下し、磨かれたパフォーマンスでオープニングから魅了していった。
ステージに立つ彼らを生で観て改めて感じたのは、「ENHYPENは美しい」ということだ。もちろん、ビジュアルが洗練されているのはいうまでもないが、まとっている空気が一貫して「美」なのである。麗しく、穢れなく、純真。「Let Me In(20 CUBE) [Japanese Ver.]」で色気を香らせたとしても濁ったいやらしさは感じさせないし、「Flicker」で漂う力強さも暴力的なパワーではない。
澄みきった心の表れなのかと思わずにはいられない、曇りのなさが彼らにはある。それでいて楽曲の秘めたる温度を、一つひとつの声で、動きでしっかりと伝え抜く。「Still Monster」での細かなニュアンスに込められた美意識よ。指の先まで意識されたモーションは、一切妥協しない姿勢を静かに物語っていた。
作品の持つ物語を拡張する“並外れた没入力”
心臓がバクバクと脈打つVCRを挟み、メンバーは貴公子からB-BOYのルックへチェンジ。ガラッとテイストが変わった衣装を難なく着こなし、先ほどまでとは違うジャンルの楽曲も難なく乗りこなしていく。さすが「圧倒的コンセプト消化力のENHYPEN」。どんなテーマでも即座に対応できる柔軟さを持ち合わせているとは思っていたが、ライブを観ていくなかで、もうひとつ特筆すべき点に気づいた。それは、7人が並外れた没入力を持っているということである。
パフォーマンス中に、メンバーが楽曲の世界観から落ちてしまう瞬間がまったくといっていいほどないのだ。どんなときでも作品にあった表情を選び、歌声を乗せ、情景を描く。世界観を維持し続ける没入力が、高いコンセプト消化能力と結びついているのだろう。「Attention, please!」でJAYがギターヒーローたる一面をのぞかせたかと思えば、「Tamed-Dashed [Japanese Ver.]」でHEESEUNGは笑顔を煌めかせる。それぞれの魅力を楽曲にかけ合わせ、作品の持つ物語を拡張していた。
前半の最後には、ふた組に分かれてユニットコーナーを展開。JAY、JAKE、SUNGHOON、SUNOOによる「TFW(That Feeling When)」では、JAYがアコースティックギターを優しく爪弾く。続くJUNGWON、HEESEUNG、NI-KIの3人は、HEESEUNGがピアノを奏でて「Just A Little Bit」をパフォーマンス。曲の最後には7人がそろい、ENGENE(ENHYPENのファンネーム)のスマートフォンのライトが輝くなか、丁寧にまっすぐに言葉を紡いでいた。
SUNOO「ENGENEのみなさんに片思いをしている」
『FATE』ではバスの形を模したトロッコに乗り、アリーナを外周したENHYPENだったが、なんと今回は客席降りが実現。「Polaroid Love」を歌いながら、通路を練り歩いていく。手の届く距離にメンバーがやってくるという予想していなかった演出に、思わずENGENEは大興奮。外周を巡る7人もうれしそうで、ファンとハイタッチしたり、一緒に手でハートを作ったり、楽しそうに交流していた。
音楽プロジェクト「Pokémon Music Collective」から生まれた「One and Only」では、6匹のピカチュウが応援に駆けつける。ピカチュウと一緒に歌い、ステップを踏み、戯れている光景はピースフル。パフォーマンスが終わったあともJUNGWONはピカチュウの手を引き、フロントステージまで優しくエスコートをしていた。
ENGENEが楽しみにしているプチコーナー。この日、サプライズステージの主人公となったのはSUNOOだ。「僕がENGENEのみなさんに片思いをしているという意味で、うまく歌えるんじゃないかなと思った」という理由から、冨岡愛の「グッバイバイ」を選曲。スクリーンに映る映像もSUNOOが手作りし、ちょっとでも多くENGENEに想いを届けようと透き通った歌声を響かせる。メンバーも穏やかな視線で、その姿を見届けていた。
SUNGHOON「ENGENEのみなさんと素敵な思い出を一緒に作っていけるように」
マイクを手持ちからヘッドセットにチェンジし、「Go Big or Go Home」で最終セクションへのギアを踏み込む。もはやライブも終盤に差しかかっているというのに、7人にバテている素振りは一切ない。ダンスブレイクでは、飛んで跳ねてステップを踏んで。前半と変わらぬ身軽さで魅せていく。
「Chaconne」の冒頭をNI-KIのソロダンスで封切ると、いよいよライブはラストスパート。色っぽい振り付けの「CRIMINAL LOVE」では、一つひとつのモーションに黄色い歓声が炸裂。SUNGHOONは艶っぽいオーラを放ち、表情だけでENGENEの心を射抜いていった。
本編の最後を飾るべく、導かれたのは『DARK BLOOD』のタイトルソングである「Bite Me [Japanese Ver.]」。締めのMCで「最後のステージでもENGENEのみなさんの熱い応援、楽しみにしています」と話すJAKEに触発されたのか、会場には歓呼の声が盛大に鳴り渡る。コール&レスポンスの息もぴったりで、ENHYPENとENGENEが心を通わせる美しいフィナーレとなった。
「321でENHYPENサランへと叫びましょう」と呼びかけるボードが映し出されると、特大の「サランへ」が会場を満たした。そして始まったアンコールでは、「Sweet Venom」「Orange Flower(You Complete Me)」「Karma」の3曲を披露。
最後のMCで、SUNGHOONは「『FATE PLUS』のツアー初日、埼玉でいいスタートが切れたような気がして、今とても穏やかな気持ちになっています。これからのツアーももっと一生懸命がんばって、ENGENEのみなさんと素敵な思い出を一緒に作っていけるようにがんばります」と語り、この日を晴れやかに振り返るとともに、ここから始まっていくツアーに向けて力強い決意を刻んだのだった。
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個人やグループとしての成長を刻むとともに、磨き上げられたパフォーマンスの朽ちなさを体現していた『FATE PLUS』。かげりのない佇まいと一心不乱に曲を表現する力があれば、変わらぬ演目であっても、約3時間半という短くはない公演時間であっても、人を飽きさせることなく惹きつけ続けられる、そう物語っていたように思う。
日本でのツアーは、福岡・広島・愛知・宮城と続いていく。新たな地で、さらなる感動を巻き起こすであろう彼らのさらなる進化が楽しみだ。
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