BKBが賞レース前説の極意を語る「爆笑させなくてもいい 広角を上げる 準備。BKB!ヒィーア!」(てれびのスキマ)

てれびのスキマ

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。

『見取り図じゃん』

「俺が語りたい以前、以後『M-1グランプリ』編」の後編。川瀬名人は、「『M-1』がストーリーとして見られるようになった」のはサンドウィッチマンからで、2015年以降で体現したのはマヂカルラブリーと持論を展開。土下座での登場はストーリーを意識的に利用したものだと語り、漫才だけで勝負したい川瀬にとっては「大きな声では言えないけど、僕としては好ましくない」と熱く語る。

そんな川瀬に「川瀬さん自身に感じるんですけど、こんなに『M-1』に熱い人が優勝するわけない」と痛いところをつくさや香・新山。「芸人としては負けフラグ」「マンガでいったら次の見開きで飛んでいってる」とつづけると、ロコディ堂前も「アニメ化したら絶対敵ですもんね」と笑う。それは自分でも自覚しているようで「すべての自分投げ打って悪の力を手に入れてめっちゃ強くなるけど、その反動で死ぬヤツ」と川瀬も自分を表現。このパラドックスが皮肉だし痺れるところで、それも「ストーリー」に組み込まれざるを得ないのもまた胸を揺さぶられるところ。

「BKBの前説以前、以後」という話題も。『M-1』には2015年以降、8年連続で、『キングオブコント』も7年連続、『THE W』も3年連続で前説を務めているBKB。『M-1』はレギュラー、BKB、くまだまさしのリレー形式で行い、出囃子も流れるそう。ウケるより「楽しい」を伝えるのが重要という信念を持ち、くまだまさしは「1組目がウケるまでが、前説の仕事」と言う。1組目が無事ウケると、グータッチや握手をする彼ら。「あの瞬間がたまらないですね」と言うBKB。「(B)爆笑させなくてもいい(K)広角を上げる(B)準備。BKB! ヒィーア!」。

『浦沢直樹の漫勉neo』

今回密着を受けたのは『アオイホノオ』の“熱血漫画家”島本和彦。彼は現在、父の家業を継いで社長業と漫画家の2足のわらじを履いている。会社には「テンションアップが売上UP」という島本らしい貼り紙。朝礼などを終え、「艦長室」と書かれた部屋に「さぁ、やるかー!!」とハイテンションで入っていくと漫画家モードに。浦沢「受け止め切れないですね、みんな。このテンションを(笑)」。

ネームにほとんど絵を入れない島本が「ギャグが効かなくなっちゃうんですよね、2回目って」とその理由を語ると浦沢も大きくうなずく。「口の大きさが的確」と浦沢に褒められると、自分では「ちょい大きいかな」と思っていると返し、「ちょっと小さいほうがキャラクターに恋愛感情を抱きやすい」とつづけると、浦沢も「あだち充さんは小さいもんね」と同調。このあたりの通じ合っている感じがとてもいい。

『Dr.クマひげ』を読んで泣いちゃったことがあるという島本は、なんで自分はこれで泣いたんだろうと考え「この秘密をいうと、みんながそのテクニックを使いますよね」と躊躇しつつ、その結論を明かす。目の下のラインがちょっと上にいってる。その演技が私の心にバキーンと入ってきた。「表情ってここの筋肉なんだ」と気づいたと。「それって……言いたくなかったーッ!!!!」と島本が絶叫すると、浦沢「案外みんな気づいてる(笑)」。

そんななかで「表情や演技が的確ってことに関しては、漫画界随一だと思うんですよ」と浦沢に絶賛されてうれしそうな島本がとてもよかった。

「『アオイホノオ』をやるときに、今までの全部の技を封印して『なんにもない話を描いてやろう』と思った。勝たない、いいことも言わない、話が終わりもしない、偉そうなことも言わないし、教訓もない、負けているだけ、空回りしてるだけ」という島本に対して「だけどちゃんと核に『負けてなるものか』の島本はいる。絶対不屈の島本がいるわけですよ」と浦沢。このふたりの会話に、『アオイホノオ』の魅力が凝縮されていた。

浦沢に対して「何言ってやがるッ! バシッ!!」と殴りかかるふりをしたり、一挙手一投足がマンガチックでおもしろい。浦沢からも「一番おもしろいのは島本和彦なんですよ」ときっと何度も言われたであろうことを言われ「それが問題なんじゃないですか!」と言う島本。「島本和彦主演のSFギャグ漫画を描くために生きていけばいい」と解決策を提示する浦沢に「島本はまだ出るんだね……」と苦笑いを浮かべる島本がやっぱり最高に魅力的だった。

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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2021年のテレビ鑑賞記録。

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1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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