写真を撮ることにこだわりを持つアーティストや俳優・声優による連載「QJカメラ部」。
土曜日はアーティスト、モデルとして活動する森田美勇人が担当。2021年11月に自身の思想をカタチにするプロジェクト「FLATLAND」をスタート、さらに2022年3月には自らのフィルムカメラで撮り下ろした写真をヨウジヤマモト社のフィルターを通してグラフィックアートで表現したコレクション「Ground Y x Myuto Morita Collection」を発表するなどアートにも造詣が深い彼が日常の中で、ついシャッターを切りたくなるのはどんな瞬間なのか。
米粒に埋もれる
第97回。
頭が回らない。
春の前触れか。
花粉症か。
ここ最近降り続く雨の気圧か。
おそらくそれらが引き起こす不安に心をつかまれている。
この日はスタジオで撮影だった。
気怠い身体に鞭を打ち、かゆい目をこすりながら天井を見上げると、不気味なカタチをした照明が今の私を表すように迫ってきた。

ぼやけた視界と破綻した思考回路。
輪郭の甘い悩みを延々に咀嚼している。
そんなことを感じているうちにこの照明が米粒に見えてきた。
そんな米粒に埋もれる私もまた、ちっぽけなひと粒か。
たいてい自分がちっぽけのように感じる瞬間といえば、荒野に降り立ったときや、山から見下ろす夜景など、広大な景色を眺めたときに起こるが、こんなにスッキリしない米粒現象は初めての感覚である。
あぁ上のほうの米粒はきっときらきら輝いてみんなに感動を与えているんだろう。
この埋もれてハリのない、むくれた米粒も食べてくれるだろうか。
食べてかゆみなんか出てしまったらどうしよう。
おれみたいな出来の悪い米粒はきっと長い海苔に巻かれながら一生を終えるのだろう。
せめて口のまわりに引っついて、誰かのお茶目を演出するひと役を買わせてくれ。
子供のころに父に教えられた、米粒には神様がいるんだよという話を思い出した。
本当にいるんだなと思った。
昼ご飯はひと粒残らず愛そうと決めた。
『Myuto Morita Exhibition “SIKI”』
2024.5.8 Wed.-5.13 Mon.
KATA(LIQUIDROOM 2F)東京都渋谷区東3-16-6
open 13:00-close 20:00 ※5.13 Mon.のみopen 13:00-close 18:00

NAOYA(ONE N’ ONLY)、中山莉子(私立恵比寿中学)、セントチヒロ・チッチ、工藤遥、RUI・TAIKI・KANON(BMSG TRAINEE)、森田美勇人、南條愛乃が日替わりで担当し、それぞれが日常生活で見つけた「感情が動いた瞬間」を撮影する。
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