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『スウィートビターキャンディ』が4年越しに公開。監督、出演者が振り返る撮影の日々「学生のころの夏の思い出みたい」

2022.7.14
『スウィートビターキャンディ』

文・編集=QJWeb編集部


第29回東京国際映画祭に出品された『太陽を掴め』、『女流闘牌伝 aki -アキ-』の中村祐太郎監督作の『スウィートビターキャンディ』の試写会が6月28日(火)、都内で開催され、中村監督、主演の小川あん、共演の田中俊介がトークセッションに出席。4年前の撮影の日々を振り返りつつ本作の魅力について語った。

4年前の撮影の日々を述懐

『スウィートビターキャンディ』
左から中村祐太郎監督、小川あん、田中俊介(C)MotionGalleryStudio.

本作は2018年の夏に愛知県で撮影された。4年越しでようやく公開を迎えるが田中さんは「大変お待たせしました」と感慨深げに語り、小川さんも「待っててくださってありがとうございます」と笑顔を見せる。

この日は、“サプライズ映像”として、小川さん演じるサナエが恋に落ちる謎めいた家政夫・裕介を演じた石田法嗣からビデオメッセージが到着。石田さんも「2018年の夏から4年の月日が経って、ようやくみなさまに観ていただける日を迎えてうれしく思っています」と観客へのお披露目を迎えた喜びを口にする。

そして「思い返すと愛知の夏の風景、限られた時間を必死で駆け抜けたことが思い出されます。田中くんとのシーンでは、ぶつかり合い、本気でやり合ったことが印象に残っています」と振り返り、「田中くん、本当に蹴ってしまいすみませんでした(苦笑)」と4年越しに田中さんに謝罪も……。そして「葛藤、感情、ぶつかり合いを感じていただけたら」と会場の観客に向けて呼びかけた。

この日は映画本編に加えて、監督、小川さん、田中さんにそれぞれ焦点を当てたドキュメンタリー映像も上映された。

ムチャ振りの連続を監督も反省

『スウィートビターキャンディ』
(C)MotionGalleryStudio.

田中さんは、なんといっても本作『スウィートビターキャンディ』の見どころについて「あんちゃんの魅力。あの瞬間にしか撮れなかったものがある」と断言。特に「あんちゃんが『裕介』と駆け寄って抱き締めるシーン。あれは僕も現場で見ていて泣きました。サナエという存在がいて裕介が救われる──グッときましたね」と小川さんの演
技を絶賛する。

その小川さんは、映像に残る当時の自分の姿に「今見ると、恥ずかしくなっちゃいます(苦笑)。あのときは、確固たる思いで現場で(カメラが回っていないときも)ずっと役のままでいようと。今ではそれはできないと思うけど、当時はそういうやり方でしかできなかった。現場で役のままいるというのは、まわりを巻き込んで、気を遣わせる大変なこと。未熟だなと思いますし、恥ずかしい……」と照れつつも「一切、妥協なく集中してできていたし、そんな現場はなかなかない」とまさにあのときにしか表現し得なかったものがカメラに捉えられていると語る。

一方、田中さんは「中村監督とは初めてでしたがビックリしました。唯一無二の監督で、演出も台本にないことをすごくやらせるし、現場で訳がわかんなくなりました。(自身が演じた)山下が深みのある多面的な人間になってよかったけど、やっているときは大変だった……」と苦労を述懐。特に「台本にない歌を歌わされたこともあって、しかも本編ではバッサリ切られてた(笑)」とボヤくが「こんな現場はなかったし、この作品以降もない(笑)。でも当時は戸惑ったけど、ありがたかった。そんなこと普通は経験できないから。楽しく、大変だったけど、経験としていい時間でした」と充実した表情を見せた。

小川さんは田中さんとの共演について「本当に素晴らしかったです。安心感があって、安定していて、たぶんすごくまじめな方で、現場に入る時点で完璧なんです。ブレることなく強固で、田中さんとのシーンはずっと“受け“でしたが、無心でできました。きっと、海外の作品でグリーンバックで芝居をしても完璧にできる俳優さんだと思います」と手放しの称賛と感謝の言葉を口にし、会場からは温かい拍手が沸き起こる。

一方、現場で俳優陣にムチャ振りを繰り返したという中村監督は自身の演出に「やり過ぎてたよね(苦笑)。あのときは28歳で、20代の元気のピークでした。今だったらあり得ない。もし、自分が応援でこの現場に入ってたら『大丈夫か、この監督?』と思ったと思う(笑)。爆発しまくってたし、そのエネルギーがあったからこそ俳優部と一緒に全部を感じ取ってやれて、あの現場独特のものが生まれたと思います」と反省を口にしつつ、手応えを明かした。

センチメンタルなひと夏を映し出した作品

『スウィートビターキャンディ』
(C)MotionGalleryStudio.

改めて、4年という月日を経てようやく公開を迎えることにて公開をようやく迎えることに中村監督は「超長旅。結婚したら離婚してるくらい、4年って長い!」と結婚生活にたとえ、「“超ラブラブ”な感じが映っています。4年前に別れた彼女にすごく久しぶりに会うみたいな、ちょっと気まずさがある感じ(笑)」と心境を明かす。

さらに中村監督が「あんな感じではもうできない。かけがえのない時間が流れてるし、ジジイになって観たら泣いちゃう!」と語ると、小川さんは「(ドキュメンタリー映像を観て)自分で泣いちゃいました(笑)。切なかったです。私は芝居の仕方とかをずっと考えてしまうタイプで『あのときはああすることしかできなかった。衝動で役のままいれて『まわりのおかげだな……』とすごく悲しくなりました」と明かす。

田中さんも小川さんの言葉に同意し「学生のころの夏の思い出みたいに、センチメンタルになる。ひと夏を映し出してる」とうなずいた。
 
最後に中村監督は7月15日(金)の公開に向けて改めて「2018年の『スウィートビターキャンディ』という“事件”が2022年、ようやく埋まります!」と作品をアピールし、トークセッションは幕を閉じた。

『スウィートビターキャンディ』は7月15日より、下北沢K2、池袋シネマロサほか全国公開。

『スウィートビターキャンディ』

『スウィートビターキャンディ』
(C)MotionGalleryStudio.

2022年7月15日(金)より、下北沢K2、池袋シネマ・ロサほか、全国ロードショー
監督:中村祐太郎
脚本:小寺和久、中村祐太郎
主題歌:「そういう風の吹きまわし」 町あかり
企画・プロデュース:中村祐太郎、宮田雅史
撮影・照明:池田直矢
録音:小川武
衣装:松田稜平
ヘアメイク:菅原美和子
編集:冨永圭祐
助監督:ジョン・ヒジリ
ラインプロデューサー:佛木雅彦、汐田海平
出演:小川あん、石田法嗣、田中俊介、清水くるみ、松浦祐也、町田マリー、蒼波純、若杉凩、片岡礼子
配給:MotionGalleryStudio.

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  • 『スウィートビターキャンディ』

    『スウィートビターキャンディ』

    2022年7月15日(金)より、下北沢「K2」、池袋「シネマ・ロサ」ほか、全国ロードショー
    監督:中村祐太郎
    脚本:小寺和久 中村祐太郎
    主題歌:「そういう風の吹きまわし」 町あかり
    企画・プロデュース:中村祐太郎・宮田雅史
    撮影・照明:池田直矢/録音:小川武/衣装:松田稜平/ヘアメイク:菅原美和子/編集:冨永圭祐
    助監督:ジョン・ヒジリ/ラインプロデューサー:佛木雅彦、汐田海平
    出演:小川あん 石田法嗣 田中俊介 清水くるみ 松浦祐也 町田マリー 蒼波純 若杉凩 片岡礼子
    配給:MotionGalleryStudio

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