シシガシラ、黒帯、チェリー大作戦、ダイヤモンドが漫才の研鑽を目的に2022年に立ち上げたユニット「漫才至上主義」。ダイヤモンドの解散もあり、コンビ歴が一番長い黒帯にとって『M-1グランプリ』ラストイヤーとなる2025年、本ユニットは“最終章”を迎えることになった。
そんな最後のツアーは6月29日(日)の静岡公演を皮切りに、大阪、広島、福岡、愛知、東京を巡る。公演に向けた取材会では、3組がツアーへの意気込みやこれまでの歩みを語った。


恩返しがしたい。“最終章”へ込める思い
──『漫才至上主義』、今年のツアーが“最終章”となった経緯を教えてください。
脇田 『漫才至上主義』は毎年の更新制で、1年ごとに来年もやるかを決めます。2024年末にダイヤモンドが解散することを発表し、「ここで終わる?」みたいな話になったのですが、そのまま終わってしまったら「あれが最後だったんだ」とお客さんに残念に思わせてしまうなと。それが申し訳ないというか、気持ち悪いというか。それなら黒帯が『M-1グランプリ』ラストイヤーの2025年を最後というかたちにするのが誠実かなと。それで“最終章”と謳ってこの3組でやることにしました。
──ダイヤモンドの解散を聞いたときはどんな心境でしたか?
浜中英昌(以下、浜中) 前から相談されてて、何度か止めたんですけど、最後に決めたのは本人たちなので。仕方がないことですが、寂しい気持ちです。
てらうち 人気あるコンビで『M-1』決勝進出もしていたので、とにかくもったいねぇって(笑)。「もうちょい考えたらいいのに」と「しゃあないか」の気持ちが半々でしたね。
大西進(以下、大西) 僕はけっこう相談に乗ってて、「もうちょい考えろよ」から2年くらいは経ってたんで、仕方ないんかなって。
宗安聖(以下、宗安) 好きな先輩だったんで寂しいですし、ダイヤモンドさんのネタが楽しみのひとつやったんで、単純にファン目線で悲しいなって。
ねんど もったいないと思いましたけど、お互いがお互いに文句を言っていたので、これは手のつけようがないなと(笑)。
一同 (笑)。
ねんど 残念です。

──ほかのライブとは違う『漫才至上主義』への思いはありますか。
脇田 寄席などはオファーをいただいて出るかたちですけど、『漫才至上主義』は3組で運営しているライブなので、「盛り上げなきゃ」っていう責任感はありますね。
てらうち シシガシラさんに恩返ししたい思いが強いですね。とにかく結果を出して、このユニットが終わってもまた一緒に仕事できるようにがんばりたいです。
ねんど 結果を出すためにも、このライブでのお客さんの反応とかを見るのが必要不可欠だと思うんで、いつも以上にがんばりたいです。
──『漫才至上主義』ならではの魅力は。
浜中 東京2組、大阪2組というのは今までなかったと思います。4組ともユニットを組んだ当初は『M-1』準々決勝止まりだったんで、結果を出していく過程も楽しんでもらえるのかなと。
てらうち ツアーを長い期間かけてやるんで、初期のネタと『M-1』前のネタは全然ちゃう。最初から来れば、ネタの変化も楽しめるんじゃないかな。
宗安 キモいユニットやと思います(笑)。ベタな人がいなくて、怖いもの見たさの気持ちにも応えてくれる魅力的なライブです。
お笑い好きの愛ある人間たち。川辺で「早く売れたいな」って語った
──ユニットを組んで3年ほど、お互いの印象は変わりましたか。
脇田 東京の2組はもともとお互いを知ってたんですけど、大阪の2組は正直前は「アングラでトガっているんだろうな」って怖さがあったんですよ。けちょんけちょんにされるんじゃないか、みたいな。
浜中 けちょんけちょんにはされてますよ(笑)。
脇田 そうだけど、愛のあるけちょんけちょんというかさ! ぼろ雑巾にされて、「シシガシラさん大したことないなぁ」で終わっちゃう可能性もあったじゃん。でも、この3年間で人間味をちゃんと感じられるようになって、いい家族になった感じがします。
浜中 お笑い好きの愛のある人間たちだったね。
てらうち 知り合いから従兄弟と徐々に距離を縮めていって、今は兄弟くらい仲いいです。
大西 特に浜中さんにちょっと怖いイメージがあったんですけど、実際会ってみたら身長が思ったより5センチぐらいちっちゃくて。
浜中 よく言われるけど(笑)。
宗安 シシガシラさんは喫煙者仲間ですし、ファーストタッチで優しい方たちだとわかりました。黒帯さんはアングラなイメージやったけど、しゃべりやすいし優しい。このユニットは見た目的にやばそうな人もいるけど、結果的に全員めっちゃいい人やったなと思います。
ねんど 僕も最初浜中さんが怖いと思ってたんですけど、話すと優しいし、元ヤン特有の情の深さもあります。僕が泊まるところがなかったとき、浜中さんのお家に泊まらせてもらったことも。「浜中とねんどは一夜をともにしたことがある」と書いておいてください。ひげが汚いんで部屋も汚いかなと思ったんですけど、家はきれいで意外と几帳面なことを知りました。
浜中 ひげは汚いんかい(笑)。

──これまでやってきた中で忘れられない思い出はありますか。
大西 ユニットを組んだばかりの福岡公演が思い出に残っています。コンビニで買ったお酒を飲みながら、川沿いでみんなで「早く売れたいな」って話して。でもなぜか、てらうちと宗安はふたりでサウナに行ってたので、てらうちと宗安以外のメンバーの絆が深まりました(笑)。
脇田 あったな(笑)。
浜中 その福岡公演のとき、俺らシシガシラはあとから行ったんだよね。
脇田 合流したときには、もつ鍋屋さんでみんな死ぬほど注文してたんです。シシガシラが払うことになりそうだけど、「これいくらするんだろう」って。でもここでケチってもしょうがないから、俺らも思いっきり食おうぜってまあまあ食べたんです。でも、結局ミルクボーイさんが払ってくれることになって、「もうちょい食えたな」って思いました(笑)。
浜中 てっきり俺らが金払うと思ってたから、騙されたよな。
『漫才至上主義』を経て3組が目指す先は
──このユニットを通して成長したところはありますか。
脇田 売れ線の人を集めたユニットじゃないのに、全員バイトを辞めて、ある程度食えるようになったのはでかいです。
大西 東京で漫才やらしてもらう機会が増えて、ウケたときは自信につながりましたね。
てらうち 毎月2本ずつネタを書くのはしんどい時期もありましたけど、今考えるとよかったなって。
宗安 『M-1』をリアルに見据えられるようになりました。実際決勝に行ったメンバーもいますし、先輩方がどんどん仕上がっていく姿を間近で見て、相乗効果で自分らも漫才に熱が入りました。
──今回のツアーのアピールをお願いします。
浜中 今回が最終章で、いったん今のシシガシラ・黒帯・チェリーで何かをやることはなくなっちゃうので、ぜひ観に来ていただきたいですね。
脇田 日本全国でやるかたちになったので、観光もしつつ楽しんでいただけたら。
てらうち 今年が『M-1』ラストイヤーでがんばるので、一緒に盛り上げていただけたらうれしいです。
大西 『M-1』決勝に行くつもりでやってるので、そこに向かってるやつの姿を見てほしいですね。
宗安 『漫才至上主義』の異質な雰囲気はここだけでしか味わえないので、これまで見たことない人にもぜひ楽しんでいただけたらと思います。
ねんど 特に大阪公演にたくさんお客さんが入ったらいいな……。シシガシラさんを大阪で見られる機会もそんなにないので、ぜひ来てください!
浜中 そんなことないよ(笑)。
──『漫才至上主義』を経て、今後の目標を教えてください。
脇田 『M-1』優勝ですね! 僕らはラストイヤーまでまだ9年ありますが、優勝以外に卒業する方法はないので、早めに優勝を決めたいですね。
浜中 ラストイヤーだと、50歳と53歳。そこまでいくと人生楽しいのかわかんなくなっちゃうんで、チャンピオンになるのなら早めにって。
てらうち ライブシーンの主役級になってみたいです。今やったらエバースとかバッテリィズとか。お客さんがそのコンビを目的に観に来るみたいな、主役になってみたいですね。
大西 『M-1』用の短距離走みたいな漫才は作らなくなると思うんで、それはそれで楽しみです。
宗安 今後も変わらずにネタを磨いて、『漫才至上主義』のメンバーで再共演するのがひとつの目標です。
ねんど 漫才でいろんな役を演じることが多いので、それがいいほうに転んで、俳優業とかにもチャレンジできたら。漫才は宗安さんが全部書いてくれてるんですけど、僕は一生誰かが書いたもので飯食っていきたいです(笑)。
『漫才至上主義 最終章 全国ツアー』
【静岡公演】
日時:6月29日(日)16:45開場/17:00開演
会場:沼津よしもとラクーン劇場
ゲスト:ケビンス、デルマパンゲ
【大阪公演】
日時:7月13日(日)19:00開場/19:15開演
会場:よしもと漫才劇場
ゲスト:笑い飯、ヘンダーソン
【広島公演】
日時:8月17日(日)17:30開場/17:45開演
会場:広島紙屋町劇場
ゲスト:ギャロップ、カベポスター
【福岡公演】
日時:9月20日(土)20:00開場/20:15開演
会場:よしもと福岡 大和証券劇場
ゲスト:金属バット、オズワルド
【愛知公演】
日時:10月25日(土)16:45開場/17:00開演
会場:大須演芸場
ゲスト:マユリカ、エバース
【東京公演】
日時:11月8日(土)18:30開場/19:00開演
会場:ルミネtheよしもと
ゲスト:coming soon
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