鈴木愛奈 “Aina Suzuki 1st Live Tour ring A ring – Prologue to Light –”:PR

鈴木愛奈、“凱旋公演”となった初ツアーのファイナルで見せた“強さ”と“優しさ”

2021.4.5
鈴木愛奈

文=須永兼次 編集=渡部 遊


4月3日、声優・歌手の鈴木愛奈が1stツアー“Aina Suzuki 1st Live Tour ring A ring – Prologue to Light –”のファイナル公演を、千歳市民文化センター北ガス文化ホールにて開催。

昨年1月リリースのデビューアルバム『ring A ring』の名を冠した初ツアーのファイナル公演は、自身の故郷・千歳市での凱旋公演に。時に力強く、時に優しい歌声を遺憾なく発揮し、未来への期待も高める充実のライブだった。

【配信チケット情報】
アーカイブ配信:~2021年4月11日(日)23:59まで
発売期間:~2021年4月11日(日)20:59まで
URL:https://eplus.jp/suzukiaina_1st_st/

この場所で育んだものと旅立ってから育んだものを、共に見せた大充実の凱旋公演

まずはステージ奥に、重なり合う3つの輪がライトによって映し出され、interludeとして「The Start of Phoenix」が流れるなかステージ中央に鈴木が登場。ひとりライトに当たったところで、“アニソンシンガー”という夢を叶えた「ヒカリイロの歌」からライブを始める。

地声での突き抜けるような歌唱はもちろん、ファルセットも交えてアッパーなナンバーの中に絶妙に柔らかさを織り交ぜてリリース以降の成長をいきなり示す。それにつづく2曲も同様に力強さで観客を引き込むもので、特に「Butterfly Effect」はテンポこそ少々緩めなものの、そのぶん一音一音にぐっとより力を込めて歌唱していく。

「今日は千歳のみなさんと、オンラインのみなさんと素敵な縁を紡いでいきたいなと思っています」と意気込みを言葉にすると、1stシングルの表題曲「やさしさの名前」からはミドルナンバーを中心に披露。特に「やさしさの名前」で見せた、楽曲のメッセージに添わせて強い地声にファルセットで柔らかさをまとわせるアプローチが、ミドルテンポの楽曲に非常によく馴染む。

さらに、会場中のファンへと手を振り客席を埋め尽くす黄色のペンライトの光を揺らして一体感をもたらした「Happiness」や、歌声を極限まで甘く振ったり猫の手のような振付を交えたりとキュートさを前面に出した「アイナンテ」といった楽曲でファンをさらにとりこにしていく。

ライブ中盤には、アコースティックコーナーも。まずアコーディオンの調べから始まる「antique memory」では、ワルツ調のサウンドにたゆたいゆったり身体を揺らしながら歌うと、ファンへの祝福の想いを詰め込んだウェディングソング「繋がる縁-ring-」では鈴木の先導で会場中を温かなクラップが包む。落ちサビではステージ奥に大きな輪がひとつ映し出され、やがてそのまわりにたくさんの輪が浮かび上がりつながるという演出も相まって、タイトルどおりの想いを歌声に加えてステージ演出でもかたちにしていた。

慈愛に満ちあふれた表情で、聴く者すべてを優しく包み込むように

披露後にはバンドメンバーによるプレイが行われると、「玉響」のイントロと共にいったん降壇していた鈴木が衣装チェンジして再登場し、後半戦も力強いナンバー3曲で幕を開ける。和風メタルなその「玉響」を眼光鋭く歌って表情からも引き込むと、ソーラン節が織り込まれた「祭リズム」ではイントロで「回すよ!」との鈴木の言葉に従うかのように客席で赤のペンライトの灯りが次々に回り、会場のボルテージはさらに上昇していく。

そしてライブは、鈴木の原点に当たると言っても過言ではないアニソンカバー2曲の披露へ。まず『全日本アニソングランプリ』の予選出場前に歌った「逆さまの蝶」では楽曲に合わせたグルーヴ感を伴いながら、持ち歌よりも音域が若干低めな曲を、重さを乗せた歌声をもってダークな雰囲気で表現。

また、その決勝で歌った「甲賀忍法帖」はサビ直前のロングトーンは高らかに歌い上げたりとこの曲ならではの鋭さも見せつつ、サビのハイトーン部分ではファルセットも駆使してたおやかさも発現。原点に当たる楽曲での歌声を通じて鈴木のシンガーとしてのさらなる可能性を感じさせつつ、終盤へと向かう。

まずはミドルポップ「もっと高く」を晴れやかに歌唱。スキッと晴れた青空を想起させるような歌声を会場中へと飛ばして広げていけば、つづく「遙かなる時空-そら-を翔ける 不死鳥-とり-のように」での歌声は、一転して彼女自身が不死鳥として空を翔けていく姿を想起させるような雄々しいものへと姿を変え、聴く者を呑むような迫力さえ生む。

その余韻残るなか、本編ラストを飾る「Eternal Place」がスタート。まず第一楽章がインストとして流れて空気を作り上げると、第二楽章のイントロと同時に光を浴びて、衣装チェンジした鈴木がステージに登場。今改めて聴きたい、聴く者すべてにじんわりと生きるエネルギーと希望を与える曲を、慈愛に満ちあふれた表情で包み込むように優しく響かせていった。

心の支えだったアニソンを、自身の言葉で伝えていく

歌唱後、鈴木が降壇すると直後に客席からはアンコールを求める大きなクラップが。その音がしばし響き渡ったところで、ステージに鈴木が戻る。そしてその背に光を受けて歌い始めたのは、この日2度目の「ヒカリイロの歌」だ。落ちサビ前のアレンジは、1回目はドラムのフィルインにつづいて鈴木が歌い出すかたちだったものが、2回目は音源同様にサイレントとなって鈴木のブレスを聴かせるかたちとなっており、より胸を熱くしてくれた。

ラストナンバーを前にしたMCパートでは、ツアー中に自身の口から伝えつづけている、アニソンシンガーを目指した理由をこの場でも語り始める。

アニメやアニソンが大好きなこと、それが学生時代にいじめを受けていたときの心の支えだったこと。そして自分のように悩んだり苦しんでいる人に寄り添っていけるように歌っていきたいということ──それを自身の言葉で伝えていく。

ただ、千歳という故郷で開催できたことについては「楽しい時間や幸せな時間も経験できた千歳でツアーファイナルを迎えることができたのは、本当にうれしい」と口にし、わずかに瞳を潤ませていた。

そして自身の誕生日当日である7月23日に、『Aina Suzuki 1st Live Tour ring A ring – はっぴーにゃーすでぃ♪ – 』と題した本ツアーの追加公演を開催することを発表。このツアー自体や追加公演の開催について改めてファンに感謝を述べ、本当のラストナンバーとして披露されたのは「今日のわたしをこえて」。初めてのツアーを、そして凱旋公演を締め括るのにこの上なくふさわしい、故郷を歌った曲だ。

この曲でも鈴木は優しくふわっと歌いかけ、彼女の心根の優しさが、それを育んだ土地に響いていく。歌いかける相手は当然目の前のファンであり配信を観ているファンであっただろうが、その相手にはもしかしたら“昔の自分”も含まれていたのかもしれない──そんなことまで思わせるほどに、温かさに満ちた歌声だった。

歌声と振る舞いから自然と感じた、“鈴木愛奈”というシンガーの魅力

歌唱後にはステージ両端のお立ち台に順に登り、「みなさんと目合ったかな? おひとりおひとり、目合ったかな?」と改めて丹念にファンへと手を振る鈴木。最後に「これからもいろんな舞台に立たせていただけるかもしれないけど、やっぱりここが私が生まれた場所で、アニソンシンガーを夢見て旅立った場所だから、またこの舞台に立ちたいなと思っています!」と宣言し、初めての凱旋公演に幕を下ろした。

鈴木愛奈というシンガーの魅力のひとつに、民謡仕込みの高い歌唱力が挙げられることは間違いない。だが、それだけを彼女の魅力と捉えるのもまた間違いであると思わせてくれたのが、このライブだった。

彼女のもうひとつの魅力は、紛れもなく“優しさ”。MCでは幾度となく何よりもファンや歌いかける相手のことを考える意識が顔をのぞかせていたし、それは主にミドルナンバーなどで前面に出る、包み込むような歌声にも直結するものだろう。

強さと優しさ、その両方を携えてツアーを走り抜けた鈴木愛奈。これからどんなシンガーへと、さらなる成長を見せるのか──その期待をさらにふくらませる大事な一夜に、この公演はなった。

【配信チケット情報】
アーカイブ配信:~2021年4月11日(日)23:59まで
発売期間:~2021年4月11日(日)20:59まで
URL:https://eplus.jp/suzukiaina_1st_st/

公演概要

Aina Suzuki 1st Live Tour ring A ring – Prologue to Light –”千歳公演
2021年4月3日(千歳市民文化センター 北ガス文化ホール)

【SET LIST】
M01.The Start of Phoenix
M02.ヒカリイロの歌
M03.Cocoon
M04.Butterfly Effect
M05.やさしさの名前
M06.はつこい
M07.Happiness
M08.アイナンテ
M09.antique memory
M10.繋がる縁 -ring-
M11.玉響
M12.祭リズム
M13.月夜見moonlight
M14.逆さまの蝶
M15.甲賀忍法帖
M16.もっと高く
M17.遙かなる時空-そら-を翔ける 不死鳥-とり-のように
M18.Eternal Place 第一楽章
M19.Eternal Place 第二楽章
M20.Eternal Place 第三楽章
EN1.ヒカリイロの歌
EN2.今日のわたしをこえて

追加公演開催決定!

『Aina Suzuki 1st Live Tour ring A ring – はっぴーにゃーすでぃ♪ – 』
日程:7月23日(金・祝)
場所:東京ガーデンシアター チケットスケジュールなどは続報をお待ちください!

初の配信シングル「えとにゃんらん」4月28日リリース

「えとにゃんらん」(『えとたま ~猫客万来~』テーマソング)
作詞・作曲・編曲:涼木シンジ(KEYTONE)
4月28日より各主要配信サイトにて配信開始


この記事の画像(全14枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

須永兼次

Written by

須永兼次

(すなが・けんじ)1986年生まれの、アニソンシンガーや声優アーティストの分野を中心に手がけるフリーライター。中学時代にアニソンにハマり、大学はアニソン作詞家の歌詞を語学の角度から分析した論文で卒業。数年の会社員生活を経て独立し、『リスアニ!』『月刊ニュータイプ』などの雑誌や各WEB媒体、ライブパン..

CONTRIBUTOR

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森田美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。