ニューヨークバンド、夢のZepp公演で結婚や破局を報告。いつかは「コピーバンドとして武道館に」

2026.4.13
『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』

文=安里和哲 撮影=たまえ。 編集=梅山織愛


事の始まりは2023年。ニューヨーク屋敷裕政がYouTubeの企画で、エレキギターを買ったことだった。それから屋敷がギター、嶋佐和也がボーカルを担当、かけおち・青木マッチョをドラムに迎えた、ニューヨークバンドが発足。さらにベースオーディションを敢行すれば、第6ベースまで加わり一気に総勢9人の大所帯となった。そんな彼らがついに1000人を超える観客を集め、Zepp Shinjukuのステージに立ったのだ。

本稿では、そんな晴れ舞台でも変わらず全曲カバー曲を演奏した、3月21日(土)開催の『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』の模様をレポートする。

【『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』セットリスト】
「バラ色の日々」THE YELLOW MONKEY
「ちょ」B-DASH
「情熱の薔薇」THE BLUE HEARTS
「さすらい」奥田民生
「忘却の空」SADS
「BABY BABY」GOING STEADY
「Stay Gold」Hi-STANDARD
「終わりなき旅」Mr.Children
「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~」H Jungle with t
「深夜高速」フラワーカンパニーズ
「BELOVED」GLAY
「茜色の夕日」フジファブリック
~~~アンコール~~~
「バラ色の日々」THE YELLOW MONKEY
「さすらい」奥田民生

【出演者】
ニューヨーク、青木マッチョ(かけおち)、本田康祐(OWV)、宮原健斗(ちみどり)、西村ヒロチョ、宮下純(烏骨鶏)、三浦リョースケ、まっすぐ加藤、マイム(サンタモニカ)
【ゲスト】
うだまん、栗原まろやか(ドッチモドッチ)、ジェリクルこんちゃん、大久保健(ぱろぱろ)、あとむ、川嶋おもち(おミュータンツ)

総勢10人のニューヨークバンドが“伝説”を作る

コピーバンドでZepp Shinjukuに立つなんて、なかなかできることではない。屋敷の「ギター弾きたい」という純粋な思いと、嶋佐の「歌いたい」という欲求をガソリンに走り始めたニューヨークバンドは、あっという間にここまで走ってきた。ニューヨークバンドはけっして悪ふざけではないし、かといって真剣そのものというわけでもない。まっすぐに自分が好きな音楽をプレイしているその姿が、なんだかまぶしくてしょうがない。

『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
メンバーそろってのスタジオ練習は数回しかしていないため、リハーサルを入念に行うバンドメンバー
『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
会場で配布された限定パンフレット
『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
『Quick Japan』vol.182とのコラボ装飾
『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
出演者全員での円陣

この日のセットリストはすべて平成の日本を彩った名曲たち。ニューヨークのふたりはもちろん、バンドメンバーやゲストたちにとっても、青春をともに歩んできた楽曲たちだ。オープニングはTHE YELLOW MONKEYの「バラ色の日々」。拳を挙げて観客を煽りながら歌う嶋佐は、威風堂々。一方、屋敷は手元を見ながら、必死に弾いている。そんな対照的なニューヨークが見られるのもニューヨークバンドの醍醐味だ。

演奏を終えると「1曲目、大成功。一番緊張した」と胸をなで下ろしつつ、満員近いフロアを見渡した屋敷は「ほとんどのバンドマンがこの光景見ずに終わっていくんやから」と感慨にふけり、嶋佐は「今夜は本当にね、伝説の日になります」とぶち上げた。

『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
観客を煽る嶋佐和也(ニューヨーク)
『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
必死にギターを弾く屋敷裕政(ニューヨーク)

その後は「ちょ」(B-DASH)、「情熱の薔薇」(THE BLUE HEARTS)、「さすらい」(奥田民生)と、ニューヨークバンドおなじみの楽曲をパフォーマンスしていく。ニューヨークバンドは、ボーカルの嶋佐とギターの屋敷以外のメンバーが、楽曲ごとに変わっていく。しかし、嶋佐が愛してやまないOASISのリアム&ノエル・ギャラガー兄弟よろしく、嶋佐と屋敷がいれば「ニューヨークバンド」だ。「情熱の薔薇」でのダブルボーカルもグッとくる。

『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
嶋佐が引くギターは屋敷のもの。舞台上でストラップの長さを調整するのもニューヨークバンドならでは

流動的な演奏メンバーにあって、最も交代が多いのがベースだ。計4人が代わる代わる演奏。宮下は、ニューヨークバンドのために当時芸歴2年目にもかかわらず、28万6千円ものベースをローンで手に入れた。その覚悟もあってか、今回は半数近い曲で演奏。ピン芸人で芸名とおりの実直な男・まっすぐ加藤は中盤の2曲を担当した。

『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
宮下純(烏骨鶏)
『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
まっすぐ加藤

三浦は去年から今年にかけて2回連続でコンビを解散したり後輩に虐げられたりと、このごろさんざんな上に、この日は1曲のみの演奏だったが、最近結婚していたことをサプライズ発表し爪あとを残した。

『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
公演中に結婚発表をした三浦リョースケ

そして驚くのは、ボーイズグループ・OWVの本田康祐がベーシストとしてニューヨークバンドの一員となっていること。多忙にもかかわらず4曲も担い、巧みな演奏でバンドを支えた。

『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
本田康祐(OWV)

ドラムは青木マッチョが主に担うが、今や売れっ子の彼は多忙を極めるため、今回はサンタモニカのマイムが助っ人として3曲で参加した。

『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
会場に向かう青木マッチョ(かけおち)
『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
マイム(サンタモニカ)

ギターの宮原は、ほぼ出ずっぱり。過去の浅草でのライブの際には、屋敷のギターのセッティングまで担った、欠かすことのできないバンドマスターだ。ニューヨークの同期である西村ヒロチョは、日本大学の芸術学部音楽学科を卒業し、何十種類もの楽器を演奏できるマルチプレイヤーだが、ニューヨークバンドでは主にキーボードで彩りを添える。

『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
リハーサル中の宮原健斗(ちみどり)
『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
西村ヒロチョ

ニューヨークバンドという試みがなければ、けっして集まることがなかった10人。音楽をやりたいという気持ちで、数奇な運命を作ってしまえる。そんなバンドのよさを彼らは改めて教えてくれる。

結婚、和解、別離。ニューヨークバンドの見せる人生の縮図

前半のハイライトはSADSの「忘却の空」だ。ここでは屋敷と嶋佐がポジションチェンジ。あの繰り返される印象的なフレーズを嶋佐が引き倒す。肝心のギターソロはバンドマスター・宮下だが、お立ち台に上がり観客の視線を集めるのは嶋佐だ。

このバンドのフロントマンは、あくまでも嶋佐。このあともMr.Children「終わりなき旅」でドラムを担当した嶋佐は、長いアウトロでまばゆいスポットライトをひとり浴びながら、気持ちよさそうに叩いていた(ほとんど練習していないというが、勘どころを押さえていて見事!)。

その「終わりなき旅」では、本田と青木マッチョがデュエット。歌唱前、本田が「まずニューヨークさん、Zepp連れてきてくれてありがとうございます」と言うと、嶋佐が「アイドルの本田くんが俺らに言うセリフじゃないから」とツッコむ。

そのあとも本田は「本当にこのコピーバンドでZepp立てるって、マジで歴史の一ページですよね。でもニューヨークバンド、まだ終わらないですよ。これから長い旅。終わらない旅。続けていきますかっ!?」と見事な煽りで曲フリにつなげる……かと思いきや、ベースの宮下とドラムのマイムがステージに入るタイミングを見失い、グダってしまう。

せっかくカッコつけたのにスムーズにいかなかった本田は「めっちゃ恥ずかしい……!」と照れ笑い。しかしその歌唱はもちろん聴き応えじゅうぶん。本田の色気と気高さをはらんだ歌声と、本来はドラムを担当する青木マッチョの飾らない素直な歌声が妙に調和していて、感動的なコラボだった。

『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
ボーカルも務めた青木マッチョと本田康祐

ゲストボーカルも『ニューヨーク Official Channel』のファンなら納得の面々。2025年のチャンネルの一大コンテンツとなった『アトムレイジ』の、あとむとおもちがGOING STEADY(銀杏BOYZ)の「BABY BABY」を熱唱。ふたりの熱い抱擁に、観客も大きな歓声を上げた。

『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
肩を組むあとむと、川嶋おもち(おミュータンツ)

フラワーカンパニーズの「深夜高速」は、YouTubeチャンネルのドキュメンタリー『桜上水ハウス』の主人公である4人が歌う。若手芸人たちのシェアハウスの暮らしに1年間密着した『桜上水ハウス』。ドキュメンタリーでは栗原まろやかが、彼女と同棲することを決意しシェアハウスを去っていた……が、なんと彼女に振られたことをこのステージで告白。

『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
サプライズ登場した桜上水ハウスのメンバー。左からジェリクルこんちゃん、大久保健(ぱろぱろ)、栗原まろやか(ドッチモドッチ)、うだまん

結婚発表と和解、そして破局とニューヨークバンドのステージでは、人生のあらゆるターニングポイントが浮かんでは消えていく。その悲喜こもごもは、まさに人生の縮図。演奏される名曲たちは、挿入歌か、はたまた主題歌か。私も自分の人生と重ね合わせながら歌を聴いていた。

全員が「ちょうどいい」と思えるライブ

この日、ニューヨークがふたりきりでステージで歌ったのが「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~」だった。事務所の大先輩かつ、彼らのヒーローである浜田雅功の時代を代表する曲を、ふたりはバンドメンバーを交えず、音源を流し、歌った。ニューヨーク“バンド”のライブなのに!

『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
カラオケ音源で歌うニューヨーク

このカラオケの前、屋敷は吉本興業のことを「こんだけ“笑いの総合商社”とか言ってるけど、結局歌で終わる」と言い、吉本興業の110周年記念興行『伝説の一日』でのカラオケ大会や、「明日があるさ」の合唱で幕を閉じたことを振り返った。お笑いは音楽に憧れ続けている。その憧れを、ニューヨークは今「コピー」というピュアな音楽活動で体現している。

GLAYの「BELOVED」は難曲だが、ここへ来て嶋佐の声が最も伸びていた。まだまだいけそうだが、ここで「次が最後の曲になってしまいます……」と嶋佐は言う。会場からは「えー!」というお決まりの声が上がるが、その中にひとつだけ「やだー」という本気の思いがこだました。

屋敷も思わず「やだ、“1”(笑)。ちょうどいいんだ。これもZepp初。全員がちょうどいい(尺だ)なぁと思った」と笑う。ヘタすると楽曲のパワーで感動的な空気になりそうなところを、笑いで混ぜっ返す。熱狂や感動で一体となるのではなく、「ちょうどいい」という気持ちを共有する。ニューヨークのよさはここにある、と思った。

「コピーバンドとして(日本)武道館に立ちたい」という、ゆるい決意を語った嶋佐は、ラストにフジファブリック「茜色の日々」を歌った。嶋佐は、フジファブリックのフロントマン・志村正彦と地元が同じで、思い入れのある一曲だ。YouTubeでは屋敷も「震えるぐらいええ曲やな」としみじみと語っていた。

さすがの美しいメロディと感傷的な歌詞。嶋佐のまっすぐな歌声と、ふくよかな演奏で、さすがに会場もしんみりとする。が、見せ場のギターソロで屋敷がミスをする。その瞬間、悔しさを打ち消すように笑ってみせた屋敷だったが、演奏後、「ギターソロミスった! また武道館でリベンジします」と言い残し、ステージを去っていった。

アンコールでは、1曲目の「バラ色の日々」をパフォーマンス。そしてラストはニューヨークバンドの全員とゲストが全員ステージに上がって「さすらい」を歌った。

こうして幕を閉じた『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』。次回はどこで行われるのか、気長に待っていよう。

『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
アンコール含め14曲を完走したメンバーたち
『ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku』
終演後の出演者たち
『QuickJapan』182_ニューヨーク

『Quick Japan』vol.182
2025年2月13日(金)発売 
サイズ:A5/並製/144ページ
【通常版】1,650円(税込)
【日記付き限定版】2,970円(税込)

【2025年ニューヨークの毎日日記付き限定版】『Quick Japan』vol.182 【通常版】『Quick Japan』vol.182

『HAB開局35周年記念「漫才TOKYO」』
日時:6月8日(月)17:30開場/18:30開演
会場:本多の森 北電ホール
料金:前売5,000円(税別)/当日5,500円(税別)
出演:囲碁将棋、ダイタク、ニューヨーク、ダンビラムーチョ、オズワルド
主催:HAB北陸朝日放送/サンライズプロモーション北陸
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漫才TOKYO

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安里和哲

(あさと・かずあき)ライター。1990年、沖縄県生まれ。ブログ『ひとつ恋でもしてみようか』(https://massarassa.hatenablog.com/)に日記や感想文を書く。趣味範囲は、映画、音楽、寄席演芸、お笑い、ラジオなど。執筆経験『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』『Maybe!』..

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