少女写真家・飯田エリカと、QJ編集部・高橋の音声番組『夕方5時の会議室』。メディア業界で働く同世代ふたりが、日常で感じているモヤモヤを、ゆる〜くカジュアルにお話しします。
第17回は、『ミスiD2022』でグランプリを獲得し、執筆やPodcastなど多岐にわたって活動、20代から熱烈な支持を集める金井球さんがゲストで登場。
※音声収録は2025年11月5日に行いました
この記事では、音声の前半部分だけをテキストで公開。後半はYouTubeまたはPodcastよりお聴きください。
『ミスiD』で評価された「特筆するところがあまりない」
飯田 少女写真家の飯田エリカです。
高橋 Quick Japan編集部の高橋です。今日はゲストに金井球さんが来てくださいました!
金井 金井球と申します。こういう自己紹介でどう自分のことを説明すればいいのかが未だにつかめないんですが……てんびん座の金井球です。

高橋 てんびん座なんだ(笑)。太田出版に金井さんが来てくれるなんて、うれしい!
金井 曙橋(太田出版オフィスの所在地)は産みの父が住んでるので、よく来たりしてます。好きな銭湯もあって。
高橋 そうなんですね。今日はこのあと曙橋で飯田さんが金井さんを撮影する予定で、貴重な写真もご紹介できると思うので、ぜひみなさんにも見ていただきたいなと。
飯田 最初、私が金井さんにゲストに出てもらえないかオファーして、ご快諾いただいて。
金井 ありがとうございます。めちゃくちゃお話ししてみたかったですし、以前からけっこう気になるトピックを扱っていらっしゃると思っていました。
飯田 うれしい。全3回にわたって金井さんとお話ししたいなと思うんですけど、初回はさっき言ってたように「○○の金井球」というのが難しい、というところを。
高橋 特に明確な肩書とかは、ご自身では設定されてないんですよね?
金井 「よし、やるぞ!」みたいな感じで何かをやり始めたことがなくて、ぬるっといろんなことに手を出すせいで、「○○の金井球」というのが見つかってない状態で。
高橋 文筆業だったり、役者だったり、Podcast(『ラジオ知らねえ単語』)もやられていますが、特に肩書を明確に定めたいという思いがあるわけでもない?
金井 そうかもしれないです。
飯田 Podcastもすごく凝ってますよね。ちゃんとコーナーがあって。
金井 深夜ラジオが好きなので、トークがあって、コーナーをやって、エンディングがあって……みたいなフォーマットに則って、台本作ってやってます。私が台本、相方の(園)凛ちゃんが編集。スマホで、CapCutで編集して。
飯田 音声編集用のアプリとかじゃなく、CapCut!? ニュージェネレーションはスマホでなんでもできる……!
高橋 ニュージェネレーションのみなさんはパソコンじゃなくてスマホで動画・音声を編集するって聞いたことがあったんですけど、本当なんですね……!
飯田 ほんとにすごい。Spotifyだと、動画をそのまま表示してくれるのがいいですよね。
金井 動画は私のiPadで撮ってます。それを、凛ちゃんの携帯にエアドロして。
高橋 ごはん食べながら雑談してる、あのゆるい感じもいいですよね。
飯田 たしかにそういわれてみると、ぬるっとコントっぽいのが始まったりとか、芸人さんの深夜ラジオの雰囲気かも。音楽だけ使えないのがちょっと歯がゆいですよね。
金井 そうなんです。だから私たちは「きいてきてソング」っていう形式を採用していて。このラジオを止めて、この曲を今聴いてきて、戻ってきてくださいっていう、リスナーへの信頼のもと行っています(笑)。
高橋 おもしろい。最初に飯田さんから「金井さんにお話聞きたいです」っていうご連絡があったときに、 ちょうどそのときSNSで金井さんの一件が話題になって、私も注目してたんです。(飯田さんと金井さんは)『ミスiD』つながりで面識があったのかなと思いきや、そうではなかった?
金井 飯田さんの写真展に、私の友達がモデルとして飾られているときがあって、見に行ったりしたことはあります。間接的にずっと存在は認識してました。
飯田 そっか、見てくださってたんですね。ありがとうございます。その子はけっこう私がキーになるポイントで撮らせてもらってて。その子が金井さんと仲よくて、よく遊んでるみたいで。
金井 一時期、毎日ぐらい電話してました(笑)。
飯田 めっちゃ仲いい!(笑) でも意外と(私と金井さんは)なかなか接点がなくて、だから今回のSNSの一件でちょっとざわっとしたときに、金井さんが「これで仕事が増えれば……」みたいなことをポロッとつぶやいていたのを見て、声かけてみました。
金井 ありがとうございます。つぶやいてみてよかった!
飯田 『ミスiD』に出てたのは、2022の代?
金井 そうですね。ただ、私は3回出てるんです。『ミスiD』2020で書類落ち、2021でセミファイナル、2022でグランプリ。めげなさを買ってもらった感じ(笑)。
飯田 『M-1(グランプリ)』みたい!(笑) でも2021と2022はちょうどコロナ禍だったので、ファイナルくらいまで残らないと直接面接はなかったですよね。
金井 そうです。2018が自分の中で熱くて、(お客さんとして)めっちゃイベント行ったりしてたので、そういうイベントにもちょっと出たいなと思ってたんですけど、(コロナ禍は)イベントもあんまりなくて……。
飯田 そう、コロナ禍の前は『ミスiD』のイベントもけっこうあって、私も写真撮ってたり、それこそ審査中のオフショットとか撮る仕事もしてたんですけど。コロナ禍は完全にオンライン審査になっちゃったので、出る幕なしって感じで……。でも審査員の方から「金井さん、熱い!」という話を聞いてたので、ずっと気になってました。
高橋 どういう思いで、3年連続で挑戦してたんですか?
金井 『ミスiD』の出場者って、地方に住んでる子もいるじゃないですか。その子たちが、東京に住んでる『ミスiD』の子たちに「泊めてください」とか言ってるのを、Twitterでよく見てて。
私、『ミスiD』2019にめっちゃ好きな子がいて、友達になりたいな、こういうコミュニケーションを取りたいなと思って、私も『ミスiD』に出ればワンチャンあるのでは?と思って受けてみたら、2021でセミファイナルまで行ったから、もう一回やりたいな〜みたいな気持ちで2022も受けました。
高橋 グランプリを目指すだけじゃなく、そういうコミュニティに入って、新しい友達を増やしたい思いもあったんですね。
金井 そうです。最終的に、その子と友達になれて。
飯田 すごい、目的達成してた! じゃあむしろグランプリに選ばれたのは、びっくりしましたか?
金井 でも(グランプリは)正直あるんじゃないかと、2022は思ってて。授賞式では「マジでそんなつもりなかったです」みたいなこと言ったので、あまり言わないほうがいいかなとも思うんですけど、内心はちょっとだけ……(笑)。
高橋 対策みたいなことはしてたんですか?
金井 うーん、曲は作りました。Green Dayの「バスケット・ケース」の替え歌で「金井球ケース」っていう曲をYouTubeに上げて、なんかそれがけっこういい感じで、注目してもらってるかもというのは正直あって、じゃあやったるとことん!みたいな。でも、あんまりがんばってるふうに見えるのも恥ずかしいから、気を抜いてますよ〜って。
飯田 たぶん『ミスiD』には対策とかないんですよね。対策したところで……みたいな。
高橋 ありのままの自分の魅力をいかに伝えるか、なんですかね。『M-1』より難しそう! 令和ロマンは、いろいろ漫才の対策をしてトップになったと思うんですけど、そういうのじゃないってことですもんね。
飯田 審査員のパワーが強くて、その年の審査員が誰かによって超変わるんです。ひとりの審査員に刺されば、その人の賞はもらえるので。
金井 最終でグランプリを誰にするかの会議がけっこう揉めてたらしくて。でも、審査員の長久允さんが「金井さんも(グランプリ)あるかもね」みたいなことを言ってくれたのをあとで聞いて、長久さんに刺さってるのもうれしいし、なんか、いいやん♪って。
飯田 一番を決めるのは、だいたい揉めるらしいですけどね(笑)。
金井 選評では「特筆するところがあまりないのがいい」みたいなことを言われました。何かが得意なわけでもないし、何者かがはっきりしてない状態で受けて、それが意外と「『ミスiD』ってそういう女の子なのではないか」「見てる側の枠として象徴的」みたいな。
高橋 たしかに、金井さんのことをGoogleで調べようとすると「金井球 何者」ってサジェストが出るんです。めっちゃみんな何者か気になってる(笑)。でも、その何者かの枠にハマらないところが金井さんの魅力なんだなって思ったりします。
飯田 それが、最初に話してた「肩書が特に決められない」に通じるのかな。でも、このままのバランス感で4〜5年やり続けてるのがすごいなと思って。
高橋 本当にすごい。私だったら絶対どっかで焦っちゃったりとか、じゃあ文筆家だけで行くか!とか、何かひとつに(主な肩書や活動を)決めちゃいそうなんですけど、そうはならなかった?
金井 焦りとかは全然するんですけど、それより自意識が俄然強いのかもしれない。
飯田 たしかに文筆家だけでやろうとすると、じゃあほかはやめなきゃと考えがちで、捨てちゃったりするけど、たぶん全部やりたい?
金井 うっすらとした欲望みたいなものが、全部にあるんです。
高橋 そこに対して、自分はこれはやりたいけど、これは得意ではないなとか、あったりするんですか?
金井 あんまり……。ちっちゃいときから器用なところがあって、これが特に向いてないなみたいなことをあんまり思わない。やりたいと思ったことが、自分が満足できるレベルまではできる。自分が設定してるハードルが低いのかもしれないですけど。
だから、挫折を味わってやめることはないのかな。自分にわりと甘めに設定してるから、それぐらいがいいのかもしれない。
飯田 たしかに、ちょっと前までは何か一個に決めて極めるのがプロみたいなこともあったけど、今って歌も歌うし文章も書くし役者もやるし、その人を構成するレイヤーがいくつもあることが多いですよね。
金井 あと単純に、いろんなことやってる人、形容し難い人ってかっこいい。たとえば、リリー・フランキーさん。ちっちゃいときに、家にあった『週刊SPA!』の「グラビアン魂」でリリー・フランキーさんを見て、「グラビアのおじさん」って思ってたら、映画に出てるのを見て、映画のおじさん?えっ、文章とかも書いてるおじさん?『おでんくん』も!?みたいな(笑)。
飯田 最初が「グラビアン魂」だったのはけっこうな衝撃(笑)。そういわれてみたら超マルチですね。
金井 正直、リリー・フランキーさんにめちゃくちゃ詳しいとかではないんですけど、私の中で勝手に形作られてるリリー・フランキーさんがものすごくかっこいいと思ってるんです。
SNSで話題になったあの事件、当事者の心境は?【続きはこちら】
SNSで話題を生んだあの事件で、渦中にいた金井さんが思っていたこと、それから変化したこととは? 続きはYouTubeまたはPodcastよりお聴きください。
次回の配信(#18)では、金井さんが最近モヤモヤしている「スマホ依存」について。依存を断ち切るためにやっていることを明かします。




