バカデカカメラを買い、なにかと娘の足を液体につけたがる旦那。家族旅行は過酷ミッションの連続

本日は晴天なり

2024年9月に第一子を出産し、韓国人の旦那と子育てに奮闘中のピン芸人・本日は晴天なり。連載「バツイチアラフォーの幸せだけじゃない日常」では、家族と過ごす日常の中での喜びやイライラを綴っている。

連載最終回となる今回は、子育ての中で起きる珍事件や積み重なるストレスなど、日々の子育ての日記の中から印象的な出来事を紹介する。

バグっている母乳の量

我が子の初めて剥けた皮や、初めて切った爪などを全部保管している。新生児期のものなので、ふりかけに混ぜたらあっという間に見失うであろうレベルの小ささ。そんな爪、皮膚、耳カス、抜け毛、娘のかけらたちを、私の棺桶に入れてくれと旦那に頼んだ。ちなみに、初めてのうんちは産まれた初日に私が見てないところですでにしていたのであきらめた。そもそも衛生面的にアウトだろう。

嵐オタクだった私は、もともと「棺桶には嵐のCDを敷き詰めてくれ」「ハワイコンサートのラスト、ヘリコプターで飛び立っていったときのように『A・RA・SHI!A・RA・SHI!for dream!』のタイミングで出棺してほしい」という遺言をまわりの人間に伝えていたが、我が子が生まれて少しプランが変わった。

そんな娘に与えている母乳には、嘘か真かいろいろな神話がある。「赤ちゃんの免疫力が高まる」「必要な栄養を与え感染を予防する」「赤ちゃんとの間に信頼感が育まれる」など。このあたりはまあ、理解できる。

しかし、さすがに嘘だと思うようなものもある。「母体の骨粗しょう症、メタボの確率、がんのリスク軽減」「寝なくても平気になる」「殺菌、保湿、抗菌作用がある」など。万能すぎない? 魔法? 仙豆?

さらには、物忘れがひどく、「アレ」でしか会話ができなくなる産後のマミーブレインという現象。これも実は母乳が作用しているらしく、授乳期は、物事を深く考えないよう頭を休め、体や心をリラックスさせるために忘れっぽくなるのだそう。……さすがに都合よすぎない?

しまいには「赤ちゃんの泣き声に反応して母乳が出る」とか、マンガの設定じゃん!都合よすぎる!と思っていたが、娘が泣いたとき、母乳をホースでジャーーー!!と、出初式ばりに口の中へ放水してしまう。娘は慣れるまで、毎度ガボガボと溺れていた。

母乳の出る出ないには個人差があるといわれているが、私の母乳の生産量はかなり多いほうだと自負しており、もはや、バグっている。

ある日の散歩中、我が子はぐっすりなのに、母乳が出てくる感覚に襲われた。すると、10メートルくらい先のアパートのベランダで赤ちゃんが泣いており、知らない子の泣き声にも反応するんかい!と思わず自分の胸にツッコんだ。

娘のことを考えるだけで母乳が出るので、出先ではあまり考えないようにしなければならない。

パンダを見せるための過酷ミッション

昨今のニュースを見ていたら、もう日本でパンダを見ることが難しくなるのでは!?と、危機感を覚えた。7カ月の娘にパンダを見た記憶はきっと残らないだろうけど、写真や動画があれば、いつか「私はパンダに会ったことあるのか〜」と思ってもらえると考えた。

小学生になって自分より足の速い同級生にマウントを取られても「私はパンダに会ったことあるし!」と、パンダマウントで取り返せばいい。

旦那は娘が産まれてから、テレビクルーがロケで使っているのと同じ、バカデカビデオカメラと一眼レフを持って出かけるようになった。あまりにも重いため、家の中を定点で撮るためのカメラにしようね!と伝えたのに、動物園にも持っていくんだ!と張りきって聞かない。

ビデオカメラは全長45センチ重量2.8キロで、「絶対に自分で持ってよ!」と念押しするが、娘を抱っこするのは旦那なので、なんやかんやで私がカメラ係を任される。一眼レフも首からぶら下げ、銃弾ベルトを体中に巻きつけたランボー(映画『ランボー』の主人公)みたいになってしまう。スマホでも高画質な動画が撮れるこのご時世、なんでこんなでっかいカメラを持ち歩くんだよ! 子供がいるってだけで大変なのに!

本日は晴天なり
ランボースタイルで出かける私

この日はとても晴れていて暑く、GWに突入しており人も多かった。パンダだけ見てさっさと帰ろう。そう思っていたが、大人の我々もゾウやキリンを見るのは久しぶりすぎて、デカいな……!とひるんだりして楽しんでしまった。

パンダエリアに到着したと思ったら、なんと50分待ちだった。私ひとりなら絶対にあきらめていたけど、娘の経験値のために並ぶ。こんなに並んだのは推しの握手会やグッズ購入以外では30年ぶり、小学生のころ、まだファストパス制度などなかった時代のディズニーランドでしか経験がない。

絶対に記憶に残らない、あるわけない。見てもリアクションするような月齢でもない、なんならおもちゃと動物の違いをわかってない、たどり着くころには寝るかもしれない……。それでも、パンダに会った経験値をプレゼントしてあげたいという、もう完全に親のエゴで50分並ぶ。待機列は前もうしろも観光で来た外国人だらけ。誰も日本語を話してない。うちの夫も韓国人なので、まわりは私と娘以外外国人だ(娘も半分は韓国人だけど)。

日差しが強く、日陰が少ない。レンタルのベビーカーは日よけの部分は壊れており、ビヨヨーンと後ろに戻ってしまう。赤ちゃん用の日焼け止め、帽子、日傘、ハンディファンをベビーカーにくくりつける脚みたいなやつ……必要なものはすべて準備して出かけたつもりが、あれもこれも足りないことに気づく。慣れないベビーカーにグズり出す娘。抱き上げてお互い汗ダクになっていく。

それでもついにパンダと対面。パンダの目の前エリアは1分のタイマーが鳴ったら移動しなければならない。我が子とパンダの共演を撮影するのに必死であまりちゃんと見れなかったが、ミッションコンプリート。プールの授業後のような疲労感で動物園をあとにした。

帰りに夫のワガママでアメ横に寄って海鮮丼と牡蠣を食べた。ヘトヘトですぐ帰路につきたかった私は「テメーのために上野まで来たわけじゃねーんだよ!」と、……さすがにここまでは言わなかったが、ほぼこれに近い罵声を浴びせた。

止まらない旦那のわがまま

上野動物園を経験して我が子と出かける喜びを知った旦那は、「どうしても熱海旅行に行きたい」と言い出した。動物園から10日ほどしか経っていない。行楽というものはそんな頻度で詰め込むものじゃないと説得したが、旦那は育休終了までのカウントダウンに恐怖を感じているらしく、今のうちにいっぱい遊ばなくちゃ!と焦り出していた。

もうここまでくるとツッコみたくもないけど一応言うと、育休は旅行や行楽を楽しむ休暇ではない。私が「やらなきゃいけない仕事があるから10日待って」と伝えても、「熱海なら新幹線ですぐだよ!」「オーシャンビューのホテルが今年一番安い日だって!」「パソコン持っていこう! 仕事していいよ!」と、1日4、5回はしつこくプレゼンしてくる始末。

泊まりたすぎて、「目の前までわざわざ見に行ったことがあるくらい憧れのホテルなんだ!」と熱弁され、このまま毎日プレゼンされるほうがストレスだと感じた私は、いっそさっさとすませてしまおうと考え、旅行を承諾した。

浮かれまくった旦那は、私になんの相談もせずにベビーカーを購入。さらに、娘には先日購入したよそいきの洋服を着せたがる。「これは夏用に買ったからまだ寒いんじゃない?」と伝えても、「この服を熱海で着てるところがどうしても見たい!」と言って聞かなかった。

熱海でも募るイライラ

やりたいことを押し通す姿勢が煩わしい反面、娘が産まれて初めての家族旅行で私のワクワクスイッチもオン。「じゃあ、髪をしばるゴムは服と合わせてコレ!」「靴下も色を合わせてコレ!」と、まんまと一緒に浮かれ始めた。しかし、浮かれすぎて大人のための旅行にならぬよう、必ず娘最優先、娘ファーストで行動することを約束した。

大人は替えのパンツと靴下のみ。私は日常的にすっぴんなのでメイク道具も持たない。娘の荷物は予備の服を何着も持ち、おむつは10枚以上、タオル、体温計、日焼け止め、母子手帳、鼻水吸うやつ、おもちゃ3種、離乳食、哺乳瓶などでパンパン。加えて、いつものバカデカカメラと一眼レフ。ベビーカーを購入したことで大荷物でもラクにはなったが、熱海でも私はランボースタイル。

本日は晴天なり
バカデカカメラに道行く人も「なんかのロケしてるよ」と振り向く

ホテルに到着後、さっそく旦那のワガママが炸裂する。
旦那「温泉に入れたい!」
私「チャットAIに聞いたら熱いからやめておきましょうって言ってる!」
旦那「せっかくの温泉なのに入れないなんてかわいそう!」
私「ホテルのHPにおむつの子は温泉入れないって書いてあるよ!」
旦那「コップに入れて温泉持ってくる! パチャパチャ触らせてあげたい!」
私「ダメだよ!」
子供ファーストってそーゆう意味じゃない。

さらに「海に娘の足をつけてちゃぷちゃぷしてあげたい!」と言い出し、海岸まで行きベビーカーで砂浜に突っ込む。
旦那「ここ、ちょっとゴミが多い、あっちで入れたい」
私「一緒だよ! 変わんないよ! ここでいいって!!」
旦那「やっぱりアッパ(パパ)も靴脱いで一緒に入る!」
私「脱がなくていいよぉ~! 早く終わらせて帰ろうよぉぉ~!!!」

私だって最初からこんなに文句垂れ垂れ状態なわけではない。ここにたどり着くまでに熱海の坂を何度か往復しているのだ。42歳の膝が大きな悲鳴を上げていたが、我が子が初めて海に足をつける瞬間を捉えるべく、約3キロのビデオカメラと一眼レフとスマホカメラを構えて汗ダクなのだ。文句だって言いたくなる。やっとの思いで娘を海にちゃぷんとさせ、すぐに撤収。

本日は晴天なり
ベビーカーで海へ

駅に着くと、
旦那「温泉がダメだったから駅前の足湯につけてあげたい」
私「さっき道端にある源泉に触ったからやらなくていいでしょ!」
と、海にいるときとほぼ同じやり取りをした。なんでずっと液体に娘の足をつけたがるんだよ!

ほぼ旦那のやりたいことを叶える旅だったが、私が撮影した動画をいつか娘と見る日が来たらそれでいい。

家に帰ると、すぐに翌週の旅行の話をし始めた。女子プロレス団体「STARDOM」の「中野たむvs上谷沙弥敗者引退マッチ」で、ふたりがスモークに包まれる幻想的なシーンを見て、「草津の湯畑にいる娘が見たい」と言い出した。どこからインスピレーション得てるんだよ。今、このコラム書いている間にもしつこく旅行のプレゼンは続いている。

実は韓国人旦那が長年の夢だった一戸建てを購入した。外国人が日本で家を買うには、ローンを組むために永住権を取得したり、その永住権がなかなか取得できなかったりとひと筋縄ではいかなかった。

やっとのことで購入したマイホームだが、絵に描いたようなトラブルが発生し、売主と提訴寸前の事態に発展している最中だ。今後の展開はブログに綴っていくので気になる人はそちらものぞいてみてほしい。

離婚、再婚、不妊治療……トラブルも多く、きっとこの先も幸せだけじゃないが、それも楽しみながら、私の人生は続いていく。

この記事の画像(全6枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

本日は晴天なり

Written by

本日は晴天なり

太田プロダクション所属のピン芸人。キャバクラバイト歴10年、身長173センチの長身女子。推し事が中心の日常も、YouTube『本日は晴天ちゃんねる』にて垂れ流し中。

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。