タイは「何もしない」をしに行く国。グルメ&飲酒旅はもちろん、ワーケーションなど楽しみ方の極意教えます

2025.3.22

編集=菅原史稀


毎年、日本各地でも『タイフェスティバル』が開催されるなど、かねてより人気の観光地として知られるタイ。近年では、タイドラマやT-POP(タイポップス)などの人気に火がつき、2024年には日本からの観光客数は100万人を超えたというニュースも。

では実際、タイは日本に住む私たちにとってどんなところが魅力的なんだろう? 「辛いものは苦手」「寺院など定番の観光地には興味がないし……」という方にこそ知ってほしい楽しみ方の極意を、タイカルチャー好きのライターが滞在レポートとともにご紹介。

タイのタクシー運転手に思う「人生ってこうじゃなくちゃ」

「タイに行ってきた」と言うと、「象に乗った?」「虎と遊んだ?」などと聞かれるのがデフォルトですよね。

しかし私は、タイに何もしに行きません。「何もしない」をしに、タイに行きます。人生のモラトリアムです。

前回タイを訪れたのは、11月末のこと。それからしばらく行くことができていないため、とっくにタイの効能は切れています。しかしちょうど乾季に入るタイミングだったこともあり、雨もなく暑くもなく、とても心地よい滞在でした。

心地よいということは、すなわちハイシーズン。最高値の時期とまではいかずとも、円安バーツ高の影響もあり、やや割高でした。今回、利用したのはAir Japan。私は、荷物は少ないのですが、座席は絶対に選びたいタイプ。結局、往復8万円ほどかかりました。直行便で、6時間ほどあれば到着します。

Air Japanの利用は今回が初めてだったのですが、足元が広々としていて快適。韓国の大雪の影響で帰国便の出発が5時間遅れたのですが、軽食のサービスがありがたかったです。

タイ国際航空はフルキャリアですが、時期によっては往復6万円ほど。機体によっては飛行中の外の映像が見られるところと、紫を基調とした内装とアメニティがお気に入りです(ただし寝ていようがなんだろうが、機内食の配膳時に元気よく叩き起こされる点は、おもしろいけどたまにやめて……と思います……)。ZIPAIRはWi-Fiが使える点がおすすめ。私は基本、この3社のうちどれかを利用しています。

 

タイは、宿代がさほど高くつかないこともおすすめできるポイントです。それなりに広く、それなりにきれいで使い勝手のいいホテルに、それなりの価格で宿泊することができるため、個人的にはこまごま行き来するよりも、一度行ったら長く滞在するほうが得だなと思います。

今回は日本から仕事を持っていき、ワーケーションのような滞在だったので、ホテル選びでは過ごしやすさを重視しました。急に決めたタイ行きだったため、1週間続けての宿泊が取れず、3カ所のホテルを利用したのですが、おなじみのところから初めてのところまで、どれも快適でした!

29階からの眺め。昼も夜もきれいでした。

私が宿泊するのは、Phrom Phong駅近く。仕事がしたいならここ、寝るだけならここ、贅沢気分を味わいたいならここといった具合に、徒歩圏内に3~4カ所お気に入りを見つけてあるのですが、毎回1カ所は新しいホテルを開拓しています。

選ぶ基準は、あくまで個人的にですが

大通りから近いこと(駅から歩いて帰るときに安全)
飲食店から少し離れていること(虫が出ない)

旅行サイトの口コミも、わりと信頼できると感じています。運がいいのか、そういうものなのかはわかりませんが、私はタイのホテルで嫌な対応をされたことは今のところありません。でも、やはり「海外である」ということは常に頭に入れておくようにしています。

タクシーが安いのもうれしい(混むので、予定があるときは要注意)。

余談ですが、タクシーの運転手さんはいろいろな方がいます。Grab(配車もできるアプリ)で呼んだ場合は、すごく楽しくお話ししてくださる方、逆に何も話さず、静かに丁寧に運転してくださる方など、いい方にしかお会いしたことがないのですが、道ゆくタクシーは……。

特に夜になると、「僕はそっちの方面に帰らないから」と、スパッと乗車拒否されます(笑)。仕事とプライベートの切り分けが潔く、人生ってこうでなくちゃなと、毎回思います。在タイの知人、タイ語が話せる知人といるときしかタクシーをつかまえることはありませんが、すんなり乗れたことはあまりないかもしれません……。

街中で芸能人に遭遇するチャンスも

タイのデパートやショッピングモール、映画館では、芸能人が登場するイベントがしょっちゅう開催されています。こうしたイベントは、2月のバレンタインシーズン、4月のソンクラーン(タイの旧正月)、12月のクリスマス&年末年始に多い印象です。

今回の旅では、そうしたイベントに遭遇することはなかったのですが、タイ映画を観に行った際にDaouさんの記者会見を見かけました。

試写日だったようで、出演者はもちろん、試写を観に来た芸能人、お祝いにかけつけた芸能人もごく普通に歩いています。近くで会見を見たいファンはきちんと整列して待機していますが、ただ見るだけなら、そこにいる誰でも見ることができます。映画館全体がイベント会場といった雰囲気でした。

それから、知人に誘っていただき、THE TOYSのパブライブに行ってきました。無料でビール4本がついてくるサービス。最高の時間でした…。

気のせいか、タイにいると水かのようにビールを飲んでしまいます。水なのかもしれません(そんなことはありません)。氷を入れて飲むのがおいしいですよ。

 

THE TOYS登場までのDJタイムも、タイのみなさんのノリが本当に楽しい! ライブは言うまでもなく素晴らしく、こんなにも狭いハコで、平日夜にTHE TOYSのライブを楽しめるなんて……夢のようでした。

ちなみにタイでは、アリーナやホールなどで行われるライブやイベントでは、飲み物の持ち込みが禁止されていることが多く、注意が必要です。

とはいえ、たいていの場合は飲料メーカーがスポンサーブースを出しているため、そこで買ったドリンクなら持ち込むことが可能。ゆえにカラッカラの脱水になることはめったにないのですが、そもそも販売がない場合や、アルコール類しかない場合もあり、個人的にライブやイベントへの足が遠のく水分問題。

以下、在タイの知人にも「かなりレアケース」と言われたのですが、体験談をひとつお話します。この方法が通るんだ!ではなく、タイには優しい人がいるんだな、くらいで受け止めていただければ幸いです。

私がタイで初めて参加したイベントは、ドリンク類の持ち込み禁止でした。完全に、事前に調べなかった私の落ち度です。荷物チェックで当然、没収されたのですが、そこは、近くに自動販売機やコンビニといった、水をすぐに入手できる環境がなかったため、一気に不安になりました。

というのも私には持病があり、まれに起こる発作の出始めには頓服の薬を飲む必要があります。ダメでもともと、スタッフの方に「薬を飲まなければならなくなったとき、すぐに水が欲しい。私の水を捨てずに、ここに置いておいてもらうことは可能ですか? その場合は、場内に戻らず退場します」といったことを、何度も翻訳機にかけて誤りがないかを確認し、伝えてみました。

そうしたら、「それはできない」と。そうですよね。しかし、「ついてきて」と案内されたのは救護所。そこで“報連相”をしてくださり、まず救護スタッフに薬を見せるよう言われました。

薬をチェックされたあと、差し出されたのは手のひらサイズのペットボトル。そして、「これだったら、会場に持って入っても大丈夫。中で飲んでもいいよ」と……! お金もいらないと言われました。

心配していたとおり、イベント中に一度だけ薬が必要になりました。周囲の目も気になるため、サッと退席し、いただいた水で服用していると、私を救護所までつないでくれたスタッフさんが「大丈夫?」と声をかけてくれました。しばらくして落ち着いた私は、「楽しんでね」の言葉に送り出していただき、再び会場に戻って最後まで楽しむことができました。

初めて参加したイベントで、こんなにも親切なスタッフさんに会えたことは、本当に幸運という言葉では言い尽くせないほどの幸運でした。繰り返しになりますが、レアケースだと思います。

ただ、どうしても水が必要で、売ってもいない、買いに行ける場所にもないと困った場合は、倒れる前に退席して、救護所に相談してみてください。会場内には戻れないかもしれませんが、頼れる人がいるはずです。健康と安全を第一に、ライブやイベントを楽しみましょう。

スイーツからハーブ鍋まで! バラエティ豊かなタイグルメ

次はタイ料理のお話。デリバリーやコンビニ(冷凍食品)が安くておいしいので、ついついそれに手を伸ばしがちなのですが……せっかくの旅行ですから、なるべくおいしいものを食べるようにしています。

ここ最近、必ず足を運ぶのが、某ホテルのひとり用アフタヌーンティー(440バーツ)。2段(軽食とデザート)、ドリンク、ジェラートつきです。なかなかひとりでアフタヌーンティーを楽しめるお店は少ないと思うし、味もサービスも居心地も立地もいいので、気に入っています。

11月の渡タイでは、初めてムーガタ(タイ式焼肉としゃぶしゃぶが一緒に楽しめる料理)を食べました。私は単独行動が多いので、なかなか焼肉や鍋などを食べる機会がなく……。名前は忘れましたがThong Loの駅近く、すぐそばだったと思います。あっさりしたものが食べたい方は、チムチュム(イサーン地方のハーブなどが入った鍋)がおすすめ。Ratchathewi駅近くのお店に行ったことがあるのですが、信じられないほど安くておいしかったです。きれいで、日本人にも優しくて、また行きたいお店のひとつです。

Thong Loでは、大通り沿いのおかゆ屋さんにもよく行きます。飲んだあとに行くのですが、延々と食べられるので本当によくない。おかずをおかゆに乗せて食べるのがおいしいです。

ムーガタ

今回は、Sukhumvitにある人気タイ料理店にも行ってきました。ほかにもいくつか、おいしかったお店の写真を載せておきます。

最後に! おすすめはなんといってもマッサージです。とにかく安い。こればかりはいろいろ行ってみてお気に入りを見つけるしかないと思いますが、私の行きつけは60分350バーツ(1540円くらい)、生き返ります。60分1000バーツくらいのお店もありますが、それでも日本円に換算すると5000円しないくらいですから、お安いのではないでしょうか。滞在中、3回はマッサージに行きます。

忘れてはならないのがチップです。マッサージ店なのか、高級スパなのか、何分のコースなのかによりますが、私はマッサージ店で60~90分の施術をしていただいた場合、100バーツをお渡ししています。愛と感謝を込めて。

なかなか休みが取れず、次にタイに行くのは5月ごろかなと思っています。毎回、次に行ったらあれをしよう、ここに行こうと考えるのですが、だいたい何もしないまま終わるんですよね。カフェに行き、ぼんやり街を見て、大きな窓のあるホテルで仕事をして、都合が合えば友人とご飯を食べて。少なくとも1本は映画を見て、書店をのぞき、マッサージに行って……買い物に行って、博物館に行って、ボートに揺られて、寺院に行って。タイで日常を過ごすのが楽しいです。暑い国なので知らず知らずのうちに疲れるのか、夜よく眠れるところも好きです。 

ぜひ日常のすべてを忘れに、タイに行ってみては。

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