TOMORROW X TOGETHER、4大ドームツアーの初日で見せた“一緒にいる奇跡”「次に戻ってくるときには…」

2024.7.19
『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC

文=坂井彩花 編集=森田真規


2023年の夏、京セラドームでの公演を成功させたTOMORROW X TOGETHERが、ついにK-POPアーティスト史上最速となる4大ドームツアーをスタートさせた。ツアータイトルは『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』。「僕たちが共に過ごす明日を約束し、共に未来と希望に向かって進む」というメッセージを掲げ、東京、大阪、愛知、福岡の4都市を回っていく。

本稿では、ツアー初日となった7月10日、東京ドーム公演の様子をお届けする。なお本公演は、足の甲を骨折していたBEOMGYUの意志を尊重しながらも、彼の快復を最優先にした演出を採用。BEOMGYUが歌で参加する曲、BEOMGYUのパートに代理のダンサーが入る曲、BEOMGYUを除く4人でパフォーマンスする曲といった3つの魅せ方を駆使し、現状での最善を追求し構築されていた。

5人で立った東京ドームの舞台

7月の初めともなると、暗転していても陽の気配がある17時の東京ドーム。薄暗い会場には光の宿ったMOA棒(ペンライト)が輝き、今か今かと5人を待ち構える。オープニングムービーとパフォーマンスでライブが封切られると、オーディエンスは瞬く間にTOMORROW X TOGETHERが創り出す物語に飲み込まれていった。

「Deja Vu [Japanese Ver.]」とともに現れたメンバーは白い衣装を身にまとい、直前の映像からそのまま抜け出てきたかのよう。スクリーンにひとり、またひとりとソロで映し出されるたびに黄色い歓声が飛び交い、彼らが待ち焦がれられていた事実を鮮明に描く。

「9と4分の3番線で君を待つ(Run Away)[Japanese Ver.]」では、ステージの至るところから炎が噴射。瑞々しいエネルギーがほとばしる彼らを華やかな舞台効果が彩り、その生命力をより生き生きと光らせる。5人で堂々とステージに立ち、しっかりと幕開けを飾った。

MCでは「いつもうるさいBEOMGYUが静かだと変な感じですね(笑)」「BEOMGYUは治療中だけど、MOA(TOMORROW X TOGETHERのファンネーム)との約束を守るために一緒に来たんですよね」と話し、和気あいあいとしたムードが流れる。いつもどおりの5人を感じさせるフラットなトークからは、イレギュラーなステージだとしても深刻になりすぎないようにしよう、という思いが伝わってくる。BEOMGYU自身も「だって、MOAに会えないほうがつらいから。僕にとっては一番の薬なので」と気丈に振る舞い、健気な姿に会場中が沸き立った。

TAEHYUNが「いつも僕たちを幸せにしてくれるMOAに言いたいことがあります」と宣言し、伸びやかな歌声で“I love you”と唱えると、導かれたのは「0X1=LOVESONG(I Know I Love You)feat. 幾田りら [Japanese Ver.]」。HUENINGKAIが切なく苦し気な表情で魅了したかと思えば、SOOBINはフロントに立っただけで空気を掌握。

BEOMGYUのパートにダンサーを迎えてのパフォーマンスとなったが、BEOMGYUが舞台上にいないからといって、けっして未完成というわけではない。このスタイルとしては、表現したいものがしっかりと作り上げられており、その事実が「BEOMGYUが戻ってきたら、どんなにすごいのだろう」とオーディエンスの胸をときめかせる。

YEONJUNのセクシーな笑みが観客を悩殺した「Devil by the Window」、扇を用いてダンサーたちとともに舞う「Sugar Rush Ride」、ムーディーなサウンドに艶っぽい声が映える「Farewell, Neverland」と次々に展開。時にはインタールードやダンサーだけのパフォーマンスも取り入れながら、ストーリーを進めていく。

SOOBIN/『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC
SOOBIN/『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC
YEONJUN/『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC
YEONJUN/『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC
BEOMGYU/『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC
BEOMGYU/『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC
TAEHYUN/『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC
TAEHYUN/『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC
HUENINGKAI/『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC
HUENINGKAI/『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC

一瞬一瞬に命が煌めいているステージ

スカジャンとデニムを基調とした衣装へチェンジすると、グルーヴィーな「Chasing That Feeling」を投下。ステージに射す5色のライトは、言葉なく「どんなときでも5人の心はひとつ」と謳っているかのようだった。間髪入れずに「Magic」へつなぎ、ハッピームードを継続。ニコニコと自然体な笑みをこぼしながら繰り広げられるパフォーマンスは、等身大の彼らを想起させる。飛んだり跳ねたりクラップしたり、一つひとつのモーションで魔法を弾けさせていった。

2度目のMCでは、愛嬌を披露したり、MOA棒を使ってファンとコミュニケーションを取ったり、SOOBINがKARAの「GO GO サマー!」を踊ったり。楽曲のパフォーマンス以外にも楽しめる要素がふんだんに盛り込まれ、瞬きする間すら惜しいと思わせてくれた。

チャーミングな姿をたくさんのぞかせておきながら、曲が始まると即座に作品の色をまとうのもTOMORROW X TOGETHERの魅力のひとつ。SOOBINが「次のステージ、最高に盛り上がってくれますよね。行ってみよう!」と呼びかけると、バンドサウンドが印象的な「New Rules」と「LO$ER=LO♡ER」を披露し、ロックスターたるオーラを放つ。

迫力ある音像に声が負けていないのはもちろん、TOMORROW X TOGETHERは一人ひとりからあふれ出てくるエネルギーが凄まじく瑞々しい。勘違いを恐れずいうならば、彼らのステージは一瞬一瞬に命が煌めいている。生命力がほとばしり、今あるすべてを目の前の一瞬にかける。常に全身全霊を尽くす生き様が、観る人の心を震わせているのだと思わずにはいられない圧があるのだ。

だからこそ、想いを込めた言葉にもぎゅっと重みが乗るのだろう。「きっとずっと (Kitto Zutto)」で“約束するよ”と唱えるHUENINGKAIの力強さたるや。機関車を模したトロッコに乗り込んだメンバーは、アリーナ席の外周をゆっくりと巡回。続く「Force」との2曲分の時間をかけ、目の前にいるMOA一人ひとりと気持ちを交わしていく。「Thursday’s Child Has Far To Go」ではTAEHYUNがスクリームを煽り、熱狂がこの瞬間に生まれていることを、まざまざと描き出していた。

『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC
『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC

「今日、一緒にした大事な約束を忘れないでください」

ユニットステージは、BEOMGYU・TAEHYUN・HUENINGKAIの3人組とSOOBIN・YEONJUNの2人組といった構成だ。先行の末っ子組+BEOMGYUが、青空のように晴れやかな歌声を「Quarter Life」で響かせたかと思えば、お兄さん組は「The KILLA」で極量超えの色気を解放。ユニットによる振り幅のあるパフォーマンスは、個性をかけ合わせることで、どんな色でも作り上げられるのだと誇示しているかのようだ。グループ名に込められた想いに違わぬ、眩いばかりのシナジーを発揮していた。

それぞれのレールを歩いていた5人が集うVTRを挟み、いよいよライブはラストスパートへ。星空の映像を背に憂いのある声色で「Dreamer」を歌い上げ、「ひとつの誓い(We’re Never Change)」ではリボンを用いた麗らかなダンスを披露。演目に込められた物語を、穏やかに終幕へと連れていく。

本編ラストのMCになると、HUENINGKAIが「僕たちTOMORROW X TOGETHERは、すべての約束を必ず守るから。MOA、僕たちと約束できますか!」と呼びかける場面も。SOOBINも「今日、一緒にした大事な約束を忘れないでください」と念を押し、会場のMOAからは「ネ!(韓国語で“はい”の意味)」と元気な声が響いた。最後は「I’ll See You There Tomorrow」で締めくくり、盛大な紙吹雪とともに爽やかなパフォーマンスを刻んだのだった。

アンコールで再び現れたメンバーは、白のTシャツにパンツというシンプルなスタイル。自分の中にある想いを呼び起こすように「Magic Island」を紡ぐさまは、デビューからの5年4カ月を愛しんでいるようだった。

『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC
『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC

BEOMGYU「5人以上のエネルギーを作り上げてくれた」

オープニングからアンコールまで、一寸の不安も香らせることなく、プロ意識の高いステージを作り上げてきたTOMORROW X TOGETHER。ひたむきな姿勢が崩れる瞬間は一度たりともなかったが、胸の中ではたくさんの想いを抱えて舞台に立っていたのだろう。最後のMCでは、ここまで走りきったからこその言葉たちが吐露されていく。中でも、ケガによってパフォーマンスが制限されていたBEOMGYUの言葉は胸に刺さるものがあった。

「実は昨日もそうでしたし、今日もそうだったんですけど、リハーサルをしながらすごく残念な気持ちになりました」と、瞳を潤ませる。しかし、懸命に気持ちを立て直し「すぐ治るとみんなに伝えたんですけど、思ったよりもなかなか治らなくて、すごくもどかしい気持ちになりました。でも、僕がいないステージでも4人で、5人以上のエネルギーを作り上げてくれたメンバーのみんなに本当に感謝しています。そして、早くよくなって素敵なステージをお見せしますので、少しだけ待っていてくださいね」と告げ、「次に戻ってくるときには、イスが必要じゃない少年となって戻ってきます」とおどけてみせた。

また、SOOBINの東京ドームへの思い入れもひとしおだったようで、「僕はこの東京ドームのステージを10年以上ずっと夢見てきました。こうやって僕が夢を見られるくらいにしてくださって、僕の夢を叶えてくださって、MOAのみなさん本当にありがとうございました」と語り、言葉を詰まらせる。そして、「今日は一生忘れられない一日になると思います。明日もきっとそんな一日になるだろうと思います。本当にありがとうございました。次回は5人が元気な姿で、また東京ドームに来られるように応援をよろしくお願いします」と告げ、MCを結ぶ。

ラストは「Miracle」で“一緒にいる奇跡”を噛みしめ、「紫陽花のような恋」で“君の望みを叶えたい”と辛抱強い愛情を唱える。MOAへの想いを伝え抜き、渾身のライブを締めくくったのだった。

『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC
『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC

イレギュラーな構成で走り出した『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』。東京ドームで歌い踊る5人が観たかったのは言うまでもない。しかしながら、現状での最高を5人が追求していたのも、また事実。どのパフォーマンスにも満ちていたフレッシュなエネルギーは、BEOMGYUが復活することでパフォーマンスがさらに磨かれる未来を確信させるにはじゅうぶんすぎるほどだった。この経験を経て、彼らはさらに躍進していくのだろう。再び、彼らと東京ドームで会う約束を果たす日が、今から楽しみでならない。

『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC
『TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE> IN JAPAN』より (P)&(C) BIGHIT MUSIC

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坂井彩花

(さかい・あやか)1991年、群馬県生まれ。ライター、キュレーター。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。『Rolling Stone Japan Web』『Billboard JAPAN』『Real Sound』などで記事を執筆。エンタテインメントとカルチャーが..

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