ヒグチアイ×吉住「周期的に『やめてぇ〜』って思う」“やめたい気持ち”との向き合い方は?
どんなに好きなことをしていても、自分が思い描いていた将来が現実になろうとも「あ、やめたいな……」と思ってしまうことはないだろうか。
2021年11月24日に配信リリースされたヒグチアイの『やめるなら今』は、誰もが直面する理想と現実、その中で生まれる葛藤、その末に迫られる決断をテーマにした楽曲だ。
今回は楽曲を制作したヒグチアイ本人と、同曲のミュージックビデオに出演した吉住にインタビュー。ふたりの葛藤っぷりや、決断軸について話を聞いた。
目次
やる気がない気持ちを楽曲にした『やめるなら今』
──まずは11月24日に配信リリースされた『やめるなら今』を制作した経緯、曲に込めた想いを教えてください。
ヒグチアイ(以下:ヒグチ) もともとは完全に自分のための曲でした。自分がただやる気がなくて、曲がなんにも書けないのに、締め切りだけが迫ってきて、思ってることを、そのまま書いてるうちにできたんです(笑)。
ただ、タイトルが『やめるなら今』ということもあり、何かをやめようと思って聴き始める人も多いんだって最近気づきました。ただ、この曲を聴いて、つづけたいと思ってるものに素直になってほしいなとも思います。
──吉住さんは、『やめるなら今』のMVに出演されています。最初楽曲を聴いたとき、どう思いましたか?
吉住 すごくおこがましいですけど、私に当て書きされたのかなと思うくらい染み込んできました。
ヒグチ えー! うれしい。
吉住 ちょうど「(芸人を)やめてぇ〜! もうやだ〜!」って思ってたタイミングだったんですよね(笑)。でも、聴いているうちに「そうなんだよなあ。やめられないんだよなあ」とも思いましたし、なんだかすごく力をもらいました。
──なぜでしょう?
吉住 正直、ピン芸人だから、やめるも進むも自分次第なんですよね。でも、ヒグチさんがひとりで作った曲を聴いて、私はパワーをもらうことができた。その事実に、私みたいな人間でも、もしかしたら誰かに力を与えているのかもしれないと思うことができたんです。自分以外にも、ひとりでがんばっている人の存在を感じられるのは力になりますね。
『やめるなら今』MVは「ただただ、吉住の日常」
──MVを撮影する際に、意識したことなどがあれば教えてください。
吉住 ヒグチさんから「歌詞を感じてほしいです」と言っていただいたので、ありのままの自分で挑みました。その結果、お部屋以外は、ただただ吉住の日常になってしまい、今は「大丈夫だったかな……」って不安です。
ヒグチ めちゃくちゃよかったですよ。ずっと聞きたいことがあって、100円ショップで棚の上のほうにあるマスクを取れないシーンがあったじゃないですか。あのマスクは、結局取れたんですか?
吉住 あのシーンは、撮影し終えたあとで監督が「取りましょうか?」と来てくれて、取れました。演出でなく本当に取れなくて困ってるのに、ずっとカメラを回してるから、なんでカメラを置いて助けてくれないんだろうと思ってたんですが、最後に取ってくれて「いじわるされてたわけじゃないんだ」って安心しましたね(笑)。
ヒグチ なるほど。でも、あの感じすごくリアルでしたよね。なんだかスーパーでお米を買ったときに、2リットルの水を買うか買わないか悩んでいる自分と重ねてしまいました。
吉住 性格的に、店員さんにお願いできるタイプでもないので、心の中では「早く取ってくれ!」でしたけどね。
周期的に訪れる「やめたいゾーン」。その抜け出し方とは
──先ほど吉住さんは「やめてぇ〜」って思っていたとお話しされていましたが、おふたりは夢や仕事をやめる、やめないで悩んだことはありますか?
吉住 私は「やめたい」と「がんばろう」の波があるタイプなので、よくあります。ただ、悩んだという意味では3年くらい前に、自分が納得できるものを全然生み出せなくなってしまった時期があって、そのときはけっこうきつかったんですよね。一応ジタバタしてみるし、「作らなきゃ」という焦りはあるんだけど、モチベーションがないみたいな。
ヒグチ わかるな〜。
吉住 私は、けっこう怠惰な性格なので、自分を追い込んで何かを生み出すために、年に1回単独ライブをするんですけど、好きなネタが生まれなくて「もう潮時かもしれないな」と思ったことがあったんです。ネタを書くことって、自分のこれまで生きてきた人生の中からしか生み出せないから、それがうまくいかないとなると、自分の人生が全否定された気分になっちゃうんですよね。
ヒグチ 音楽においても、そういう瞬間ってあります。あの期間ってすごくきついですよね。そこまでいくと「売れる」「売れない」とか、何人の前でライブしようとかは関係なく「やめたい」ってゾーンに入っちゃう。それで「誰かのために音楽をやっているわけじゃないんだな」ってことに気づいたことが何度かあります。
吉住 うんうん。結局のところ自分のためにやっていることだし、すごく好きなんだなと気づかされるんですよね。こんなにも心が揺さぶられるものって、きっとコントしかないし、この感情の起伏がなくなってしまったら、今よりもつまらない人生になってしまうだろうなって。
それに「やめようかな」と思ったときに限って、たまたま入ったお店で「あれ? なんかネタによさそうだな」とか考えちゃってる自分がいる。それに気づいて「まだ全然諦めてないじゃん」って思っちゃうんです。
──おふたりにとって「やめよう」と思うのは一大決心ではないんだなと感じました。
吉住 確かに。周期的に訪れる存在になってきていますね。コントロールできるもんじゃないんだなっていうこともわかってはいますし、絶対に「書きたい!」って思える時期が来るのもなんとなく理解しているので、自分に負荷をかけないように、とことん甘やかすようになりました。
ヒグチ 海底にいても、少し経てば浮上できるようなイメージもありますからね。私の場合「やめたい」ゾーンに入ったときは、とにかく生活を充実させようとしちゃいます。結局、のちに楽曲を作るときにつながる可能性はあるし、それでいいのかなって。
吉住 生活を充実させるって、具体的に何をされているんですか?
ヒグチ ここ最近は、とにかく筋トレしています。私の場合、気持ちとは関係なく、体は動かせるタイプだし、歌を歌う上でもプラスになるからいいかなって。
吉住 すごい落ち込んでいた友達が2週間後ぐらいにムキムキになってたら、ちょっと笑っちゃいますけどね(笑)。でも「落ち込んでても、めっちゃ生きようとしてるんだな」って安心するかも。
「自分の人生を年表で書く」「ライブを観る」……焦りとの向き合い方
──おふたりとも「やめたい」と思う気持ちが周期的だからこそ、やりたくなるまで待つようにしているんだなと感じました。その一方で「いつまで待つんだろう」と焦ることはないんでしょうか?
ヒグチ ありますよ。そういうときは、自分の中でずっと考えたり、自分の人生の年表を書いたりして、思い出せなかった感情を思い出しながら、少しずつ自分に返っていくようにします。
吉住 私の場合は、まわりに「どうやって立ち直りますか?」と聞いたりはするんですけど、結局そんなに受け取らないことも多いんですよね。自分の気持ちを大切にしてみたり、新しい刺激を求めて、芸人さんの単独ライブを観に行かせてもらったり……。
ヒグチ 自分がダメなときに同業の方を見るのって、しんどくないですか?
吉住 時期によっては、つらい時期もありますね。1回目の緊急事態宣言のときに、みんながネットで発信する時代になっちゃったときはしんどくて、SNSも見られないし、テレビもつけられず、ひたすら映画や小説を読んで、違う世界線に浸っていました。
ヒグチ 私もできるだけ距離を取りたくなっちゃうので、すごくわかります。
吉住 でも、よかったこともありました。昔、先輩に「新しい笑いって、まだ何かあるんですかね」って相談したことがあったのですが、そのときに「ないよ」って言い切られてしまったことがあるんです。先輩としては「ないけど、見せ方はいろいろある」ということを伝えたかったみたいなんですけど、私的には「これ以上、がんばっても新しいものはないのか〜」ってショックだったんですね。
そのときに街裏ぴんくさんの独演会を観に行かせていただいて、ぴんくさんの漫談がすごくおもしろくてワクワクしたんです。それで「おもしろいものってまだまだたくさんあるんだ!」って感じて、なんだか希望が持てたんですよね。「私もおもしろいものを作りたい」って。
──もうひとつ気になったのが、「待つしかない」一方で、今回のヒグチさんのように締め切りが迫ってきたというときにはどのように気持ちの折り合いをつけるのでしょうか?
吉住 私はめちゃくちゃ逃げます。
ヒグチ わかる(笑)。
吉住 私みたいにネガティブな性格だと、焦っていいことって本当にないので……。自分のご機嫌を取ってあげて、生活を充実させる。追い込むことはしないです。
ヒグチ 追い込むって、本当に調子がいいときしかできないですよね。無理して追い込んでも潰れちゃうだけ。
吉住 そうなんですよね。自分で自分を潰しちゃうなんて、そんなバカみたいなことしちゃいけない。調子がいいときに追い込んだほうが「今日じゃなきゃ思いつかなかった!」と感じられることを思いつけたりもしますからね。
選択に迷ったら、決断軸は「後悔するか、しないか」
──「やめる」「やめない」に限らず、何かの決断を迷ったときの結論軸はありますか?
吉住 私は後悔しないかということですね。なんか悔いが残ってしまうと、その後うまくいかなかったときに「あのとき、ああしてればよかった」ってなるのがすごく嫌だなって思っちゃうんです。
ヒグチ 後悔しないかというのは一緒ですね。
あとは、私の場合、決断するというよりは片足を残したままにします。常に戻れるようにしておいて、もういよいよいらなくなったら、じゃあって切り捨てていくみたいな。結局のところ、いろんなものがつながっているので、それくらいでいいのかなと思うんですよね。
──もしおふたりのまわりで「(今の仕事を)やめようか」と悩んでいる人がいたら、なんて声をかけますか?
ヒグチ 本当にすごい性格が悪いんですけど、みんなやめてくれたらライバルが減るしいいのにと思っちゃいますね(笑)。
でも、「やめたい」と「やめる」の間に大きな差があることは理解しています。結局のところ、「やめたい」と言っててもつづける人はつづけるし、やめる人はやめる。自分の人生だから、そこの決断は自分で責任を持ってもらうしかないなと思っていますね。
吉住 「やめる」って決断もエネルギーがいりますからね。売れるかどうかなんて誰もわからないし、売れても幸せになれるとは限らない。そう思うと、正直その人の人生を背負い切るのは難しいなと思うので、たやすい言葉で引き止めることはしないですね。
ただ、手当たり次第止めることはしないけど、個人的にあともうひと踏ん張りっぽい後輩とかには「もうちょっとっぽくない?」とは言っちゃうし、とにかく後悔をしてほしくないので、話をしている間に「ちょっとつづけてみるか」って思ってくれたなら、それはそれでいい気はします。
ヒグチアイ『やめるなら今』
9月から3カ月連続で“働く女性”をテーマに新曲をリリースしているヒグチアイ。9月リリースの『悲しい歌がある理由』、 10月リリースの『距離』につづき、『やめるなら今』は11月24日に各音楽配信サービスで配信リリースされた。今回のMVにはピン芸人の吉住が出演し、働く女性の1日にフォーカスしたドキュメンタリータッチの映像に仕上がっている。
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