Wヲタク漫才で知られるお笑いコンビ・カラタチの前田壮太。推しへの思いだけを原動力に、ネタを作り、舞台に立っている前田だが、先日、推しである櫻坂46の武元唯衣がグループからの卒業を発表した。失意の中にいる彼は、これからどのように前に進んでいくのだろうか。卒業に対する心情から、これからの前田の芸人人生についてまで。3回の短期連載「推しメンの卒業に寄せて」として、綴っていく。
初回では、卒業発表を目にした瞬間の心情を明かす。
本当につらいときは感情が無になる
初めまして。吉本興業で芸人をやってます、カラタチというコンビの前田と申します。今回から3回にわたってQJWebさんで連載をさせていただくことになりました。
僕は普段から漫才でもヲタクを全面に出したネタをしています。
仕事の合間に「ミーグリ」と呼ばれる推しメンのオンラインお話し会に参加し、好きなグループのコンサートや握手会にはマネージャーさんに仕事をお休みにしてもらって参加する。そんな生活をもう何年も送っています。

「ヲタク」が本業で「芸人」が副業。
そんな僕ですが、先日、推しメンの卒業を経験することになりました。
僕の推しメンは櫻坂46の武元唯衣ちゃん。かれこれ8年くらい推しています。
そんな唯衣ちゃんが2026年2月5日の22:00に卒業を発表したのです。
あまりにも突然の出来事でした。仕事で大阪に行った帰りの新幹線。その日までに提出しなければいけないものがあり、スマホで作業をしていました。作業がひと段落したので、何気なくXのアプリを開きました。
するとDMの通知欄が大変なことになっていました。30通近くのDMが届いていたのです。
「前田さん気をたしかに!」「前田さん芸人辞めないでください!」「前田さん、生きてください!」などの文字が目に飛び込んできました。
バクバクする心臓。僕の身に何か大変なことが起きている。それだけはたしかでした。
スマホを持つ手は震えていました。
そして、「前田さん、唯衣ちゃんが……」「唯衣ちゃんが大変なことに!」という文字が僕の目に止まったのです。
唯衣ちゃん? 唯衣ちゃんがどうしたの?
震える手でXの検索バーに「武元唯衣」という文字を打ち込みました。すると僕の目に「武元唯衣 卒業のお知らせ」という非情な文章が。
時速300キロで走る新幹線の中で僕は推しの卒業発表を知りました。
頭の中真っ白。
のちに唯衣ちゃんの卒業発表を受けていろんなヲタクたちがSNSで心情をつぶやいてました。そこには「号泣してる」「涙が止まらない」という言葉や泣き顔の絵文字がありました。
ウソつけ。
本当にショックなときは涙なんて出てこないんだ! 感情が“無”になって、まわりの音が何も聞こえなくなるんだ!
「武元唯衣 卒業のお知らせ」という文章から目を背けるように新幹線の窓から外を見ると、外は真っ暗で景色なんて何も見えない。まるでブラックホールの中をものすごい速さで進んでいるような気持ちになりました。
とりあえず目を閉じました。受け入れるしかないんだ。
そして深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、次に僕が思ったのはこれでした。
「でも、熱愛スキャンダルのほうじゃなくてよかった」
実は卒業発表を知る前、「武元唯衣 卒業のお知らせ」という文章を見る前。大量に届いたDMに並ぶ「前田さん唯衣ちゃんが……」「唯衣ちゃんが大変なことに!」との文字を見て、僕は最初に「唯衣ちゃんに熱愛報道が出たんじゃないのか!?」と思ってしまったのです。
「卒業発表」と「熱愛スキャンダル」
ヲタクをやっている中で一番目にしたくないもの。
どっちのほうが嫌かは人それぞれでしょう。
僕は熱愛スキャンダルのほうが嫌です。
なぜか? 熱愛スキャンダルは推しメンのことを嫌いになってしまう可能性があるからです。そして誰かに強烈な嫉妬心を抱いてしまう可能性があるからです。
ヲタクの自分勝手な感情なのは重々承知しています。推しメンからしたらいい迷惑です。
「ガチ恋」という言葉がありますが、僕は「ガチ恋勢」なのでしょう。
もっと正確にいうと「自分のものにもなってほしいわけではないけど、誰のものにもなってほしくない」。だから卒業発表のほうでまだよかった。それが僕の素直な感情でした。
推しが卒業しても日常は続く
そうはいっても熱愛報道よりかは“多少マシ”くらいなもんで、卒業発表のショックはとんでもないものでした。
僕はお酒を飲まないのでお酒を飲みすぎた人が「どうやって家に帰ったか記憶ない」みたいなことを言ってるのがまったく理解できなかったのですが、今回初めてわかりました。
新幹線を降りてからどうやって家まで帰ったのか、記憶がないのです。推しメンの卒業発表はヲタクを酩酊状態と同じにさせるのです。
次の日の朝、財布から出てきたセブンイレブンのレシートを見て「あ、昨日帰りにコンビニに寄ったんだ」と知りました。
僕はユンケルを買っていました。酩酊状態でも無意識に自分を元気づけようとしていたみたいです。
人間の本能ってすごい。
22:00と遅い時間に卒業が発表されたのは、もしかしたら昼間に卒業発表したらヲタクが酩酊状態になり事故を起こしたり事故に巻き込まれたりするかもしれないからと、運営が心配してくれたんじゃないかと思ってます。
お風呂も入ったし、ご飯も食べたし、あとは寝るだけ。そんな時間に卒業発表をしてくれる優しさと残酷さ。
推しが卒業発表をしても、ヲタクたちには朝が来て現実を生きなければなりません。起きて学校や仕事に行かないといけません。
どうせ学校や仕事に行っても何も手につかないのに。
僕の場合は卒業発表の翌日にラジオの収録があったのですが、マネージャーさんがつき添ってくれました。
マネージャーさんは優しいので、その日、仕事の話をするときは「こんなときに申し訳ないんですが……」と言ってから仕事の話をしてきました。
マネージャーさんだけじゃありません。卒業発表から数日間はまわりの芸人も「こんなときにごめんね」と言ってから話しかけてきました。
一番申し訳ないなと思ったのは、福岡に移住した知り合いの作家さんから電話があり「前田さん、こんなときにすいません。実は先日子供が産まれまして……」とおめでたい報告にまで気を遣わせてしまったことです。
みなさん、本当にありがとうございます。そして本当にすいません。
これを書いてる今、卒業発表から数日が経っています。
正直、唯衣ちゃんの画像を見るだけで寂しさがあふれてきます。
卒業発表はされましたが、これを書いている時点では具体的な卒業日などはまだ発表されていません。スタートの数字がわからないカウントダウンが始まっている状態です。
「実は卒業するのは5年後です!」とか言ってくれないかな。そんな淡い期待もあります。
今はいろんな人に聞かれます。「卒業したらお前はどうするの?」
未来のことはわかりません。だってこんなに早く推しメンが卒業するなんて想像すらしてませんでしたし。
ただ、唯一わかってることは唯衣ちゃんが表舞台に立ち続ける限り、僕は武元唯衣を推し続けるということです。
武元唯衣、単推し。
ここに誓います。
僕は漫才のネタでいつも「僕の推しメンは櫻坂46の武元唯衣ちゃん」というセリフを言っていました。
僕にとって漫才は唯衣ちゃんへのファンレターみたいなものでした。
だから最後に言わせてください。
「俺の推しメンはいつまで経っても武元唯衣ちゃん」

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