FRUITS ZIPPERから受け取った“かわいい”の人間讃歌「私もがんばろうと思いました。ありがとう!」【『FRUITS ZIPPER SPECIAL LIVE 2026「ENERGY」』レポート】
『NHK紅白歌合戦』出場、『日本レコード大賞』優秀作品賞受賞と、2025年も“かわいい”のパワーで日本中を圧倒したFRUITS ZIPPER。
勢いが冷めやらぬまま2026年1月31日(土)に開催された『FRUITS ZIPPER SPECIAL LIVE 2026「ENERGY」』のレポートを、エンタメライター・奈都樹がお送りする。
目次
5万人のあふれ出す感情を、光に変えて返してくる
FRUITS ZIPPERの初東京ドーム単独公演。タイトルは「ENERGY」ということで、文字どおり彼女たちから強烈なエナジーを与えられて喰らいに喰らってしまったのだけど、あの場にいた方たちは無事でしたでしょうか。

開演前、グッズを手に記念写真を撮るふるっぱー(ファンの愛称)がひしめき合う中をかき分けて、座席に向かっていると、好きなメンバーのヘアメイクやファッションをまねた女の子たちがちらほら。
思い思いの“かわいい”を身にまとうその姿にすでに若干涙腺が刺激されていたところで、いざライブが始まると、そんなセンチメンタルを一掃させる演出が来たので思わず笑ってしまった。

だって、メンバーの顔を模したアニメイラスト風の「ピポパポ」の気球。おもしろかわいすぎるでしょ。めっちゃデカいし。「RADIO GALAXY」のEDMビートに合わせて、メンバーがあの気球でふわふわ浮かんでる様子はなんだかおかしくて、OK、今日は思いっきり笑っていいんだと確信。

その後も「うぇるかむとぅ〜ざ♡ふるっぱー!」「ぴゅあいんざわーるど」……と怒涛の展開、高速打ち込み、言葉詰め込みまくり猛攻メロディの連続で、しかもFRUITS ZIPPERは濃度100%の“かわいい”に変換してぶつけてくる。
溌剌(はつらつ)キャラの真中まな、マカロンボイスの松本かれん、可憐な魅惑のある櫻井優衣、茶目っ気たっぷり仲川瑠夏、天真爛漫な鎮西寿々歌、ツンデレお姉さんな月足天音、儚さ漂う最年少・早瀬ノエル……と、メンバーが次々と己の“かわいい”魔法を繰り出してくるわけです。いやちょっと待って。理性のネジ3本ぐらい吹き飛ぶって。

この異常な情報量を浴び続けてクラクラしてたら、極めつきは「はちゃめちゃわちゃライフ!」。<ぷりぷりぷりっと プリプリプリティー>という謎フレーズ×玉屋2060%節炸裂カオシックアレンジをドームの大音響で喰らったら、さすがにもう気が狂う。
正直にいえば、開演直後の5万人の熱気を受けてメンバーは飲まれてしまわないだろうかと少し心配にもなっていた。

ドドドド……と地鳴りのように響く歓声。客席にいても怖気づくほどに圧倒されるものがあるのだけれど、それはただの杞憂(きゆう)だった。
FRUITS ZIPPERは5万人のあふれ出す感情を一瞬で吸収して、光にまるっと変えてこちらに返してくる。なんだこれ。
さまざまなアイドルの要素を吸収して進化した、超ハイブリッドグループ
今度は、FRUITS ZIPPER印ともいえる“かわいい”&“ラブ”ソングコーナーへ。
ヤマモトショウ(「君と目があったとき」「かがみ」)、中田ヤスタカ(「KawaiiってMagic」「Sugarless GiRL」)、早川博隆(「skyfeelan」)、山崎あおい(「BABY I LOVED」)……アイドルの名曲を手がけていたプロデューサーたちによる、多種多様な楽曲が続く。
こうして通して聞くと、FRUITS ZIPPERは独自のスタイルを貫きながらさまざまなアイドルグループの要素を吸収して進化を遂げてきた、超ハイブリッドグループであることがわかる。

一方、彼女たちはボリュームのあるパニエ、大きなリボン、キラキラとしたデコラティブな衣装を身にまとい、自分たちの持つ最もかわいい表情を次々と見せてくれる。
それは「王道アイドル」としてあまりにも完璧であることに間違いないのだけれど、それでいてパフォーマンスには庇護欲に抵抗しようとする強(したた)かさを感じるのはなぜだろう。
本公演の合間に流れる過去のライブ映像では、思いが高まり涙を流すメンバーの姿がたびたび映されるが、今日はそうならないようにする気概のようなものがある。

「今からみんなのこといっぱい元気にするねー!」(「ぴゅあいんざわーるど」)をずっと貫いていて、私たちを簡単にウェットな気分にはさせてくれないし、その姿勢は「かわいい」という言葉が本来持つ意味からも脱しようとしているようにも思える。
彼女たちが今ここで表現している「NEW KAWAII」には、“かわいい”のルールに縛られない柔軟さとタフさを感じるのだ。
では、その強かさはどこからくるのか。それは中盤で徐々に明らかになっていく。
FRUITS ZIPPERが本当に伝えたい“かわいい”を通した人間讃歌
黒を基調とした衣装にチェンジすると、表情もシリアスに。
「スターライト・ヴァルキリー」、「We are Frontier」、「Re→TRY & FLY」……と戦闘モードな曲が続く。そうか、彼女たちも彼女たちなりの方法で闘ってきたのだと、現在に至るまでのバックグラウンドが見えてくる。

中でも特筆したいのは「スターライト・ヴァルキリー」。この児玉雨子の詞には、FRUITS ZIPPERというグループの核があるように思う。
<前世は姫でした/今世は私で、来世も私でしょう/このかわいいの剣は/何人(なんぴと)たりとも傷つけず、夢物語を貫くのです/私は天使でも女神でもなく、ただ君の善(よ)き友人/透明の鎧の下には、とっておきのドレス/私は、かしずかない、薙(な)ぎ倒さない/そして…負けない>

こうした曲を通過した先で続く「NEW KAWAII」「わたしの一番かわいいところ」「フルーツバスケット」といった代表曲が、今とてつもない強度で響いてくる。
彼女たちが訴えてきた“かわいい”を通した人間讃歌が、いかに切実なものであるか。
それはもしかしたらSNSにたまたま流れてきたショート動画で数秒聴いただけでは、もしくは、その一曲だけを聴いただけでは気づけないことかもしれない。

そしてなにより、本編最後の「完璧主義で☆」に衝撃を受けた。
<何度 バカと呼ばれたって/もしもあざ笑われたって/気にせず歌い続けてみるよ/完璧主義で☆>
すでに聴いていたはずなのに、どうして気づかなかったのだろう。FRUITS ZIPPERはわかっていた。自分たちのスタンスが周囲に誤解される可能性があること、簡単には受け入れてもらえないことも。
そんなことは初めからわかった上で「NEW KAWAII」というメッセージを打ち出し続けている。誰もが誰かの天使になるでもなく、女神になるでもなく、あなたがあなたのままでいられるように。
「原宿から世界へ、そして宇宙へ」眩しいステージをありがとう!
「私たちはこれからも“NEW KAWAII”という大切な言葉を、もっともっとたくさんの人に届けていきたいし、もっともっと大きな夢を叶えるときは、ここにいるみんな、ふるっぱーのみんなに一緒にいてほしいなって思います」
仲川がMCでそう言うように、FRUITS ZIPPERにはまだまだ夢がある。「原宿から世界へ、そして宇宙へ」。

アンコールで披露された新曲のタイトルは「成長期なので。」だ。彼女たちは、大きな襟がついたチュールミニワンピースという少女性たっぷりな衣装で花道を走り回り、こう歌う。
<かなり貪欲なんです/ちょっとワガママでーす/アレもしたい!コレもしたい!/全部したいのだだ>
今、FRUITS ZIPPERを語る言葉は至るところにあふれているけれど、彼女たちはそんな声を横目に、自分たちをくくろうとする言葉をするすると抜けて、“KAWAII”を羽にどんどん高く飛んでいく。
だって、宇宙に行こうとしてるんですよ? そう簡単に捕まえられる相手ではないのである。なんだかんだ言いながら、そのつかみどころのなさにこそ、私たちは夢中になっているのかもしれない。
何度バカと呼ばれたって、もしもあざ笑われたって。そんなこと気にしている暇はない。

最後に「超めでたいソング 〜こんなに幸せでいいのかな?〜」を歌うと、7人は光の中へと走って消えていった。約3時間の“NEW KAWAII”ステージ。陰りなんて一度もない。とにかく私たちを笑顔にさせたいその一心で、それがなによりも頼もしく眩しかった。
私もがんばろうと思いました。ありがとう! FRUITS ZIPPER!





