バイトしてゲームしてバイト飛んで。生活が終わっていたころの記憶<エバース佐々木「ここで1球チェンジアップ」>

エバース佐々木

正統派スタイルながら、独特な切り口を持った漫才で注目を集めるエバース。そのネタ作りを担当する佐々木隆史は、野球一筋の学生時代を過ごしてきた。現在は相方・町田和樹とともに漫才一本で強豪たちと戦う佐々木が、あのころの自分と重ねながら日々を綴る連載「ここで1球チェンジアップ」

2024年の『M-1グランプリ』で決勝に進出して以来、忙しい日々を送るエバースにも、過去にはまったく結果が出ず、そもそもどうがんばったらいいのかわからない日々があった。そんな日々のことを久しぶりに振り返ってみた。

秋になると思い出すのは…?

人生で30回以上は秋を経験してるはずなのに、ちょっぴり肌寒くなった10月の夕方になると毎年必ず思い出すのは、あの子と一緒に歩いた学校の帰り道ですよね。でもあの子が毎年この季節に思い出すのは僕じゃないんだろうな。エバース佐々木です。

秋の夕方ってなんでセンチメンタルな気持ちになるんですかね。みなさんは何を思い出しますか?

何歳になってもたまにあのころの自分に戻っちゃうときがあって、そんなに楽しいことばっかりだったわけでもないしなんならつらかったことや苦しい思い出もいっぱいあるけどなぜか戻りたくなっちゃうんですよね。

この前、大阪で『マルコポロリ!』(関西テレビ)の収録があり、カラタチさんと家族チャーハンが一緒でした。終わりで次の仕事まで3時間くらい空きがあったので“お好み焼き家族”とチャーハンを食べに行きました。間違えました。“チャーハン家族”とお好み焼きを食べに行きました。

そこで大石からニートしてたときの話や江頭の役者時代の話を聞いて、そういえば僕も上京して3~4年くらいは生活が終わってたことを思い出しました。

バイトしてゲームしてバイト飛んで、ゲームして貯金がなくなったらまたバイト始めてゲームして。芸人としてはまったく結果が出てないのに、何もがんばらずにゲームばっかりしてました。がんばってないというより、がんばり方すらわかってなかったですね。

当時よく寝ないでやってたのは『三国志』、『信長の野望』、『ファイナルファンタジー』、『ポケモン(ポケットモンスター)』、『パワプロ(パワフルプロ野球)』のペナントレースあたりですかね。

あと子供のころに兄貴がやってるのをうしろでずっと見てておもしろそうだったゲームをブックオフで買って延々やってました。あのころに戻って、兄貴にゲームを貸してもらった感覚になるんですよ。同級生はみんな就職してがんばってるのに。

毎年秋になってもこのころのことは一切思い出さないです。てか、ほとんど記憶がないです。よく町田が高校中退した前後の記憶がまったくないって言ってるけど、人間って本当に嫌だったころの記憶は消しちゃうんですかね。

本当に人生って紙一重だなって思います。どっかで人生の選択をミスってたら地元帰ってるか、今も深夜にアルバイトしながら月1、2回のライブしかなかった可能性だってありますからね。

それが今では子供のころ、おばあちゃんの家に預けられて一緒に毎週観てた国民的番組『笑点』(日本テレビ)に出演できたわけですから。

人生って本当に何があるかわからないですよ。

天国のおばあちゃんも笑ってくれていたら僕はうれしいです。

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佐々木隆史(エバース)

(ささき・たかふみ)1992年11月6日生まれ、宮城県出身。お笑いコンビ・エバースのボケ担当。レギュラー番組『エバースのモンキー125cc』(stand.fm)、『エバースの野茂ラヂ雄』(Artistspoken)。