MCバトルで結果を残したのち、2020年に1st EPをリリース。そこから立て続けにヒット作を生み出し、活躍の幅を広げているラッパー・SKRYUは、実は銀行員として働いていた経歴を持つ。ラッパーとしての覚悟を決めて銀行を辞め上京したものの、「お金貸すほうから、借りるほうになった時期もある」という。
だが、現在はそんな自分の過去もすべて強みに変え、進化し続けるSKRYU。9月には自身初の幕張メッセ国際展示場でのワンマンライブを控える彼に、これまでの軌跡と「バカ売れ」への決意を聞く。
SKRYU
(スクリュー)1996年9月3日生まれ、島根県出身。2020年4月に自身初のEP「SCREEN SAVER」をリリース。2024年から2025年にかけて自身初の全国ツアー『SKRYU Live Tour 2024-25 “Stardom”』を開催した
銀行でお金貸すほうから、借りるほうに
──ここ数年でめきめき頭角を現して、9月には幕張メッセで『SKRYU OneMan Live 2025 「START」』も控えているSKRYUさん。そもそもラップ歴ってどれくらいなんですか。
SKRYU 20歳のころに始めたと思うんで、そろそろ10年近くになりますね。出身は島根県で、大学で愛媛県に行き、そこでサイファーを知りました。大学卒業までラップしてたけど食えるようにはならなかったんで、ひとまず島根県に戻り銀行に就職。そこは1年で辞めて、上京してきました。
──上京したのはいつですか。
SKRYU 2020年ですね。最初は千葉でした。ビビリなんで、高校時代に取った宅建の資格を使って就職したんです。レッサーパンダの「風太」っていたじゃないですか。彼がレペゼンしてる千葉市動物公園の近くに住んでました。
──西日本の出身だと、いったん大阪に行こうとかは思いませんでしたか。
SKRYU たしかに別にラップやるならどこでもよかったんですよね。だけど、覚悟が欲しくて地元から離れた関東を選びました。1年くらいでなんとか軌道に乗って、大井町に引っ越せて。でも仕事がラッパー一本になったら今度は酒ばっか飲むようになって。銀行でお金貸すほうから、借りるほうになった時期もありました(苦笑)。
──『ニートと居候とたかさき』の南さんから聞きましたが、SKRYUさんも「黄色と黒の封筒」(行政からの催告状)が来てたとか。意外と、だらしないところがあるんですね。
SKRYU いやぁ、上辺だけ取り繕うのは簡単なんですよ(笑)。でもラップのいいとこって、クズな自分だったり、うしろめたい過去を、言いようによってはカッコよく見せられるところで。ひと昔前はHIP-HOPってワルがやるイメージでしたけど、誰もが持ってる弱みを、強みに変えられるのがHIP-HOPだって僕は思います。

リリックが枯渇してリアルタイムに
──実はですね、今同席してくれてる若手スタッフが、SKRYUさんのファンだそうなんです。このノート見てもらえますか。
SKRYU すごい! めちゃくちゃきれいに書いてくれてるじゃないですか。……うわぁ、すっげぇうれしい! 言ってほしいこと全部言ってくれてます(笑)。
スタッフ 私も四国出身で、新幹線通ってないのも一緒だから「Desert Dreams」のリリックにある「片道切符が今 万馬券」を自分に重ねているんです。出版社で働きたくて上京してきたから。SKRYUさんをリアルタイムで応援しながら、自分もがんばらないとって思って来ました。
SKRYU ありがとうございます。リアルタイムかぁ、たしかに。ありがたいことに忙しくなって納期に追われるようになってから、リリックが枯渇したんです。それで最近は自分に起こったことを書くようになりました。でもラッパーでも編集者でも、上京は勇気がいりますよね。普通に親にも反対されるし。
──反対されたんですか。
SKRYU そうっすね。僕、長男で家業もある家なんで、近所の人からは「あそこの長男、銀行辞めてラップするって言って東京行くらしいよ、しかもこのコロナ禍に」って言われてたらしいです。当時、親は黙って背中押してくれましたけど。島根の地方新聞に取り上げてもらってようやく「あんたの息子、載っちょったがね」って近所の人から言われたらしくて。新聞に助けられましたね(笑)。
──ブレイクのきっかけはなんだったんでしょう。
SKRYU 2023年に出した「超 Super Star」と「How Many Boogie」(WAZGOGGとFuma no KTRとの共作)は大きかったですね。実はあの2曲を作ったときってすごく病んでて。
スタッフ そうだったんですね。
SKRYU リリースしてもどの曲もハネないし、でも曲出し続けないと忘れられるしで。がむしゃらに泥臭くやってたんですけど、さすがに限界になってたころで。だからあの2曲には救われましたね。それからすぐに代官山UNITでのワンマンライブ(『OneMan Live -Transform-』/2023年8月11日)が決まって、あそこで人生が赤字から黒字になった。
──そのワンマンはいかがでしたか。
SKRYU 500人キャパが2時間で完売したときは「マジで? そんなにライブ来たい人いたんだ」ってびっくりしました。もともと僕は曲が跳ねればよくて、ライブなんてしなくていいって思ってたんですよ。だけどそこでたくさんの人に支えられてんだなって自覚して、意識が変わりました。ファンがちゃんと見えたのはありがたかったです。
──今までは数字でしかなかったリスナーがいきなり目の前にたくさん現れた。
SKRYU そうですね。即完だったから見たくても見られない人もいて。だったらキャパを大きくしなきゃとか、デカい会場にそぐう楽曲を作らなきゃって思うようになりました。お客さんたちにキャリアを後押ししてもらってますね。
バカ売れして、ど真ん中に行きたい

──YouTubeチャンネル『ニートと居候とたかさき』に時々登場していますが、動画ではお茶目な部分をたくさん見せてます。それってカッコつけてなんぼ、でもあるHIP-HOPの世界ではチャレンジングだと思うんです。
SKRYU たしかにいわゆるラッパーっぽくはないですよね。音楽だけじゃなくて、ファッションや生き方みたいなキャラクターの部分で自分なりに個性を出してきたんです。まわりから「SKRYUももっとHIP-HOPっぽくしたほうがいいよ」と言われたこともあります。
──なぜ今のキャラクターでいられるんでしょうか。
SKRYU 去年の『BATTLE SUMMIT II』準決勝、般若さんとのバトルで「憧れを脱ぎ捨てた姿だぜ」って言いましたけど、自分はこれかもなって本気で思ったんですよ。似合わないのに変にカッコつけるくらいなら、自分をさらけ出して、裸を着こなしたほうがいいなって。
──今の話を聞いてて、SKRYUさんがバトルで人をディスらないっていうのも、変に背伸びしないっていう姿勢なんだなと思いました。
SKRYU そうですね。幼少期から振り返って、友達とのコミュニケーションを思い出すと、やっぱり「負けるが勝ち」とか「向こうに勝たせてあげる」っていうのはあって。心の中では「俺はその土俵で勝負はしてませんよ」ってベロ出してるとこもありますけど、でも基本は誰にも嫌われたくないし。
──嫌われてもいいから、言いたいことを言うわけじゃない。
SKRYU いや、死んでも嫌われたくないです!(笑) まぁ、ラッパーとしてのスタイルも本当は二枚目で行きたい気持ちもありましたけど、結局、娑婆で生きてる“植田敬助”のキャラと、ラップの表現が一致したほうが違和感はない。言葉もするする出てくるし、強度があるんです。根っこの部分はずっと変わらないんで、ようやくそこを違和感なく出せるようになってきたのかもしれないですね。
──9月には幕張メッセでのワンマンライブも控えています。その先のビジョンは具体的に描けていますか。
SKRYU 具体的にはないですが、ここ3年くらい毎年書き初めで書いてるのは「バカ売れ」。僕が今やってる作業は、僕のことを知らない人をこの世から殲滅していくことなので。
──すごい。ブチ上げてますね。
SKRYU 僕はもう会えなくなってしまった遠くの友達にも届くくらい売れたいんです。横着者で薄情なところがあって、地元の友達と定期的に会うとかってあんまりできてないんですよ。でももし僕がバカ売れしたら、「俺、あいつの同級生なんだよ」とか「SKRYUと酒飲んだことあるわ」とかって僕がいないところで自慢してもらえる。それってめっちゃいいなって思うんですよね。
──バカ売れする直前に一度インタビューできてよかったです。
SKRYU こちらこそありがとうございます。SKRYUというラッパーは「色物だよね」とか「アイツの楽曲を聞いてるのはミーハー」って言われやすいんですよ。だけど僕はラップのスキルは誰にも負けないようにやってるし、玄人が聞けばすげぇって思ってくれる楽曲を作ってる自負もある。だからむちゃくちゃ売れることで、それを証明したいです。やっぱりHIP-HOPに対してコンプレックスはあるんですよね。だからいろんなシーンを巻き込んだ末に、HIP-HOPに帰っていきたいですね、それもど真ん中に。
『SKRYU OneMan Live 2025「START」』
2025年9月21日(日)
会場:幕張メッセ国際展示場4・5ホール
チケット情報はこちら
SKRYUインタビューはアザーver.を『Quick Japan』vol.179に掲載
YouTubeチャンネル『ニートと居候とたかさき』が、8月8日(金)発売の『Quick Japan』vol.179のSPECIAL EDITION版表紙&特集に登場する。
今回の特集では、「成長」ばかりが求められる社会の中でのひとつの選択肢として、「変わらない生き方」を提示。さらに、特集には時々動画に出演するラッパー・SKRYUも登場。常に変化し続けてきたSKRYUが、メンバーの魅力を語る。

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