【本番直前】『27時間テレビ』100kmマラソン出場芸人が抱く“恐怖”「走り終えるまで消えない」【モシモシいけ サバイバルマラソン優勝への道】
“アスリート芸人”は数多くいるが、お笑いトリオ「モシモシ」のいけは、フルマラソンで3時間切りを達成するほどのスーパーランナー。お笑いと同じくらいの情熱をマラソンに注いでいる。
そんないけが、7月20日・21日に放送される『FNS27時間テレビ』(以下:『27時間テレビ』)の通し企画「100kmサバイバルマラソン」に『深夜のハチミツ』(フジテレビ)代表として出場決定!
本連載では、マラソン優勝までの道のりを、いけ本人によるコラムでお届け。今回は、本番に向けた心の中の葛藤を赤裸々に語る。
本番直前、顔つきは「凛々しいつくね」に
いよいよ本番まで残りわずかとなりました。
これを書いているのは本番週の、7月3週目。
いけ、だいぶ仕上がってます。
まず、顔が違います。
普段のライブやネタなどで、相方たちは僕の顔を、「つくね」と表現します。つくねみたいな顔。練られた記憶もないし、なぜつくねなのか僕はいまいちピンときていなかったのですが、それを聞いた『深夜のハチミツ』のスタッフさんが、体感2分くらい爆笑してたので、たぶんそうなのだと思います。
今は「凛々しいつくね」です。
顔・体の絞りもそうですが、心も絞れてきた気がします。
僕が本当の意味で「つくね」だったら、物足りないつくねでしょうが、「男」としては仕上がってきたなと。我ながら、勝負する男の精悍(せいかん)な顔つきになってきたなと。
そして練習も、これまで順調に重ねることができました。
気温も上がり、ランニング日和とはほど遠い日々が続いているけど、
その中でもやれることはやってきたつもりです。
もうここからの日々は、何をどうもがいても、能力の向上は見込めません。
ここからは、向上させた能力を最大限発揮できるように準備する期間。
これまでの練習の点を、線で結び、かき集め、整えて、放出するための、調整の期間です。
規則正しく睡眠・食事。「小学生の平日」をイメージ
ランナーは本当にまじめです。どまじめです。
1日走らないだけで、不安になります。今までやってきたことが0になるのではないかという不安に駆られます。
練習をサボると、自己嫌悪に陥ります。誰に決められたでもない、大げさに言ってしまえば、別にやらなくてもいいことなのに、やらないと勝手に己を嫌います。
僕もそのひとりです。
ただ、この調整期間だけは、真逆。休むことが何よりも大切だと思っています。
とにかく、これまで蓄積してきた疲労を抜くことに徹します。
マッサージ、お風呂などのケアは、いつも以上に念入りに。
睡眠時間をしっかり取りつつ、時にはぐうたらしながら、普通に暮らします。
練習はしないわけではないです。練習量を落とします。量を減らして質を上げる。体のキレは失わないよう、短い距離を普段よりスピードを上げてランニングします。
不まじめをまじめにやる勇気、これ大事。
食事に関しては、本番3日前から、カーボローディングを開始します。
カーボローディングとは、炭水化物を多めに取り、体にエネルギーを貯蔵しておくという方法です。
個人差はありますが、僕はやったほうが当日の馬力が違うと感じています。
普段はご飯をお茶碗1杯に抑えていますが、このときばかりは2杯半くらい食べます。幸せ。
ただ体重増加も気にしなくてはいけないので、その分おかずの量は控えてコントロール。
下手に食べすぎないように、体と相談しながらやります。
また、規則正しい生活も心がけます。
普段のマラソン大会は、スタート時刻が早いです。だいたい9時スタート。
完璧な状態でスタートラインに立てるように、逆算してスケジュールを立てます。
朝食の消化の時間を踏まえ、起床は4時ごろ。
7時間は寝たいので、夜21時には寝よう。
眠りにつきやすいように、陽の光をちゃんと浴びたい、日中軽くウォーキングしておこう。
みたいに、前日~当日のスケジュールはけっこう念入りに立てます。
特に睡眠に関してはちゃんと取りたいので、直近1週間は、なるべく夜21時に就寝するよう習慣づけます。
イメージは、「小学生の平日」です。
ただ今回のスタートは、夜です。これは初めての経験なので、正直難しいです。
探り探りにはなると思いますが、規則正しくありつつも、いつもよりちょっぴり長く眠る、「小学生の休日」スタイルでいこうと思います。
走っている最中、何考えてる? モチベーションの保ち方
マラソン走ってるとき、何考えてんの?とよく聞かれます。
これ、けっこう困る質問です。実際、あんまりよく覚えていないのです。
覚えていないというよりは、特に何も考えていない、考えようとしていない、が正しいかもしれません。
僕がマラソンを走るとき心がけていることは、大事な局面まで、「脳を殺す」「思考しない」。考えることをやめ、脳に回す分のエネルギーを節約する。熊の冬眠に近いかもしれません。
ただひたすらに、足を進めることに徹します。進みはしているんだけど、過ぎるのを待っている。新幹線に乗っているみたいな感じです。
意識としては「走る」より「移動」に近い。いろいろなものにたとえすぎてちょっと自分でもよくわからなくなりました。なんとなく、そんな感じです。
ただ、ここが勝負どころだ!と感じる一番しんどい30km以降。
ここで頭と体のスイッチを切り替えます。
「前の人についていこう」「ここから登りだ」「今スピード上げていいのか?」「終わったらあれ食おう!」「ベスト出たら飯うめぇぞ!」とか、心の中で対話し、自分との駆け引きを開始します。
ただ今回は100kmということで、事情が違います。
あまりにも長い……。“無”でいることにも限界があります。
走っている最中にも、息抜きが必要です。
そんなときはやっぱり、人との会話。これまで同じ出場者の方と何度か走る機会がありましたが、やっぱり会話をしていると楽しくて、時が過ぎるのが早いです。
一生懸命やる中にも、息抜きや楽しみを持つことが大切だと思います。
当日は、迷惑にならない程度に、いろいろな方とコミュニケーションが取れればいいなと思っています。
「得体の知れない怖さ」も背負って走る
本番直前の、今の心境を、正直にお伝えします。
出場が決まったと聞いた瞬間は、うれしさ2割、マジで!?が8割。
このコラムの第1回を書き始めた1カ月半前は、うれしさ9割、え、まっ……本当に……?が1割。
本番直前となった現在は、うれしさ3割、怖さ7割です。
怖さ7割、正直想像していませんでした。当初はうれしさ10割で本番に臨めると思っていました。そのくらい本当に楽しみだったから。
今ではうれしさは影を潜め、日に日に怖さがむしばんできています。今も進行中です。
この「怖さ」、いったいなんなのか。言葉では簡単に表現しきれません。強いていうなら、プレッシャー。これが一番近い表現だと思います。
いざ本番が近づくにつれて、その得体の知れないプレッシャー的なものが押し寄せてきています。何に対してのプレッシャーなのかもわからなくなっています。
考えすぎると眠れなくなるから、考えることをやめました。いつしか、「絶対に勝つ」という言葉が言えなくなっていました。
「怖さ7割」。わかりやすくするために数値化してるけど、本当はもっとなのかもしれない。今の僕のほとんどは、怖さで形成されています。
「お前ごときが、なんのプレッシャーを感じてるんだ!」
そのとおりなのです。
「勝っても負けても、この舞台に立てるだけで素晴らしいことだよ!」
そのとおりなのです。
ありとあらゆる、そのとおりすぎる激励の言葉を、さまざまな人からいただきました。すべてありがたいお言葉です。
けれど、頭ではわかっているのに、心に反映しきれていない自分がいるのが事実です。
この怖さを、うれしさに転換して……みたいなきれい事は言えません。
怖さを楽しむ、なんて強さは僕にはありません。
この怖さは、たぶん終わるまで消えない。ここからまた増え続けていくと思います。
だからもういっそ、怖さも背負って走ろうと決めました。
強がる必要もないし、かっこつけようなんて気はさらさらありません。
ありのままで走る。それが100kmサバイバルマラソン。マラソンドキュメント。
走るという野生に取り憑かれ、走ることに飢えるマラソンビーストが、ついにマラソンに苦しめられるときが来ました。
怖いです。本当に。繰り返しになりますが、何に対してなのかはよくわからないけど、怖いのです。
この怖さでいっぱいになった体で、100kmを戦わなくてはいけない。生身は無理。心に装備が必要です。
これから何か手に入れられればいいけど、そんな時間はありません。
でも僕には、僕だけが獲得してきた経験や感情があります。
走ることが嫌いだった自分、好きになった自分、挫折、番組への恩返し、これまでの練習の日々、変えたい人生。
これらを重圧ではなく、強くなるための装備として、一緒に戦ってきたいと思います。
100kmという距離と、競り合うライバルと、自らの恐怖と。
さまざまなものと戦う僕の姿を、どうか見ていてください。
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