ふたりそろって2007年の『M-1グランプリ』で、サンドウィッチマンに心をつかまれたという中川家。2012年からはナイツも含めたお笑いユニット「漫才サミット」としてもともに舞台に立ち、親交を深めてきた。今ではふたりの人間性にも惚れ込んでいるという中川家に、伊達、富澤それぞれの人を惹きつける力を語ってもらった。
ふたりとも気遣いがすごい
──サンドウィッチマンとの最初の出会いは?
礼二 ふたりが『M-1』で優勝した2、3日後に、六本木ヒルズ駐車場の喫煙ルームでたまたま会ったのが最初です。『M-1』で漫才を初めて観たんですけどそれがおもしろかったんで、どうしても声かけたくて、僕からふたりに「おめでとう」って言いました。
剛 僕はサンドが優勝して1週間後くらいだったかな、大阪の番組で。僕も『M-1』までふたりのこと知らなくて、あまりにも衝撃で。こっちから話しかけて、一緒に写真を撮りました。
──そこから、礼二さんが発起人となって中川家、サンドウィッチマン、ナイツ3組で『漫才サミット』というライブを一緒にやるほど仲よくなった経緯は?
剛 どっちかといえば、『漫才サミット』をやるうちに仲よくなっていったんですよ。
礼二 最初は他事務所の人とライブをやったら刺激になるんちゃうかと思ったのがきっかけで。一緒にやるとしたらサンドウィッチマン、ナイツのふた組やろうなと声をかけたんです。
剛 いろんな土地でライブやって、打ち上げで一緒にご飯食べて、だんだん仲よくなりました。
──『漫才サミット』は2012年からスタートしてもう12年経ちますが、印象に残っている思い出はありますか?
剛 サンドのふたりはね、このあと打ち上げある言うてんのに、楽屋でアホほど食べるんですよ。それがいつも心配で。僕が「食べすぎや」と言うと「これ、カロリー0なんで」って、昔からもう言うてました。
礼二 『漫才サミット』で全国各地に行くときも、たまに番組のロケで一緒になったときも、伊達ちゃんは絶対にお土産を買うんですよ。土地土地の銘菓みたいなのを毎回買って、僕らにも「ほら、これ持って帰ってください」って押しつけてきて。おばちゃんみたい(笑)。
剛 無理やり持って帰らされてな。……『漫才サミット』はね、みんないい意味で力が抜けてて、いいイベントだと思いますね。ずっと一緒にやってきたから、芸人仲間の中でもサンドとナイツのふた組はちょっと特別ですね。
礼二 そんな頻繁にライブをやるわけじゃないのに、なんかいつも一緒にいるような、不思議な関係というか。
──サンドウィッチマンを見ていて、尊敬するところは?
剛 ふたりとも、表だけじゃなく裏でもほんまに休まず動く人なんですよ。そこは尊敬してますね。『漫才サミット』にはいろんな人が観に来てくれるんですけど、僕らはめんどくさがって楽屋に逃げ込んじゃうこともあるんです。でも伊達ちゃんとトミーは、一人ひとりに話しかけていく。で、僕らに「この人はこういう人で……」とか紹介してくれるんですよ。「兄貴の友達の家族で」とか、もうそれ知り合いちゃうよな?ってくらい遠い人が来ても歓迎してね。その人が持ってきたお土産をまた僕らに分けてくれて。ずっとニコニコしてる。なんであんなことができるのかなと思いますよ。
礼二 ふたりとも気遣いがすごいよな。まわりの人だけじゃないんですよ。みんなでしゃべってるとき、富澤がしばらく黙ってると、伊達ちゃんが富澤にぽんと話を振るんです。これだけ芸歴重ねて、舞台上でもないのに相方がしゃべってるかどうか気にするってけっこう珍しいと思いますね。ほんま、夫婦みたい。
剛 そうそう。トミーが旦那さんで、伊達ちゃんが奥さん。
礼二 『M-1』直後に会ったときから変わらず仲いいしな。
剛 ずっと一緒なんだよね、スタンスが。伊達ちゃんがしゃべって、トミーに振って、トミーがしゃべったら伊達ちゃんがそれをフォローして。
礼二 売れる前と売れてからがこんなに変われへん芸人ってたぶんいないんじゃないですか。変わらなすぎて怖いくらいです。本当、裏での姿を見てると「そら、好感度ナンバーワンなのも納得やな」と思います。にじみ出てるんですよね、作らない気遣いや優しさが。
──サンドウイッチマンの漫才についてはどう見ていますか?
剛 僕はもうファンやから、ライブのたびに「あのネタやってくれた!」と喜んでます。『ピザ屋』のネタなんか、僕完コピできますからね。あと『ファストフード』のネタも好きやな。ピザとハンバーガーって似てそうなのに、なんであんなに違うようにやれるんやろう。
礼二 あのふたりは、漫才とコントの垣根もないしな。
剛 とにかくシンプルでおもしろいんですよ。別に大暴れするわけでもなく、奇抜なことを言うわけでもなく、あんなにシンプルであそこまでおもしろいのは漫才師の中でも一番くらいじゃないですか。あと、長く一緒にライブしてても、ふたりのネタ合わせを見たことないんです。なのにライブでは持ち時間20分のところを45分やったりするしなあ。
礼二 50分超えたときもあったやん。
剛 なんてことない話から始めて、気づいたらめっちゃ時間経ってる。あんな話、普通は45分もできないですけどね。しかもウケてるし。すごいなと思いますね。
礼二 漫才の中で伊達ちゃんが、意外とちょっとマニアックなことを言ったりするんですよね。そこにまたトミーも食いついて。いつもそれで長くなるんやろなと思います。そこまでウケてなくてもふたりだけで笑ってる時間もあるし、その様子を見てお客さんも笑うし。ふたりの仲のよさが出たまま、自然体で漫才ができているのが、サンドの一番すごいとこちゃうかな。
──最後に、サンドウィッチマンのおふたりに伝えたいことがあれば。
礼二 まあ、『漫才サミット』のネタ時間はもうちょっと守ってほしいですね(笑)。
剛 カロリー0とかいつまでも言ってないで、健康には気をつけてほしい。あとね、小島さん(※サンドウィッチマンの熱狂的ファン)のこと、ふたりは「また来てるのか」とか言って笑うんですよ。でも僕はあんまり笑えないんですよね。もしこの世界に入ってなかったら、きっと僕が小島さんになって、サンドを追っかけ回してたと思うから。だから、小島さんにはもう少し優しくしてあげてほしいですね。
サンドウィッチマン豆知識
伊達ちゃんも、トミーも意外と自分の事務所の後輩に厳しい(笑)。あいさつとかちゃんとさせる(剛)
ふたりともあんなに忙しいのにプライベートを大事にしているので、弾丸で旅行に行きがち。無理なスケジュールで北海道とかに行ってる。行かんほうがましちゃう?(礼二)
中川家
礼二(れいじ/写真右)と剛(つよし/写真左)のコンビ。『M-1グランプリ』初代王者(2001年)。礼二は同大会の審査員を2015年から担当している。2020年3月には吉本興業が運営する常設劇場の“新看板”に就任した