間寛平×アキが挑む吉本新喜劇改革「77歳、しんどいけど」「日本の宝を目指す」

2026.10.5
間 寛平×アキ

文=後藤亮平 撮影=鈴木 渉 編集=倉内美幸


大阪から発せられるエネルギーの根源、吉本新喜劇。その輝きの秘訣には、フルパワーで走り続ける吉本新喜劇ゼネラルマネージャー・間寛平と座長・アキの存在がある。そんな新喜劇が2026年12月15日(火)~12月20日(日)の6日間にかけて、史上初“吉本新喜劇のみ”で届ける特別公演『ヤバ。新喜劇に毎日誰かが乱入!?なんやかんやいうてありがとうねぇ~』を東京にて開催。これを機に間寛平×アキへのインタビューを遂行し、「大阪の宝」から「日本の宝」へと進化する吉本新喜劇の改革を追いかけた。

借金取りから逃げて鍛えた脚

——今回は吉本新喜劇が持つ力を改めておふたりにお聞きしつつ、現在の新喜劇の顔ともいえるアキさんの魅力についても伺えればと思います。

寛平 なんで僕(への深掘り)はないんですか?

アキ 寛平師匠はもう売れまくってはるでしょ(笑)。

寛平 いや、売れてないやん。でもね、このアキは、水玉れっぷう隊ってコンビをやる前から、パブで働いてたんですよ。その店のオーナーと僕、めっちゃ長くて。

アキ 横山アラン・ドロンさんっていう漫才師さんのお店で、そこの舞台に立たせてもらってたんですよね。踊ったり、コントや漫才をしたり、しっかりしごかれました。

寛平 そのときから男前でキャーキャー言われてて。新喜劇でも、3年連続で「吉本新喜劇座員総選挙」でトップになって殿堂入りしたくらい、一番の男前です。新喜劇って、なかなか男前が入ってこないんですよ。なんでかいうたら、「こんなぶっさいくなヤツでもできるんや」って、僕らを見て入ってきてるから。僕もそうやったしね。

アキ いや、寛平師匠は不細工と違いますよ。

寛平 いやいやいや。でも、57歳でこんな男前なままの人はいないですよ。すごいわ。

アキ ありがとうございます。

アキ
アキ
1969年生まれ、大阪府出身。水玉れっぷう隊として活動する傍ら、2014年に吉本新喜劇に入団。「いぃよぉ〜」のギャグなどで人気を集め、2022〜2024年の「吉本新喜劇座員総選挙」で1位を獲得し、3連覇。殿堂入りとなる。2023年には座長に就任し、新喜劇を牽引している

——そのアキさんの存在が大阪では知れ渡っていると思うのですが、全国レベルだとアウェイだなと感じることもあったりするのでしょうか。

アキ アウェイ感はないですね。東京で10年やらせてもらってたときも、テレビにあまり出ていなかったのに、根強い追っかけや出待ちの人たちに応援してもらったりしていたので。新喜劇でやらせていただくようになってからも、それこそ総選挙で選んでもらったりしていましたし。ただ、当然足りないところもあったので、この10〜15年で、人間的な部分も含めて勉強させてもらってきた感じです。

——そこで、寛平師匠が新喜劇のGM(ゼネラルマネージャー)となって全国ツアーや新プロジェクトを展開するようになり、アキさんも座長に就任したことで、さらに世の中に受け入れられる絶好のタイミングになってきたという感じなんですね。

寛平 「新喜劇は大阪の宝や」と昔からいわれてたんですよ。でも、僕は「日本の宝」にしたい。だから、どこに行っても新喜劇を知ってくれていて、これからの若手が全国に行っても劇場に来てもらえるように、我々の力で広めていきたいと思ってがんばってます。僕のことを走る人間やと思ってる人もいっぱいいると思うけど、僕は新喜劇の人間ですから。

アキ 「アースマラソン」で地球一周したりしてましたからね。それもすごいことですよ。

寛平 ちなみに、なんで僕が走るようになったかいうたら、借金取りから逃げるためやからね。新喜劇の昼の部と夜の部の間、ずっと公園を走って逃げ回ってた。公演が終わったらまた裏から逃げて。

アキ すごい時代(笑)。

間寛平
間 寛平
(はざま・かんぺい)1949年生まれ、高知県出身。1970年、吉本新喜劇の研究生となり、1974年に24歳で座長に昇格。1989年の退団後は、『24時間テレビ』(日本テレビ)の初代チャリティーマラソン走者を務め、走って地球を一周する「アースマラソン」に挑戦するなど、ランナーとしても注目を集めてきた。2022年には吉本新喜劇のゼネラルマネージャーに就任し、後進の育成などに励んでいる

個性を活かして平和な笑いを生み出す

——世の中的には、お笑いといえば賞レースやバラエティ番組に注目が集まりがちですが、新喜劇がここまで根強く支持されているのは、どんな強みがあるからなのでしょうか。

寛平 社員がむちゃくちゃがんばりよるんですよ。福岡の博多座って、1500人入る名門劇場じゃないですか。今ではそこで3日間の公演を頼まれるようになりましたからね。なんでかっていったら、一回お試しでやらせてもらったときに、お客さんをガツンとツカんだんですよ。そこからどんどん入るようになって。

アキ この2〜3年で『出前ツアー』っていう全国ツアーを始めて、東北のお客さんにもすごく笑っていただいたりしたので、いろいろ可能性が見えてきたなと感じますね。

寛平 あとは、賞レースから若い子がどんどん世に出ていくじゃないですか。だから、僕らも若い座員を育てていかなあかんなと思ってるんですよ。

アキ 強みでいうと、僕、「いぃよぉ〜」ってギャグがきっかけで感謝状をもらうようになったんですよ。なんでかといったら、子供たちがまねして、謝った人を許すんですって。それを見た教育関係の方とかが、「このギャグをもっと世間に広めてください」って感謝状をくれるんです。

子供たちだけじゃなくて、ヘルパーさんから、性格がキツくて憎らしかったおじいちゃんが、謝ったら「いぃよぉ〜」って許してくれるようになって、辞めずにがんばれてるって聞いたこともあります。そんなことがあって、学校に行って講演会をするようにもなりました。

間寛平×アキ

——どんなことをお話しされているんですか。

アキ 新喜劇を通して子供たちに何がいえるのかといったら、個性の活かし方なんですよね。座長の酒井藍ちゃんはぽっちゃりしてても「ブーブー」って笑いを取るし、池乃めだか師匠は背がちっちゃいのも個性にして笑いにする。新喜劇は人の個性をいじめにせず笑いに変えていて、それをお昼にテレビで見て平和を感じるのが大阪の文化だったりするんです。

それに、しょうもないボケでもみんなで協力して笑いにする。それも新喜劇のええとこやと思います。だから講演会では、子供たちに舞台上で自由なことを言ってもらったりもしていて。おもしろかったらみんなで乗っかるし、スベっても僕たちプロが全力でフォローする。素敵なものをみんなで協力して作る体験をしてもらうんです。そうすると、みんなすごく楽しかったと言ってくれる。僕はそこが強みやと思ってるんです。

寛平 関西やったら、(銃を構えたジェスチャーで)「バーン」って言うたら、(胸を押さえて)「うっ……」ってみんなやるやん。そんなノリも全国に広がっていったらいいなと。僕、熊本で8年ぐらいずっとレギュラー番組をやってて、とりあえず熊本は大阪になってきてるから。ロケやってても、遠くから「あ、寛平ちゃん」って言うくらいやったのが、今はこっちに寄ってきてアホなことし出すもん。

アキ 結局、平和な笑いはみんな求めてるから、絶対に広がりますよね。

寛平 うん、もっと広めていったら、みんな「いぃよぉ〜」って言いまくると思う。

アキ そうですね。ゆくゆくは国に申請して、1月14日と11月4日は「いぃよぉ〜の日」として休日にしてもらって。夫婦も親子も兄弟も、この日はお互いを許して歩み寄る、平和を求める日にしたいですね。

間寛平×アキ
間寛平×アキ

スベる怖さ、ウケる快感を若手に経験させたい

——個性を活かしたり、協力して舞台を作り上げたりするのは、吉本新喜劇の普遍的な魅力だと思います。一方で、今の新喜劇だからこその魅力や特徴もあるはずですよね。

アキ それはやっぱり、僕にとっては子供のころから見ていたスターである寛平師匠が、GMとして新喜劇に戻ってこられたことだと思います。寛平師匠が新喜劇をもう一回立て直して、新たなものを作ろうとしてくれている。全国に広げるとなると、なかなか座長だけでは難しいところもあって。そこでレジェンドが引っ張ってくださるから、座長たちもひとつになれているんだと思います。

寛平 でもなあ、僕ももう77やで。本当にしんどい。だから、みんなにはほんまにがんばってほしいわけよ。僕にもまだまだ夢があるんやから。

——そうなると若手の台頭が急務となってくるわけですが、注目の若手座員、おすすめの若手座員などはいますか?

寛平 埼玉出身の野崎塁っていう子がいて、僕が「あいつ、埼玉出身やから」ってずっと言ってたら、埼玉でちょっと人気が出てきたんですよ。顔もわりとシュッとしてますし、その子はなんとかならんかなと思ってます。

アキ 寛平師匠がGMとして来てくれるまで、若い子がバンバン経験を積むような機会がなかったんですよ。僕もそこに危機感があったんですけど、ようやく若い子が参加できるイベントなんかを仕掛けてもらえるようになったので、ここからでしょうね。ポッと出の芸人なんて、絶対に通用しませんから。スベることの怖さ、ウケることの快感、いろんなことを経験して、考えて考えて、数をこなしていかないと。

——新喜劇自体が積み重ねてきた歴史の上に、個々の経験や積み重ねも必要であると。

アキ だって、なんばグランド花月なんて、『R-1グランプリ』チャンピオン、『M-1グランプリ』チャンピオン、『キングオブコント』チャンピオンが続いて、師匠も出てきて、そこから休憩入って新喜劇ですからね。若い座員は毎日必死でやらないと。それでもセンスや才能がなければ上がってこられないわけで。

寛平 僕も24歳で座長になったけど、やすきよ(横山やすし・西川きよし)さんや(笑福亭)仁鶴さん、(桂)文枝さんとか、人気者がやりまくったあとに新喜劇やったから、めちゃくちゃしんどかったもん。でも、戦わなあかんと思ってやってたね。仲はよかったけど。

間寛平×アキ

——今はまた変革期というか、変わろうとしている新喜劇を見るおもしろさがあるのかもしれませんね。

アキ そう思います。ちょうどこの前、寛平師匠がネタバトルを開催してくれましたけど(※)、絶対に舞台で使われへんようなネタから、コンテスト向けに練られたネタもあって、一生懸命努力してましたから。

寛平 「何を見させられてるの?」って、頭がおかしくなりそうになるネタもあったよな(笑)。

アキ 本当にピンキリで。でも、そういうことを何回もやって磨いていかないと。笑いは甘くないと思います、本当に。

——そんな吉本新喜劇の今が東京で見られる特別公演が12月に控えていますが、おふたりの意気込みなどを聞かせてください。

寛平 どんな舞台にするかは、うちの嫁が考えてくれてるんですよ。だから、何が出るかはわからへん。でも、そのおもしろさもあると思って。お客さんも来てもらったらわかると思いますわ。

アキ 寛平師匠も舞台上で引っ張ってくれますからね。師匠は野生的な勘がすごくて、生の舞台でお客さんを見ながら「ここは引っ張ったらあかん」「ここのノリはバンバン引っ張ってええな」と瞬間的に判断できる。僕はそれに必死でついていくだけなんです。

そういう師匠の天才的な部分をプロデュースしてきて、新喜劇も熟知しているのが奥様で。やっぱりすごく的確なことを言わはります。だから僕は、未知の世界に飛び込んで、ただただ暴れてやろうと思ってますね。

寛平 いつも嫁から「天井がバーンって落ちるぐらい笑いを取れ」って言われてますから。『M-1』とかで出てきた若手の漫才師がむちゃくちゃウケてるのも知ってるから、「(新喜劇も)もっといかなあかんやろ」って思ってるんでしょうね。

※座員たちが自由にショートネタを披露し競い合うイベント『寛平GM杯 ネタバトル~吉本新喜劇まつり2026への道~』が9月2日に開催された

公演情報

吉本新喜劇

2026年12月15日(火)~12月20日(日)の6日間、東京・IMM THEATERにて吉本新喜劇東京特別公演『ヤバ。新喜劇に毎日誰かが乱入!?なんやかんやいうてありがとうねぇ~』を開催することが決定した。

本公演は、吉本新喜劇として史上初となる“吉本新喜劇のみ“で届ける6日間、計12公演の特別公演となっている。吉本新喜劇のGM(ゼネラルマネージャー)である間寛平と座長のアキがダブル座長を務め、ベテランから若手まで豪華メンバーが勢ぞろいする。

さらにタイトルのとおり、公演期間中は毎日新喜劇の舞台に誰かが“乱入”するスペシャルな仕掛けが用意されていたり、終演後には出演した新喜劇座員全員によるお見送りを実施。ここでしか観られない予測不能な展開と笑いに包まれるプレミアムな吉本新喜劇をぜひ会場で!

【吉本新喜劇東京特別公演】
『ヤバ。新喜劇に毎日誰かが乱入!?なんやかんやいうてありがとうねぇ~』


日程:2026年12月15日(火)〜12月20日(日)
会場:IMM THEATER
料金:一般5,500円/小学生以下3,500円(税込)
出演者:間寛平、アキ、西川忠志、やなぎ浩二、ケン、平山昌雄、太田芳伸、新名徹郎、佐藤太一郎、服部ひで子、小西武蔵、重谷ほたる、野崎塁、川本眞優、野呂桃花、横山裕輝、生島碧宙
主催:吉本興業株式会社
プレイガイド:FANYチケット、ぴあ、ローソンチケット

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(ごとう・りょうへい)