世間の「型」からはみ出しても「自分が思うおもしろい」を信じ、表現し続けてきた、お笑いコンビ・マヂカルラブリーとミュージシャン・岡崎体育。ジャンルこそ異なるが、自らのスタイルで第一線を走る彼らはステージに立つ上でどこに楽しさを見出し、どんなふうに自分を表現しているのか。
2025年7月19日(土)、20日(日)に開催される、アーティストと芸人のディープなコラボレーションが楽しめる音楽と笑いのフェス『DAIENKAI 2025』で共演するふた組が、ステージ上での自分が思う「おもしろい」の表現について語る。
5曲30分あれば、自分をすべて出せる

──まずはお互いの印象から聞かせてください。
村上 岡崎さんは大人だな、と思いますね。ご一緒した番組(テレビ東京『川島明の辞書で呑む』)で、「ここまでをまとめて歌にして」とかエグいカンペが出るんですよ。それを受け入れるし、ちゃんときれいなかたちにして、盛り上げて終わる。プロの力すごいな、と。
岡崎体育(以下、岡崎) 僕は最初に出られた『M-1グランプリ』でマヂカルラブリーさんを知って、ストーリーのあるコンビだなと。だから優勝されたときにはすごく感動しました。ネタも、野田さんが作られているゲームも含めて、クリエイティブにお笑いをされている方たちですけど、クリエイティブ感をそこまで出さない。そのバランス感覚が素敵です。
野田クリスタル(以下、野田) 僕は今日はじめましてですけど、親近感がありますね。最初から成功している人と会うと、本心の部分で「ちょっと違うな」と感じることがあるんですよ。でも岡崎さんは下積みが長い感じがあって、なんかほっとするんです。
岡崎 実際デビューは26歳と遅いほうですし、社会人を経験したあと脱サラして音楽を始めましたし、下積みをしてきたというのはおっしゃるとおりです。ただ、まわりにデビューしてスッと売れる天才たちが山のようにいるので、その人たちに負けないように天才のフリをすることはありますね。インタビューでカッコいいこと言おうとしちゃったり。
村上 「曲が降りてくる」とかね。
岡崎 降りてきたことなんて一度もないのに。
野田 「もう無理なんじゃねえか」ってところからめっちゃひねり出してるのに。
岡崎 そうそう。
──ふた組が作品作りで重視していることについて聞きたいんですが、では岡崎さんにお話を聞こうとしても本当のことは出てこない……?
村上 「風が吹いたときに思いつく」とか。
野田 「夢で浮かぶ」とか。
岡崎 そうです(笑)。本当のところでいうと、常に自分がやった仕事に対してお金が支払われるということを忘れないようにはしていますね。生半可なことをすると次につながらない。だから、楽曲制作の面では天才ぶらないように。イキったまま飯が食えたらすごいことですけど、どうしてもイキりきれない。恥じらいがあるからネタ曲を作る。

野田 僕らは無観客に強いんですよ。コロナ禍の無観客で活躍した芸人の代表格。お客さんがいたら、今ほど活躍していなかったかもしれない。もともと少人数の小劇場でずっとやってましたし、内輪でやるのが当たり前で、大勢の人を笑わす方法を知らない。
村上 400人から上は苦手です。
野田 400くらいからもう、「壁に書かれた人」だと思っちゃうよね。ルミネ(theよしもと)も満席になると苦手。
村上 80人くらいが一番力が出る気がしますね。
野田 25〜80。それくらいだと、スベってもスベったことにならないから。
村上 まわりが全員スベってるときが最高。
野田 スベったかどうか曖昧なときが一番いいよね。そこをはっきりさせられると急に緊張する。
村上 音楽はまた規模が全然違いますよね。
岡崎 僕が好きなキャパは、2000人前後ですかね。Zeppくらい。ただ、アウェイの場で盛り上がったときはやったなと思います。フェスに出たときはバンドTを着た人たちをいかに岡崎体育のグッズ売り場に並ばせるかを考えますね。最近一番好きなのは、テレビ局がオーガナイズしているようなアイドルさんがいっぱい出るフェスの場。応援しているアイドルしか観に来ていないようなヲタの方たちが、曲の中でアイドルの名前を出したら一発でオチてくれる。
村上 めちゃくちゃ観客に手を差し伸べてる(笑)。
岡崎 もう、寄せて寄せて。僕の音楽は本当に割り切って、商魂たくましくやっているものなので。自分の芯なんて、ロケット鉛筆みたいにどんどん飛んでいく。すぐ折れることができるのは強みだなと思ってますね。
村上 ほぼほぼ芸人じゃないですか。でもそこがいいんですよね。
岡崎 30分尺の中で5曲やらせてもらえたら、自分が全部見せられる。だから2時間のワンマンライブももちろん好きですけど、僕はフェスのような短い尺で自分を出すのが得意です。
村上 じゃあ『DAIENKAI』向きじゃないですか。
岡崎 40分尺と伺ったので、ちょっと長い。あと10分短ければ……。
野田 僕らも『DAIENKAI』では手を振ったりして「慣れてますよ」感を出しますけど、実は全然慣れてないです。お笑いのときだけ上からフタが降りてきて、400人くらいにならないかなって思ってる。
本当の大宴会をやりましょう!

──7月の『DAIENKAI』に岡崎さんは初めて参加されますね。
岡崎 お笑いと音楽のお客さんってどれくらいの割合なんですか?
村上 半々くらいかな。両方好きって人が多いかも。どっちでも盛り上がってます。
野田 『DAIENKAI』のたび、アーティストの方々はこんなこともやってくれるんだ!と思いますよ。もっとNGが多い存在だと思ってました。
村上 NGなしの人を呼んでるんじゃない?
岡崎 僕が見ても基本ガバガバのアーティストがそろってますね。
──今回、ふた組で何かされる予定ですか?
岡崎 僕、『スーパー野田ゲーMAKER』で遊ぶのをやりたいです。
野田 岡崎体育さんのゲームを作るのもよさそうですね。プレイしておもしろいかどうかはわかりませんけど……。
村上 野田ゲーをやると、世に出てるゲームは本当にすごいんだなとまざまざと見せつけられますよ。「球がふたつあって、連打して早いほうが勝ち」とか、本当につまんないのがあるんで。
岡崎 高校の技術で作らされるような(笑)。
野田 野田ゲーのいいところは、やっている人じゃなくて野田ゲーのせいにできることなんですよ。
岡崎 過去の映像を観てると、芸人さんがミュージシャンの曲に参加されたりとかもあったので、せっかくならなんでもやらせてほしいですね。
村上 野田さんが岡崎さんの曲にふんどしに和太鼓で参加させてもらうのがいいんじゃない?
野田 やりますよ!! あと、せっかくなので、岡崎さんに軽くダイエットしてもらうのはどうですか。
村上 野田みたいな状態で7月の本番を迎えてもらう。で、もし失敗した場合はピンクカーディガンが用意されているという。
岡崎 それちょっといいですね。あと僕、今回の出会いをきっかけに、野田さんのクリエイティブを一覧できる展覧会をやってみたいです。会場で酒が飲めるようなイベントを。
野田 村上のバーだ。
村上 岡崎さんは何をやるんですか?
岡崎 総合プロデューサー。プレオープンにだけちょっと顔出して、本番にはいないタイプの。
野田 展示ってことは、俺もいない可能性ある。
村上 じゃあ僕しかいないじゃん。まあやりますけど! 僕はバーをやりたくてしょうがないから。
岡崎 え、じゃあもう『DAIENKAI』でバー出しましょうよ。
野田 みんなでごはん作ったらおもしろいだろうな。本当の大宴会だ。
村上 宴会場作るの、やりたいですね。
岡崎 グループ対抗でどのフードが一番売れるか、やりましょう!
『DAIENKAI 2025』
【開催日程】
2025年7月19日(土)10:00開場/11:00開演開演/21:00終演(予定)
2025年7月20日(日)10:00開場/11:00開演開演/21:00終演(予定)
【会場】東京ガーデンシアター
【チケット席種・料金】
・二日ぶっ通し券:19,000円(税込)
・一日券:9,800円(税込)
※お席はすべて指定席です
※二日ぶっ通し券は二日間とも同席です
※座席位置は一日券より二日ぶっ通し券が優先されます
※未就学児入場不可、膝上の観覧不可、おひとり様1枚チケットが必要となります
<一般販売(一日券のみ)>※FANYチケット、チケットぴあ、ローソンチケット、イープラス、アソビュー!
受付期間:5月10日(土)10:00~
決済方法:クレジットカード、コンビニ
公式HP:https://daienkai.com/

6月18日(水)発売の『クイック・ジャパン』vol.178、では、世間の「型」からはみ出しても「自分が思うおもしろい」を信じ、表現し続けてきた、ふた組がステージに立つ上でどこに楽しさを見出し、観客の評価をどのように捉えているのか、を語ったアザーverのインタビューを掲載。