「一回くらい東京行ってみたい」ガクテンソク、おじさんコンビの上京理由をアユニ・D(PEDRO)に初告白【『DAIENKAI 2024』特別企画】
自らを「和食の小鉢」とたとえる実力派ベテラン漫才師・ガクテンソクと、アウェイの現場で常に独自のスパイスを加えてきた表現者、アユニ・D。フィールドは違えど独自路線で戦い続ける2組が、2024年7月13日(土)、14日(日)開催の『DAIENKAI』のステージの上で相まみえる。
特にツッコミの奥田修二は、BiSH時代からアユニ・D(PEDRO)の大ファンという間柄だ。先日開催された『THE SECOND 2024』で見事チャンピオンに輝き、今ノリにノっている漫才師は、気鋭のバンドのフロントマンと対峙しどんな化学反応が生み出すのか──。互いの活動から受ける刺激と相乗効果について語ってもらった。
あのころはまだ人間じゃなかった
──ふた組はこれまでに共演されたことは?
奥田 僕らがやってた大阪のFMラジオに、アイナ(・ジ・エンド)さんと(セントチヒロ・)チッチさん、アユニさんがゲストで来られたのが最初ですね。2016年か。アユニさんはBiSH入りたてで、スタッフさんから「ひとりはしゃべれません」って事前に言われてました。
よじょう そうやった、そうやった。
アユニ 申し訳ございませんでした!!!
奥田 (笑)。わざわざ大阪まで来て、スタジオにも入らず見学してましたね。
アユニ あのころはまだ人間じゃなかったので……。
よじょう 人間でしたよ?
奥田 そこから今までの成長物語を見させていただいてます。
アユニ 本当にそうですね。見守っていただいて……親です。
奥田 大阪のおじさんです。
アユニ 奥田さんのイベントにも出させていただきましたよね。
奥田 そうそう。僕の35歳の誕生日に、なんばグランド花月に好きなアイドルを呼んで祝ってもらうという、よくない社長みたいなことをしまして。新喜劇やらせてもらったね。
アユニ 一緒にズコー!(コケる)とか、「乳首せんのかい」とか。
奥田 ドリルね? ドリルをするかしないかであって、乳首するしないではないよ?
アユニ (笑)。貴重な経験をさせてもらいました。あれは誇りです。
──奥田さんはBiSHのオタクとして知られていますが、PEDROの音楽やパフォーマンスはどう見ていらっしゃるんでしょう。
奥田 BiSHは「楽器を持たないパンクバンド」で、バンドというくくりではありますけど大きく見たらアイドルじゃないですか。かっこよくありつつも、やっぱり「かわいい」もある。でもPEDROはバンドなんで、BiSHのときよりも「かっこいい」のほうにもう一個グッと針を振っていることが見てて伝わりますね。
アユニ やったー。でもまだちゃんとライブ観てもらってないんですよね。観に来てほしいです。
奥田 そうなんですよ。9月からのワンマンツアーにぜひ行かせてください。もともとは運営の大人たちから「バンドしたら?」「ベース弾け」って言われて、有無を言わさん感じで始まったわけじゃないですか。実質パワハラみたいな(笑)。
アユニ ほんとですよ! 実家帰ろうかと思いました。
よじょう そんな感じやったんや。
奥田 でもそこで始めたことが今こうなってるって、すごいことですよ。
表現者たちの相乗効果
──昨年の『DAIENKAI』はどんな感じだったか、出られた方から何か聞いていますか?
奥田 アーティストさんと絡むって普通は緊張すると思うんですよ。でも出た芸人がみんな「楽しかった」って言ってるんですよね。だからたぶん出てみないとわからへんのやろな、と思ってます。
アユニ 芸人さんとアーティストって、ジャンルは違っても同じ表現者ですよね。最近は友達のバンドもよく芸人さんとツーマンライブをやったりしてて。
奥田 たしかに、昔に比べてそういう機会が増えたよね。
──音楽×お笑いのイベントはたしかに増えてますね。なぜなんでしょう?
アユニ 単純に、お互い好きなんじゃないですか? お互いというか、アーティストはやっぱり芸人さんが大好きだから、そこで職権濫用してるのかも(笑)。
奥田 バンドの方が「この芸人さんのファンなんです」って言うてるのをよく聞くようになった。どっちも人数が増えてきて、汽水域みたいに混ざるところができてきたのかもしれません。芸人側も昔みたいに「漫才だけ」「コントだけ」って感じじゃなくなってるし。
よじょう 芸人がバンドやるパターンも増えましたもんね。
──そういう場では普段と違うお客さんを前にすることになりますよね。
奥田 俺らはバンもん!(バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI)さんがやったフェスに呼んでもらったことがあって、たぶん普段あんまりお笑い観に来られない方の前でやるんで緊張してたんですけど、けっこう受け入れてくれて。
よじょう 「ウェーイ!」みたいな反応で、「そんなノリで来てくれんねや」ってなったなぁ。やってて気持ちええぐらいでしたね。
奥田 お笑いのお客さんはしっとり見て笑う感じやけど、ああいうお客さんだと指笛とか鳴るもんね。こっちが「俺、◯◯できんねん」みたいなボケ言ったら「おぉ~~!?」って煽ってきたり。
よじょう そうそう。それでもさすがに漫才しかウケへんやろと思ったんですけど、鬼ヶ島さんがコントやったらそれもめちゃくちゃウケてた。乗っかってきてくれるから、意外とお客さんとの相性はいいんちゃいますかね。
奥田 あれは楽しかった。『DAIENKAI』もそんな感じになったら楽しそうですね。
アユニ お客さん方はいつもとは違うものが観られて、新鮮で楽しいんじゃないでしょうか。自分たち表現者側も相乗効果みたいなものがあったり何かいいスパイスになったりして、心で、魂で盛り上がる気がします。
──自分たち目当てのお客さん以外も多い場で、観客を巻き込むために心がけていることはありますか?
アユニ 純粋に命を賭けてやるのはもちろんですけど、うしろのうしろのほうまで届けたい気持ちはずっとあります。そのためにステージに立っているので。そこでしか感じられないもの・知れないもの・見られないものは必ずあると思うんで、お客さんのその雰囲気に負けないようにしたい。BiSHはやっぱり色物だったので、フェスとかであんまり受け入れられないような経験はたくさんしてきました。そういうとき、これまではメンタルをやられてたんですけど、今はもう気にしないです。「やりたいことをやり尽くす」って心がけてます。
奥田 そこらへんはたぶん、芸人も一緒ですね。寄席に出るとき、昔は「全部のお客さんを笑わさないとあかん」って思ってたんですけど、何十組も出るわけじゃないですか。この世で芸人が自分らしかいないなら全部笑かさなあかんすけど、そうじゃないから。あるときから、最終的に全員が大満足で帰ってたらいいんかなと思うようになりました。俺らでは絶対笑わへん人もきっといらっしゃるけど、中には僕らみたいなんが好きな人もいるはず。そこに全力でいって、あとはほかの芸人たちに「任せました!」「とりあえずここはやっておきましたんで!」って。
アユニ 得手不得手がありますからね。
奥田 「イタリアン食べたい」って言ってるお客さんに和食出すわけですから。でもこれで中途半端に寄せてトマトのおでん出したら、イタリアン好きにも和食好きにも嫌われていくんですよ。それやったらもう和食一本で、って思ってます。
──それこそ今回同じブロックで出るEXITさんとガクテンソクさんとでは、同じお笑いでもお客さんの層が全然違いそうです。
よじょう 見えてないんちゃう?(笑)
奥田 味しないですよ。おしゃれで映えるパスタ食べに来てんのに、渋い小鉢9品出されて。
よじょう 「好きなの取ってください」って。
奥田 でもそれがいいんですよね。そこと混ざれるのが楽しいと思う。食べたいものが違うお客さんが集まるわけでしょ。楽しみっすね。
アユニ ね! 食わず嫌いだった人もいっぱいいるだろうし、そこで「この芸人さんってこんなにおもしろかったんだ」「このアーティストってこんなに曲よかったんだ」ってなっていただけたらうれしい。こちらもチーム戦ですね。
よじょう たしかにそうっすね。スクラム組んでやっていきましょう。
人生の舵取りを自分でやらねば
──最後に少し話が変わるのですが、2023年にガクテンソクさんは上京されて、アユニさんはBiSH解散からPEDROに専念され個人事務所も立ち上げられて、互いに大きな環境の変化を経験されたと思います。そういうときにワクワクするタイプですか? あるいは心配が強いタイプですか?
奥田 僕はワクワクが勝ってましたかね。「4月から東京か~」って。それで来たら来たで「ほら、楽しい!」って感じでした。
アユニ 東京に行くのはおふたりで決められたんですか?
奥田 あっ、えぇとね、ガクテンソクの決定権は10:0で俺にあるから。
アユニ (笑)
よじょう 俺も言うよ? 行かへんときは「行かへん」って言うよ。
奥田 「行かへん」って言わさないようにしてるから。でもBiSHの解散は去年だけど1年前にもう決まってたもんね。
アユニ 私に関しては、言ってしまえばアイドルなんで社長さんやチームが言うことをがむしゃらにやるだけでした。それこそ解散のような大きい出来事も提案されて決まることであって、不安や楽しみもあるけどそんな感情に委ねてる場合じゃなかった。ただ必死に、みんなで決めた目的地まで進んでいくだけで。ガクテンソクさんみたいに自分で提案して決める方の場合、ご本人たちが不安がってると見ている人やまわりも不安じゃないですか。だから今「ワクワクが勝つ」って言っていたのを聞いて、「頼もしいな、自分もそうでありたいな」って思いました。
奥田 (話を聞き終えて)しゃべれるようになったでしょう……!
よじょう すごいなぁ。
アユニ いやいや(笑)。
──大阪のおじさんの目頭が熱く(笑)。
アユニ しゃべれるようになったのは最近ですよ。グループではずっと一番末っ子だったんで、みんなに甘えてて。
奥田 でも今やバンドのフロントマンですからね。
アユニ そうなんです。王様にならなきゃ。日々プレッシャーと戦い、夜はゲボ吐いて朝を迎えてます。
──これからは全部自分で決めていかないといけないわけですもんね。
アユニ そうなんですよ。だから物怖じしたくないですね。仕事もプライベートもずっと閉じこもって引きこもってましたけど、今ようやく世界が開けてる感じなので。
奥田 始まった? 世界が、人生が、人間が。
アユニ 人間が始まった!
奥田 いいよ、楽しいよ、人間。
よじょう なんかスケールがデカいなぁ。
アユニ 人生の舵取りを自分でやらねばと思いますね。そのためにも好奇心と追求心と探究心はずっと絶やさないでいきたい。ガクテンソクさんの在り方は「40代になってもなんでもできるんだ」って希望を与えてくださいました。
奥田 なんかね、自分のスタミナとか体力の限界とかいろいろわかってくるから、無駄なことしなくなって一個だけめっちゃがんばり出すんですよ。おじさんって省エネになってくる。全方向にがんばってたら、体力が足りなくて死んでしまうからね。
アユニ 器用になっていくってことですよね。私は自分の容量がつかめないんで、よくキャパオーバーしてダメになっちゃうんです。
奥田 いや、20代ですから、がむしゃらでいいのよ。
アユニ そっか。たしかに、体力だけはあるんで。
奥田 そうよ。俺なんて休みの日、家で一日静かにしてるときあるもん。体力回復せぇへんから。ルンバとおんなじよ。充電器にずっとおるだけ。
──ちなみに、奥田さんは「ワクワクした」と言ってましたが、よじょうさんはどうでした?
よじょう 僕はほんまに「一回ぐらい東京行ってみたいな」ってことで来ましたね。
奥田 これがヤバいでしょ。42歳が言う言葉か?「一回ぐらい東京行ってみたい」って。
よじょう だってたぶん60歳なったら思えないじゃないですか。だからまだ間に合うかな、と。
奥田 ほんで、そのテンションで来て住んだんが国分寺。どういうこと? 「東京行ってみたいな」って人は聞いたことある土地に住むやろ。
よじょう それはもう、ほんまに、マジでそこしかなかったから。
奥田 そんなわけないって。
アユニ 奥様も納得されてたんですか? 「もっと都心に住みたい」とかおっしゃったりは?
よじょう それが最近、うちのまわりが畑ばっかりやから年中黄砂が飛んでる状態になってて、奥さんが「ちょっと肌がヤバなってきてる」って言うてて。飼ってる犬もかゆそうにしてるんで、「これはマズいな」ってようやく少し思ってます。
奥田 それも空気悪い都心で食らうやつやねんて。
『DAIENKAI 2024』
2024年7月13日(土)、7月14日(日)開場10:00/開演11:00/終演21:00(予定)
会場:東京ガーデンシアター
チケット:二日ぶっ通し券19,000円(税込)/一日券 9,800円(税込)※すべて指定席
【7月13日出演者】
◆アーティスト(50音順)
キュウソネコカミ、クリープハイプ、四星球、Novelbright、ブランデー戦記
◆KAMPAI ACT
ZiDol、日谷ヒロノリ
◆芸人
レイザーラモン、おいでやす小田、こがけん、銀シャリ、サルゴリラ、バイク川崎バイク、金属バット、ニューヨーク、男性ブランコ、ニッポンの社長、マユリカ、コットン、さや香、ゆりやんレトリィバァ、ヨネダ2000、令和ロマン、吉本新喜劇・座長すっちー……and more
◆ENKAI BUCHO
レイザーラモン
【7月14日出演者】
◆アーティスト(50音順)
神聖かまってちゃん、PEDRO、THE BAWDIES、ヤバイTシャツ屋さん、ヤングスキニー
◆KAMPAI ACT
ジュースごくごく倶楽部
◆芸人
野性爆弾くっきー!、囲碁将棋、ガクテンソク、ミルクボーイ、アインシュタイン、ななまがり、マヂカルラブリー、見取り図、相席スタート、ロングコートダディ、蛙亭、空気階段、ミキ、ケビンス、EXIT、オダウエダ、カベポスター、フースーヤ、ナイチンゲールダンス、令和ロマン……and more
◆ENKAI BUCHO
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6月5日発売の『クイック・ジャパン』vol.172にはアザーカットを含んだ特別版を掲載。
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