藤寺郁光『「鬼滅の刃」の折れない心をつくる言葉』:PR

『鬼滅の刃』から読み解く、不安定な時代を生き抜くための“折れない心”とは

2020.10.2
「鬼滅の刃」の折れない心をつくる言葉

文=大山くまお 編集=前田和彦


早くも2020年代最初の名作との呼び声も高い『鬼滅の刃』。

このコミック作品の魅力のひとつにキャラクターたちが持つ、自分の弱さに向き合い、葛藤し、それでも立ち上がろうとする“折れない心”がある。

そんな個性豊かなキャラクターたちの胸を打つ言葉の意味を掘り下げたのが、藤寺郁光『「鬼滅の刃」の折れない心をつくる言葉』(あさ出版)だ。

すでに重版され多くの読者を獲得しているこの書籍の魅力を、ベストセラー『名言力 人生を変えるためのすごい言葉』(SBクリエイティブ)の著者・大山くまおが解説する。

現代人の心を熱くする『鬼滅の刃』の言葉たち

今年5月に完結した吾峠呼世晴の人気コミック『鬼滅の刃』。“シリーズ累計8000万部突破”という数字だけでは計り知れないほどの社会現象的なブームとなり、その人気は日本のみならず世界にも及ぶ。テレビアニメも好評で、まもなく公開される『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』への期待も高まっている。

ハードな描写とアクション、主人公の成長と兄妹・家族の絆、敵である鬼の持つ悲哀など、さまざまな魅力を持つ『鬼滅の刃』だが、その中でも“言葉の魅力”に注目した本が『「鬼滅の刃」の折れない心をつくる言葉』(藤寺郁光・著/あさ出版)だ。

『「鬼滅の刃」の折れない心をつくる言葉』藤寺郁光/あさ出版

本書では、「感情を動かす」「自分を信じる」「あきらめない」「強くなる」「仲間を想う」と5つの章に分けて全部で52の言葉が紹介されている。ここでいくつか紹介してみよう。

「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」      

冨岡義勇/第1話「残酷」

『鬼滅の刃』のすべてはこの言葉から始まった。愛する家族を鬼に惨殺され、唯一生き残った妹・禰豆子を背負って歩く主人公・竈門炭治郎。そこへ現れた鬼殺隊の冨岡義勇は、鬼になった禰豆子を斬り殺そうとするが、炭治郎は地面に頭をこすりつけて妹の命を助けてほしいと懇願する。そこで放たれたのが、この言葉だ。

弱者にはなんの権利も選択肢もない。言葉にすると非情に聞こえるが、窮地に陥ったときにすべてを諦めて他人任せにするのではなく、死にものぐるいで自分の道を切り開かなければならない。それがわかっていても、手足がすくんで動けなくなってしまうのが人間というもの。特に、人一倍優しい炭治郎には、これぐらい強い言葉が必要だったのかもしれない。

「失っても失っても 生きていくしかないです どんなに打ちのめされようと」

竈門炭治郎/第13話「お前が」

婚約者をさらわれてしまった男・和巳と出会った炭治郎は、その婚約者をさらった鬼を倒したものの、彼女は鬼に喰われてしまったあとだった――。これは炭治郎が和巳を気遣ってかけた言葉。絶望の淵に沈む和巳は炭治郎にきつく当たるが、炭治郎の優しい眼差しを見て悟る。彼も自分も同じなのだ、と。大声で詫びる和巳に大きく手を振って応える炭治郎の優しさと強さがまぶしい。

炭治郎は愛する家族を失った悲しみを抱えながら、冨岡義勇や師匠の鱗滝左近次、兄弟子の錆兎、姉弟子の真菰らから声をかけられて生き延びてきた。和巳はきっと炭治郎からかけられた言葉を心の支えにして、また立ち上がり、生きていくんじゃないだろうか。人はそうやって寄り添って生きていくものなのだ。

「鬼であることに苦しみ 自らの行いを悔いている者を踏みつけにはしない
鬼は人間だったんだから
俺と同じ人間だったんだから」

竈門炭治郎/第43話「地獄へ」

竈門兄妹と交戦したあと、救援に来た冨岡義勇に首を斬り落とされた下弦の伍、累。崩れ去っていくなかで、累は失った家族のことを回想する。自分のことを愛してくれていないと思った両親は、実は誰よりも深く自分のことを愛していた。しかし、その絆を断ち切ってしまったのは累のほうだった。累から大きな悲しみを感じた炭治郎は、傷ついた体のまま、累の体に手を置く。その行為を冨岡に咎められた炭治郎の言葉だ。

「優しさ」は炭治郎の最大の特徴であり、魅力でもあり、強さでもある。人を思いやること、人に想像力を働かせることが、戦いのない穏やかな世界を作っていく第一歩なのかもしれない。自分も炭治郎のような優しさを持ちたい。そう思わせてくれる言葉だった。

「己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと
心を燃やせ 歯を喰いしばって前を向け」

煉獄杏寿郎/第66話「黎明に散る」

上弦の参、猗窩座との戦いで致命傷を負った炎柱・煉獄杏寿郎は、共に戦った炭治郎に言葉を残す。まずは弟と父への伝言。そして、鬼になった禰豆子を連れて戦う炭治郎に「俺は君の妹を信じる」と告げ、「胸を張って生きろ」と鼓舞する。それにつづくのがこの言葉だ。

ここまで必死に努力を積んできた炭治郎だが、それでも強くなる途上。心が折れるときだってあるし、悲しみに暮れるときだってあるだろう。そんなとき、自分を認めてくれた尊敬すべき相手がこんなことを言ってくれたら、それがまた心の支えになるはず。後進の成長を認め、自分が彼らの踏み台になって、使命をつなぐこと考えていた煉獄杏寿郎だから言えた言葉だ。

「一番弱い人が 一番可能性を持ってるんだよ」

竈門炭治郎/第172話「弱者の可能性」

上弦の壱・黒死牟との戦いで重傷を負った鬼殺隊での炭治郎の同期、不死川玄弥。なんとかして仲間を助けたいが、呼吸の才能がまったくない玄弥は自分の弱さを突きつけられることになる。そこで思い出したのが、炭治郎に言われたこの言葉だ。

ただの慰めのように見えるかもしれないが、実際には「弱いと思われている人間であれば警戒の壁が薄いんだよ」「だからその弱い人が予想外の動きで壁を打ち破れたら」「一気に風向きが変わる」「勝利への活路が開く」という、とてもロジカルなもの。戦いの中でのロジカルさは『鬼滅の刃』全体を貫いている。

自分の弱さを嘆いているだけでは何も始まらないし、何も起こらない。だけど、弱いなりに必死に行動すれば活路が開く。炭治郎自身が弱さを知っていたからこそ言えた言葉なのかもしれない。

ここで紹介したのは、ほんの一例。それぞれが大切にしている『鬼滅の刃』の言葉と本書を照らし合わせながら読んでみるのも楽しいだろう。心を奮い立たせたいときに開きたい一冊だ。


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  • 「鬼滅の刃」の折れない心をつくる言葉

    「鬼滅の刃」の折れない心をつくる言葉

    刊行日:2020年8月8日(土)
    価格:1,430円(税込)
    著者:藤寺郁光 (ふじでら・くにみつ)
    ページ数:232ページ

    【目次】
    はじめに
    第一章 感情を動かす
    第二章 自分を信じる
    第三章 あきらめない
    第四章 強くなる
    第五章 仲間を想う

    【著者プロフィール】
    藤寺郁光 (ふじでら・くにみつ)
    carta代表。マンガ、アニメ、アイドルの分野と、ビジネスとの関わりについてWEB媒体を中心に執筆。古今東西の名言を集めることをライフワークにするのと同時に、マンガの編集や分析、キャラクターやガジェットなどの研究も行っている。

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