LAUSBUBは「『ちびまる子ちゃん』のまるちゃんとたまちゃん」ふたりの音楽を自由にする信頼と試み

文=日比楽那 撮影=坂口愛弥 編集=藤井里音


LAUSBUBが創る音楽は常に最先端を更新している。テクノという枠に収まらないジャンルレスな雰囲気をまとうサウンド。哲学的で物語性を含む歌詞。そこにはLAUSBUBにしか描き出せない独自の世界が存在している。

流行が加速するなかで、独自性を失うことなく最先端を走る彼女たちが「今」、何を感じているのか、そしてその魅力に隠された感性に迫る。

LAUSBUB
(らうすばぶ)2020年3月、Rico(岩井莉子)とMei(髙橋芽以)によって結成されたニューウェーブ・テクノポップ・バンド。2024年7月に1stアルバム『ROMP』をリリースし、2025年10月には国内アーティストとして初めてMVにGoogle AI「Gemini」をサポートとして使用した楽曲「golden lighter」を公開

底が抜けてしまった社会で感受性を失わないために、2000年代生まれの編集者とライターが同世代の感性に迫るルポルタージュ連載「イン・ザ・ライトブルー」。過去記事はこちら

札幌から広がる遊び場

遊び場を拡張するかのごとく音楽を発信するふたり組がいる。2003年生まれ、札幌出身、在住のRicoとMeiによるニューウェーブ・テクノポップ・バンド、LAUSBUB。

2020年、高校の同級生で同じ軽音部に所属していた彼女たちは、ドイツ語で「いたずらっ子」を意味する名をつけ、活動開始。翌年「Telefon」の演奏動画がSNSで拡散され、注目を集めた。

LAUSBUBの音楽を聴くと、ちりばめられている遊びに心が弾み、自由を感じる。音によって開けていく遊び場に飛び込んで踊れるような心地よさがある。ふたりが楽しみながら作っていることも、音から伝わってくる。

Ricoの試みとMeiの声がLAUSBUBの音楽を自由にする

「毎回チャレンジングなことや、こんなことしていいの?みたいなことをしてるんです。ピザを食べるクチャクチャって音を入れたりとか」そう話すのは、楽曲制作と、ギター、シンセサイザー、DJ、エレクトロニクスを担当するRico。

Rico(岩井莉子)

もともと、RicoがMeiの声質に惹かれ、「こんなに素晴らしい人が隣にいるなら自分で曲を作らないと」と、オリジナル楽曲を作ったのがLAUSBUBの始まりだそう。

「Meiちゃんに歌ってもらうことで、LAUSBUBの曲ができ上がります。音楽を作るときは実験性とポップさという真逆の要素を共存させるのが好きなんですけど、そこに歌が乗ると、より届きやすいんですよね」

つまり、Ricoの試みとMeiの声が、LAUSBUBの音楽を自由にしているということだろうか。

ボーカルとベースを担当するMeiはこう話す。

Mei(髙橋芽以)

「自分もLAUSBUBの実験的な要素とポップな要素のバランスがとても好きです。

それから、どんな音が鳴っていても、人の声によって、聴き手の感情に直接的に作用できるような気がします。だから自分が歌うことで、よりリスナーの感覚とリンクする音楽にできたらいいな」

自分がここまで好きなものは、みんなにも好きになってもらえると信じている

ノイズの多いこの時代に、自由でいるのは簡単じゃない。それでもふたりがこんなにものびのびとして見えるのは、なぜだろうか。

Ricoの発言を参照すると、その理由のひとつは、とことん楽しみながら創作に向き合うなかで、自分たちの感性を信じているからだと感じる。

「曲を書くという行為が純粋に好きですし、おもしろいサウンドを追求するのも好き。自分たちがやってみたいことをやってみると、世代や普段聴いている音楽が違うようなリスナーの方たちにも意外とおもしろがってもらえるんですよね。

これまで自分たちが受け取ってきたものの中からやりたいことをやって、新しいものを作って、届けていく。そんな文化のサイクルの一部になれるのもうれしいです」

Ricoは今回の取材の質問案にあった「感受性をどう守っていますか」という問いに「はっとさせられた」と続けた。

「今まであんまり感受性を守ろうとしてこなかったなって。守らないと、と思うことがない幸せな環境で生きてきたんだと思います。

あとは、自分がここまで好きなものは、みんなにも好きになってもらえるはずだと信じているところがあります

『ちびまる子ちゃん』のまるちゃんとたまちゃんみたいな関係

もうひとつ、ふたりの自由を支えるのは、その信頼関係だろう。

高校卒業後、ふたりは別々の大学に進学。そして、4年が経った。

その間もLAUSBUBとして制作やライブを続けてきたことを振り返ってRicoは「活動が広がるにつれて、ただの友達から始まっていることがより重要になった」と話す。

「だから同じものを見聞きしてワハハって笑ったり、(ふたりの好物の)辛いものを食べたり、何も目指さずにふたりでいる時間を大切にしたいという思いが強まっています」

Meiもうなずく。

「バンドメンバーである以前に友達なんですよね。『ちびまる子ちゃん』のまるちゃんとたまちゃんみたいな

補い合ってる部分もあるし、普段の関係や何気ない会話も自ずと音楽に反映されるので、大切にしたいですね」

呼応するふたりの関係性のかけがえなさ。

「いつもMeiちゃんがいい音楽や音楽以外のおもしろいものを教えてくれるので、影響を受けてると思います。

ハマるタイミングが違うことはたまにあるけど、Meiちゃんが好きなものは自分も絶対に好きだと思ってますね

「Ricoは音楽に対する向き合い方がかなりストイックで、かつ愛情がある。私もRicoに一番影響を受けていると思います」

そうして影響を及ぼし合いながら、インプット/アウトプットする。

この4月、Meiが出演し、Ricoが映画音楽を担当した映画『炎上』(長久允監督、森七菜主演)が公開され、LAUSBUBが書き下ろした新曲「higher」がTVCMで流れるなど、活動の幅をさらに広げているふたり。

普段は各々で行動するのも好きだと言うが、外でキャッチしたこともLAUSBUBに持ち帰る意識があるそう。ふたり組ならではの結びつきの強さを楽しむ姿が眩しい。

根は札幌にある重心の低さと、グローバルへ向かう身軽さの両方を併せ持つことが、自由への第一歩

取材があったのは、春の気配がしつつも肌寒い日。

数日前から東京に滞在しているというふたりに「札幌と比べると暖かいですか?」と聞くと、Meiは「違う寒さですね。冷たい風が堪(こた)えます」と、Ricoは「暖かいものだと思って来たら案外寒くて。布が足りません」と笑った。

活動初期からグローバルで聴かれることを想定していた彼女たちだが、根はローカルにある。

そんなふたりに地元・札幌への思いを聞いた。

「おもしろい人がいて、おもしろい音楽が生まれていて、イベントを組んだりしながら音楽を大切にする人、どう札幌内外の人に伝えるか考え続ける人がいて。

そういう人たちが作ってきた環境で音楽を楽しめるのがありがたいなって」(Mei)

「札幌は自分たちが出会った地であり、音楽に触れてきた場所であり、遊んできた街でもある。今は東京で制作をしているんですけど、住環境としては札幌がいいのかな、と。

札幌でインプットしながらアウトプットは東京やほかの土地でもやっていきたいですね」(Rico)

LAUSBUBは、今年もまた札幌で春を迎える。お互いの存在と札幌の地という原点をとことん大切にしているからこそ、クリエイションの軽快さも際立つ。

LAUSBUBが音楽に「実験」と「ポップ」という真逆の要素を含めるように、スタンスとして重心の低さと身軽さの両方を併せ持つのが、自由への第一歩なのかもしれない。

Quick Japan公式YouTubeチャンネルにて撮影メイキング動画公開中

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日比楽那

(ひび・らな)2000年生まれ。ライター、編集者。映画や音楽などアート・エンタテインメント、ユースカルチャー、ジェンダー、ウェルビーイングなどを中心に、広く企画、インタビュー、ライティング等に携わる。