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三遊間×ゼロカラン、人気投票との向き合い方の正解は?「やっぱり有名にならなあかんな」【よしもと漫才劇場10周年企画】

2026.3.28
三遊間×ゼロカラン

文=斎藤 岬 撮影=鈴木 渉 編集=梅山織愛


実力はもちろん、時には人気によっても出番数が左右される若手芸人。東西よしもと漫才劇場の芸歴7年目以下(※)のメンバーが所属する「翔」を牽引する三遊間とゼロカランは、日々漫才を磨くだけでなく、定期的に開催される人気投票イベントにも真摯に向き合わなければならないという。

ライバルであり、仲間でもある同世代のメンバーと日々戦いながら、お笑い界の“一軍”を目指す。そんな若手芸人のリアルを4人が語る。

※2026年3月末までは芸歴8年目以上が「極」、芸歴7年目以下が「翔」に所属。4月からは芸歴9年目以上が「極」、芸歴8年目以下が「翔」になる

トップの代として挑む『グランプリ』への向き合い方

4月より芸歴8年目となるふた組は現在、東西の漫才劇場でそれぞれ最年長として「翔」を引っ張っていく立場です。さまざまな賞レースや日々の寄席出番もある中で、2カ月に一度開催されるネタバトル『Kakeru翔グランプリ』はどういった位置づけで捉えていますか?

劇場に入ったときはまだ『Jimbochoグランプリ』(※)やったんですけど、そのころはオダウエダさんや素敵じゃないかさんが一番上の代で、僕らはその中の若手のひと組やったんですよ。そこで勝ったら出番が増えるし、いうたらチャンスじゃないですか。でも今は一番上になっちゃったんで、トップ10に入らへんかったら「ヤバい」って空気になりますね。だから1位になっても「やったー!」よりは「よしよし」みたいな感じです。

※2025年3月まで続いた、東京NSC19期以降によるバトルライブ

僕はめっちゃ重きを置いてますね。『上方漫才協会大賞』の新人賞ノミネートは、『翔グランプリ』の結果も参考にされるって聞いたことがあって。もう一回出たかったんで、2025年は「絶対優勝せなあかんな」って思いながらやってました。

2カ月に1回来るからサボられへんっていうのはありますよね。そこであかんかったら「うわ、じゃあ次の2カ月の過ごし方はちょっと変えなあかんか」って、背筋を正されるというか。1年間かけてずっとがんばるって、人間やっぱ難しいじゃないですか。だから2カ月単位の細かいスパンで「やらな」「やらな」ってなるのはいいなと思います。定期考査みたいな感じで。

それはわかるわ。2カ月に1回、ガッと集中して1本下ろすのを繰り返してたらいいネタができて、それを『M-1』に持っていけるようなところもあるし。あと、その時期に乗ってるヤツが有利になるのもおもろいですよね。それこそ僕らが『翔グランプリ』で優勝したときは、『ダブルインパクト』で準決勝決まった数日後やったんで、めっちゃ“バフ”かかってたと思います。正直、バカウケやった。お客さんからも作家さんからも「おもろいやつ」って認められた感覚はありましたね。

たいがさんはどうですか?

……えー、パスで。

パス!?

なんで泣きそうな顔してんの?

「パス」って久しぶりに聞いたわ。

これはいったん、パスさせてもらいます。

三遊間×ゼロカラン

出番数も左右される? それぞれの選挙の戦い方

2025年に大阪で2度目の、今年1月に東京では初となる『翔総選挙』の結果が発表され、大阪で稲継さんが1位、東京でたいがさんが6位にランクインしています。おふたりの“選挙活動”はSNSを賑わせました。

お前、もう自分の口から言ったほうがええで?

何を?

『総選挙』で「僕に票入れてください!」って活動をしてたんですよ。それをバッテリィズさんとニッポンの社長の辻(皓平)さんがめっちゃおもしろがって、「入れたってください」みたいなことをXで書いてくれて一気に拡散したおかげやから。ほんまに劇場によく来てて「誰が1位なんねやろ」って思ってたような人は別に、誰も稲継のこと好きじゃないんすよ。

好きじゃないってなんやねん。

結果発表でお前が1位なって出てきたとき、めっちゃ盛り下がったやろ。

ゼロカラン (笑)。

そんで、こいつが1位の特典で打ったライブ、めっちゃ空席あったんですよ。ほんまに、『翔全員ライブ』で過去一番入ってなかったから。今後は自分で言ったほうがええで。

「自分で言ったほうがええ」って何? 何を言うたらええの?

「あれはなかったことにしてください!」って。

でもそれでいったら、たいがは東京の稲継やから。こっちは無関係なネットの票を集めようとしてたからね。

ポケモン総選挙とかで、ようわからんキャラを1位にするネットのノリがあったやん。中間発表で最下位だったとき、あれを踏襲しようと思って。自分で「この豚、最下位らしいぞ。こいつ1位にして人気芸人のファン泣かそうぜ」みたいなつぶやきをしたら、240万インプレッションいってん。

すご! めっちゃ見られてるやん。

けど、つぶやきがほんまにむっちゃ伸びたせいで、全然知らんネット民から「ゼロカランってヤツ、つまんねぇな」とか言われる風評被害も出て……。しかもそんなんをやってるのはこいつやのに、なんでか知らんけど俺のXがBANされたんよ。

えー!? かわいそ!

ザンゾウのベントウもとんでもない動きしてたから、コラボしながらいろいろやり合って、なんとかお笑いにはできたんかなって。

大阪は去年2回目だったからこそ、みんなちょっと腐しながらやってる感じやったやん。東京は初めてだったから、「こんなんは、ちゃんとやらなおもんないで」って焚きつけたんよ。僕らがトップやから、その僕らがちゃんとやれば後輩も恥ずないやろ、って。でも、あんなのが粗品さんにバレたら殺されるよ。だいぶシャバいことやってるから。

三遊間×ゼロカラン
東京の第1回『翔総選挙』6位のゼロカランたいが(1995年6月24日生まれ、大阪府出身/写真左)と、大阪の第2回『翔総選挙』1位の三遊間・稲継諒(いなつぐ・りょう/1995年9月26日生まれ、兵庫県出身/写真右)

さらに3月29日には、東西合同で人気No.1コンビを決める『オール翔総選挙』の結果も発表されます。

ほんまに今の国政ぐらいのスパンで選挙やってんなぁ(笑)。

今回は誰も変なことしてないから、ほんまの順位が決まる可能性があるんちゃう?

俺と稲継みたいなことするヤツがいないから。

コンビやから、結果次第でほんまに出番とか変わりそうな気はしますね。「人気あるからちょっと出番増やそうか」って思われそう。

たしかにな。「こいつら、こんな人気あるんや」はあるかもしれん。

全国のいろんな劇場に呼びやすくなるよな。

ただ、これは言いたいんですけど……僕らの単独のお客さん、半分男なんですよ。街で声かけられるのも男ばっかりやし。僕は粗品さんの『ツッコミマン』とかで知名度上げさせてもらったけど、あれも観てるんが全部男なんよ。

主催ライブ系はマジで男が多いからな。それは俺も問題視してるわ。これは若手のうちはヤバいことやぞ、って。やっぱり女性のほうが拡散力あるやん。

すごいことやけどな。

うれしいねんけど、男は投票とかやらへんやん。だからもう、票は入らないのよ。この選挙でとんでもなく人気ないと思われる可能性がある(笑)。下のほうに入って出番減ったら困るな〜。

三遊間×ゼロカラン
ともに『粗品のロケ』の『ツッコミマン2025』に出場した、ゼロカラン・ワキユウタ(1995年11月10日生まれ、大阪府出身/写真左)と、三遊間さくらい(1996年5月25日生まれ、滋賀県出身/写真右)

さくらい「二軍で4番を打っていたい」

3月からはふた組が参加するユニットライブ『華族』が始まります(本取材は公演前に実施)。これはどういう経緯で立ち上がったんですか?

僕らが言ったんすよ。吉本入ったときから、大阪と東京のユニットをずっとやりたくて。理由はいっぱいあるんすけど、大阪出身なんでやっぱり大阪が好きなんですよね。だから大阪の芸人と一緒に大阪のお客さんの前でやりたくて。それでいろいろ組み合わせ考えて、「ここから一緒にがんばっていこうぜ」って同期でくくったらお客さんも応援するノリでファンがついてくれるかなとか考えて、この4組にしました。

めっちゃうれしいんですよ。ただちょっとなぁ……。同時期に、例えば炎と金魚番長とイチゴと僕らのユニット(『バナナ』)も始まるんすけど、『華族』もそうやし、一緒にやる人らが完全に“ネクスト”じゃないですか。僕らは“ネクスト・ネクスト”やと思ってるから。“ネクスト・ネクスト”の一番上のほう、いうたら二軍で4番打ってるのが一番気持ちよかったんで、これから一軍行ってまた7番レフト守るんか……って気持ちはあります。果たして俺がそれに耐えられるんか。

なんやねん、それ。

「ごめん、やっぱり嫌やわ。俺、4番打ちたいから二軍行くわ」っていうことはあるかもしれません。

おるか、そんなやつ。一軍行けや。

俺は普通に一軍行きたいっすよ。『M‐1』決勝行きたいから、そこらへんの人らと一緒にライブやることで、自分らが今どれぐらいなんか知りたいですね。

でも、そんな感じなんやな。僕らはずっと全然結果出てなかったから、三遊間もめっちゃ前走ってる同期のひと組で、やっと追いつけたイメージよ。準決行って、やっとここからまた一緒にがんばれるかな、って。

準決行っても結局そんな人気出んかったしな。イチゴとか金魚とかもそうやけど、まだ同期はめっちゃ前のほうにおる感覚あるわ。

二軍の4番にもなれてない、チャレンジャーの気持ちよな。

『華族』は東西での隔月開催になるそうですね。ゼロカランさんは大阪、三遊間さんは東京での出番が最近は増えつつありますが、ウケ方の違いは感じますか?

僕らを好きでいてくれる方が多いライブやとあんまり違いはないんですけど、寄席やったら、東京の人のほうが前のめりに聞いてくれる感じはありますね。大阪のほうが「やってみて?」って空気がある気はします。

地域性やな。僕らも最初は大阪でアマチュアとしてライブ出てたんで、東京来たとき全然ちゃいましたね。「東京のお客さんは軽い」って悪口みたいに言われますけど、軽いっていうよりめっちゃ楽しんでるんやな、って思います。大阪の人はおもろいやつを探しに来てて、「おもろいんか?」って試されてる感はあるかな。どっちもいいなと思います。

東京の人らは「みんなで盛り上げよう」って感覚があるんやろうな。こっちが何かしたら、手を叩くとか楽しそうにするとか。大阪の寄席に出ると、平気で3公演連続で重たい日があるんですよ。けっこう上の先輩が出てるときでもそうで、びっくりしてたんですけど、考えてみたら大阪の人って「ハッハッハッハッ(拍手笑い)」ってならないんですよね。自分もそうやし。だから「フッ、おもろいこと言うてるやん」って感じで見てるんやろうな、って思うようになってからは気持ちが楽になりました。

東京と大阪の違いっていうより、ルミネ(theよしもと)に出たときに「やっぱり有名にならなあかんな」とはめっちゃ思いましたね。モニターにドン!って「ジャルジャル」とか「シソンヌ」とか先輩らの名前が出ると、それだけでブワッと盛り上がるんですよ。けど、「三遊間」って出たらシーンとしてて(笑)。やっぱりいろんな仕事がんばって、もっと“有名になる”ってこともちゃんとやらなあかんな、って思ってます。

これを最近言い出してるんすよ。昔は「漫才だけやっといたらええ」みたいな感じやったんです。僕は「ほかのこともやっといたほうがええな」と思ってたけど、こいつはそこを手ぇ抜きまくってて。で、最近これ言うようになって、俺めっちゃむかつくんすよ。

ゼロカラン (笑)。

今まで何発もあったよ? 「ここでうまくいったら、もしかして何かなるかもしれん」っていうんがいっぱいあったのに、そのときはスカシてスカシてスカシて、やっと気づいたんかい。

『翔総選挙』がんばったから。

いや、あれで有名ならんよ。お願いやから、あれをすごいと思うんだけはやめてくれ。

三遊間×ゼロカラン

『M-1』王者がいても、その日一番ウケたい

最後に『THE BEST OF MANGEKI 2026』への意気込みを聞かせてください。すでにチケットは完売だそうです。

今年はずっと「その日の寄席で知名度関係なく一番笑いを取る」っていうのを目標にしてるんです。このライブも強者ぞろいなんで、そこを目指したいですね。ここで一番デカい笑い来たら大アピールやなって。

満員のNGKでそれやったら、最高やな。ただ、あのー……NGKって床がパカッて開いてマイクが自動で上がってきて、そのまま穴開いてる状態で漫才するんですよ。今まで3回ぐらい出たんですけど、毎回怖くて、いつもより半歩ぐらいうしろに立ってまうんですよね……。

落ちそうで?

そんなに穴デカないよ。

言いたいことはちょっとだけわかるよ。あそこ開いてるん、なんか気になるもんな。

「開いてる!」って毎回思う(笑)。いい加減慣れたいし、今回はもうちょいマイクに寄れたらな、と。

穴に近づくのが目標なんや(笑)。僕らからするとNGKは『M‐1』準々決勝の会場でもあるんで、同じ会場で同じ満席の状態を、準々の前に経験させてもらえるのはめっちゃありがたいですね。

前すぎるやろ。3月の末やで? 準々いつやと思ってんの?

いや、でもNGKに立つんは『M‐1』入れても年に1〜2回ぐらいやん。貴重な1回として、ここでNGKを吸収してNGKの体にしたい。で、そのまま11月までその体を維持していきたいです。

僕は一番ウケたいとはあんまり思ってないですけど、終わってからたぶんお客さんが「やっぱり、たくろうおもろかったなぁ」「エバースはやっぱレベルちゃうなぁ」とか話すじゃないですか。そこで「三遊間もなんかおもろかったな」って、3〜4番目ぐらいに名前上がるようになりたいですね。印象に残ってたら、たぶんそうなると思うんですよ。だからウケるスベるというよりかは、説明しやすいネタとか「こいつらこんなん言ってたな」ってパッと出てくるような、みんなの帰り道の話題の端に現れるような漫才がしたいです。

たしかに、たまにそれあるよな。ファンの子から「終演後の帰り道で、うしろ歩いてた男の人が『ゼロカラン知らんかったけど、おもろかったな!』って言ってましたよ」ってDMで教えてもらうことある。あれ、めっちゃいいよね。

最高の告げ口よな。まぁ、言ってんの全員男やけどな、それも。

三遊間×ゼロカラン

『THE BEST OF MANGEKI 2026』
日時:2026年3月29日(日)18:50開場/19:15開演/21:15終演予定
会場:大阪・なんばグランド花月
出演:マイスイートメモリーズ、豪快キャプテン、たくろう、ダイタク、エバース、滝音、三遊間、例えば炎、ぐろう、シカノシンプ、イチゴ、ゼロカラン、金魚番長、家族チャーハン、大王
配信チケット:2,000円(税込)
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よしもと漫才劇場10周年「熱狂の中心に」

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斎藤 岬

(さいとう・みさき)編集者・ライター。1986年神奈川県生まれ。編集担当書籍に『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(藤谷千明/幻冬舎)、『日本人とポテトチップス』(稲田豊史/朝日新聞出版)など。ライターとして「芸人雑誌」「CREA WEB」等で執筆するほか、書籍『迷ったら笑っといてください』(濱..