東京吉本の若手芸人が所属する現在の「渋谷よしもと漫才劇場」を長年牽引してきたダイタクと、「大阪よしもと漫才劇場」の実力派として、2025年は『M-1グランプリ』の決勝に進んだ豪快キャプテン。人気芸人の卒業や上京で、今年も変化するであろう劇場の情勢を、ふた組はどう考えているのか。それぞれ最前線で東西の劇場で戦ってきたふた組が、劇場の今を語る。さらに、その中で見えてきた、ふた組の共通点とは。
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負け続けていたから「劇場番長」になれた

吉本大(よしもと・だい/1984年12月28日生まれ、熊本県出身/写真左)と吉本拓(よしもと・たく/1984年12月28日生まれ、熊本県出身/写真右)によるコンビ。2026年3月末をもって、渋谷・神保町よしもと漫才劇場を卒業する
ダイタクさんは3月末で渋谷よしもと漫才劇場を卒業されます。ということで、まずはダイタクさんに渋谷のことを伺いたいのですが、なぜこのタイミングで卒業を決めたんですか。
そもそもは去年卒業しようと思ってたんですよ。でもそのタイミングで休んだので。劇場側と相談したときに「戻れる場所があったほうがいいんじゃないですか」と言っていただいて、あと1年だけお世話になろうと。僕らすでに渋谷よりほかの劇場にたくさん出ていますから、長くいすぎたくらいですよ。
一応は若手の劇場ですから、『M-1』が終わった人が卒業するのは既定路線かなと思いますし、そのほうが循環もあって健全ですよね。
おふたりはデビューから17年間、ほぼずっと渋谷に所属していたわけですもんね。
『AGE AGE LIVE』の絶頂期である2009年にヨシモト∞ホールに入ったときは、僕らそんなにお笑いに詳しくなかったんですよ。ピースさんや平成ノブシコブシさんを見たことがあるな、くらい。だから知らない名前ばっかりでこれは楽勝だと思ったら、その知らない芸人さんがみんなめちゃくちゃおもしろくて。「これは大変な戦いになるな」と思いました。
そこからお客さんが減った時期、盛り返した時期、全部経験してきた。支配人が変わるたびにライブの名前が変わり、バトルライブが生まれては消えて。1期後輩のニューヨークとか横澤夏子は数年で劇場の華みたいな存在になっていたけど、僕らはそんなことなくて、一時期疲弊はしていましたよね。
昔は一度も勝ったことなかったですからね。
やってることは今と変わらないんですけどね。
そんなおふたりが、今や渋谷の顔に。
いや、みんなが卒業しただけですよ。
そう、俺たちが残っただけ。ただ、一番盛り上げようという心構えは常にあります。そうじゃないと飯食っていけないんでね。今僕らが「劇場番長」なんて呼ばれるのは、負け続けた経験があってこそだとも思いますし。
ダイタクさんがいなくなると、渋谷は変わりそうですね。
寂しいという人半分、「よかった、いなくなった」という人半分じゃないですか? そうじゃないとダメだと思ってるし。
僕らも、上の人たちがいなくなったときはうれしかったですもん。
これからの渋谷は誰が引っ張っていくんでしょう?
僕らも引っ張ってたわけじゃないんですよ。自分たちがやるべきことをやってたってだけで。まあでもこれからか……。ダンビラムーチョはそんなタイプじゃないし。
渋谷も大阪の芸人が回し始めるんじゃない?
うん。ダブルヒガシとかが向いてるかもしれないですね。
ダブルヒガシ頼りだった豪快キャプテンが抱える不安

べーやん(1994年10月2日生まれ、広島県出身/写真左)と山下ギャンブルゴリラ(やましたぎゃんぶるごりら/1988年7月16日生まれ、兵庫県出身)によるコンビ。大阪・よしもと漫才劇場に所属する
ここからは豪快キャプテンさんとともに、東西の漫才劇場の現状を伺っていきます。この春、大阪の漫才劇場からたくさんの方が上京しますね。
いやー、ちょっとやばいんちゃいますか。
大阪が?
そうっすね。ダブルヒガシとかカベポスターとか……。
たくろうもツートライブさんもセルライトスパさんも。だいぶ柱が行っちゃうんで、気が重いです。
あ、そう?
ただまあ、まだフースーヤとか天才ピアニストがいるんで。僕らも。
豪快キャプテンさんは昨年『M-1』決勝に初進出しましたが、上京は考えませんでしたか?
バッテリィズくらいハネたら東京に行こうと思ってましたけど、去年の結果からしたら僕らまだ『M-1』に出続けなあかんので。東京は組数が多いから、大阪におるほうが漫才する場は多いやろうと思って残ることにしました。ただ僕らは基本的にダブルヒガシにおんぶにだっこでここまでやってきたんで、そこは不安ですねえ。ライブによう呼んでくれてたダブルヒガシとツートライブさんがいなくなるんで、出る機会が減るかもしれません。
自分らでライブ主催してないの?
定期的な主催ライブとかはそんなにやってないんですよ。
どうやるか知らないんですよ。いつまでに申請出すとかわかってなくて。
なんだよそれ!
劇場で行われる『グランドバトル』についても聞かせてください。2カ月に一度、芸歴8年目以上(※4月からは芸歴9年目以上)の「極メンバー」が総出で行われるバトルライブですが、普段のライブとは取り組み方は違いますか?
大阪は、『M-1』でやるようなネタじゃなくて、土日の、初めてのお客さんもおるような寄席でやるようなネタのほうがウケるんですよ。
部によっても違うんですけど、かなり寄席と似たお客さんの層だったりするので。
東京も、エバースがいる部とかはすぐ満席になるけど、そうじゃない部は初めてお笑いライブに来るような人が3割くらいいるときもある。
僕らは一応、前回のバトルから今回までの間にできた新ネタの中からやるようにはしてますけど、基本的には寄席と変わらず。
俺らはなんも考えてない。
この前なんて、10年以上前に作ったネタやったし。
今もそのネタができることがすごいですね。
4分ネタがあんまりないからさあ。
実際、強制暗転されたこともあるし。
『グランドバトル』って時間に厳しいですよね。制限時間の4分きっかりで暗転されてまう。
たしかに、時間がはみ出たらどうしようという緊張は常にありますね。
『M-1』王者・たくろうは2025年圧倒的に強かった

ダイタクさん、豪快キャプテンさんともに2025年度の『グランドバトル』で総合優勝の経験があります。
ダイタクさんが優勝したのは復帰したときですか?
そうだね。帰ってきて一発目。自粛漫才をやったとき。
東京は6回中5回エバースさんが優勝していて、ダイタクさんは6月にエバースさんと同点優勝をされました。
うわ、えぐいな。大阪はけっこう優勝者がまちまちですけど。
やっぱりエバースはどのネタもクオリティ高いよ。逆にいえば、ほかがちょっとだらしない。俺らが10数年前のネタやったときも総合3位とかだったもん。
すごい。
ただ、方向性に迷ってるコンビは、『グランドバトル』って助かるかもね。観客票も審査員票もあるから、やってみたネタで審査員票が高かったら「こっちでいいんだ」と思えるだろうし。
大阪も東京も、こんなに賞レース決勝を経験した芸人が山ほど在籍している劇場って、過去例を見ないと思うんですよ。だから渋谷に関していえば今、過去一いい状態。そのぶん、まだ決勝経験のない若手はここで1位を獲ったらチャンスだよな。
『グランドバトル』は前回順位が悪くても、いいネタさえできたらポンと順位が上がるし、そしたら寄席もたくさん入れてもらえるし。
2カ月に1回戦うのは面倒ではあるけど、ほどよい緊張感を定期的に味わえるのは悪いことじゃないよね。
そうですね。あんまり雰囲気は寄席と変わらないと言いましたけど、なんやかんや順位が悪かったら嫌ですし。
たしかに。
賞レース前に勝負ネタをかけて順位悪くて落ち込んでいるコンビを見ると、胸がギュッとなる。そういう意味じゃ、『M-1』卒業して本当によかったと思う。
それでいったらたくろうは、『M-1』直前にきっちり『グランドバトル』で総合優勝してますからね。
『M-1』の2本目のネタやってね。
豪快キャプテンさんから見ていても、去年のたくろうさんは勢いがありましたか?
いやもう、全然無理でしたね。たくろうには勝たれへんと思ってました。
日々の寄席でもすごくウケてましたし。
一昨年の僕らもその感じでしたけど、僕らは東京でウケなかった。たくろうは東京でも大阪と同じくらいウケてたので、そこが違ったんでしょうね。
でもそんな差も、決勝に行ったからもうないだろ?
まあちょっとずつ差はなくなってるかもしれないです。
初めて『M-1』準決勝に来たときはまったくウケてなかったもんな(笑)。
いや、本当に(笑)。
でもそれ、東西関係なく味わうことだよ。初準決勝でそのままうまくいくパターンのほうが少ないんだから。2回目の準決のときは「今年行ける!」って思ってた?
あ、思いましたね。2024年は「ここでこのネタをやろう」というのが明確にありましたし。
結果的に豪快キャプテンさんが決勝に行けたのはその翌年、2025年ですね。
あるあるだよな。
「行ける行ける」と言われた人が素直に行けることのほうが珍しい。
ほんまに、バッテリィズも決勝行った前年のほうが「絶対行く」って言われてましたもんね。


ダイタクと豪快キャプテンの漫才はボケてない
豪快キャプテンさんは今年『M-1』に向けてどう取り組んでいく予定ですか?
今年ももちろんがんばりたいですけど、まだネタは仕上がってないですね。だからネタの種をいっぱい作りたいです。
でも忙しくなってるだろ? メディアの仕事とかも増えるだろうし。
少しは。でもネタをがんばりたいです。
豪快キャプテンさんは、どのくらいのペースでネタを作ってるんですか?
質問(笑)。僕らまちまちなんですよ。新ネタライブに呼ばれることが続いたらめっちゃいっぱい作ることもあるし。
お前ら、“種”はいくらでもできるタイプの芸人だもんね。
ウケるウケないは置いといて、種だけやったら15分ぐらいでできます。
種はいくらでもできる、とは?
だって、なんかにキレりゃいいんですもん。
そうっすね(笑)。
キレる角度だけついてればね。
いや、角度ついてないときもあるよ! 『春菊(すき焼き)』みたいなわけわからんやつも出てくるし。後半が甘すぎて、俺がお前らの作家だったら「後半全とっかえ」って言いたいもん。
シシガシラと同じ。入りはめっちゃおもしろいけど……。
後半が意味わからん。
いや、ほんまにそうやと思います。ネタの最後が決められないまま出て行って、自分らで終わりを探しながらぐちゃぐちゃになって終わったりする。
そうなんすよね……。
でも一番いいかたちだと思う。漫才の理想のかたち。だってキレればいいんだもん。めっちゃ難しいことだけど、それがかたちになってるからうらやましい。
ダイタクさんは、双子やからか、技術がすごいからかわかりませんけど、コント漫才のときにも、お客さんの空気に合わせてアドリブ入れたりするじゃないですか。
俺ら、コントに入ってたとしても俺自身、拓自身でやってて、役に入ってないから。
そうか、なるほど!
だから、すごく簡単そうに笑いを取りますよね。なんか、簡単に。
何? キレればいいとか言ったから言い返してんの(笑)?
いや立派。立派ですよ〜。
(笑)。俺らと豪快キャプテンの共通点は、ふた組ともボケてないことじゃない? 大喜利はしない。だからボケまくるコンビが集まってるような日は本当にウケない。
たしかに。
俺らの漫才でボケてるのは「僕41歳なんですよ、お前は?」のとこだけだから。
でもダイタクさんは賞レースでも笑かして、ルミネ(the よしもと)でもNGK(なんばグランド花月)でも笑かすじゃないですか。
お前ら、NGKではどうなの?
僕らは1本だけウケます。ほかはマジでウケへんからあがいて時間長くなっちゃって怒られたりします。
だから、ネタが終わった瞬間一目散にハケてます!


NGKと相性がいいと思ったまま卒業へ
3月29日(日)にはNGKで、おふた組も優勝した『グランドバトルEAST・WEST』の優勝者と、芸歴7年目以下の「翔メンバー」が総出演するネタバトル『Kakeru翔グランプリEAST・WEST』の優勝者が集う『THE BEST OF MANGEKI 2026』が開催されます。
これはネタ観てみたい人が集まってますねえ。
メンバー最高じゃん。
袖でかぶりつける感じですね。
バトルじゃないんだよね? だったら自由に好きなネタやらせてもらおう。
あとこれ、全体の打ち上げがあるかないかで、一番先輩のマイスイートメモリーズさんの財布がやばいね。
『NHK新人お笑い大賞』の賞金が全部なくなるな。
俺らも上のほうだから、財布が危ないかもな。
あ、僕は打ち上げ参加しないです。
いやいや、ダメですよ!
俺「えぶりばでぃ」に行かなきゃいけないから。「えぶりばでぃ」のことは絶対記事に書いてくださいね。
僕の前の相方がNGKの近くで立ち飲み屋やってて、大さんがめちゃくちゃお気に入りで。
めちゃくちゃいい店。俺、大阪の芸人より行ってんじゃない?
あ、俺も打ち上げ行かない。華山のやすいがいないから。
やすいと飲んでるやついねえって!
ちなみに、このライブ内で「翔メンバー」の中から人気No.1のコンビを決める『翔総選挙』の発表もあります。
投票やってますね。誰が1位になるんやろ。
やっぱ大阪は彼岸花が勝つんじゃない?
彼岸花は勝たないでしょ! めちゃくちゃおもろいですけど!
この前見たネタめちゃくちゃおもしろかった。
東京は喫茶ムーンとかですか。
喫茶ムーンは勝たなそうやな。
「ぺ」じゃないかな。カク、スタイルいいしな。
ぺ、けっこう人気らしいっすね。
もういいって!
ドンココは、東京のナイジェリア票が全部入ったらえぐいぞ?
知らん(笑)。まあ、俺らが劇場所属ででっかいイベントに出るのはこの公演が最後なので。所属芸人として最後にNGKに出られるのはうれしいですね。楽しいイベントにしたいなと思います。
バトルじゃないにしても一番ウケたいです!
がんばります。
俺、NGKめっちゃ好きなんですよ。相性いいと思ってるから、渋谷マンゲキ所属最後のNGKでの漫才も、「やっぱ相性いいな」と思って終わりたいですね。
で、僕は終わったら「えぶりばでぃ」に行きます。
『THE BEST OF MANGEKI 2026』
日時:2026年3月29日(日)18:50開場/19:15開演/21:15終演予定
会場:大阪・なんばグランド花月
出演:マイスイートメモリーズ、豪快キャプテン、たくろう、ダイタク、エバース、滝音、三遊間、例えば炎、ぐろう、シカノシンプ、イチゴ、ゼロカラン、金魚番長、家族チャーハン、大王
配信チケット:2,000円(税込)
配信チケット情報はこちら
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