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「ウケるからやるは『M-1』では失敗する」。3位だったエバースは2026年、自分の感覚を信じる【よしもと漫才劇場10周年企画】

2026.3.26
エバース

文=青島せとか 撮影=柏井彰太 編集=梅山織愛


2025年、ファイナリストが多数所属する、渋谷よしもと漫才劇場の『グランドバトルEAST』で、6回中5回優勝という異常な勝率を叩き出したエバース。その勢いのまま、2年連続で『M-1グランプリ』のファイナリストになると、1stラウンドでは圧倒的な点数で1位通過。しかし、ファイナルラウンドで優勝を逃した。

決勝に出れば出るほど、戦い方が難しくなる『M-1グランプリ』。今年以降、ふたりはどう向き合っていくのか。エバースが現在抱える不安と、それでも揺るがない自信を語る。

チャレンジャーのほうが戦いやすい

エバース
佐々木隆史(ささき・たかふみ/写真左)1992年生まれ、宮城県出身。エバースのボケ、すべてのネタ作りを担う。QJWebでエッセイ「ここで1球チェンジアップ」を連載していた

2025年4月に渋谷よしもと漫才劇場がオープンし、神保町よしもと漫才劇場と2館横断で『極グランドバトルEAST』がスタートしました。エバースはこの1年、2カ月に1回のバトルで6回中5回総合優勝。圧倒的王者ですね。

いやいや。まあ、(総合1位を)獲らせていただいてはいます。

神保町のみで行われていたころと、渋谷と一緒になってからとでは『グランドバトル』に挑む感覚は違いますか?

神保町時代は後輩も多かったですけど、渋谷には『M-1』とか『キングオブコント』ファイナリストの先輩もたくさんいるんで。やっぱり緊張感ありますよね。「まだまだだな」とは思われたくないですし。

単純に組数がめっちゃ増えましたからね。神保町のときは勢いある後輩に対して、受けて立つポジションだった。でも今は僕ら若手のほうだから、挑戦者のスタンスでやれる。お笑い系のバトルってチャレンジャーのほうがやりやすいんですよ。

では、緊張することなく?

昔はけっこう緊張して順位で一喜一憂することもありましたけど、今はそんなに意識せずにやれているから調子がいいのかもしれないです。このバトルのウケだけがすべてじゃないというのはありますし。

僕はいまだに緊張します。時間制限も厳しいし、そこでミスしたら最下位もあり得るし。

大阪で開催されている『グランドバトルWEST』の結果は気にしていますか?

豪快キャプテンさんがめっちゃ優勝してるイメージはあります。

僕は大阪の劇場に行くと、貼り出されている順位をチラッと見ますね。

そうなの?

うん。あんまりがっつり見ると感じよくないかなと思って、バレないように見ます。

知名度が上がったら、ウケ方が変わった

3月29日には、なんばグランド花月で東西のグランドバトルチャンピオンが集う『THE BEST OF MANGEKI 2026』が開催されます。

関西で東京の勢いを見せたいですね。「東京はやっぱり強いな」と思ってもらえるようなネタを持って、東京を引っ張っていけるような存在として乗り込みたい。

このライブはお祭り感覚で楽しみたいですね。……僕は、賞レース以外ではできればなるべく戦いたくないんです。負けるとテンション下がるんで。ただただ楽しく漫才ができたらうれしいです。

これだけ勝っていても?

昔は負けて当たり前というスタンスだったんで別によかったんですけど。芸歴を重ねるにつれて負けたらむかつくようになってきました。

関西でネタをするときの反応は、東京と変わらないですか?

『M-1』決勝に出るようになってからは、東京も大阪も変わらない気がします。けど、それこそもっと若手のころ、武者修行で大阪に来たときなんかは「こういうのはあんまりウケないんだ」とか「東京ではウケないけど、大阪ではここウケるんだ」とかはありましたね。だから以前は、東京でウケたネタを大阪で試して、大阪でもウケたらそのネタは『M-1』でやってもいいかな、という感覚でした。

その変化はやはり、『M-1』で知名度が上がったからでしょうか?

そうですね、認識してもらってる状態でネタを披露するというのは、やっぱりデカいと思います。とはいえ、いまだに僕らのことを知らないお客さんがいっぱいいる公演もありますし、そういうときはスタートが苦しいことも全然ありますよ。

今は東西で全然違いはありませんけど、昔は、ふたりの関係性で見せるような、ニュアンス系のネタは大阪では厳しかった印象がありますね。ちゃんとツッコミを入れるようなネタじゃないと難しいのかなと思ったことはありました。

それもたぶん、大阪だからじゃなくて、単純に知られてなかったからだよ。そういうネタはきっとルミネ(the よしもと)とかでもウケなかったと思う。

エバース

戦える手札はまだある

昔は東京でも大阪でもウケたネタを『M-1』に持っていくというお話がありましたが、大阪でも変わらずウケる今、ネタの判断基準はどこにありますか?

うーん、今は自分かもしれないです。自分の中で「このネタはおもしろいはず」と思った上でウケたら、候補に入る感覚ですかね。「自分の中ではあんまりだけど、ウケるからやるか」というネタは、『M-1』では失敗するイメージがあります。

その感覚をコンビ間ですり合わせることも?

ありますよ。でも、お客さんの笑い声って本当に惑わせてくるんですよ。最初は「これは賞レース向きじゃないな」と思っているネタでも、あまりにウケていると「あれ? このネタもありなんかな」と思っちゃう。実際それで去年は2本目に『腹話術』やっちゃったし。

本当にやるつもりはなかったと言ったら語弊がありますけど、作ったときは「賞レースっぽくない」とふたりで話してたネタなんですよ。でも本当にどこに行っても、アウェイの場所でもウケていたので、それで俺が行けると思っちゃったんすよねー……。

いい勉強になりました。「絶対にこのネタは賞レースに向いてる、これなら行けるはず」と思ったネタでスベったんじゃなくて、自分の中でも最初は『M-1』でやるようなネタじゃないと思っていたやつで負けたから、感覚としては間違ってなかったんだなと思えた。だから、今はそんなに焦ってはいないです。

今度は、揺るがずに。

そうですね。自分を信じて。

それが、いざとなるとわかんなくなっちゃうんですけどね。

まあね。ウケてたら、いつの間にか自分でも好きなネタになってきたりとかもしちゃうから。初めて見た人からしたら「このネタやるの?」と思ったかもしれないけど、こっちは何十回とやってめっちゃウケてるから!とは思いますけど(笑)。

お話を聞いていると、『M-1』は出れば出るほど難しくなっていく面もありますね。たとえば、真空ジェシカさんはなぜあんなに決勝に出続けられているんでしょう。

真空さんはそこまでテレビの人になってないからだと思います。川北(茂澄)さんって、視聴者からしたらどういう人かわからない、いまだに謎めいた人じゃないですか。川北さんとしゃべっていても、感覚はめっちゃ正しい人だと僕は思うんですよ。だからたぶん、やろうと思えばそれぞれの場に合わせた笑いを取れるし、今以上にめっちゃ売れると思うんです。それをあえてやっていない。ずっと狂人に見えてる。だからお客さんもいまだに応援する側になれる。

エバースは今年、『M-1』に対してどう取り組む予定ですか?

そこが難しいんですよね。やっぱりどうしても僕らのネタって、町田が「イジられておいしい」と思っているのが伝わったらお客さんが冷めちゃうと思うんですよ。僕らの関係において、町田が常に「本当にやりたくない」というスタンスでないといけない。でも最近、町田が企業のCMにも出始めたので。「チーチーダブチ」(マクドナルド)のCMであんな感じ(動きを再現)だと、ちょっと危ないんじゃないかな。

いや僕ら、ネタのパターンいくらでもありますから!

ネタで「なんで車やんなきゃいけないんだよ!」とか言ってるのに……。

俺をイジる系のネタじゃなくても僕ら勝てますから! 大丈夫!

車を平気でやれるヤツとして映るとちょっと困りますよね……。

今までのネタもう全部燃やしたんで! 俺が車とか、人間じゃないものになるネタはもうやらないです。ほかにも佐々木の発想系のネタとかもあるんで! 大丈夫です!

まあやってみないことにはわからないですけどね……。

大丈夫です、いろんなパターンありますから!

エバース
町田和樹(まちだ・かずき/写真右)1992年生まれ、神奈川県出身。エバースのツッコミを担当。マクドナルドの「チーチーダブチ」のCMにひとりで出演した

劇場の顔としての役割を

『グランドバトル』に話を戻させてください。2025年度の成績を超えるためには1年間に開催される6回すべて総合優勝することになりますが……。

そうか。去年より優勝するってことか。さすがに無理じゃん?

優勝とかはわかんないすけど、まあまあ忙しいなかでちゃんと戦ってるなというところを見せたいですね。ちゃんとネタで世に出たんだということを忘れないように、『グランドバトル』もしっかりやりたいです。

最後に、今年もたくさんの方が劇場を卒業されました。おふたりもほかの劇場での出番やメディアでのお仕事が増えているなかでも劇場に留まる決断をした理由は?

町田はだいぶ卒業したかったみたいですけど。毎日マネージャーに「卒業したい」って言ってましたから。

いや毎日は言ってないですけど! 「どうしようか」という話し合いはありました。

たとえば令和ロマンは本当に若手のころから神保町のトップ張って、お客さんを呼んで、配信も売ってたんですよ。最後の数年なんて、もう令和ロマンの出る公演はチケット全然取れないくらいで。なのに『M-1』で決勝に行くまで卒業しなかった。で僕らの場合、ちゃんとお客さんを呼べるようになったり、配信が売れるようになったりしたのは本当にここ1、2年なので。それまではどちらかといえば主催ライブでもお客さんを全然呼べなかったりして、足を引っ張っていたほうですし。だからせめて恩返しの期間は設けたほうがいいかなと、今年は残ることにしました。「渋谷よしもと漫才劇場ってたとえば誰がいるの?」と興味を持った人が調べたとき、「エバースもいるんだ」となって盛り上げられたらいいなって。

『M-1』で僕らを知って「エバースを見に劇場に行ってみよう」という層もいると思うんです。そういう人たちが「ほかにもこんなおもしろい人がいるんだ」と知って、ライブに通うようになって、友達も誘って、とお笑いを見る人が増えていったらいいですよね。

卒業したがってたけどな。

まあ考えてはいましたけど、残りましたから。もういいでしょ!!

エバース

『THE BEST OF MANGEKI 2026』
日時:2026年3月29日(日)18:50開場/19:15開演/21:15終演予定
会場:大阪・なんばグランド花月
出演:マイスイートメモリーズ、豪快キャプテン、たくろう、ダイタク、エバース、滝音、三遊間、例えば炎、ぐろう、シカノシンプ、イチゴ、ゼロカラン、金魚番長、家族チャーハン、大王
配信チケット:2,000円(税込)
配信チケット情報はこちら

エバースは『Quick Japan』vol.183バックカバー&特集にも登場

『Quick Japan』vol.183エバース
『Quick Japan』vol.183バックカバー/撮影=柏井彰太

『M-1グランプリ』で2年連続決勝に進出し、2025年は3位になったエバースが、4月14日(火)より発売の『Quick Japan』vol.183のバックカバー&特集に登場する。

2026年もお笑い界の中心に立つであろうふたりを、「揺るがぬ本命」と題して特集。「『M-1グランプリ』決勝確定」の声に応えた2024年。勢いのまま、2025年は1stラウンドで圧倒的な点数で1位通過するも、惜しくもファイナルラウンドで優勝を逃した。それでも、ふたりはすでに前を向いている。そんな、エバースの強さの理由と揺るぎない自信を紐解いていく。

『Quick Japan』vol.183は、全国の書店やネット書店、太田出版のECサイト「QJストア」などで予約受付中。なお、本号は甲斐田晴 ver./ローレン・イロアス ver./3SKM ver.の3種類を同時発売。各バージョン約40ページの巻頭特集を収録しており、表紙と巻頭特集のみ各バージョンで異なる(それ以外のページは共通内容)。

エバースの特集はすべてのバージョンに収録されているが、バックカバーは「3SKM ver.」のみの掲載となる。

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よしもと漫才劇場10周年「熱狂の中心に」

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青島せとか

ライター。お笑いを中心にインタビューやレポートを執筆。