コンビ結成から23年。タイムマシーン3号は今、ひっそりとキャリアのピークを迎えつつある。『有吉の壁』をきっかけにあらためて知名度を上げ、YouTubeのチャンネル登録者数は73万人を突破。「今までの22年間はずっと休みみたいなもんだった」というふたりが、次のパフォーマンスのために味わう“チル”の時間とは?
若手時代に関が通っていたという銭湯「小杉湯」に浸かって、ゆったり話を聞いてみた。
「人気者でも嫌われ者でもない」ふたりに向いていたYouTube
──おふたりは今、『有吉の壁』やYouTubeでの活躍が注目されています。
関 ブレイクとは無縁だけど常にうっすらいるのがタイムマシーン3号でしたが(笑)、たしかに最近は忙しくさせてもらってます。去年の11月の忙しさは、キャリアでピークだったんじゃない?
山本 学園祭シーズンは大変だったね。学祭で地方に行っては深夜に都内に戻り、また朝イチで仕事、みたいな日が続きました。
関 このまま少しずつ売れて、80歳くらいで人気絶頂を迎えられたらいいですね。
山本 昔はブレイクしてないことにコンプレックスもあったけど、結果的にこれでよかったですよ。
関 YouTubeは、人気者じゃないけど極端に嫌われてもいない僕らみたいな芸人にちょうど向いてた。
山本 「タイムマシーン3号のファンは金を落とさない」で有名だったんですが、ようやく収益化できた(笑)。YouTubeは、僕らとスタッフの3人で楽しい企画をゆる〜くやって、お金ももらえるのでありがたい。その一方で、ずっと憧れてきたTVでは(明石家)さんまさんや有吉(弘行)さんの前で仕事ができて最高だし、どっちも観てもらえる今がベストですね。
「チル」は実家みたいなもの?
──メディア出演にライブ、ネタ作りと多忙を極めていますが、おふたりにとって「チル」の時間とは?
山本 僕の息抜きは自宅時間ですね。ひとり暮らしなので、部屋は自分だけの空間。必要なものはすべてソファから手の届く範囲に置いてダラけています。趣味の観葉植物も50鉢以上置いてますね。料理作ったり、TV観たり、酒飲んだり。心地いい空間で好きなことするだけで、気力も体力も回復できます。
関 山本は忙しくなってきてから、ドライフラワーにハマって、煮物に凝りだして、だんだん趣味がおばさんっぽくなってきてるんですよ。
山本 それは別にいいだろ! 僕らの仕事って100パーセント仕事を忘れるってことは不可能じゃないですか。TV点けてもSNS見てても同業者が出てきますから(笑)。だからこそ意識的に仕事から離れる時間を作ることが大切ですよね。その意味で家は聖域ですね。
──そんな聖域に、最近は関さんが入ってきてYouTube撮影も頻繁に行われていますね。
山本 そうなんですよね(苦笑)。でもYouTubeは仕事の中で最もリラックスしているというか、相方と気の合うスタッフの3人だけで撮ってるんで、緊張感がまったくない。限りなく“チル”寄りの仕事ですね(笑)。
関 YouTubeの真逆がTVですよね。それこそ『(踊る!)さんま御殿!!』や『有吉の壁』は大緊張ですよ。しっかりも準備するし、本番も張り詰めている。ただ、TV仕事が終わった後のチルは深いよね。
山本 うん。仕事がハードになるにつれて、“チル“は深くなっていく気がしますね。
関 仕事がないころは、ありがたみに気づけなかったかも。
山本 チルって、実家みたいなものですよ。出たときにはじめて、ありがたさが沁みる。
関 たしかに。今はリラックスしてるときこそ、「あぁ、俺たち最近頑張ってたんだなぁ」と実感できる。TVに出してもらいながら、YouTubeも観てもらえる今の調子で活動していけたらいいですね。
「温泉街の出身なんで、お湯に浸かると落ち着きます」(関)
──関さんはどんな“チル”の時間を過ごしていますか。
関 僕は家族がいるんで、仕事の移動時間が大事ですね。帰りのロケバスでは、マンガ読んだり音楽聞いたり。車移動のときは、帰宅前にコンビニとかで少し車を停めて、後部座席のチャイルドシートも外して、リクライニング(シート)を倒して寝るんですよ。仮眠のときはブランケットが必須ですね。布が一枚あるだけで、安心感が段違いです。 あと、家族ができてからひとり時間の過ごし方も変わりました。独身のころは遅くまでTV観てましたけど、今はTVの音で子供が起きちゃうので、代わりに本を読むようになって。無音の部屋で読書してると、優雅な時間だな〜と思いますね。
──おふたりとも自分だけの空間や、ひとりの時間を大切にされているんですね。
山本 僕はもう家以外ではリラックスできない体になってます。地方のホテルで2〜3泊すると、もうずっと緊張してる状態なんで、早く家帰りたくなる。
関 僕は地方行ってもわりと楽しんでますね。ひとりで居酒屋とか入って、お酒飲みながらマンガ読んでます。
山本 僕はひとりで飯食いに行っても、全然楽しくないんですよ。外で飲んでも「なんでわざわざ500円もするビール飲まなきゃいけないんだろう」って思っちゃう。
──山本さんはとことん家派なんですね。
山本 そうっすねぇ。家で気兼ねなく飲むのが好きです。ソファから動かないですよ。Netflixつけて、テーブルに氷も割材も置きっぱなしで、ダラダラ飲み続ける。
──関さんはほかにもチルな時間ってありますか。
関 銭湯も好きで、昔からよく行ってます。この小杉湯にも、昔は通っていました。仕事があんまりないときは、高円寺でよく遊んでたんですよ。小杉湯に行ってから、飲みに行ったり、趣味のダーツをしに行ったり。群馬の温泉地出身なので、お湯に浸かると落ち着きます。地元は田舎だったから、遊び場もなくて。銭湯が社交場でしたね。
芸歴26年でも、ネタ作りの効率は上がらない。
──今年は賞レース『THE SECOND』にも出場されています。今でもネタ作りはふたりでしてるんですよね。
関 そうですね。コロナ前は初台のデニーズに集まってネタ考えてましたねぇ。店長が僕らのこと知ってくださってて、空いてるときは、人気のない奥の席に案内してくれるんですよ。おかげで落ち着いてネタ作りできました。
山本 とはいえ、今でもなにひとつアイデアが出ないこともあります。デニーズで二食目を頼んだ日は絶望ですよ(笑)。
──行き詰まったときに頭をリフレッシュする方法はありますか。
山本 ひたすら粘るか、その日は解散して後日仕切り直すしかないですね。こればっかりは考え抜く以外に方法がないです。
関 僕らってデブネタ一本だと思われがちですが、意外といろんなネタやってて、決まった型がないんですよ。だからネタ作りはゼロから考えることが多くて、そういう意味で効率はすごく悪いかもしれないです。
山本 過去にやったことは繰り返したくないってところはふたりに共通してて。そのせいで勝手に自分で自分の首を絞めてるんですよね。「これもやった」「それもやった」って潰していくと、狭いところに進んでいくしかない(苦笑)。
関 YouTubeなら狭いところに行っても大丈夫なんです。視聴者はひとりでスマホを観てるから、細かいネタやったり、多少説明が足りなくても、着いてきてもらえる。でも、大勢の前でやる漫才やコントは、そうはいかなくて。客席に座るお客さんたちの最大公約数を狙わないといけないんです。
山本 芸歴重ねても、ネタはずっと難しいですね。
【連載】余白の時間 presented by CHILL OUT
日夜、アイデアを思索しつづけるクリエイターたち。その隙間の休息を、どう次の表現に活かしているのか。それぞれの方法論を尋ねる。