1981年にレギュラー放送を開始し、2002年までスペシャル編が続いた国民的ドラマ『北の国から』。
「人には上下の格なンてない。職業にも格なンてない」
「お前の汚れは石鹼で落ちる。けど石鹼で落ちない汚れってもンもある」
「子供がまだ食ってる途中でしょうが!」
主人公・黒板五郎(演・田中邦衛)のこうした数々の名言でも知られ、時を経た現在でも色褪せない物語が描かれている。
フジテレビ公式動画配信サービス「FOD」では、そんな伝説的ドラマシリーズを全話観ることが可能。今回は「FOD」のスタートプライスキャンペーン実施を記念し、普段から自身のラジオ番組でも『北の国から』の魅力を発信しているマキタスポーツのインタビューを実施。自身もドラマ業界に身を置く彼ならではの視点で、このドラマの“異質さ”を熱弁する。
10代と20代の娘も心を痛めた「異質なドラマ」
ドラマ本編は観たことがなくても、主人公である黒板五郎のモノマネやあのテーマ曲は聞きなじみがあるかもしれません。そんなドラマが存在すること自体がまず珍しいですよね。
『北の国から』は、ひと言でいえば「異質な人間ドラマ」です。ストーリーや役者の芝居、撮影方法まで、どこを取ってもほかにはないこだわりがある。だからこそ、時代を経ても愛され続ける魅力があるんだと思います。
コロナ禍にDVDを取り寄せて、10代と20代の娘と一緒に家族で久しぶりに見返してみたんです。そしたら長女はどハマり、次女は胸が痛くて観ていられないって言っていました。いずれにせよ、刺さるものがあったんでしょうね。
情報が整理整頓された現代のドラマもいいけど、過剰な説明がなく、行間がありつつも目に飛び込んでくる情報の密度が濃い『北の国から』も異質がゆえにおもしろい。今観るからこそ驚きがあると思います。
『北の国から』の異質さ①子役の芝居がすごすぎる
ストーリーだけを見れば、とにかくひどい話なんですよ(笑)。
妻の令子(演・いしだあゆみ)に不倫されてしまって躍起になった五郎は、まだ小学生である息子の純と娘の螢を連れて自分が生まれ育った北海道へ帰っていく。東京から、富良野にある麓郷という町へ。今では本作の影響で観光地化していますが、当時はすごいへんぴな土地ですよね。そこでいきなり自給自足みたいな生活を始めるわけですから、子供にとってはかなりストレスが大きい。五郎さん、そんな身勝手なことはないでしょう、という展開なんです。
もちろん、身勝手なのは母親も同じで。大人の事情に子供たちが振り回されてしまう。この純と螢を演じた吉岡秀隆さんと中嶋朋子さんがとにかく素晴らしいんです。なんて心のこもったお芝居をするんだろうって、最初に観たときは衝撃を受けました。
レギュラーシーズンは24話あるのですが、1年以上かけて麓郷でのオールロケ撮影が敢行されたようです。子役自身、人格が形成される大事な時期にこうしたドラマに出ているわけで……その是非はさておいても、時間やお金のかけ方が今とは全然違う。子供たちの成長を映し出すドキュメンタリーのような側面もあって、本当に純度の高い、雫のようなお芝居が連なっていくんです。
観ているとだんだん、キャラクターと本人の人格がごちゃ混ぜになって一体化するような感覚を持つようになっていきます。単なるお芝居であれば、この衣装を着て、そこに立ってこのセリフを言いなさい、といったかたちで進められる。人格とキャラクターを切り離せるわけです。
ただ、ある一定の環境にずっと身を置いて、没入した状況の中で演じる、ましてやそれが子供となれば、本人と演じている役の区別がなくなってくるんです。これを観ている感覚は、現代でいうところのリアリティショーに少し近いかもしれません。職場環境自体は今の時代の働き方と比較すればあり得ないんですが、こうした純度の高いお芝居は『北の国から』でしか観られないと思います。
『北の国から』の異質さ②主人公がダメな大人すぎる
繰り返しますが、このドラマに出てくる大人たちは身勝手でダメな人ばかり。特に主人公の五郎は、頑固で直情的で、それがゆえにいろんな失敗を経験してきた人だったりするんです。
第1話で純が五郎に対して、「お父さん、過疎ってどんな字書くんですか?」と聞いて、五郎はまさかの無視を決め込むシーンがあるんですけど(笑)。それに対して純のモノローグで「知らないでやんの」って流れるんです。五郎は学もない。それを子供にもいじられてしまっているような人間なんです。わからないと思って聞いている純も、ちょっと嫌なやつなんですけどね。
脚本家の倉本聰さんは、そういう人間の醜い部分を細かく描くのが好きなんじゃないかな。当初は五郎の配役について、高倉健や緒形拳、西田敏行の名前も上がっていようですが、「一番情けなく見える人は誰だろう」と話し合った結果として田中邦衛さんに決まったようです。キャスティングからして意地悪な視点ですが、それがハマっているんですよね。
特に印象に残っているのが、純と螢を地元の小学校へ転入させるために、五郎が学校の先生に会いに行く第2話の場面。そこで働く涼子先生(演・原田美枝子)は東京の学校で失敗した経験とかがあって、転入することを渋るんです。ただ五郎は引き下がれなくて。
そのときに発される五郎のセリフが、あっちに行ったりこっちに行ったりして、言葉のチョイスも文脈に沿ってなくてかなりおかしいんです。脚本として書かれたとは到底思えない、まったく整っていない言葉。田中邦衛さんのアドリブも相当大きいと思います。五郎はこれまでも考えていることをうまく言葉で伝えられず、それによっていろんな壁にぶち当たってきたんだなってことが見えるような話しぶり。
何してんだこいつは、と思う場面もたくさんあるんですけど、人間は誰しもこういう始末に負えないような瞬間があるよなって、五郎を見ていると少し共感してしまう。そんな彼でも、何か大切なものを徐々に発見していくところにドラマのカタルシスがあって。身勝手な姿を時に反面教師にしながら、五郎の行く末を視聴者は見守ってしまうのだと思います。
マキタスポーツが特にグッときた場面
『北の国から』はレギュラーシーズンが終わったあとも何度かスペシャルドラマが放送されているのですが、それも含めて僕が一番好きなのは『北の国から’87初恋』のあるシーン。
純は中学3年生になり、大里れい(演・横山めぐみ)という女性にひと目惚れします。そのふたりが大雨に降られたあと、納屋で雨宿りする場面があって。初恋の初々しさがありつつ、思春期のエロスを感じるんですよね。
小学生だった子どもたちが、どんどん成長して、大人になっていく。子役の成長を追う大河ドラマとしての側面があります。観ていると彼らの人生の軌跡にのめり込んでいって能動的な態度が自ずと促される、特別なドラマだと思います。
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マキタスポーツ
1970年1月25日生まれ 山梨県山梨市出身/芸人・ミュージシャン・俳優・文筆家
“音楽”と“笑い”を融合させた「オトネタ」を提唱し、注目を集める。俳優としては映画『苦役列車』で「第55回ブルーリボン賞新人賞」などを受賞。近年では映画『ゴールデンカムイ』、Netflix『地面師たち』などの話題作に出演している。25年4月4日・5日には単独ライブ「オトネタ8」がSHIBUYA PLEASURE PLEASUREで開催予定。