岡野陽一「キャラ変に失敗した人程、見てられない事はない」人間みんな糞袋#8

2022.3.5
岡野陽一サムネ

文=岡野陽一 編集=アライユキコ 


パチンコ大好きピン芸人・岡野陽一の月刊コラム第8回。今回は「人は変わることができるのか」「なりたい自分を目指すには?」という命題に、岡野先生が真剣に答えます。卒業シーズンに向かう少年少女達必見!

人間なんてただの動物なのだ

何かここ数日、暖かくなってきた。
この時期ほど人間も結局ただの動物なんだなと思う事はない。
何かわからないけどテンションがあがるのだ。

別に暖かくなったからといって、パチンコが出る訳でもないし、金が借りやすくなる訳でもない。
春に何も期待なんてしていない。
ただ暖かくなるというだけで、なぜかテンションがあがるのだ。

もう熊とかと一緒だ。

「え?今日ちょっと昨日より暖かくない!?えっ!これもしかして穴から出ていいの!?うっひょー!」

春になると変質者の方達が増えるのもこれが原因なのだろう。

「え?今日ちょっと昨日より暖かくない!?えっ!もしかしてちんこ出していいの!?うひょー!」

何なら熊の方が理由が分かる。
いくら格好つけようが、やはり人間なんてただの動物なのだ。

どうしても気を抜くと、人間である事に傲慢になり、すぐ他の動物を下に見てしまうのだが、今一度、我々は蟻や蓑虫達と仲間意識を持って暮らしていかなければならない。
という事で、本日も「人間みんな糞袋」始まるよ~。

イラスト/岡野陽一
イラスト/岡野陽一

変えるタイミングがあるとしたら今で合ってる

さて、春が来る。
先程、春に何の期待もしていないと言ったが、それは41回目の春を迎える僕の話で、このコラムのメインターゲットである少年少女達は、さぞワクワクしている事だろう。

春から中学生になる少年もいれば、高校生になる少女もいる。
親元を離れひとり暮らしを始める人、新しい仕事に就くおじさんおばさんもいるだろう。

今までの生活が楽しかった人はそのまま楽しめばいい。
しかし、注意して欲しいのは今まであんまりうまくいってなくて、春から心機一転頑張ろうと思ってる君達だ。

勿論、頑張るのは悪い事ではない。
ただ、ひとつだけおじさんから質問させて欲しい。

「君達の中に春からキャラ変えようと思ってる奴はいないか? 今までの自分を知らないのをいい事にキャラを思いっきり変えようとしてる奴はいないか?」

思い当たる人がいたら、この先も読んで欲しい。
決して責めている訳ではない。
その気持ちは凄く分かる。
変えたい気持ちも分かるし、変えるタイミングがあるとしたら今で合ってる。

なんでもない平日からキャラを変える奴は正気の沙汰ではない。

今までの自分を誰も知らなくなるタイミングを待った君達は正しい。
ただ、僕が言いたいのはキャラ変えるのって意外とムズいから気をつけてって話だ。
新しいアンパンマンの顔みたいにスコーンと入れ替えたいのは分かるが、現実はそうもいかない。
新しい顔が餡まみれだったり、酷い奴だと後頭部見たら入れ替わる前の顔がまだついている。

「あー、喧嘩して~」って言ってるのに、親のLINEの登録「お母さん」の人、
今まで付き合った人10人って言ってるのに、靴が見た事ないメーカーの人……。

キャラ変に失敗した人程、見てられない事はない。

イラスト/岡野陽一
イラスト/岡野陽一

僕も昔キャラチェンジに失敗した

最初が大事なのは分かってるからこそ、最初にかましすぎて最初失敗するという地獄に陥る。
何でこんなに言うかというと、僕も昔キャラチェンジに失敗したからだ。

中学生で真面目だった僕は、不良にキャラチェンジしようと、何を思ったか高校に入学したその日から歩き方を変えたのだ。

肩で風をきって歩く、ミナミの帝王の竹内力をイメージした歩き方にだ。

忘れもしない。
高校生初日の1時間目を終えて、最初の休み時間に、隣の席の他の中学からあがってきて初めて会った梅木君に言われた。

「岡野君って面白い歩き方だね」

こうして短い僕の不良生活は終わった。
死ぬほど恥ずかしかった。

でも今思えば、あそこで梅木君にああ言って貰えなかったら、怖い先輩などにボコボコにされてたかもしれないし、同じ中学からあがって来た奴に「岡野君、足どうしたの?」って言われてたかもしれないので、梅木君には感謝しかない。

その後も懲りずに僕は細かくキャラチェンジを試みた。
クールに憧れて高2からちょっと喋らないようにしたら「体調悪いの?」って言われたり、
18才で大学生になり、誰も自分の過去を知らない京都で、バイト先で元野球部キャラとして過ごしていたら、運悪くバイト先に同じ高校の元野球部の先輩が入ってきて元ソフトテニス部だった事がバレたり、ことごとく僕のキャラチェンジは失敗したのである。

とにかく君達にはあんな想いをして欲しくないのだ。
びっくりするくらい恥ずかしい。

全員に共通してるのは詰めの甘さだ

やはり、なりたい自分となれる自分は違うのかもしれない。
でも、これでは春からキャラチェンジを試みようとしてる少年少女達に何の答えにもならないので、おじさん、真剣にキャラチェンジ出来る方法を考えてみた。

自分も含め、キャラチェンジに失敗した人全員に共通してるのは詰めの甘さだ。
幸いこの時期、入学式や引っ越しまでは少し時間がある。
まずバックボーンを固めるのだ。
なりたいキャラのバックボーンをノートに書き出す。

元不良に思われたいのなら、今までの喧嘩した数。怪我。ベストバウト。修羅場エピソード。少年院のシステム。
恋愛経験豊富キャラになりたいなら、何人付き合った。歴代彼女の名前。告白の言葉。初体験のシチュエーション。別れた理由……。

とりあえず全部嘘でいいから細かく書き出す。
で、それを脳に叩き込む。
記憶を改ざんするんだ。

文字で覚えるんじゃないぞ。
文字で覚えたもんなんていざという時出て来ないからな。
絵で、風景で記憶するんだ。

卒業アルバムでも見て、この子と付き合ってたって脳を騙せ。
そして、叩き込んだらこれが一番大事。
いくら覚えたからって絶対に自分から言うんじゃないぞ。

聞かれたら答えるんだ。

キャラチェンジで一番失敗するのはこれだ。
自分はこういう人間だ!って発信したくなっちゃうんだけど、これが一番バレるし、何よりもダサい。
これだけ覚えておけば大丈夫。

後はとにかく練習あるのみだ。

練習で出来ない事が本番で出来るはずがない。

気の許せる親友がいるなら、この春からキャラチェンジする旨を話して、練習に付き合って貰うんだ。

そんな人いないって人は親だ。
恥ずかしがらず親の目を見て言うんだ。

「僕、この春からキャラ変えたいんだ。本気なんだ!だから練習に付き合ってくれない?」

って。

きっと親はこう言う。

「は?」

少年少女達。
今までの自分のキャラが嫌で、キャラを変えたい気持ちは分かるが、色々考えてみた結果、キャラを変えるのは思ったより大変みたいだ。

それでもどうしてもキャラを変えたいと言うなら、
今までの自分のキャラを好きになるキャラになるのが一番楽なのかもしれない。

イラスト/岡野陽一
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