WONK荒田洸×King Gnu常田大希、時代のカウンターである意識をしながら動く

2020.2.18

文=渡辺裕也 撮影=高橋マナミ


WONKとKing Gnuの共通点は、独自でレーベルを立ち上げていること。それぞれがレーベルを立ち上げた理由やスタンスは違うものの、2組とも「時代のカウンターである」ことを意識している。学生時代に知り合い、常にお互いの動きを意識してきたWONKの荒田洸とKing Gnuの常田大希が、それぞれのやり方で海外へ打って出るべく今考えていることを語り合った。

※本記事は、2019年8月23日に発売された『クイック・ジャパン』vol.145掲載の記事を転載したものです。

国内でやるべきことをして、海外へ行く

内向きな傾向が続く日本の音楽シーンにおいて、あきらかに異彩を放っているWONK。とりわけドラマー兼バンドリーダーの荒田洸は、その野心を常に海外へと向けているようだ。

そんな荒田が同世代のアーティストとして賞賛の声を惜しまないのが、King Gnuの常田大希。学生時代に知り合って以来、常にお互いの動きを意識してきたというふたりが、現在の音楽シーンに対するそれぞれの思いを語り合った。

──両者が独自でレーベルを抱えていることには、それぞれどんな理由があるのでしょう。

常田大希(以下、常田) 俺の場合は、単純に自分のクリエイティブの質を上げるためですね。仲間と一緒にやることによって自分の作品の総合的な質を上げたいっていうのが、PERIMETRON(※1)を作ったきっかけなんで。そこはEPISTROPH(※2)とスタンスが違うんじゃないかな。

※1 PERIMETRON 常田率いるクリエイティブチーム
※2 EPISTROPH WONKが立ち上げたレーベル

荒田洸(以下、荒田) まったく違うね。うちらは日本にブラック・ミュージック昇華型の音楽が定着するための土壌を作りたくてレーベルを設立したので、そこはスタンスの違いだと思います。

─―自分の活動においてなにかロール・モデルはありますか。

常田 川久保玲かな。パリコレの乗り込み方もそうだし、やっぱりあの席巻の仕方はすごいよね。

荒田 実はEPISTROPHでもレーベルのビジュアルイメージをどう作ろうかと話し合った時に、川久保玲の名前が出たんだよね。要はDover Street Market(川久保玲監修のセレクトショップ)になりたいと。あれだけいろんなブランドをひとつのセレクトショップに集めると、普通はイメージがぼやけると思うんだけど、DSMだけは揺るがないんだよね。そういうことがEPISTROPHとしてもできたらいいなって、まさについこの間みんなと話したばかりで。

常田 俺が川久保玲いいなと思ってるのは「時代性」なんだよね。カラフルなファッションが席巻している時代に「黒」を出す。そういうカウンターの感覚がいいなと。

――常田さんも時代へのカウンターであることを意識しながら動いてる?

常田 それはありますね。否定とかじゃなく「俺はこうするよ」「こっちのほうがいいんじゃない?」みたいな感じというか。

─―荒田さんはいかがですか?

荒田 そうですね。そういう意識がなかったらWONKみたいな音楽にはならないと思う。

常田 これはメジャーに足突っ込んでるから感じることだけど、日本にはヒップホップの価値観や美学がぜんぜん根付いてないよね。でも、それを国民性とは言いたくないんで、やっぱり俺や荒田がビートや言葉の楽しみ方を伝えていかないとさ。

荒田 うん。俺らはやりつづけるしかないし、多角的に攻めていないとね。それこそ常田の攻め方はすごく多角的だと思う。King Gnuという土台がしっかりあるところでmillennium parade(※3)をやれば、それが届く範囲は全然違ってくるだろうし。EPISTROPHの場合は服や食からも攻めていきたいんだよね。

※3 millennium parade 常田の新プロジェクト

常田 なるほど。そのへんはEPISTROPHが見てる世界とmillennium paradeが見ている世界はけっこう近いのかもね。

――その「見ている世界」というのは?

常田 日本の音楽業界をそもそも相手にしてないってこと。荒田も俺も、海を渡らなきゃいけないんですよ。

─―日本のマスに届けることはそこまで意識してない?

常田 そこはちょっと切り替えるというか、俺はKing Gnuもやってるんで。日本の音楽業界の価値観もそれはそれで知ろうとしてます。たとえば俺はCDを出すなんて考えてもいなかったし、いまCD聴くやつなんかいるのかなと思ってたんだけど、現実はCDを買いたいって人が日本にはいるし、むしろ出さないと金が稼げないわけで、そこはフレキシブルにやってますね。

荒田 これはプロジェクトによって違うんですけど、とりあえずWONKのマーケティングと見せ方に関して言えば、今は国内を見てます。でも、それは海外に行くためのステップでもあるんです。国内でもちゃんとやることはやる。そこから海外に行こうぜって。


荒田 洸(あらた・ひかる)
WONKのドラムを担当。バンドリーダー。唾奇のプロデュースなどヒップホップシーンではプロデューサーとしても活躍。2018年からはソロ活動をはじめ、WONKと同じくEPISTROPHからリリースしている。

常田大希(つねた・だいき)
King Gnu のボーカル、ギター担当。クリエイティブチームPERIMETRONを立ち上げ、King GnuのMV制作や常田の新プロジェクトmillennium parade の総合プロデュースを行うなど多くのプロジェクトを同時に進めている。

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