東出くん不倫騒動のオネエ目線「婚姻じゃ重すぎる」フランスに学ぶ例(ブルボンヌ)

2020.2.7

文=ブルボンヌ 編集=田島太陽


東出昌大をはじめ、ここ数年は芸能界で不倫が発覚するたびに騒動となる。ワイドショーやSNSで議論が紛糾しながら、別の話題が見つかればいつのまにか収束することの繰り返し。

新宿2丁目などでMIXバーをプロデュースする女装パフォーマーでライターのブルボンヌは、これらの騒動をどう見ているのか。人類学者によるベストセラーやフランスでの例を踏まえながら、さまざまな性の視点から論じる。


「擁護派は男ばかり」と「生涯一点の曇りなし」を求められる困惑

「もう1月も終わろうってのに紅白ネタ~?」から始まった女装おじさんの連載ですが、2本目も「もうそれお腹いっぱい」な東出くん不倫騒動やっちゃいますよ。年増のオネエはネタも残尿感もしつこいんだよ!

いや、最近はネット中心にみーんなしつこいわよね。「コイツ悪いことした!」とゴーサインが出たら、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いじゃないけれど、それこそ袈裟の繊維の奥の奥まで汚れを逃がさず見つけ出してアタック! ネット民が高機能洗剤と化した今は、タピオカ恫喝から縦読み匂わせ不倫疑惑といつのまにか罪状まで変わって袋叩きにあったりします。

東出くんのお相手も過去の投稿が徹底的に掘り返され、その匂わせ風味も大きな燃料になりました。とは言え、こんなことを2週間も引っ張るより時間を割くべき大事な報道がいっぱいあるだろう、と思うみなさんもそりゃいるわよね。「よその家の色恋沙汰にそこまで怒るの何?」という落ち着けメッセージ。

カンニング竹山さんを筆頭に、武井壮さんやサバンナ高橋(茂雄)さんらも「子ども含め当事者の不利益が多過ぎ」「杏さんにもダメージ」と、結局この騒動が当事者の誰も幸せにしない点も指摘しています。ホントそうなのよ〜。世間に「杏ちゃんがかわいそう!」と大合唱されるたびに、当の杏ちゃんは小さいお子様の送り迎えも困難になってる。

でも今回そこから飛び火したのが、沈静化寄りの発言をしたのはみなさん男性だったため、鈴木紗理奈ちゃんが「男ばっかりなんですよ。竹山さん、浮気してんのとちゃうかな」とツッコみ、女性たちが「よく言った!」と称賛したという「擁護派男性同類疑惑」。

このツッコミは確かに鋭い。竹山さんは浮気というか風俗処理タイプの印象だけど(憶測ぅ~)、男性陣の一部には「東出は立場・状況・タイミングどれをとっても最悪だから仕方ないとしても、こうもバッシングムードが高まると、遊びや浮気に関して生涯一点の曇りなしを求められる世になるのでは」という困惑もあるんじゃないかしら。

実感ではわかり合えない、男女それぞれのしんどさ

アタシもね、見た目は濃厚なレディー風に演らせてもらってるけど、中身はすね毛ボーボボの中年男性ですからね。生理的には男性性の欲望も痛いほど(あ~んヒリヒリ)思い知ってる人生ですよ。ざっくりオネエさん系のゲイって、感性は女性的なものに同調できることが多いけど、欲望の傾向はしっかり男性的という人が多い気がします。

「一途なパパ売りの化けの皮がはがれた」「奥様が小さな子どもたちを育ててる大変なときの裏切り」「相手は男ウケする地味色気タイプの匂わせ小娘」と、特に既婚女性の逆鱗コンボが決まったのはすごくわかる。でも貞操義務が生じる「婚姻」とも、自分たちだけの問題ではなくなる「子育て」とも縁遠い上に、お互いの生理的な欲望を比較的理解しやすい同性カップルは、世間様の猛烈な不倫バッシングの風潮は一歩引いて見てるんじゃないかしら。

今回うちのお店でも、自身が不倫された過去を重ね合わせて怒り狂ってた女性客が「男はすぐに生理的な処理だっていうけど、それを抑えるのが理性ある人間でしょ!」って言ってたのね。そのとおりなんだけど、「女性がどれだけ辛い感情になるのか」も含め、結局お互いの生理的な部分やそれを抑えるしんどさって実感ではわかり合えてない。たまにいる「私は疲れてるから夫の相手はしたくないけど、AVでオナニーされるのも許せない」って女性なんかは、もう旦那を去勢するしかなくない?

そんな男女のわかり合えなさでいうと、こっちの業界は興味深い経験をしてる人たちがまわりにいるのよ。たとえばうちの店の、パッと見かわいい女子に見える(中身はわりとひどい)女装スタッフは、以前はより女性的になってストレート男性にモテたいために、いわゆる女性ホルモンを投与していたのね。そうすると一番効果がある投与直後は、「いい感じの男子に夢中になる乙女心や、でもその子が浮気してんじゃないかっていう嫉妬心」がいっぱい湧いてきたんだって。でも投与したのが切れてきて、しっかり付いてる自分のタマタマからの男性ホルモンで満たされてくると、街行くイケメンに目移りし始めたんですって。

逆に、元女子で今はヒゲや胸毛も生えてるトランスイケメンのお友だちは、学生のころにノリは合う男子グループとつるんでても、唯一エロ本の写真で興奮して盛り上がってるときだけは意味がわからなかった。でも男性ホルモンを投与し始めたらその即物的な感情がすごくわかったらしいの。もちろん個人差はあるけど、世に言う男あるある・女あるあるって、ホルモンがもたらしてる面も大きいってこと。さあ、世の奥様は今すぐ旦那に女性ホルモンを~!ってダメ、絶対!

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ブルボンヌ

女装パフォーマー/ライター。1971年生まれ、岐阜県出身。早稲田大学文学部在学中の1990年、ゲイのためのパソコン通信を立ち上げる。ゲイ雑誌『Badi』の主幹編集と同時に女装パフォーマー集団を主宰し、現在は新宿2丁目のセクシュアリティフリーMIXバー「Campy!bar」グループをプロデュース。20..

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