でか美ちゃんが語る『M-1』翌日の『ラヴィット!』で見た、オズワルド伊藤の優しさ

でか美ちゃん

文=でか美ちゃん 編集=高橋千里


ぱいぱいでか美 改め、でか美ちゃんが「テレビから聞こえてきた金言」について考える連載、第6回。今回は『THE W』(『女芸人NO・1決定戦 THE W 2021』/日本テレビ)と『M-1グランプリ2021』(ABCテレビ・テレビ朝日)より。

今年も『THE W』と『M-1』で熱くなる時期がやってきた

でか美ちゃんは言った──テレビってやっぱおもしろいじゃん、と。

すみません。余韻がすごくてめちゃくちゃ『M-1グランプリ』(以下『M-1』)のVTRみたいな口調で始めてしまいました。

あと、ぱいぱいでか美から「でか美ちゃん」に改名しました。この連載の内容には関係のないことなので、理由とか気になる人は調べてください(笑)!

今年もまた去年と同じように「師走だね~」なんて言って、1年を振り返る時期が来た。つまり『THE W』と『M-1』が1カ月のうちに行われるとんでもない時期でもある。

『THE W』は“女性芸人”という縛りしかないため、実は「女性芸人の大会」ということよりも、さまざまな芸でしのぎを削るという点がかなりおもしろい。ピン芸もコントも漫才も、なんでもありなのだ。

今年の優勝はオダウエダ。賛否両論あったようだが、個人的には納得の結果だった。自分の好みじゃない、ということを「つまんない」なんてひと言にまとめるような人間にだけは私はなりたくない。

JR各線に貼ってある蟹の写真を見るだけで笑ってしまう体に改造してくれてありがとうございます。オダウエダさん、おめでとうございます!

『M-1』で感じる、身ひとつで戦う“漫才芸”のカッコよさ

そして『M-1』。『M-1』は漫才に特化した大会だ。だからこそ昨年王者のマヂカルラブリーに対して「漫才か、漫才じゃないか論争」まで巻き起こった。

漫才であればなんでもあり。でも、何がどうしたって漫才の大会なのだ。『M-1』のおもしろさはそこにある。

マイクさえあればできる芸、身ひとつで戦う姿のカッコよさもあってか、『M-1』はやたらめったらドラマチックに描かれている。しかし優勝するまでがエピソード0のようなもので、優勝して初めて今大会の主役がわかるのだ。そこからのドラマ。ここまでの人生と、これからの人生。

錦鯉/決勝8組目(C)M-1グランプリ事務局
錦鯉/決勝8組目(C)M-1グランプリ事務局

今年、主役に抜擢されたのは錦鯉。

おじさんが主演のドラマなんて感動しないわけがなく、歴代最年長の王者に輝いた。

「この時間、寝かしてやってよ!」

涙涙の決勝戦から一夜明け、翌日も熾烈な戦いが巻き起こっていたことをあなたはご存じだろうか?

日本一明るい朝の情報番組こと『ラヴィット!』(TBS)では、準優勝だったオズワルドをゲストに迎え、優勝の錦鯉もオープニングだけ緊急出演。

そこで行われたのが「年末年始にオススメのテレビゲームを生プレイ」という企画だった。

さすが俺たちの『ラヴィット!』。錦鯉とオズワルドによる『太鼓の達人』対決、『ボンバーマン』対決、『マリオパーティ』対決……。まじで何考えてたら『M-1』の翌日にこの戦いで行こう!と思えるんだ。

情報番組ではよくあるVTRの合間に差し込まれるちょっとしたクイズがほぼ大喜利、ということでも人気を博す同番組だが、もはや企画そのものが大喜利のようである。

「『M-1』の次の日に、優勝コンビと準優勝コンビが改めて戦うことに。さて、どんな対決?」
「えー、シンプルに『太鼓の達人』」

こうやって企画会議してんのか。そもそも錦鯉は急遽出演だから、という部分も想像できるけど、それでもおもしろ過ぎる。

前置きが長くなったが、今回の金言はその企画がゆえに飛び出した。

「この時間、寝かしてやってよ!」

ひたすらゲーム対決をして、次のスケジュールのためにスタジオを去らなくてはいけない錦鯉へ労いの言葉をかけたのは、ほかでもないオズワルド伊藤(俊介)さんだった。

オズワルド/決勝6組目(C)M-1グランプリ事務局
オズワルド/決勝6組目(C)M-1グランプリ事務局

『M-1』に限らず賞レースは優勝直後から大忙しだと聞く。優勝者以外も反省会生配信があったり、とにかくファイナリストは夜が明けるまで忙しい。

さらに優勝するとなると、朝の番組にも引っ張りだこだ。勝利の喜びを噛み締めるのも束の間、ほぼ寝ずに働きつづけなくてはならない。

惜しくも準優勝という結果だったが、『ラヴィット!』にもともと出演が決まっていたオズワルドも同じ環境のはずだ。ほぼ寝ずにスタジオ入りしているに違いない。

それまでは錦鯉・渡辺(隆)さんから「伊藤くんの目が冷たい」と言われれば「やっぱシンプルに許せないですよね」とバチバチに返していた伊藤さんだが、笑いを取りつつサラリと労ったそのひと言に、妙にグッときてしまった。

同業者への態度で、その人が何を大事にしているのかって明確にわかるものだと思う。自分(たち)が一番!という自信は持っていてもいい。でも、まわりの人への感謝や配慮で、どうしてその道を突き詰めたいのかが不意に出るものだと思う。尖ってたって丸くなったって、自分の真ん中にあるものはきっと変わらないから。

あぁ、この人は心から漫才が好きで、芸人という存在を尊敬していて、だからこそどうしても優勝したいんだなぁ。

そう感じた瞬間、さっきまでヘラヘラとゲームを観て笑ってたのに、あなたは誰のなんなの?というくらい切ない気持ちが込み上げてしまった。

『M-1』王者・錦鯉を慮る、オズワルドの優しさ

この連載の第1回も、オズワルド伊藤さんの金言だった。

伊藤さんが畠中(悠)さんをひと言で言い表したことで、私はオズワルドに興味を持った。その時期にもともと好きだった天才女優で妹の伊藤沙莉さんが単独に出たと聞き、配信で観たりしているうちに、気づいたら冠ラジオの『ほら!ここがオズワルドさんち!』(TBSラジオ)を欠かさず聞くくらいにはファンになってた。

伊藤さんはとにかく他人を観察するのもうまけりゃ、観察した上で適切な距離感で優しさを渡すのが本当に上手で、丁寧な方なんだと思う。

だからこそ嫌味なく錦鯉を慮るひと言がかけられる。しかもたぶん、それをかなり自然なこととしてやっている。

そんな伊藤さんが絶対に勝ちたかった大会が『M-1』なのだ。優しい人が戦いに挑むことほど過酷なことはない。

オズワルド、でか美ちゃん
吉田豪さんとのイベントで、オズワルドさんが出演してくださったときの写真。このときもふたり共すごい優しかったです

数年前、『M-1』の優勝予想を『お笑いナタリー』でさせていただいた。その際に「錦鯉はおもしろいけど、体がボロボロになるところを見たいので、ラストイヤーまで踏ん張ってから優勝してほしい」とか言っちゃうような人間からしたら、伊藤さんの根っからの優しさは目をつぶるほど眩しく見える。

なんだかこう書いてると、オズワルドって本当に不思議な、優しい人の集まりかもしれない(畠中さんに関しては、よかったら第1回のコラムを読んでみてください)。

いや、ほかの芸人さんが優しくないとかではなく……優しい人と優しい人がコンビ組むことってあるんだ、という発見があったというか……。

今年も笑わせてくれてありがとうございました!

それにしても、今年の『M-1』もおもしろかった! 敗者復活戦から盛り上がってた。

モグライダーでの幕開けも最高だったし、ここって劇場バティオス?ってくらいいつもどおりのランジャタイ、真空ジェシカはネタはもちろん暫定席でのボケも完璧でめちゃくちゃ笑った。

そして決勝戦初出場組を抑えてのファイナルステージの3組は唸るほどおもしろい漫才で、本当に今年も素晴らしいものを見せてくれて、とにかく笑わせてくれてありがとうございます、という気持ちでいっぱいだ。

体がボロボロになるところが見たい、と言っていた数年前の自分を叱りつけたいくらい、今年の錦鯉は過去最高におバカでおもしろかった。改めて優勝おめでとうございます!

そして『M-1』の翌日にゲーム対決を平気でしちゃう、そんな『ラヴィット!』が大好き!

漫才は、芸の中ではかなり人が出るタイプのものではあるけど、さらにそこから踏み込んだ日常的な優しさや熱さは、大会では出すことのできないものだからこそ、『ラヴィット!』なりの「お笑い愛」のようなものを感じました。

2022年の『M-1』も、そして翌日の『ラヴィット!』も楽しみですね。

来年こそ、優勝するんだ絶対に!

これからもオズワルドさんを応援しています!

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