声優・小原好美、20代最後の1年間「純粋にとても幸せな期間だった」写真集『夢色夢時』制作秘話

2022.6.28
小原好美の1st写真集『夢色夢時』

文・編集=クイック・ジャパン編集部


『かぐや様は告らせたい』、『まちカドまぞく』などに出演の声優・小原好美の1st写真集『夢色夢時』が6月21日に発売された。本作の撮影は昨年の夏から今年の春まで行われ、今年で30歳を迎える小原の20代最後の1年を記録したものとなっている。

また、全編フィルム撮影に挑戦したほか、写真や用紙のセレクトなど、写真集制作のほぼすべての過程に小原自身が参加したこだわりの一冊だ。そんな彼女に、この1年を振り返ってもらった。

※この記事は『クイック・ジャパン』vol.161に掲載のインタビューを転載したものです。


偶然の重なり合い

小原好美1st写真集『夢色夢時』
小原好美1st写真集『夢色夢時』

──いよいよ制作も佳境となりました。アート性の高い写真集に仕上がりましたが、この1年振り返ってみていかがですか?

小原 全部フィルムで撮影を行ったので、パンチのある出来栄えになったと言いますか。カメラマンのaikaさんがフィルムカメラで撮影していると知ったのも偶然でしたが、いろんな偶然が奇跡のように重なったように思います。

──フィルムカメラでの撮影は、撮ってるときに仕上がりを確認できないので、まさに偶然そのものですね。写真のでき上がりはいかがでしたか?

小原 撮ってる段階ではどういう色味なのか、どういう画角なのかもわからないのですが、でき上がった写真を見て、aikaさんしか知らないファインダーから覗いた画角はこうなってるんだという感動を強く覚えました。あとは、季節ごとに色味が違うので写真が上がってくるたびにすごい驚きがあって。どの季節も全然違う色になっていてうれしくなりました。

──そうでしたね。外での撮影は自然光が読めないですし。

小原 晴れるとわかっていたのは春だけでしたからね。夏は偶然晴れ間が差した瞬間を狙って撮れましたけど。ロケバスを使って遠足気分だった冬は移動中に晴れてきて……。

──遠足気分ということは、リラックスできてたってことですね。

小原 スタッフみんな、いいチームだったからだと思います。

感謝の気持ち

──いいチームになれたのは、ほかでもなく小原さんが持っている元々の素質にみんなが惹かれていったからではないのでしょうか。別の現場ではいかがでしょう。演者さん同士やスタッフさんとすぐに仲良くなるイメージがあるのですが。

小原 どうなんでしょう。自分から得意ですとは言い切れないのですが。けど、どの作品も一期一会と言いますか、一人ひとりとはほかの現場で再会できても同じキャスト、スタッフでまた集まれることってなかなかないことなので。私たち役者が表に出られるのも、裏で支えてくださっているスタッフの皆さんのおかげなのですが、どの作品もそうやっていろんな方々と一緒になって作っていると思うと、感謝の気持ちを忘れたくないなって。普段こういうことって意識していないのですが、振り返ってみるとそういうことなのかなと思いました。

──そういう心構えで撮影に臨まれたのですね。小原さんは声優として活動されて5年が経ちますが、ご自身のキャリアステージに変化はありますか?

小原 以前、マネージャーさんに「いよいよ新人じゃなくて若手の代になったね」と言っていただきましたが、もう新人ではないよなというのは自分でも自覚してまして。これまで演じた役とは違う役にも挑戦させていただいたり、声優の活動以外にもこうして写真集で自分のしたい表現をしたり、今後は朗読劇があったりと活動の幅が広がってきました。

──余裕も少し出てきたのでしょうか?

小原 いえ、全然! そこはデビューから変わらないです。どの現場も第1話は絶対緊張します。意外って言われるんですけど、人一倍緊張しいなので。だから、イベントに出てしゃべっているときも、飄々としてるってよく言われるんですけど、結構緊張を押し殺してます。オーディションだっていまだに怖いですし、緊張しない現場はあんまりないですね(笑)。

緊張感とマイペース

──写真集の制作でも緊張されてましたか?

小原 常に緊張してましたね。

──打ち合わせや撮影など、制作のどの現場で緊張されてたのでしょう。

小原 いい意味で全部に緊張してましたよ。どこで撮るとか、どんな衣装にするとかで、撮影のイメージがだいぶ固まるじゃないですか。打ち合わせでは、そういう表現に関わるところで決定を下す瞬間は緊張してました。撮影は、フィルムカメラなので確認できないぶん、一回一回が勝負でしたが、緊張してると絶対表情に出てしまうのでリラックスしなきゃとか考えていました。

──それって回を追うごとに変わったりされました?

小原 あー、変わりましたね! やっぱり夏は特に緊張しました。けど、冬と春はあんまり緊張しなかったと思います。きっと大丈夫って自信もありましたし、普段あまり行けないようなところにも行けたのでテンションが上がってました(笑)。実は新潟に行くのは初めてだったんです。

──積雪がすごかったですね。

小原 あんなに積もっているのを見たのは初めてでした。めちゃくちゃ寒かったですが、スタッフのみなさんもはしゃいでいたのが印象深いです(笑)。春は千葉の小湊鐵道さんに協力いただき車両を貸し切っての撮影で、思う存分風船置き放題、私もはしゃぎ放題でした。

新たな表現を手に入れる

──全部で11着の衣装をお召しになりましたが、季節の色を纏われた小原さんは、どこか非日常的で幻想的な雰囲気を醸していました。

小原 どの衣装も本当に素敵でした……。マネージャーさんの「せっかくの機会だから普段着ない服でもいいんじゃない」という言葉に背中を押してもらっていろいろ挑戦できました。夏に浜辺で着たドレスも、あんなにかわいいドレスなんて普段着ることなんてないですし。それからスタイリストさんは本当に素晴らしいですよね! 自分では良いかどうか判断がつかないときも客観的にコメントをくれたり、季節に合わせて、アクセサリーや小道具をたくさん用意していただいて。

──そんな素敵な衣装を着られて、撮影のときはなにを考えながら撮られていたんですか。

小原 なに考えてたかなあ。この構図でこの服を着てたらどういうふうに見えるだろうとか、こういうふうにしたらさっきとは違う絵が撮れるかなっていうのは気にしていました。撮影しながら写りや動きを考えていましたが……。こうして一冊の写真集として写真を見ると、aikaさんが撮られたほかの風景だけの写真もあったりと、雰囲気をグッと高めてくれる構成になっていて、一層写真の魅力が引き立っているように思います。

──写真集は声を生かせない表現ですが、やっぱり声優のお仕事とは別物でした?

小原 表現の仕方は全然違いますね。一番の武器としているものがないわけなので。大丈夫かなって、やりはじめてから思ったこともありました。

──そうやって常に考えながら作ってきた写真集ですが、通して読まれてみていかがですか。

小原 ……今が人生のピークですね(笑)。いや、それは冗談ですけど、写真集の構成はデザイナーのiyoさんと綿密に打ち合わせをさせていただきましたし、長い期間をかけて作ることができて、純粋にとても幸せだなって。これをきっかけに、自分の表現の幅が広がっていったらうれしいです。写ることの楽しさを再確認することができたので、今後そういう(実写の)仕事もできるのならしてみたいですね。


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