“拗らせ50代”おじさんとの奮闘記。キャバで「いくつに見える?」は絶対ダメ(本日は晴天なり)

本日は晴天なり

お笑い芸人として活動しながら、キャバクラで働いていた経験のある本日は晴天なり。

今回はお客さんとのやりとりの中で発見した「おじさん構文の定型文」「“拗らせ50代”がやりがちな会話」を紹介。おじさんたちは相手がうんざりしていることに気がついていないのだろうか……。

メールで実感するおじさんたちの強メンタル

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このコラムを読んでくださっている方は、おじさん構文たるものを知っているでしょうか?

キャバ嬢はLINEやメールでお客様と連絡を取り合い、お店に来てもらうためにプライベートの時間を費やすのも仕事のひとつである。

私はお笑い芸人が本業なので、店にいるとき以外にこういったやり取りをするのが苦手……。

その時間があったらネタのひとつでも考えたい……。いや、シンプルにめんどくさかった。

さて、本題に戻ろう。おじさん構文というのは以下のようなメールである。

「何が、どう」とうまく説明はできないけれど、おじさんのメールはだいたいこんな感じだ。

①絵文字大量発生! 俺通信で店外デートお誘いおじさん

本日は晴天なり

こんにちは(ニッコリの顔文字×2)
今日は出張で大阪に行ってました(新幹線の絵文字)
今度、一緒に行きたいな~(チュッの顔文字+ハートの絵文字)
全然連絡ないけど、俺のこと嫌いになった?
俺たち本当に気が合うよね(キラキラの絵文字×2)
飲み友達になったら楽しそうだな(お酒の絵文字+乾杯の絵文字)
お店には行けないけど、飲みたいときはいつでも連絡してね(ウインクの顔文字+ハート×2)

とにかく絵文字が多い。“俺”通信が多い。そんなことないよと言ってほしいのが丸わかり。

これがおじさん構文の基本テキストなのかもしれない。

時給が発生しているから隣に座ってあげてるのに、なんで店の外でも飲み友達になれると思うんだろう? 時給が発生しているから会話を合わせているのに、なんで気が合うと思ったのだろう?

もちろん、キャバ嬢はそう思わせるのが仕事なので、正解といえば正解なのかもしれないが、心の中ではいつもそんなことを思っていた。

②一生確認おじさん

本日は晴天なり

「インスタ見たよ!あのカフェって彼氏と行ったの?」
→ダルいのでいったん、既読スルー

「返事ないけど、彼氏とデート?」
「ごめんなさい!寝てました!」
「彼氏とやり過ぎちゃったかな?(笑)」
「なにそれwwバイトの支度しまーす!」
「彼氏のこと否定しないね?」

やりとりの端々に彼氏がいるかどうかをチェックしてくる人だ。

こういう人は否定しても否定してもずっと疑い、確かめつづけてくる。

③なんでもエロにつなげたいおじさん

本日は晴天なり

「シャワー浴びて寝る準備します!」
「シャワーとか言うから裸を想像しちゃったよ(汗)ごめんね、キモいよね!」
→めんどくさいのでお風呂のスタンプ
「一緒に入りたいな~な~んて!!」

「キモいよね。ごめんね」って謝ってきたのにキモいを重ねてくる強メンタル。

愚痴ばかり言っていると「おじさんを馬鹿にするな! アラフォーがお高くとまってんじゃねー!」などとたまに言われますが、年を重ねてイイ男も悪い男も見てきたからこそ、キモいものはキモいと言いたい。これは上から目線ではなく、隣で見てきた目線なのだから。

この手のやりとりが、既婚者に多いことにもうんざりしていた。

お客さんの大半が既婚者であったが、店に来て話すだけなら健全である。

店の外でデートしたいと言い出したり、彼氏がいるのか確認してくるのは、その先の関係を求めているということでほぼ間違いない。

稀に、キャバクラも浮気だ!と思っている女性もいるが、こっちにその気はないので安心してほしい。「うちの嫁は~」と、奥さんの話をする人もいるし、稀に来る若いお客さんこそ奥さんを愛してると話す傾向があった。

ずっと私がお客様のおじさんたちをディスっているように感じるかもしれないが、あくまで私は自分が関わったお客様とのエピソードを紹介しているだけで、世間一般の会ったこともないおじさんたちをディスってるわけではないので、そのあたりは理解してほしい。

50代のおじさんを十把一絡げにするつもりもない。ただ、私が出会ったキャバクラに来るお客さんは比較的こういう方が多かった、というだけのことだ。

おじさんたちは息をするように問題発言をする

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ここからは、実際にお店で出会った“拗らせ50代”の傾向を紹介したい。

“拗らせ50代”とは読んで字のごとくなのだが、50年も生きてると考え方のアップデートができず、自身の言動になんの疑問も持たないまま、息をするようにやらかしてしまう憎むに憎めないおじさんのことだ。

私はそんな拗らせ50代に一矢報いようと、日々、奮闘していた。

①「俺、いくつに見える?」って聞いてくる50代

ハッキリ言おう、50代は絶対に聞いちゃダメ。

これは女性にも当てはまることだが、聞かれた側の気の遣い方が至極難問なのである。

正直、私の目は友達が30センチ髪を切っても気づかないくらい節穴なので、50代と60代の見分けはつかない。下手したら70代でもわからない。

それでもキャバ嬢として接している以上、確実に実年齢より下に答えなくてはならない。ものすごく気を遣って、ちょっとわざとらしいくらい下に言っちゃおう!これくらい下に言っておけば大丈夫だろう!と思って言ったのに、実際はそれより年下だったりすることもある。

この質問の一番厄介な問題だ。

さらに難しいのが、自分は若いという自覚がある50代は「45歳くらい?」と言っても、うっすらショック受けるのである。

「そんなに? そんなにいってるように見える?」

「あ、すみません、もっと下でした?」

「正解は56歳~」

なんてことは、あるあるだ。

いつまでも「56歳? えー、見えなーい!」待ちしないで!と言いたい。しっかり50代に見えているのだから。自分だけ時が止まっているわけがない。

答え方が難し過ぎて、もういっそボケちゃおう!と思って「14歳ですか?」と言ったことがある。

すると相手は「14歳じゃお酒飲めないじゃん」とスーパーマジレスしてきたので、「ハハハ~!」とごまかしていると、「で、何歳に見える?」と話を戻した。

彼らは自分が実年齢より下に見えている確証を得るためにお金を払っているのかもしれない。

②ババアじゃん!って言ってくる50代

これを言ってくるのはだいたい50代……というか、10個以上年上のおじさん。

本来、年下がおばさんに見える人に対してババアと呼ぶのかと思っていた私の価値観はこの人たちによって覆された。

「いくつに見える?」を言ってくる人と共通しているが、自分だけは一定の年齢の感覚のままなので、年下でもババアに感じてしまうのである。もう一度言うが、自分だけ時が止まっているわけがないのである。

③変態にしたい50代

キャバ嬢はお客さんのニーズに応えるのが仕事だとしても、私も人間だ。

どうしても話したくない話題があったり、思わず気持ち悪っ!と思ってしまう話題がある。

「キミ、変態でしょ?」

お客さんのキャラクターや話し方によって同じ話題でも平気なこともあるがそれは稀で、この質問をされるのは気持ち悪い。

自分の好みの性癖であってほしいと願う質問だからだ。

その夢を叶えてくれるのがキャバクラだと信じているお客様は確かに存在するのである。

もしかしたらこの世代は変態=“いけないもの”だと徹底的に教え込まれてきたのかもしれない。変態だったらもうこの世の終わり、的な。絶対に人にバレたらダメな禁断の領域的な。

オタク=キモいと言われ、オタクであることを隠したほうがいいという時代もあったが、今はまったくそんなことはない。それと同じように、今は変態もそこまでアブノーマルなイメージはなく、まあ人にはそういった一面もあるよね~くらいだが、50代にとっては抑えられていた欲望を掻き立てる魅惑のキーワードなのかもしれない。

「変態って何をもって変態ですか?」

「何をもって変態だと思う?」

質問に質問で返すと、質問で返ってくる。

私はこの手の期待に応えることにとても嫌悪感があった。

キャバ嬢としてお客様のニーズに応えなくては、という意識を持ってもどうしても嫌悪感が勝ってしまう。

だから、私はわかってないふりをして話を逸らした。

「そうですね。たとえば、電化製品……冷蔵庫や洗濯機に欲情したら変態ですよね?」「う~ん……そういうことじゃなくて……」

エロい話をしたくないときはこれで乗り切っていた。

50代に限らず、エロトークに乗っかりたくない、気持ち悪い!と思うときは、過度な性癖があるかのようなワードを出して、相手を萎えさせるようにしていた。

「君は、どんなS〇Xが好きなの?」「わたし、相手を壁に張りつけて四肢に釘を打ちたいんですよ」「う〇こを食べてほしいですね!」など。

そして最後に、「それ、やらせてくれますか? やらせてくれる人、探してるんです」と言う。

もちろん相手の答えは即“No”だが、こちらが誘って相手が断っているため悪い気はせず、好かれも嫌われもしないので返しとしてはおすすめである。

なんだかんだ愛おしい“拗らせ50代”

④人生170年50代

話を少し盛るくらいはみんなやることだ。

ただ、盛り過ぎた話を何度も何度もしているうちに自分の中で真実になってしまったお客様もいた。

たとえば回数を盛るとしたら、真実が「1回」であっても、人に話す際は少し盛って「2,3回」と言う。これを言い過ぎていつしか「2、3回」が本当の回数だと勘違いし、さらに盛って「5、6回」と言い出す。

これを繰り返しているうちにでき上がるのが、元ネタとかけ離れたエピソードトークである。

今は普通のサラリーマンだが昔はテレビ業界で働いていたというお客様は、世界中を放浪した経験や、ブランドブティックのデザイナー、新宿二丁目のママ、某有名歌手の運転手、某国の王室に招かれた、六本木のドンだった、半熟玉子オムライスは俺が発案した、などなど聞けば聞くほどさまざまな経歴があるそうだ。しかしすべてのエピソードを時系列で並べたら、170歳くらいじゃないと辻褄が合わない。

そして、そんないろんな経歴があるにもかかわらず、私と出会って7年間はずっとサラリーマンなのが不思議だった。同じ自慢を何度も聞かされることもあったが、170年分のエピソードがあるため話を聞くときはいつもワクワクした。

⑤脊髄反射でギャグを放つ50代

おやじギャグのメカニズムに加え、酔っ払いスキルがプラスされるのが特徴。

「ブスだね!」とか「おっぱい触らせて!」などと同様、会社では絶対言わないような思いついたことを反射的に言ってしまう現象がギャグにも適応されるのである。

普段はふとギャグを思いついても、「スベるかも」「変な空気になるかも」「愛想笑いさせちゃうかも」という思考回路を経由するため言わずに止められる。

しかしお酒を飲むとこの検問がガバガバになってしまい、脳から口へダイレクトにギャグが滑り落ちてくる。下手したら脊髄が考えてる可能性もある。それくらい反射的に出てしまうのが、酔っ払いおやじギャグだ。

これに関してはただ愛想笑いしてあげればいいだけなので、これまでに紹介したおじさんたちと比べると、イージーモードではあるが、ひとつずつツッコもうとするとかなりの体力を消費することになるので注意が必要だ。

⑥小説を勧めてくる50代

私は小説を読まないタイプなのだが、小説を否定しているわけではない。しかし、ガチガチに凝り固まった考え方、己の経験は絶対に正解だと信じて疑わず、他人に押しつけてくる50代がいるのである。

「湊かなえ知らないの? 『告白』書いた人だよ! 映画で観た? あーあれは、原作のほうがおもしろいよ!」

「でも私、小説とか苦手で……」

「いや、湊かなえは小説苦手な人でも読みやすいから!」

“これ、おいしいから食べてみて!”と同じ理屈で小説を勧めてくる。

辛いものが苦手な人は、どんなにおいしい四川料理でも食べられないのと一緒である。

「活字が読めないんですよね~」

「活字はね~、読んだほうがいいよ! 得るものたくさんあるから!!」

映画やマンガで得るものもたくさんある。少なくとも、私の知識の大半は全部『地獄先生ぬ~べ~』から得たものなのだから。

現に、活字をほとんど読まない私もこうしてコラムを書かせていただけている。

「スマホでニュース記事とかは読みますよ~」

「あー、電車でみんなスマホいじってるなか、俺だけは本読んでるんだよね」

小説はいいものだからおすすめしたいという枠を超えて、まわりと違って俺は本を読んでますアピール。これこそが本心なのだと思う。

小説が好きなのではなく「小説が好きな俺」が好きなのだ。

このように、次から次へと出てくる50代拗らせおじさんエピソード。

憎み切れなくて思わずネタにしたくなる彼らのエピソードはまだまだある……。

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