和楽器バンド『大新年会』に込めた想い「私たちはエンタテインメントを止めずに届けつづける」

2022.1.24
『和楽器バンド 大新年会2022 日本武道館 ~八奏見聞録~』より

文=坂井彩花 撮影=上溝恭香 編集=森田真規


2014年4月にデビューし、今年の4月でデビュー満8年を迎える、メンバー8人による和楽器バンドの毎年恒例となっている『大新年会』が1月9日に開催された。

「私たちがエンタテインメントを止めずに届けつづけるので、今を最高のものにするために、今を楽しく生き抜いていきましょう」とボーカルの鈴華ゆう子は、ライブ終盤で観客に語りかけた。

先行きが不透明な時代だからこそ私たちに必要な音楽が、その日の日本武道館には鳴り響いていたように感じられた。『和楽器バンド 大新年会2022 日本武道館 ~八奏見聞録~』のライブレポートをお届けする。


オーディエンスと作り上げていく

2022年4月、和楽器バンドはデビュー満8年を迎える。日本武道館にて開催された『和楽器バンド 大新年会2022 日本武道館 ~八奏見聞録~』は、そんな記念すべき年を自ら祝うかのようなライブだった。

メンバー同士のセッションや「ドラム和太鼓バトル」といった定番の演目がある一方、セットリストは新旧の代表作が織り交ぜられた選曲で展開。MCにおいてもグッズ紹介やエピソードトークなどもなく、極力ミニマムな構成で進行された。その様は「届けたいことはパフォーマンスに込めた」と言わんばかり。彼らはこの日のステージに、和楽器バンドの8年の歴史と想いをすべて注ぎ込んでいるかのようにも見えた──。

『和楽器バンド 大新年会2022 日本武道館 ~八奏見聞録~』より
声は出せずとも、手拍子やペンライトで会場は一体感に包まれていた

シルエットの映し出された屏風の裏からメンバーが登場し、黒流(和太鼓)の「武道館、行くぞ!」という第一声を受けてライブはスタートした。とめどなく打ち込まれるレーザービームに音圧がグッと迫りくる演奏、そしてまっすぐに響く鈴華ゆう子の歌声。1曲目の「戦-ikusa-」から、一切妥協のないフルテンションのステージングが披露された。2曲目「白斑」で勢いはさらに加速し、ウォーミングアップの演目なんて必要ない、和楽器バンドの実力をまざまざと見せつけた。

コロナ禍でのライブでは観客が声を出すことができず、コール&レスポンスなんてもってのほか。ともすれば、コミュニケーションが演者から観客へ一方通行になってもおかしくないものだが、和楽器バンドは積極的にオーディエンスとライブを作り上げていく。

鈴華ゆう子

「情景エフェクター」では、鈴華の誘導に合わせてクラップが鳴り、ペンライトが左右に揺れた。さらに、サビでメンバーが歌うシンガロングはみんなで一緒に歌える世界へ向けた切なる祈りのようであり、<君がいるのならば ここで歌ってもいいかな 君と歌ってもいいかな>という歌詞が「また一緒に歌おう」という約束のように響いた。

力強い三本締めのリズムが引き連れてきたのは「起死回生」だ。神永大輔(尺八)と鈴華が仲よさそうに肩を組めば、町屋(Gt&Vo)と蜷川べに(津軽三味線)は軽やかにツーステップ。スクリーンに映し出される歌詞の一つひとつが魂を宿し、強固なメッセージとしてオーディエンスに飛んでくるかのようだった。時に飛び跳ね、こぶしを突き上げるオーディエンスは、ステージにいる和楽器バンドとしっかりと呼応していた。

神永大輔(左)、鈴華ゆう子(中央)、町屋(右)

そして、リフトアップしたステージからしっとりとした歌声が降り注ぐ「オキノタユウ」、町屋と鈴華のかけ合いが楽しくハイカラな「シンクロニシティ」と色彩豊かに紡がれていく。そして、前半のセットリストをまとめるかたちで投下されたのが、フジテレビ系月9ドラマ『イチケイのカラス』に宛てて書き下ろされた「Starlight」だ。この曲の<自分の言葉そのままに 焦りや迷いも乗り越えたい>というフレーズが、和楽器バンドの今のアティチュードであるかのように会場に刻まれた。

「千本桜」に込められた想い


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坂井彩花

(さかい・あやか)1991年、群馬県生まれ。ライター、キュレーター。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。『Rolling Stone Japan Web』『Billboard JAPAN』『Real Sound』などで記事を執筆。エンタテインメントとカルチャーが..

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