非日常を求め、鮮魚専門スーパーでなじみの薄い魚介類を買ってみる。気分は漁港(パリッコ)

2020.5.15

パリッコのマイバスケット・イズ・スーパーマーケット 第4回

文・写真=パリッコ 編集=森山裕之


『酒場っ子』、『つつまし酒』などの著書を持つ、若手飲酒シーンの旗手・パリッコさんが提案する「スーパーマーケット」の楽しみ方。
「常に新しい刺激を求め、非日常の世界に浸るために酒場に通っている」タイプの酒飲みは、家飲みにもそれを求める。
住宅地、畑の間を自転車で駆け抜けて辿り着いた先は、漁港のような鮮魚専門スーパーだ。

倉庫的巨大スーパーのワクワク感

酒場好きには、おおざっぱに2種類のタイプがいる。

ひとつは、決まった店にしか行かない人。お気に入りの酒場を、自宅、職場に次ぐ第3の場所と位置づけ、あくまで日常の中のワンシーンとして、気持ちをリラックスさせるために通っている、「この店に来ると、いっつもあの常連さんいるなぁ」というようなタイプの人だ。

もうひとつは、未知の酒場を積極的に開拓する人。こちらは逆に、常に新しい刺激を求め、非日常の世界に浸るために酒場に通っているといえるだろう。

どちらの気持ちもとてもよくわかるけど、僕はやっぱり後者の部類に属する酒飲みだと思う。知らない街の、初めて見る店の、のれんの奥がどうなっているのかが気になってしょうがない。しかも、店構えは怪しげであればあるほどうれしい。仕事柄もあるけれど、根っからの酒の変態であることは認めざるを得ない。

この分類は、家飲みに対しても当てはまる部分がある気がする。毎日ちゃぶ台の定位置に座り、同じ銘柄の瓶ビールに冷奴に枝豆があれば安心大満足。というお父さんもいれば、僕のように、今日はベランダをビアガーデン風に改装してみるか。とか、今日は地元の酒場のテイクアウトメニューをかき集めて飲んでみるか。なんて、日々満足度向上のためにあがきつづけている男もいる。

酒場に自由に行けない昨今ならばなおさらで、どうしてもマンネリになりがちな日々の晩酌に、どうにかして非日常感をプラスしたい。そんな想いでスーパーに通っている。

地元には数軒のスーパーがあるが、いくらローテーションで通おうと、それがつづけばどうしても似たようなものを買い、似たようなつまみを作りがちになってしまう。そこで前回は「業務スーパー」に行ってみたわけだけど、今回もひとつ、行きたい店を思いついた。

自宅から自転車で15分くらいの場所に「フレッツ」という、倉庫のように巨大なスーパーがある。肉や野菜や日用品を扱うその店の横には、これまた同じくらい巨大な「魚市場 旬」という独立した鮮魚店もある。ホームページを見てみたところ、「練馬にある日本最大級の粋な魚屋」とのキャッチフレーズが踊っていたが、それも伊達じゃないほどの規模であることは確かだ。

駅前のスーパーに比べれば遠いので日常的に通っているわけじゃないけれど、年の瀬には決まって、家族+隣駅に住む母で、年末年始の買い出しに行く。すると魚に関しては、やっぱりここらでは一番の品ぞろえ、鮮度、価格であることを実感するし、それらを眺めているだけでめちゃくちゃ楽しい。

そうだ、別に年末じゃなくても、あそこへ行ったっていいんだよな。で、普段スーパーではあまり出会わないような珍しい魚介類を中心に買い、家でちょっとした非日常感を味わう。よし、今夜の晩酌の方針はそれに決定だ!

「新鮮市場フレッツ」と「魚市場 旬」

コウイカの甲の不思議

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