ドラマ『エ・キ・ス・ト・ラ!!!』が描く、自分の人生の主役が自分だと気づく瞬間

2020.3.30

文=早川大輝 編集=鈴木 梢


映画やテレビドラマのなかで、個性や演技力は求められないけれど重要な存在、エキストラ。そんな人々にスポットを当てたドラマが放送され、3月19日(木)に最終回を迎えた。

ライター早川大輝の連載「忘れたくない僕のテレビドラマ記録ノート」、今回は『エ・キ・ス・ト・ラ!!!』(関西テレビ)について。主役でも、さらに言えば脇役ですらないエキストラという存在たちの人生から、自分の人生の主役が自分であると実感できる瞬間について考える。

普段、日の目を見ないエキストラが主役のドラマ

毎クール、さまざまな作品が制作されるテレビドラマ。そのドラマの中で、おそらくすべての作品に共通して出演している役者がいる。それはエキストラ。

そのエキストラを主役にした『エ・キ・ス・ト・ラ!!!』というドラマがある。ある1本のドラマ現場を舞台に、撮影に参加するエキストラたちの物語がオムニバス形式で描かれる。劇中劇『猟奇的な君を宇宙の果てまで追いかける』が本当に不思議な作品で、主人公とヒロインの恋愛模様を描くのかと思ったら、触手をもつ怪物に襲われたり、ゾンビに襲われたり、ヒロインが二重人格だったり、カフェでオペを始めたり、ヤクザのボスを銃撃したりと、展開がまったく読めない。『笑う犬』のコントを見せられているのかと思った。

さまざまな展開が起きるからこそ、さまざまなエキストラが登場する。エキストラは不思議な存在だと思う。メインキャストと違って、「この人だから」というキャスティングはあまり存在しない。つまり替えがきく存在。それなのにエキストラはドラマには欠かせない、いないと困る存在でもあるのだ。

普段ドラマを観ているときにエキストラの存在を意識することはあまりない。それはやはり脇役だからというよりほかない。物語には主役がいて、その主役を囲むように脇役が存在する。エキストラに関してはもはや脇役ですらなく、何者でもない存在だ。

それなのに、いや、だからこそなのか、このドラマを観ているうちにエキストラに対して、愛着を持ってしまった気がする。

エキストラ一人ひとりに、人生がある

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早川大輝

(はやかわ・だいき)92年生まれ。WEB系編集プロダクションを経て、フリーの編集者/ライターとして独立。生粋のテレビドラマっ子であり、メモ魔。インタビュー記事の企画と編集、たまに執筆をしています。

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