宮迫vs江頭 どうしてYouTubeで差がついたか(中川淳一郎)

2020.2.19

江頭が長年かけて培ってきたネット民との絆

一方、江頭については私の著書でも何度も書いているが「なぜか愛される芸能人」の筆頭格である。「東日本大震災のとき、被災地に軽トラで行き支援物資を名乗ることなく渡した」といった話のほか、さまざまな「江頭伝説」がネットには存在する。江頭のYouTubeチャンネルでもいくつかの噂の真偽が検証された。

ネットの江頭伝説は本当なのか?(名言編)

私のようにネットウォッチを仕事としている者にとっては、江頭がYouTuberとして成功することは、開設の事実をその2週間前に江頭に近い関係者から聞いたときにもうわかっていた。だからこそ「絶対うまくいきますよ!」と伝えたのだが、それだけ江頭が長年かけて培ってきたネット民との絆は深い。

江頭の「エガちゃんねる」にしても、動画に登場する仮面ライダーのショッカーのような「ブリーフ団」の食いぶちを心配したりするなど、破天荒な芸風の江頭であっても、その裏に潜む優しさやまじめさというものを知ったうえでネット民は江頭への激励の声を書き込むのである。

また、江頭は決してテレビから干されたわけではないが、コンプライアンス重視のテレビ界で、彼の芸が出しづらいことは時代の趨勢といえよう。 もうレギュラー番組は地上波にないだけに、今回のYouTubeチャンネル開設は「やっとオレたちのエガちゃんに活躍の場所ができた!」と歓迎されたのだ。

ネットは判官贔屓的な面があり、のん(元能年玲奈)が事務所脱退をめぐりテレビ業界から干されたときも応援の声が相次いだ。今、彼女がCMに起用されたりすると多数の激励の声が書き込まれる。

「自分の芸を世界の人々に知ってもらいたい」

江頭と宮迫の差は、配信動画の評価にも表れている。江頭の配信動画初回の「お尻書道」は361万再生をされ、高評価が21万、低評価が2460だ。

一方、人気YouTuberのヒカル(チャンネル登録者数366万人)の「【独占告白】宮迫さんに闇営業の件について直接聞いてみた」は488万回再生され、12万の高評価、3.6万の低評価がされた。宮迫のチャンネルにもヒカルは登場し、「YouTuberのヒカルさんと初コラボしました」は、277万回視聴され、高評価9.7万、低評価4.9万だった。低評価が高評価の約半分なのである。

YouTuberのヒカルさんと初コラボしました

宮迫の動画視聴やチャンネル登録は多くのアンチが担っているといった面もあるだろう。結局、ネット民は「テレビ的作法」をネットに持ち込まれることを嫌がる。宮迫にしてもヒカルをはじめとした人気YouTuberや堀江貴文氏といった著名人をゲストに招くことにより再生回数を稼ごうとしているが、必ずしも好意的に受け入れられているとは言えない。

一方の江頭が共演するのは「ブリーフ団」である。草なぎを呼びたいとは述べたものの、前出の関係者によると「江頭さんは別に著名人をバンバン呼んでチャンネル登録者数や視聴回数を増やしたいわけではない。あくまでも自分の芸を世界の人々に知ってもらいたい」とのこと。

「 アンチがわざわざ見に来てくれる」のがネット

だったら宮迫はどうすればいいか。「風」が変わるのを待つためにも芸風を変える必要はあるかもしれないが、あくまでも広告収入を稼ぎたいのであれば、「アンチが見るチャンネル」「アンチが見るブログ」を目指すのはひとつの手である。ネットというものは不思議な世界で、テレビ・新聞・雑誌・ラジオのように「ファンがお金を払う・時間を使う」のではなく「アンチがわざわざ見に来てくれる」場所なのだ。

そしてアクセス数や視聴回数というものが広告費に化けるわけだが、好意的な人だろうがアンチだろうがその金額は同じ。「アンチも大事なお客様」という意識を持つと良いかもしれない。

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中川淳一郎

(なかがわ・じゅんいちろう)ネットニュース編集者。1973年東京都出身。1997年博報堂入社、CC局(現PR戦略局)配属。2001年退社。以後無職、ライター、雑誌編集者などを経て現在はウェブメディア中心の編集者に。ひたすらネット上の珍騒動や事件を毎日テキストファイルに記録する生活を長年つづけている。

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