アトラクション型ドラマだ
リアルなのにフェイクだし、フェイクなのにリアル。これは「いろんな見方ができるドラマ」にしたいと考えた脚本の鈴木おさむの思惑どおりだろう。
鈴木おさむが原作を脚色するに当たって『スチュワーデス物語』(片平なぎさが演じた役が姫野礼香のモデル)や『スクール・ウォーズ』(共にTBS)など「大映ドラマ」のテイストを大幅に導入したのは、すでによく知られている。実話をベースにしているのにエクストリームな演出が話題になるあたりも両者の共通点だ。鈴木おさむは特に『ポニーテールはふり向かない』(TBS)で主人公のドラマー・伊藤かずえが途中で失明してしまう展開に衝撃を受けたという(なお、このドラマは実話ではなくフィクション)。
『M 愛すべき人がいて』と同じ枠で放送されたドラマ『奪い愛、冬』(テレビ朝日)も鈴木おさむが脚本を手がけているが(水野美紀、三浦翔平という出演者も共通)、プロデューサーから「なんか変なことばかり起きるドラマを作りたい」と言われて忠実に実行して成功を収めた。たしかに大映ドラマも『奪い愛、冬』も『M 愛すべき人がいて』も「変なことばかり起きるドラマ」である。『奪い愛、冬』ではいかにSNSで話題になるかを念頭に置いて脚本を書いていたそうだが、今回はさらにその手法を推し進めた作品だといえる。
そういえば、昨年放送されて大ブームを巻き起こした『あなたの番です』(日本テレビ)も「変なことばかり起きるドラマ」だった。鈴木おさむも『あな番』現象には注目していたようで、自分のコラムで触れている。SNSで話題になるようにドラマで変なことが次々と起こる脚本を書いて、配信サイトと連動してムーブメントを起こす。これらのドラマは「アトラクション型ドラマ」と呼ぶことができると思う。
今後はアユとマサの恋愛模様が濃厚に描かれるほか、流川がダークサイドに落ちたり、Axelsがとんでもないことになったりするらしい。普段2文字しか発しない安斉かれん曰く「マジヤバ」な今後の展開を見守りたい。
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